今宵泊まる宿は、日置市にある吹上浜ユースホステルだ。ここ数年、旅先での宿と言えばビジネスホテルが大半だが、このユースはスタッフがみないい人ばかりで、私の定宿となっている。
日置のバス停からは徒歩で20分くらい。勘のいい人なら1回訪れればすぐに覚えられる道順だが、私は意外と方向オンチなので、毎回遠回りをする。
今回もやっぱり道に迷ってしまい、とある家でユースのある方角を聞いて、ようやっとたどり着くという有様だった。
純和風の宿の庭先に、男性ペアレントさん(旦那さん)がいらしたので、挨拶を交わす。懐かしい。1年振りだ。旦那さんはふだん、大阪で教鞭を取っているが、ゴールデンウイークや年末年始のときは、休みも兼ねてユースへヘルパーに来るのだ。それで私も、ほぼ毎年お会いできるわけだ。
電話で予約をしたとき、遅い到着にもかかわらず夕食可、とのことだったので、受付を後回しにして、離れの食堂に入る。
奥から、かたせ梨乃似の女性ペアレントさん(奥さま)が見えて、挨拶をする。昨年8月、当ブログにコメントをくださった方だ。私は気ままな一人旅だが、旅先に知り合いがいると、張り合いが出る。奥さまとも懐かしい再会を果たし、ちょっぴりほろっときた。
ただしこのユースの顔は、奥さまのご母堂、その人である。御年93歳。かなりお歳を召しているが頭脳明晰で話がおもしろく、とても楽しい方だ。ただ残念ながら、大おば様はひざの治療で入院中とのことで、今年はお会いできなかった。もう全快されているそうなので、来年お会いすることを楽しみにしたい。
先客は、中年男性2人と年配のおばさま、それに20代の女性だった。夕食は、ユースには珍しい、セルフサービスの手巻き寿司。ネタは地元で採れた魚と野菜で、郷土色が濃く、うまかった。
宿泊者はこれで全員と思いきや、女性バイクライダーから電話があり、こちらへ向かっている最中だという。ユースの周りは街灯のない暗い道で、1回通っただけではユースへの入口が分からない。徒歩でさえ覚束ないのに、バイクで大丈夫だろうか。
私があまりにも心配するので、バイクの女性と知り合いなのかと間違われたほどだった。
食後は旦那さんの運転で、20代の女性といっしょに近所の温泉に行く。いつもは私を置いて旦那さんはいったん帰宅するのだが、今回はいっしょに入る。
温泉は若干熱めだが、いい湯加減だ。もうすこし浸かっていたいが、ここ「天然温泉ひおき」は午後9時閉館なので、すぐに出て体を洗う。
もう一度湯に入ると、湯船のジャグジーがピタッと止まった。9時になったのだろうか。地元客を相手にしているからか、商売ッ気がまったくない。
温泉から上がり娯楽室でくつろいでいると、20代の女性も出てきた。風呂上がりの女性は魅力度5割増しで、彼女も然り。信濃わらび山荘将棋合宿では中井広恵女流六段のそれを見たが、魅力度100%UPだった。よし…次は絶対、船戸陽子を…と闘志を燃やす私であった。
ユースに戻り食堂に入ると、女性ライダーが到着していた。やはり20代だろうか。無事着いたようで、何よりだった。
部屋に荷物を置きに行くと、先のふたりはすでに眠っていた。まだ9時半にもなっていない。ふたりともライダーだったが、ライダーには早寝早起きが多いのだろうか。
そのまま食堂に戻る。旦那さんは手巻き寿司のネタを肴に晩酌。20代の女性は自室に戻ったまま、出てこない。そのまま就寝なのだろう。私は酒を飲まないので、お茶で旦那さんの相手をさせていただく。
遅い夕食中の女性ライダーさんに聞くと、完全に道に迷い、往生したそうだ。やはりユースの周りに灯りがないのがマズイからで、旦那さんは、ユースの看板に電灯を付けるなど、善後策を講じたいとのことだった。
ご夫婦とも当ブログを読んでくださっているそうで、旦那さん(奥さまも)は私のことを「イッコーさん」と呼ぶ。それがうれしい。
