一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

第2回 信濃わらび山荘将棋合宿⑦・皆様に感謝

2011-05-01 02:06:59 | 将棋イベント
植山悦行七段-中井広恵女流六段の真剣勝負のあとは、またも将棋である。遅れてきたKun、Y、Kub、Kazの各氏はもちろん、合宿3日目の私たちだって、まだまだ将棋熱は衰えない。
大野八一雄七段が手ぐすね引いて待っている。今回は趣向を変え、大野七段が「20秒三面指し」を申し出た。私たちがだらしがないから、大野七段が挑戦状を叩きつけてきたわけだ。
みんなが尻込みする中、Kun氏、Kaz氏、私の三名が斬られ役?に指名され、対局に臨むことになった。こちらは一手30秒。手合いは平手である。大野七段の条件もきついが、こちらだって平手で30秒はつらい。
大野七段、自信満々で対局開始。序盤は大野七段の指し手が早く、大野ペースにはまったかと思った。しかし中盤のむずかしい局面になると、さすがに手が乱れ始めた。大野七段が苦戦した意外な伏兵は、秒読みの「音」で、みんな同じ音だから、どこが鳴っているか分からないのだ。どこだどこだと確認しているうちに、時が過ぎてしまう。
「これは考えちゃいけないんですね」
と大野七段が苦笑する。こうして3局が終わったが、戦前の大野七段の皮算用とは、遠く離れた結果に終わったようだ。
傍らでは、中井女流六段が10秒将棋の二面指しを始めている。私は植山七段に、今合宿2度目の指導対局を仰ぐことになった。大野七段と中井女流六段には、すでに4局を教えてもらっている。都合6局の指導料だけで、今回の合宿費をオーバーしてしまいそうだ。しかし改めて書くが、合宿でお三方は、指導対局料を1円も受け取っていないのだ。
植山七段との将棋は力戦型となった。中盤、植山七段の△7五歩を▲同歩と取ったのが疑問手で、数手後に△7六歩と抑えられてはわるくなった。
私は▲9七角から▲7五角と角銀交換に出るが。下手がこんな手を指しては勝てない。
終盤、植山七段の△2八歩▲同飛△6九角が華麗な決め手。以下▲6八金△3九銀(王手飛車取り)▲同玉△4七角成となったところで、私の投了となった。ここで▲4八銀と打てばまだ粘れるが、△3六馬と歩を取られ、下手に指す手がない。
完敗して言うのもナンだが、さすがに植山七段は強かった。4月17日(日)の大野教室では緩めてもらったが、合宿ではちょっぴり本気を出された感じだった。
もうお昼である。私は22局指して14勝8敗。指導対局を除くと13勝3敗だから、まずまずであろう。
表彰式では、最多対局賞や殊勲賞(大野七段の連勝をストップさせたKun氏)など、まず4氏が選ばれた。私は最多対局賞。ほかにも候補はいたようだが、勝利数が決め手になったようだ。
ただし賞品は全員がいただける。これらも今回参加の三棋士提供のもので、感謝に堪えない。
というところで、チェックアウトの時間となった。最後はみんなで記念撮影。私たちは管理人さんと再会を約束し、2回目の信濃わらび山荘を後にした。

このあとは、それぞれがクルマに分乗し、清里へ向かう。清泉寮でソフトクリームを食すためだ。中井女流六段たっての希望で、勝負の鬼、最恐の女流棋士も、乙女の部分があるのだ。
午後2時。まずは清里駅近くの食堂で、遅い昼食を摂る。ここはもう山梨県なので、私は「ほうとう」を注文した。それを待っていると、一服して戻ってきた植山七段が、
「大沢さん、ダメじゃないですか」
という。表では雨がパラついてきたけど、どうしてくれるんですか、というわけだ。
前も書いたとおり、私は雨男である。それに異論はないが、植山先生、アナタには言われたくない、という感じである。中井女流六段に話を聞くと、どうも植山七段もたいへんな雨男らしい。LPSA金曜サロンでは雨が多かったが、それは私のせいばかりでもなかったのだ。
「ししとう」がきた。観光地のそれだから期待半分だったが、これがボリュームがあって、美味。さすがに本場の味は違うと思った。
このあとはお待ちかね、清泉寮へ行く。高原の中にショップがあり、ソフトクリーム売り場には人が列を作っている。350円だというが、いい商売だと思う。しかし私もその売り上げに貢献する。そんなソフトクリームは、甘さがやや強いものの、クリーミーで、美味かった。中井女流六段も満足したに違いない。
その中井女流六段、植山七段と足湯に浸かっていたが、お似合いのカップルだと思った。
ちょっとショックを覚え、たそがれていると、Kaz氏が来て、
「ひとり佇んでいる大沢さん…渋い」
「…心の、師匠…」
とかつぶやいている。Kaz氏は妻帯者だし、そっちの気はないと思うのだが、私への接し方が妙にきもちわるくて、対応に困る。
先ほどチラッと雪が舞っていたが、本格的に降ってきた。みんなが植山七段と私を非難する。観光の女性が「雪が降ってきたよー!!」と叫ぶ。何だか私も責任を感じてきた。ここは早く引き払う一手だ。
午後6時、予定より1時間ほど遅れて、談合坂パーキングエリアに到着した。ここで夕食を摂り、解散となった。
私は引き続きHonカーに乗る。同乗者はほかにKun氏、R氏。まずは、Hon氏の指す変態三間飛車穴熊の話になった。▲3八金▲3九銀▲4八銀の囲いは堅いとも思えないのだが、Hon氏は好んで指している。2八の空間は気にならないのかと問うと、ならないという。続けて、あの「2八」は、相手から攻められてきたとき、▲2八銀や▲2八香と埋めるための空間なのだと言い、それを聞いた私は感激した。そうか…2八の空間には、そんな「秘密」があったのか…。型通りの指し手が多い昨今の将棋界にあって、Hon氏の指し手は変幻自在。これからも面白い将棋を指してほしい。
この中で独身は私ひとり。
「人生も半分以上を過ぎて、オレの人生は終わった」
と落胆していると、Hon氏が
「独身のほうがいいですよ」
と慰めてくれる。詳しくを聞くと、Hon氏は壮絶な結婚生活を強いられていたのだ。それをHon氏は、「結婚生活の光と影」と表現した。Hon氏は将棋を指しているとき、実に楽しそうだ。あの笑顔の裏には、そんな生活があったのだ。
しかし人の不幸は蜜の味である。私たちは大いに笑い、東京に向かったのだった。

さて今回の合宿は、前回よりスケールアップして、2泊3日だった。行程に余裕ができたぶん、より将棋にのめりこむことができ、とても有意義な3日間だった。次回の合宿があるかどうか分からないし、あったとしても私にお呼びがかかるかさえ分からないが、もし参加できれば、今回以上にいい将棋を指したいと思っている。
最後になったが、今回の合宿を企画してくれた中井広恵女流六段、植山悦行七段、大野八一雄七段に、改めて御礼を申し上げたい。
コメント (8)
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