昨年11月27日のLPSA金曜サロン、夜は松尾香織女流の担当だった。昼は大庭美樹女流初段の担当だったから、この日は酒豪ペアだったことになる。
松尾女流初段は、指し初め式での設問「LPSAでお酒が強いと思う女流棋士は?」では6票を集めた。
しかし1位の大庭女流初段が9票だったから、3票も差がある。これはおかしい。ふたりは将棋もお酒も、いい勝負と思う。あれはいつだったか、どこかのブログで、松尾女流初段と大庭女流初段がビール片手に野球観戦をしている画像を見たことがあった。ふたりとも幸せそうないい顔をしており、このふたりと飲みに行ったら、いくら予算があっても足りねぇな…と、背筋にゾクッと悪寒が走ったのを憶えている。
さて、今回の将棋も扇子サイン勝負である。しかし松尾女流初段にも現在3連敗中。負けた1局目は松尾女流初段のゴキゲン中飛車、2、3局目は私の藤井流矢倉早囲いだったが、いずれも惜敗した。結果、3本目の扇子は、揮毫をいただけないまま、逃げられた。
もう負けるわけにはいかない。毎度のことながら、私は気を引き締めて指導対局に臨んだ。
☗7六歩☖3四歩☗2六歩。ここで松尾女流初段が、「矢倉…だったかな」とつぶやき、☖5四歩と指す。このところ相矢倉の将棋が続いたのを憶えていて、本局はゴキゲン中飛車を目指したものと思われる。このあたりの配慮がうれしい。
私は急戦を見送り、玉頭位取りを目指す。中盤に入って、と金を作られ桂損はしたが、まあいい勝負と感じていた。しかし☗7四歩を狙って☗5五角と飛び出たのが、次の☖4五歩を見落とした疑問手。いきおい☗3三角成☖同飛と角交換に応じたが、これでは丸々の1手損になり、戦意が萎えた。
上手 松尾女流初段・1一香、3三飛、3四歩、3七と、4三銀… 持駒:角、桂など
下手 私・2六飛、3五歩、4六歩、6八金、7五歩、7六銀、7七角、7八玉… 持駒:あり
の局面で、松尾女流初段が☖3六とと、貴重なと金を捨ててきた。私はありがたく☗同飛と取る。ところが☖4七角と飛車銀両取りに打たれ、飛びあがった。
こんな簡単な手をうっかりしているとは、どうかしている。
私は☗3四歩と取り込み、上手が☖同飛と応じてくれたので、☗同飛☖同銀と進み、とりあえず飛車は捌けた。しかし☗7六銀を守る手がむずかしい。
しばらく考えたが、銀を逃げても矢継ぎ早に攻められ、一手一手と判断し、ここで私は投了した。
「エエーッ!?」
と声をあげる松尾女流初段。さすがにこの投了は早かったか。左で指していたHa氏は、「これは…島朗ばりの投了ですね」と言う。植山悦行手合い係も飛んでくる。
投了以下の変化を軽く進める。手順によっては☗1一角成と香を取る手はあるが、角を切られ飛車を下ろされて、こちらにあらかた受けがない。
私がその手順を並べると、植山手合い係が、
「ふーん、強いですね」
と言った。ただその言葉には、多少の皮肉が感じられた。この程度で投了するものではありませんよ、と諭されているようだった。
私は盤を離れ、
「松尾先生に4連敗するとは…」
とつぶやくと、
「エッ?…なにか言いました?」
と松尾女流初段。
「いえ、なにも…。ああ、もう松尾先生に一生勝てないような気がしてきた…」
私が再びつぶやくと、すかさず松尾女流初段が聞き咎め、
「エッ!?…もう! 一公さんには一生負けない!」
と叫んだ。
私にそんな気持ちは微塵もなかったのだが、松尾女流初段が私の言葉の中に、「あの先生に負けたのが信じられない」というニュアンスを感じ取ったのだろう。結果、笑みを浮かべながらではあったが、永久不敗宣言をされてしまった。実際松尾女流初段は、半ば本気で沸騰したようで、のちにスタッフ氏が笑って、
「松尾さん、ぼくにも、一公さんには一生負けない! って言ってましたよ」
と打ち明けてくれた。