毎年私はこのユースにお世話になっているが、今年は予約の電話がなかなか来なかったので、旦那さんも気が気でなかったらしい。翌3日が満室だったからで、もし私が3日の予約を希望したら、苦慮するところだったらしい。
私も早く予約の電話を入れたかったが、宿を決めてしまうと、前後の行動が確定してしまい、楽しみが半減してしまう。その微妙な気持ちは、女性ライダーも同意してくれた。
話は尽きなかったが、11時が過ぎ、お開き。
翌3日、朝。かなり早い時間からライダーさんがゴソコソやっていたが、7時を過ぎたときには、もう旅立っていた。ひとりは秋田から来た人で(あとで旦那さんに聞いたら、61歳!とのことだった)、昨晩の夕食のときも震災の話題になったが、どうも気が滅入ってしまった。
空はどんよりしていて、いまにも雨が降りそうだ。食堂に入って、朝食。奥さまに、「セルフサービスですから」と、にっこりと促される。
ホットプレートに卵とソーセージを落とし、このあとどうしたものかと思案していると、20代の女性と女性ライダーが入ってきた。
ユースホステルに泊まると、まれにこうした状況に出くわすことがある。緊張してしまうが、それを表に出さず、時々ジョークを挟みながら、無事食事を終えた。
きょうは「吹上浜 砂の祭典」を楽しむだけだから、時間的には余裕がある。
庭に出ると、大おば様の息子さんと出くわした。私の見立てが正しければ、奥さまの兄弟、ということになる。いつも笑顔を絶やさない、温厚な方だ。
ひとしきりおしゃべりしたあと、部屋の隣の茶の間にお邪魔する。ここは民家をユース用に改装したものなのだ。旦那さんとしばし談笑。旦那さんも奥さまも、なぜか私を気にかけてくださって、恐縮してしまう。
時刻は10時半。旅人は旅立たなければならない。奥さんは、
「年末に来なよ」
と言った。旦那さんは何も言わず、見送ってくれた。
私がこのユースに泊まるようになって6年目になるが、いつも1泊で、慌ただしい。来年は連泊して、ご夫婦とじっくり話してみたいと思っている。
(つづく)
日置のバス停からは徒歩で20分くらい。勘のいい人なら1回訪れればすぐに覚えられる道順だが、私は意外と方向オンチなので、毎回遠回りをする。
今回もやっぱり道に迷ってしまい、とある家でユースのある方角を聞いて、ようやっとたどり着くという有様だった。
純和風の宿の庭先に、男性ペアレントさん(旦那さん)がいらしたので、挨拶を交わす。懐かしい。1年振りだ。旦那さんはふだん、大阪で教鞭を取っているが、ゴールデンウイークや年末年始のときは、休みも兼ねてユースへヘルパーに来るのだ。それで私も、ほぼ毎年お会いできるわけだ。
電話で予約をしたとき、遅い到着にもかかわらず夕食可、とのことだったので、受付を後回しにして、離れの食堂に入る。
奥から、かたせ梨乃似の女性ペアレントさん(奥さま)が見えて、挨拶をする。昨年8月、当ブログにコメントをくださった方だ。私は気ままな一人旅だが、旅先に知り合いがいると、張り合いが出る。奥さまとも懐かしい再会を果たし、ちょっぴりほろっときた。
ただしこのユースの顔は、奥さまのご母堂、その人である。御年93歳。かなりお歳を召しているが頭脳明晰で話がおもしろく、とても楽しい方だ。ただ残念ながら、大おば様はひざの治療で入院中とのことで、今年はお会いできなかった。もう全快されているそうなので、来年お会いすることを楽しみにしたい。
先客は、中年男性2人と年配のおばさま、それに20代の女性だった。夕食は、ユースには珍しい、セルフサービスの手巻き寿司。ネタは地元で採れた魚と野菜で、郷土色が濃く、うまかった。
宿泊者はこれで全員と思いきや、女性バイクライダーから電話があり、こちらへ向かっている最中だという。ユースの周りは街灯のない暗い道で、1回通っただけではユースへの入口が分からない。徒歩でさえ覚束ないのに、バイクで大丈夫だろうか。
