昨年11月20日夜のLPSA金曜サロンは、藤森奈津子女流三段の担当だった。
扇子サインコンプリート「マジック1」となって臨んだ、昼の中倉宏美女流二段との指導対局。これに敗れ奈落の底に突き落とされた私だったが、落ち込んでいるヒマはない。引き続き、藤森女流三段ともサイン勝負である。なにしろ、もう9名の女流棋士からサインをもらっている。ここで勝たないと、当分サイン勝負の機会は回ってこない。もう、本当に後がなかった。
とはいうものの、この対局の前まで、藤森女流三段にも指導対局で3連敗中だった。いずれもサイン勝負で、藤森女流三段は「私には勝てるでしょう」と言いつつ、厳しい手を繰り出してくる。あの柔和な顔にダマされてはいけない。私はいつも以上に気を引き締めて、対局に臨んだ。
将棋は藤森女流三段の三間飛車。藤森女流三段との平手局はこれで11局目になるが、すべて藤森女流三段の振り飛車である。
藤森女流三段の将棋は、序盤は軽快に捌くが、中、終盤でやや不利になると自陣に駒を埋めて、容易に負けない指し方をする。関西流の味、といおうか。そんな1局の中での「棋風の変化」に戸惑って、逆転負けした将棋も少なくない。
前述のとおり、この将棋を負けたら、次の「サイン勝負」はいつになるか分からない。とにかくこの将棋こそ、絶対に勝たねばならなかった。
中盤、私の桂、香得になった。しかし昼の中倉女流二段との将棋では、中盤で金得になって負けたのだ。このくらいで優勢を意識してはいけない。あの将棋で教訓になったものがあるとしたら、これだ。私は互角のつもりで、1手1手を慎重に指した。
☗3七歩と、じっと角成りを受ける。☖3五歩には☗2六飛、☖2五歩にも☗1六飛と、あくまで我慢を続ける。とにかくこちらは駒得を主張し、斬りあってはいけないと言い聞かせた。と、突然、
「これは…負けました」
と、藤森女流三段がアッサリ投了を告げたので、ビックリした。
「早い投了」では、いつもは私が驚かれるのだが、今回は私が驚く番である。もちろん私はまだまだと考えていたのだが、金持ちケンカせずの姿勢でこられては、藤森女流三段も動きようがなく、ほかに指導対局を待っている人がいたこともあり、このあたりが投げる時機と考えたのだろう。まあいろいろ事情があったにせよ、とにかくホッとした、というのが偽らざる心境だった。
とはいうものの、盤を離れて一息つくと、やはり中倉女流二段のサインも欲しかったと思う。しかし会員の誰かから
「元女流棋士会会長からのサインだから、十分価値があるよ」
と言われ、たしかにそうだと納得した。
すべての指導対局が終わって、扇子の真ン中にポッカリ空いた箇所に、揮毫をしていただく。重鎮の名前が入って、なるほど1本芯が通った感じになった。
結局、7月31日から始まった3本目の扇子サイン勝負は、序盤私の7連勝で幕を開けたが、終わってみれば4ヶ月もかかる難産だった。
しかしサイン勝負はこれで終わったわけではない。また白扇子を買えば、翌週から「4本目」が始めることができるのだ。そして私は当然、4本目のサイン勝負に挑むこととなった。
扇子サインコンプリート「マジック1」となって臨んだ、昼の中倉宏美女流二段との指導対局。これに敗れ奈落の底に突き落とされた私だったが、落ち込んでいるヒマはない。引き続き、藤森女流三段ともサイン勝負である。なにしろ、もう9名の女流棋士からサインをもらっている。ここで勝たないと、当分サイン勝負の機会は回ってこない。もう、本当に後がなかった。
とはいうものの、この対局の前まで、藤森女流三段にも指導対局で3連敗中だった。いずれもサイン勝負で、藤森女流三段は「私には勝てるでしょう」と言いつつ、厳しい手を繰り出してくる。あの柔和な顔にダマされてはいけない。私はいつも以上に気を引き締めて、対局に臨んだ。
将棋は藤森女流三段の三間飛車。藤森女流三段との平手局はこれで11局目になるが、すべて藤森女流三段の振り飛車である。
藤森女流三段の将棋は、序盤は軽快に捌くが、中、終盤でやや不利になると自陣に駒を埋めて、容易に負けない指し方をする。関西流の味、といおうか。そんな1局の中での「棋風の変化」に戸惑って、逆転負けした将棋も少なくない。
前述のとおり、この将棋を負けたら、次の「サイン勝負」はいつになるか分からない。とにかくこの将棋こそ、絶対に勝たねばならなかった。
中盤、私の桂、香得になった。しかし昼の中倉女流二段との将棋では、中盤で金得になって負けたのだ。このくらいで優勢を意識してはいけない。あの将棋で教訓になったものがあるとしたら、これだ。私は互角のつもりで、1手1手を慎重に指した。
☗3七歩と、じっと角成りを受ける。☖3五歩には☗2六飛、☖2五歩にも☗1六飛と、あくまで我慢を続ける。とにかくこちらは駒得を主張し、斬りあってはいけないと言い聞かせた。と、突然、
「これは…負けました」
と、藤森女流三段がアッサリ投了を告げたので、ビックリした。
「早い投了」では、いつもは私が驚かれるのだが、今回は私が驚く番である。もちろん私はまだまだと考えていたのだが、金持ちケンカせずの姿勢でこられては、藤森女流三段も動きようがなく、ほかに指導対局を待っている人がいたこともあり、このあたりが投げる時機と考えたのだろう。まあいろいろ事情があったにせよ、とにかくホッとした、というのが偽らざる心境だった。
とはいうものの、盤を離れて一息つくと、やはり中倉女流二段のサインも欲しかったと思う。しかし会員の誰かから
「元女流棋士会会長からのサインだから、十分価値があるよ」
と言われ、たしかにそうだと納得した。
すべての指導対局が終わって、扇子の真ン中にポッカリ空いた箇所に、揮毫をしていただく。重鎮の名前が入って、なるほど1本芯が通った感じになった。
結局、7月31日から始まった3本目の扇子サイン勝負は、序盤私の7連勝で幕を開けたが、終わってみれば4ヶ月もかかる難産だった。
しかしサイン勝負はこれで終わったわけではない。また白扇子を買えば、翌週から「4本目」が始めることができるのだ。そして私は当然、4本目のサイン勝負に挑むこととなった。