将棋を趣味にする者ならば、誰だって上達を目指すものだろう。今年こそ昇級したい。ライバルに勝ちたい。大会で優勝したい…。しかし私の場合は…。
私は小学3年生のときに、よそから転校してきた男子から将棋を教わった。おもしろいゲームだなとは思ったが、熱中し始めたのは、中学生になってからである。
そのころオヤジから、将棋には「囲い」や「戦法(定跡)」というのがある、ということを教えられた。そこでオヤジと本屋へ行き、選んだのが、中原誠・現十六世名人著「中原の将棋教室」(池田書店)であった。帰宅してから中をパラパラとめくってみて、将棋とはこんなに覚えなければならないことがあったのか、こんなに難しいものだったのかと、気が遠くなったのを憶えている。
「鉄は熱いうちに打て」という。いまさら「たら、れば」を言っても詮ないが、もし私が将棋のルールを覚えたと同時に定跡書を与えられていたら、いまより大駒1枚…はオーバーだが、香1本は強くなっていたと思う。
それでアマ棋戦のタイトルを獲得するくらい強くなっていたかといえば、私だってそこまで自惚れはしない。とてもとても無理である。しかし…とは思う。
私は現在、LPSA金曜サロンにほぼ毎週通い、魅力的な女流棋士に教えを請うている。女流棋士側の指導意識と多面指しという環境、私の紳士的な対局態度も功を奏して、成績はほぼ指し分けである。しかし私がいまより香1本強かったらどうだろう。私の勝率が飛躍的に上がってしまい、お互いおもしろくなくなっていたのではないか、と思うのだ。結果私は金曜サロンへの足が遠のき、将棋ソフト相手に無聊を慰めていた気がする。
もちろん金曜サロンでも、女流棋士相手に大幅に勝ち越している強豪もいるし、それはそれでよい。しかし私が同じ立場だったら、消化不良が先に立ったような気がするのだ。
つまり私には、女流棋士に勝ったり負けたりという現状が、いちばん楽しいということになる。強くなりすぎなくてよかった、というわけだ。
してみると、子供のころのブランクが、いまでは吉に出ている、といえる。
ところが年に1回、もっと将棋が強かったなら…と痛感する日がある。
LPSA女流棋士とアマ強豪がペアを組んで覇を競う、「ペア将棋選手権」である。女流棋士とトップアマが一心同体になって並んで指す、素晴らしくもおもしろくない企画だ。そしてこればかりは、参戦するトップアマは、プロを負かすくらいの棋力でなければ出場できない。
私は昨年の同大会で、迷ったすえ観戦に赴いたが、妙齢の女流棋士と並んで指している男性トップアマが羨ましいやら憎たらしいやらで、平常心で観ることができなかった。
その「ペア将棋選手権」が、なんと今年も31日(日)に、南青山で行われる。私はというと、なんだか知らないが観戦の申し込みをしてしまった。
第3回となる今回は、「ペア将棋体験コーナー」として、女流棋士や女子アマとペアを組んで将棋を指せる企画がある。しかし私にも妙な意地がある。そこまでして女流棋士とペアを組んで将棋を指したくないので、その体験は遠慮する。しかし申し込んだ以上、観戦には行く。
ただし、である。中井広恵女流六段・M氏ペア、藤田麻衣子女流1級・S氏ペアは、1回戦だけは絶対に絶対に絶対に勝ってもらいたい。ほかにも絶対勝ってもらいたいペアはあるのだが、キリがないので、この2ペアには切に切に切にお願いするものである。
私は小学3年生のときに、よそから転校してきた男子から将棋を教わった。おもしろいゲームだなとは思ったが、熱中し始めたのは、中学生になってからである。
そのころオヤジから、将棋には「囲い」や「戦法(定跡)」というのがある、ということを教えられた。そこでオヤジと本屋へ行き、選んだのが、中原誠・現十六世名人著「中原の将棋教室」(池田書店)であった。帰宅してから中をパラパラとめくってみて、将棋とはこんなに覚えなければならないことがあったのか、こんなに難しいものだったのかと、気が遠くなったのを憶えている。
「鉄は熱いうちに打て」という。いまさら「たら、れば」を言っても詮ないが、もし私が将棋のルールを覚えたと同時に定跡書を与えられていたら、いまより大駒1枚…はオーバーだが、香1本は強くなっていたと思う。
それでアマ棋戦のタイトルを獲得するくらい強くなっていたかといえば、私だってそこまで自惚れはしない。とてもとても無理である。しかし…とは思う。
私は現在、LPSA金曜サロンにほぼ毎週通い、魅力的な女流棋士に教えを請うている。女流棋士側の指導意識と多面指しという環境、私の紳士的な対局態度も功を奏して、成績はほぼ指し分けである。しかし私がいまより香1本強かったらどうだろう。私の勝率が飛躍的に上がってしまい、お互いおもしろくなくなっていたのではないか、と思うのだ。結果私は金曜サロンへの足が遠のき、将棋ソフト相手に無聊を慰めていた気がする。
もちろん金曜サロンでも、女流棋士相手に大幅に勝ち越している強豪もいるし、それはそれでよい。しかし私が同じ立場だったら、消化不良が先に立ったような気がするのだ。
つまり私には、女流棋士に勝ったり負けたりという現状が、いちばん楽しいということになる。強くなりすぎなくてよかった、というわけだ。
してみると、子供のころのブランクが、いまでは吉に出ている、といえる。
ところが年に1回、もっと将棋が強かったなら…と痛感する日がある。
LPSA女流棋士とアマ強豪がペアを組んで覇を競う、「ペア将棋選手権」である。女流棋士とトップアマが一心同体になって並んで指す、素晴らしくもおもしろくない企画だ。そしてこればかりは、参戦するトップアマは、プロを負かすくらいの棋力でなければ出場できない。
私は昨年の同大会で、迷ったすえ観戦に赴いたが、妙齢の女流棋士と並んで指している男性トップアマが羨ましいやら憎たらしいやらで、平常心で観ることができなかった。
その「ペア将棋選手権」が、なんと今年も31日(日)に、南青山で行われる。私はというと、なんだか知らないが観戦の申し込みをしてしまった。
第3回となる今回は、「ペア将棋体験コーナー」として、女流棋士や女子アマとペアを組んで将棋を指せる企画がある。しかし私にも妙な意地がある。そこまでして女流棋士とペアを組んで将棋を指したくないので、その体験は遠慮する。しかし申し込んだ以上、観戦には行く。
ただし、である。中井広恵女流六段・M氏ペア、藤田麻衣子女流1級・S氏ペアは、1回戦だけは絶対に絶対に絶対に勝ってもらいたい。ほかにも絶対勝ってもらいたいペアはあるのだが、キリがないので、この2ペアには切に切に切にお願いするものである。