私があまりにも心配するので、バイクの女性と知り合いなのかと間違われたほどだった。
食後は旦那さんの運転で、20代の女性といっしょに近所の温泉に行く。いつもは私を置いて旦那さんはいったん帰宅するのだが、今回はいっしょに入る。
温泉は若干熱めだが、いい湯加減だ。もうすこし浸かっていたいが、ここ「天然温泉ひおき」は午後9時閉館なので、すぐに出て体を洗う。
もう一度湯に入ると、湯船のジャグジーがピタッと止まった。9時になったのだろうか。地元客を相手にしているからか、商売ッ気がまったくない。
温泉から上がり娯楽室でくつろいでいると、20代の女性も出てきた。風呂上がりの女性は魅力度5割増しで、彼女も然り。信濃わらび山荘将棋合宿では中井広恵女流六段のそれを見たが、魅力度100%UPだった。よし…次は絶対、船戸陽子を…と闘志を燃やす私であった。
ユースに戻り食堂に入ると、女性ライダーが到着していた。やはり20代だろうか。無事着いたようで、何よりだった。
部屋に荷物を置きに行くと、先のふたりはすでに眠っていた。まだ9時半にもなっていない。ふたりともライダーだったが、ライダーには早寝早起きが多いのだろうか。
そのまま食堂に戻る。旦那さんは手巻き寿司のネタを肴に晩酌。20代の女性は自室に戻ったまま、出てこない。そのまま就寝なのだろう。私は酒を飲まないので、お茶で旦那さんの相手をさせていただく。
遅い夕食中の女性ライダーさんに聞くと、完全に道に迷い、往生したそうだ。やはりユースの周りに灯りがないのがマズイからで、旦那さんは、ユースの看板に電灯を付けるなど、善後策を講じたいとのことだった。
ご夫婦とも当ブログを読んでくださっているそうで、旦那さん(奥さまも)は私のことを「イッコーさん」と呼ぶ。それがうれしい。
毎年私はこのユースにお世話になっているが、今年は予約の電話がなかなか来なかったので、旦那さんも気が気でなかったらしい。翌3日が満室だったからで、もし私が3日の予約を希望したら、苦慮するところだったらしい。
私も早く予約の電話を入れたかったが、宿を決めてしまうと、前後の行動が確定してしまい、楽しみが半減してしまう。その微妙な気持ちは、女性ライダーも同意してくれた。
話は尽きなかったが、11時が過ぎ、お開き。
翌3日、朝。かなり早い時間からライダーさんがゴソコソやっていたが、7時を過ぎたときには、もう旅立っていた。ひとりは秋田から来た人で(あとで旦那さんに聞いたら、61歳!とのことだった)、昨晩の夕食のときも震災の話題になったが、どうも気が滅入ってしまった。
空はどんよりしていて、いまにも雨が降りそうだ。食堂に入って、朝食。奥さまに、「セルフサービスですから」と、にっこりと促される。
ホットプレートに卵とソーセージを落とし、このあとどうしたものかと思案していると、20代の女性と女性ライダーが入ってきた。
ユースホステルに泊まると、まれにこうした状況に出くわすことがある。緊張してしまうが、それを表に出さず、時々ジョークを挟みながら、無事食事を終えた。
きょうは「吹上浜 砂の祭典」を楽しむだけだから、時間的には余裕がある。
庭に出ると、大おば様の息子さんと出くわした。私の見立てが正しければ、奥さまの兄弟、ということになる。いつも笑顔を絶やさない、温厚な方だ。
ひとしきりおしゃべりしたあと、部屋の隣の茶の間にお邪魔する。ここは民家をユース用に改装したものなのだ。旦那さんとしばし談笑。旦那さんも奥さまも、なぜか私を気にかけてくださって、恐縮してしまう。
時刻は10時半。旅人は旅立たなければならない。奥さんは、
「年末に来なよ」
と言った。旦那さんは何も言わず、見送ってくれた。
私がこのユースに泊まるようになって6年目になるが、いつも1泊で、慌ただしい。来年は連泊して、ご夫婦とじっくり話してみたいと思っている。
(つづく)