まずい…。藤田麻衣子女流1級に続いて、またひとり、厄介な敵を作ってしまった。
松尾女流初段は、指し初め式での設問「LPSAでお酒が強いと思う女流棋士は?」では6票を集めた。
しかし1位の大庭女流初段が9票だったから、3票も差がある。これはおかしい。ふたりは将棋もお酒も、いい勝負と思う。あれはいつだったか、どこかのブログで、松尾女流初段と大庭女流初段がビール片手に野球観戦をしている画像を見たことがあった。ふたりとも幸せそうないい顔をしており、このふたりと飲みに行ったら、いくら予算があっても足りねぇな…と、背筋にゾクッと悪寒が走ったのを憶えている。
さて、今回の将棋も扇子サイン勝負である。しかし松尾女流初段にも現在3連敗中。負けた1局目は松尾女流初段のゴキゲン中飛車、2、3局目は私の藤井流矢倉早囲いだったが、いずれも惜敗した。結果、3本目の扇子は、揮毫をいただけないまま、逃げられた。
もう負けるわけにはいかない。毎度のことながら、私は気を引き締めて指導対局に臨んだ。
☗7六歩☖3四歩☗2六歩。ここで松尾女流初段が、「矢倉…だったかな」とつぶやき、☖5四歩と指す。このところ相矢倉の将棋が続いたのを憶えていて、本局はゴキゲン中飛車を目指したものと思われる。このあたりの配慮がうれしい。
私は急戦を見送り、玉頭位取りを目指す。中盤に入って、と金を作られ桂損はしたが、まあいい勝負と感じていた。しかし☗7四歩を狙って☗5五角と飛び出たのが、次の☖4五歩を見落とした疑問手。いきおい☗3三角成☖同飛と角交換に応じたが、これでは丸々の1手損になり、戦意が萎えた。
上手 松尾女流初段・1一香、3三飛、3四歩、3七と、4三銀… 持駒:角、桂など
下手 私・2六飛、3五歩、4六歩、6八金、7五歩、7六銀、7七角、7八玉… 持駒:あり
の局面で、松尾女流初段が☖3六とと、貴重なと金を捨ててきた。私はありがたく☗同飛と取る。ところが☖4七角と飛車銀両取りに打たれ、飛びあがった。
こんな簡単な手をうっかりしているとは、どうかしている。
私は☗3四歩と取り込み、上手が☖同飛と応じてくれたので、☗同飛☖同銀と進み、とりあえず飛車は捌けた。しかし☗7六銀を守る手がむずかしい。
しばらく考えたが、銀を逃げても矢継ぎ早に攻められ、一手一手と判断し、ここで私は投了した。
「エエーッ!?」
と声をあげる松尾女流初段。さすがにこの投了は早かったか。左で指していたHa氏は、「これは…島朗ばりの投了ですね」と言う。植山悦行手合い係も飛んでくる。
投了以下の変化を軽く進める。手順によっては☗1一角成と香を取る手はあるが、角を切られ飛車を下ろされて、こちらにあらかた受けがない。
私がその手順を並べると、植山手合い係が、
「ふーん、強いですね」
と言った。ただその言葉には、多少の皮肉が感じられた。この程度で投了するものではありませんよ、と諭されているようだった。
私は盤を離れ、
「松尾先生に4連敗するとは…」
とつぶやくと、
「エッ?…なにか言いました?」
と松尾女流初段。
「いえ、なにも…。ああ、もう松尾先生に一生勝てないような気がしてきた…」
私が再びつぶやくと、すかさず松尾女流初段が聞き咎め、
「エッ!?…もう! 一公さんには一生負けない!」
と叫んだ。
私にそんな気持ちは微塵もなかったのだが、松尾女流初段が私の言葉の中に、「あの先生に負けたのが信じられない」というニュアンスを感じ取ったのだろう。結果、笑みを浮かべながらではあったが、永久不敗宣言をされてしまった。実際松尾女流初段は、半ば本気で沸騰したようで、のちにスタッフ氏が笑って、
「松尾さん、ぼくにも、一公さんには一生負けない! って言ってましたよ」
と打ち明けてくれた。
まずい…。藤田麻衣子女流1級に続いて、またひとり、厄介な敵を作ってしまった。