「吹上浜 砂の祭典・世界砂像フェスティバル」は1987年から開催されている。私は5年くらい前からお邪魔しており、冬の北海道由紀…雪まつり、5月3、4日の博多どんたく港まつりとともに、私の三大まつりとなっている。
きょう3日は鹿児島駅前から夜行バスで福岡に向かうことになっており、時間はたっぷりある。11時19分のバスで加世田へ向かったが、いまから会場に直行するのはさすがに早いので、その前に温泉に入ろうと思った。
さつま湖バス停に着く。今朝の調べでは、さつま湖の近くに温泉施設が2つあったので、反射的にここで降りる。なお3日から5日までは、昨年も使った「SUN Qパス・3日間」を使用する。九州全土と山口県・下関の主要バスに乗り放題で1万円というもので、乗る都度おカネを払う必要がないので、便利だ。
温泉施設のひとつは「健康交流館ゆ~ぷる吹上」といい、ユースホステルのペアレントさんには、ここに入ると言い残してチェックアウトしたのだが、「吹上砂丘荘」という国民宿舎が目に入ったので、そちらに行くことにする。
予定は未定であって決定ではない。旅だって人生だって、予定変更の連続。だからおもしろいのだ。
フロントで立ち寄り湯を所望すると、それは可だが、併設のレストランで食事を摂るのが条件、とのことだった。
昔の私だったらヘソを曲げて、これは縁がなかったようですね、と捨て台詞を吐き国民宿舎を後にしただろうが、いまは私も多少丸くなっている。
どうせここで昼を摂るつもりだったからと自分を納得させ、私は温泉に入った。温泉は硫黄のにおいが強いが、お湯はなめらかで、美肌効果がありそうだった。
ちょっと驚いたのが洗い場から出る水で、これも温泉だった。体はいいとしても、髪を洗う時は真水(お湯)がベターだと思うが、どうか。
全身が硫黄くさい気がするが、まあとりあえず、いい気分でレストラン「菜寮 月乃砂」に入る。「贅沢ラン ランチ」(1,500円)なるものを頼んだ。文字どおり、ちょっと贅沢である。私の給料は目が点になるくらい安いのに、最近はおカネに対してルーズになってきている。もう少し財布のヒモを締めなければと思う。
とはいえ、出されたランチは美味だった。一品一品の味がしっかりしている。とくに、料理を引きたてるシャレたお皿と、その盛り付けが見事だった。まるで幾何学模様の絵画のようで、デザインセンスのある船戸陽子女流二段が見たら、絶賛したに違いない。
食後のデザートも含めて、食べていてとても楽しく、感動さえした。大和田伸也風にいうと、「これで1,500円はお値打ちです」だった。
大いに満足して吹上砂丘荘を出たが、次のバスまで時間がある。隣接のテニスコートで部活をしている女子高生と、バス停の裏にあるさつま湖を鑑賞したあと、13時49分発のバスで、加世田へ向かった。
14時16分、加世田着。27分の連絡で「砂の祭典号」があり、これに乗って会場へ向かう。いま来た道を引き返す形になって味がわるいが、5日までバス料金は関係ないので、構わない。
会場へは定刻から2分遅れの14時57分に着く。朝から小雨がパラついていたが、本格的に降ってきた。今旅行で3回目の雨だ。きょうぐらいは耐えてほしかったが、天に文句は言えない。
「砂の祭典」は、今年から会場を変え、ここ金峰町になった。入場料の前売りも、昨年の500円から700円に値上げしている。また開催期間も、昨年の5月1日~5日に対して、今年は5月1日~15日と、10日間も長くなった。当然祭典の規模もパワーアップして然るべきだが、いざ入場してみると、昨年までのそれと変わりがない感じだ。
いただいたパンフレットのイベントスケジュールを見ると、きょう3日はメインステージでフラダンスやチアリーディングのショーがあったが、もう終わってしまっている。どこか歯車が狂っている気がする。
午後4時からビンゴゲームがあるので、2枚ほどカードを買って、ゲームに参加した。これ、特賞は高級時計だが、缶ビール1ケースとか肥料4kgとか、旅人には不要な賞品が当たる場合があるので、気をつけなければならない。
しかし結果はスカ。まあ、楽しめたので、よしとする。
改めて砂像を鑑賞する。今年の砂像テーマは「旅の物語」。東京・日本橋を出発して東海道を下り、山陽、九州とそれぞれの名所を通って、最後はここ鹿児島に着く、という趣向だ。
吹上浜は日本の三大砂丘のひとつに数えられ、その砂はココアパウダーのようにキメ細かく、なめらかだ。砂像は雪像のような美しさはないけれど、細部まで装飾が凝らされ、作者の技量が堪能できる。今年も力作ぞろいだった。
世界選手権大会は12カ国から招待したのだが、東日本大震災の余波で、4カ国が参加を見合わせた。震災とは無縁に思われた鹿児島にも、影響はあったのだ。
ひととおり砂像を鑑賞すると、もう見るものがない。写真を撮ろうにも、傘を差したままではカメラも扱いにくく、撮る気も失せる。
このまま鹿児島市へ向かってもいいのだが、せっかくの機会だから、「音と光のファンタジー」を見たい。しかしそれは7時45分からだ。
時間を持て余し、いったん会場を出る。しかしあたりは森林が茂っているのみだ。
昨年までだったら周りに公園などの施設があり、一休みできた。ここ金峰町会場は何もなく、なぜこの会場に変更になったのか、理解に苦しむ(理由はユースの旦那さんから聞いたが)。
会場に再入場し、メインステージを囲むように設けられているグルメ通りで、さみしい夕食。500円の「あんかけ焼きそば・大盛り」を買ったが、それを食べているそばから、別の店では600円の弁当を200円に値下げして販売を始めた。
どうもおもしろくないので、腹はくちたが、その弁当も買う。
ようやく空がたそがれてきた。私はベンチに座り、買わずもがなの弁当を食う。
OLと思しき3人組が、傍らのベンチでキャッキャッやっている。と、そのうちのひとりがベンチの上に四つん這いになり、ポーズを取り始めた。お互いに写真の撮り合いっこをしているのだ。
それはいいが、こちらからは彼女のパンツが見えそうである。見てはイケナイと思うが、つい目が行ってしまう。彼女、私が高校3年生のとき、隣の席に座っていた、イチカワさんに似ていないか…?
