一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

「Bins Gate Cup」を見に行く(終章)・「パナマSHBゲイシャ・エスメラルダ2009」

2010-01-16 00:31:48 | 旅行記・G.W.編
私は大阪環状線に沿って、大阪駅方面へ向かう。この日は「青春18きっぷ」は使わず、20時53分発の「のぞみ188号」で、新大阪から一路帰京の予定である。
2年前も同じ状況で、此花工業会のある阪神電鉄・千鳥橋から、西九条~大阪とぶらぶら歩いたものだった。
JR野田駅に着く。高架下に「VIEDE FRANCE」がある。店内には美味そうな菓子パンが陳列されているが、とりあえず見送る。
たこやきを売っている店がある。大阪へ来て、まだたこやきは食べていない。しかし私の購入想定金額とズレがあったので、これも買うのを見送る。2年前と同じだ。
近くに「十割そば」を謳った立ち食いそば屋風の店があったので、ここは入る。麵の喉ごしは良かったが、「十割」というほどそばの風味は感じなかった。
そのまま大通りを渡る。しばらく歩くと、前面が総ガラスばりの喫茶店が目に入る。あった…! この喫茶店は店頭から漂うコーヒーの香りに誘われて、2年前も入ったことがある。あのときは、美味しいコーヒーとケーキを味わいながら、藤田麻衣子女流1級との指導対局を顧みたのだ。
この喫茶店が目当てだったので、迷わず入る。店内は黒色に統一されており、厨房、カウンター、テーブル席が綺麗に分かれていて、すべてが見渡せる。今回はカウンターに誰もいなかったので、度胸を決めてそこにすわる。コーヒーを挽いている人は男性のようだが、残り4名の店員は全員女性である。やはり緊張してしまう。
女性がメニューを持ってくる。同時に、約8センチ四方の紙片を差し出した。見ると「パナマSHBゲイシャ・エスメラルダ2009」とあり、「¥1000」の表示がある。…1,000円!?
「これは…この店のオススメということですね?」
「……」
女性はキラッと目を光らせて、静かに笑みを浮かべるだけである。
(お客様、このコーヒーをたしなむ度胸がおありですか?)
と、挑戦状を突きつけられた感じだ。値段だけをいうならば、その類のコーヒーは東京にも存在する。しかし私が知る限り、それは「場所代」が多分に含まれている。味だけで勝負、というケースは初めてだ。むろんほかのメニューはリーズナブルな価格だから、それをオーダーしても構わない。
とはいえこの長ったらしい名前、なかなか興味をそそられる。しかし「青春18きっぷ」を使い、2,980円や2,300円のホテルに泊まっていながら1,000円のコーヒーを頼むのは、貧乏旅行の方針と一貫していないのではないか? だが1,000円のコーヒーを味わう機会もなかなかない。味わってみたい。
私は少考後決断すると、清水の舞台から飛び降りるつもりで、このコーヒーと、チーズケーキを頼んだ。
待つ間、例の紙片を見る。「このコーヒーは、パナマのオークション『ベスト・オブ・パナマ』に何回も選ばれ…」と能書きが書かれてある。どんなコーヒーなんだろう。大きな期待が膨らむ。女性店員らは、キビキビと無駄のない動きで働いている。
しばらくして、「パナマSHBゲイシャ・エスメラルダ2009」とチーズケーキが、私の前に置かれた。これが…1,000円のコーヒーか。
コーヒーカップはいたってふつう、とても1,000円するとは思えないが、湯気の立ちかたが高貴な感じがする。
「あのこれは…ミルクを入れてもいいんでしょうか」
「はい、それはまた別の味が楽しめます」
一呼吸し、左手でカップを持つ。すこし手が震えているのが分かる。と、濃厚な香りが鼻をくすぐった。
これは…ただものではない! 昨年北海道を旅行した折り、余市のニッカウヰスキーを社会科見学したが、5年物と20年物のそれでは、明らかに香りが違っていた。このコーヒーもそうで、相当高級な豆を挽いていそうである。
馥郁たる香りと言い直すべきか。一口含むと、芳醇な酸味が口の中に拡がった。そのまま飲み込むのが惜しい。しばらく舌の上でころがす。まるでワインを飲んでいるようだ。
半分ほど飲んだところで、ミルクを入れてみる。しかし今度は酸味や香りが減殺された気がする。砂糖も入れてみる。さらにふつうのコーヒーに近づいてしまった感じだ。私はブラックは好まないが、高級なコーヒーはそのまま飲むのがいいようだ。
やや期待外れだったチーズケーキと合わせて1,380円。おカネに見合った、実に優雅なひとときであった。
これでこの日の目的はすべて達成した。私はそのまま大通りに沿って歩く。道の案内板に、「関西将棋資料館」の表示がある。もう、福島駅の近くを歩いているのだ。関西所属の棋士や奨励会員は、かの喫茶店に訪れたことがあるのだろうか。
国道2号と合流する。左手に、「HARLEY-DAVIDOSON」の看板が見える。バイク販売の専門店だ。中倉宏美女流二段が見たら歓びそうである。それにしても彼女、きものや巫女さんの姿が似合うのに、ハーレー愛好者とはまったくもって意外である。ホントに、ヒトは見た目では分からない。
牛丼の吉野家がある。並盛りはこの日から10日間、80円引きの300円セールをやっている。大サービスである。しかし素通りする。なぜなら口中に、先ほどのコーヒーの香りが残っていたからだ。さすが1,000円だけある。もう少し、この余韻を楽しみたい。すぐに別の食物を流しこむ気にはなれなかった。
そのまま大阪駅前のビル群に着く。ここは本当に大阪か? ちょっと東京駅前の雰囲気もあった。
次の食事が、今回の旅行の最後の晩餐となる。ここは奮発してもよい。駅ビル内のレストラン、寿司店、中華料理店といろいろ回るが、どうしても想定予算と合わず、入るのを躊躇してしまう。
駅ビル内は振り袖姿の女性が目につく。彼女らの年齢は19歳か20歳と分かる。なぜならこの日は「成人の日」だからだ。LPSAで振り袖姿が似合うひとは…言わぬが花、というところであろう。該当者なし、とも書けない。
駅ビルを出てもいいが、不案内な場所をふらふらして、迷子になってもいけない。結局私は、ビル内の軽食喫茶に入り、オムライス(L)を頼んだ。730円。まずまずの味だった。
店を出ると、入会金不要、15分100円のネットカフェがある。なかなか魅力的な価格設定だが、ここで時間を潰すくらいなら、少しでも早く帰京したほうがよさそうだ。「みどりの窓口」へ行くと、20時53分発より1時間前の「のぞみ186号」指定席が取れた。
大阪駅の改札を抜け、新大阪行き乗り場ホームを目指す。このとき私は、自分が間違いなく大阪にいたことを実感した。
エスカレーターの乗客が、全員右側に寄っている!!
コメント (11)
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