「音と光のファンタジー」まで、あと30分になった。しかし、こんなときになって、いったん止んだ雨が、また降ってきた。きょうは最初から最後まで雨に祟られっぱなしだ。
結局、ほうぼうで傘の花が開いて、最後のイベントが始まった。
メイン砂像にスポットが当てられ、幻想的な音楽が流れる。雪像ほどではないが、ライトアップされた砂像も一味違って、趣がある。
やがてレーザー光線が乱舞し、空に花火が打ち上げられた。2月の旭川冬まつりでも似たような演出があったが、レーザー光線とBGMだけで、気分が高揚するものだ。
最後は大玉の花火がいくつもの大輪の花を咲かせ、観客からオオーッという歓声が起こった。これは感動的なイベントだった。この時間まで粘った甲斐があったと思う。
鹿児島中央行きの夜のバスは、9時10分発があるのみである。閉館が9時だから、すべての客を待って、鹿児島へ向かうらしい。
さすがにやることがないので、テント下の臨時待合所で待つ。テントの外は雨で、5月の鹿児島だというのに、肌寒い。そろそろ鹿児島中央行きのバスが入ってくるころだ。あと少しの辛抱だ、と思った。
(つづく)
きょう3日は鹿児島駅前から夜行バスで福岡に向かうことになっており、時間はたっぷりある。11時19分のバスで加世田へ向かったが、いまから会場に直行するのはさすがに早いので、その前に温泉に入ろうと思った。
さつま湖バス停に着く。今朝の調べでは、さつま湖の近くに温泉施設が2つあったので、反射的にここで降りる。なお3日から5日までは、昨年も使った「SUN Qパス・3日間」を使用する。九州全土と山口県・下関の主要バスに乗り放題で1万円というもので、乗る都度おカネを払う必要がないので、便利だ。
温泉施設のひとつは「健康交流館ゆ~ぷる吹上」といい、ユースホステルのペアレントさんには、ここに入ると言い残してチェックアウトしたのだが、「吹上砂丘荘」という国民宿舎が目に入ったので、そちらに行くことにする。
予定は未定であって決定ではない。旅だって人生だって、予定変更の連続。だからおもしろいのだ。
フロントで立ち寄り湯を所望すると、それは可だが、併設のレストランで食事を摂るのが条件、とのことだった。
昔の私だったらヘソを曲げて、これは縁がなかったようですね、と捨て台詞を吐き国民宿舎を後にしただろうが、いまは私も多少丸くなっている。
どうせここで昼を摂るつもりだったからと自分を納得させ、私は温泉に入った。温泉は硫黄のにおいが強いが、お湯はなめらかで、美肌効果がありそうだった。
ちょっと驚いたのが洗い場から出る水で、これも温泉だった。体はいいとしても、髪を洗う時は真水(お湯)がベターだと思うが、どうか。
全身が硫黄くさい気がするが、まあとりあえず、いい気分でレストラン「菜寮 月乃砂」に入る。「贅沢ラン ランチ」(1,500円)なるものを頼んだ。文字どおり、ちょっと贅沢である。私の給料は目が点になるくらい安いのに、最近はおカネに対してルーズになってきている。もう少し財布のヒモを締めなければと思う。
とはいえ、出されたランチは美味だった。一品一品の味がしっかりしている。とくに、料理を引きたてるシャレたお皿と、その盛り付けが見事だった。まるで幾何学模様の絵画のようで、デザインセンスのある船戸陽子女流二段が見たら、絶賛したに違いない。
食後のデザートも含めて、食べていてとても楽しく、感動さえした。大和田伸也風にいうと、「これで1,500円はお値打ちです」だった。
大いに満足して吹上砂丘荘を出たが、次のバスまで時間がある。隣接のテニスコートで部活をしている女子高生と、バス停の裏にあるさつま湖を鑑賞したあと、13時49分発のバスで、加世田へ向かった。
14時16分、加世田着。27分の連絡で「砂の祭典号」があり、これに乗って会場へ向かう。いま来た道を引き返す形になって味がわるいが、5日までバス料金は関係ないので、構わない。
会場へは定刻から2分遅れの14時57分に着く。朝から小雨がパラついていたが、本格的に降ってきた。今旅行で3回目の雨だ。きょうぐらいは耐えてほしかったが、天に文句は言えない。
「砂の祭典」は、今年から会場を変え、ここ金峰町になった。入場料の前売りも、昨年の500円から700円に値上げしている。また開催期間も、昨年の5月1日~5日に対して、今年は5月1日~15日と、10日間も長くなった。当然祭典の規模もパワーアップして然るべきだが、いざ入場してみると、昨年までのそれと変わりがない感じだ。
いただいたパンフレットのイベントスケジュールを見ると、きょう3日はメインステージでフラダンスやチアリーディングのショーがあったが、もう終わってしまっている。どこか歯車が狂っている気がする。
午後4時からビンゴゲームがあるので、2枚ほどカードを買って、ゲームに参加した。これ、特賞は高級時計だが、缶ビール1ケースとか肥料4kgとか、旅人には不要な賞品が当たる場合があるので、気をつけなければならない。
しかし結果はスカ。まあ、楽しめたので、よしとする。
改めて砂像を鑑賞する。今年の砂像テーマは「旅の物語」。東京・日本橋を出発して東海道を下り、山陽、九州とそれぞれの名所を通って、最後はここ鹿児島に着く、という趣向だ。
吹上浜は日本の三大砂丘のひとつに数えられ、その砂はココアパウダーのようにキメ細かく、なめらかだ。砂像は雪像のような美しさはないけれど、細部まで装飾が凝らされ、作者の技量が堪能できる。今年も力作ぞろいだった。
世界選手権大会は12カ国から招待したのだが、東日本大震災の余波で、4カ国が参加を見合わせた。震災とは無縁に思われた鹿児島にも、影響はあったのだ。
ひととおり砂像を鑑賞すると、もう見るものがない。写真を撮ろうにも、傘を差したままではカメラも扱いにくく、撮る気も失せる。
このまま鹿児島市へ向かってもいいのだが、せっかくの機会だから、「音と光のファンタジー」を見たい。しかしそれは7時45分からだ。
時間を持て余し、いったん会場を出る。しかしあたりは森林が茂っているのみだ。
昨年までだったら周りに公園などの施設があり、一休みできた。ここ金峰町会場は何もなく、なぜこの会場に変更になったのか、理解に苦しむ(理由はユースの旦那さんから聞いたが)。
会場に再入場し、メインステージを囲むように設けられているグルメ通りで、さみしい夕食。500円の「あんかけ焼きそば・大盛り」を買ったが、それを食べているそばから、別の店では600円の弁当を200円に値下げして販売を始めた。
どうもおもしろくないので、腹はくちたが、その弁当も買う。
ようやく空がたそがれてきた。私はベンチに座り、買わずもがなの弁当を食う。
OLと思しき3人組が、傍らのベンチでキャッキャッやっている。と、そのうちのひとりがベンチの上に四つん這いになり、ポーズを取り始めた。お互いに写真の撮り合いっこをしているのだ。
それはいいが、こちらからは彼女のパンツが見えそうである。見てはイケナイと思うが、つい目が行ってしまう。彼女、私が高校3年生のとき、隣の席に座っていた、イチカワさんに似ていないか…?
「音と光のファンタジー」まで、あと30分になった。しかし、こんなときになって、いったん止んだ雨が、また降ってきた。きょうは最初から最後まで雨に祟られっぱなしだ。
結局、ほうぼうで傘の花が開いて、最後のイベントが始まった。
メイン砂像にスポットが当てられ、幻想的な音楽が流れる。雪像ほどではないが、ライトアップされた砂像も一味違って、趣がある。
やがてレーザー光線が乱舞し、空に花火が打ち上げられた。2月の旭川冬まつりでも似たような演出があったが、レーザー光線とBGMだけで、気分が高揚するものだ。
最後は大玉の花火がいくつもの大輪の花を咲かせ、観客からオオーッという歓声が起こった。これは感動的なイベントだった。この時間まで粘った甲斐があったと思う。
鹿児島中央行きの夜のバスは、9時10分発があるのみである。閉館が9時だから、すべての客を待って、鹿児島へ向かうらしい。
さすがにやることがないので、テント下の臨時待合所で待つ。テントの外は雨で、5月の鹿児島だというのに、肌寒い。そろそろ鹿児島中央行きのバスが入ってくるころだ。あと少しの辛抱だ、と思った。
(つづく)