それはHis氏だった。将棋合宿や稚内ツアーではお馴染みだが、ジョナ研の参加は極めて珍しい。きょうは午前中に女流棋士スーパーサロンで藤田綾女流初段に教えを請うたあと、LPSA芝浦サロンに場所を移して、船戸陽子女流二段に2局教えてもらってきたという。「将棋会館→LPSA芝浦サロン」のコースは、RAY氏いうところの「千駄ヶ谷定跡」である。
芝浦サロンではKun氏もいたので、いっしょにジョナ研に赴くことになったという。
これでジョナ研参加者は5人。まずまずの数字である。私たちは引き続き、王座戦の検討。現在の局面に追いついた。終盤戦に突入しており、のっぴきならないことになっている。私たちの検討も、熱を帯びる。
75手目、▲5三角成!! 羽生善治王位・棋聖の大技が出た。こんな手が成立してしまうのも、横歩取りの恐ろしいところである。
91手目、羽生二冠が▲4六歩と桂を外す。さあここだ。His氏は△3六角を推奨する。次に△5九角が厳しい。こう指されたら先手はどうするの? としゃべっていると、△8九歩成。中村太地六段が指したから正着なのだろうが、ここで▲1五桂と打ったら、後手はどう受けるのだろう。
そうだね…これは厳しいね。うん? 厳しいどころじゃないよ、後手の受けはないよ、との話になった。
結局中村六段は一手も指さず、ここで投了した。
どうも、△8九歩成が悪かったようで、やはり△3六角がよかったらしい。我が検討陣も、捨てたものではないと思った。
His氏と私で将棋。Hon氏はKaz氏と。Hon氏が相居飛車を所望し、その戦型になっていた。こちらはHis氏の中飛車。角を交換されたので、私は△7五歩。▲同歩なら△5四角で、△2七と△8七への成りを見る。
Kaz氏がこの手を見て、さすが大沢さんは筋がいい、と感心していたが、それほどの手でもないだろう。
将棋は一進一退の攻防の末、先手の美濃囲いは▲3八銀1枚のみ。私は△5八に成銀がいて、持ち駒は飛、金。これは私のほうが面白くなったかと希望を抱いたところで、His氏の放った▲4九歩が妙手だった。
この歩1枚で、私の方は掛かり手がまったくなくなってしまった。以下、私の負け。
10時を過ぎてHon氏も帰ったが、まだ私たちは熱い。隣ではKun-Kaz戦という、これまた重量級の一戦が行われていた。Kun氏の石田流三間飛車にKaz氏の居飛車穴熊は、両者「本気」の戦いだ。
私はHis氏に再戦を申し込み、▲7六歩△3四歩▲2六歩。
ここでHis氏が
「私はゴキゲン中飛車を指すんだけれども、最近は対策も進んできて…。そこで私も考えたのよ。それで最近指してるのがこれなの」
と△8八角成~△6五角とした。His氏が愛用している、筋違い角である。序盤早々1歩を掠め取られるのが不愉快だが、こちらに避ける手はあまりない。
この対策にはいつも頭を悩ませるのだが、本局は私がうまく指し、有利。その局面が下である。
先手・His:1一香、1三歩、2一桂、2四歩、3三銀、3五金、4二飛、4六歩、5四歩、6一金、6四歩、7二銀、7三歩、8一桂、8二玉、8三歩、9一香、9三歩 持駒:角、歩3
後手・一公:1七歩、1九香、2八飛、3七桂、4八歩、5三角、5六銀、5七歩、6六歩、6八玉、7七銀、7八金、8七歩、8九桂、9七歩、9九香 持駒:金、歩
▲5三角と打った局面。以下△3六金▲3四歩△3七金▲3三歩成となったが、△5二飛と角取りに当てられ、忙しくなった。以下もむずかしい戦いだったが、最後は競い負けた。
感想戦では、▲3三歩成のところで▲4二角成(!)が検討された。これに△同銀は▲2四飛だから後手は△2八金だろうが、そこで▲3三歩成なら、後の展開がだいぶ違うのでは…となった。
▲4二角成はHis氏の指摘だが、私は銀を取るために▲3四歩と打ったのだから、それを活かすためにも▲3三歩成を指したいところ。
そこをグッとこらえて▲4二角成はいかにも気が利かない。しかし言われてみればナルホドという手で、His氏の柔軟な思考に感嘆した。
Kun-Kaz戦は、中盤までKaz氏が指し易い将棋に見えたが、実際はむずかしかったようである。最後はKun氏が綺麗に決めて勝利。これはKun氏、会心の一局だったろう。
私たちが感想戦を終えると、Kaz氏が
「大沢さんの敵を討ちます」
と、His氏との対局を求める。Kaz氏もHis氏も、将棋バカである。なお、Kun氏はすでに退席している。
将棋はHis氏の筋違い角。Kaz氏は対筋違い角に絶対の自信を持っている。私も参考にしたいところである。
Kaz氏、▲7五歩と角取りに突きだす。しかし次の△5六角の切り込みを見落としていた。▲4七金と▲6七銀が利いているところだけにうっかりしやすいが、▲同金は△同歩で、次の△5七歩成が受けにくい。実戦もそうなり、角2枚のみの先手は思わしい手がない。ここでKaz氏の投了となった。
きょうのHis氏は好調で、指導対局は藤田女流初段○、船戸女流二段●○。それに一般対局が○で、ジョナ研は一公○○、Kaz○。都合6勝1敗だった。
帰りは3人。駒込駅からは、His氏と同じ電車だった。His氏はあす大野教室に出向くが、今夜はネットカフェに泊まって時間をつぶすという。それが私の最寄駅なので驚いた。
「大沢さんはこの駅からどこへ乗り換えるの?」
「降りるもなにも、ここが私の最寄駅ですよ」
「ああそうなの?」
「はい。そもそも駒込サロンが自宅から近かったから、行く気になったんですから」
ふたりで最寄駅を降りる。His氏がしみじみという。
「大沢さん、きょうはネ、私が楽しみにしていたのは女流棋士スーパーサロンでも芝浦サロンでもなくて、ジョナ研だったのよ」
「……」
私は感激して、詰まってしまった。これではジョナ研、やめられそうにないな。
芝浦サロンではKun氏もいたので、いっしょにジョナ研に赴くことになったという。
これでジョナ研参加者は5人。まずまずの数字である。私たちは引き続き、王座戦の検討。現在の局面に追いついた。終盤戦に突入しており、のっぴきならないことになっている。私たちの検討も、熱を帯びる。
75手目、▲5三角成!! 羽生善治王位・棋聖の大技が出た。こんな手が成立してしまうのも、横歩取りの恐ろしいところである。
91手目、羽生二冠が▲4六歩と桂を外す。さあここだ。His氏は△3六角を推奨する。次に△5九角が厳しい。こう指されたら先手はどうするの? としゃべっていると、△8九歩成。中村太地六段が指したから正着なのだろうが、ここで▲1五桂と打ったら、後手はどう受けるのだろう。
そうだね…これは厳しいね。うん? 厳しいどころじゃないよ、後手の受けはないよ、との話になった。
結局中村六段は一手も指さず、ここで投了した。
どうも、△8九歩成が悪かったようで、やはり△3六角がよかったらしい。我が検討陣も、捨てたものではないと思った。
His氏と私で将棋。Hon氏はKaz氏と。Hon氏が相居飛車を所望し、その戦型になっていた。こちらはHis氏の中飛車。角を交換されたので、私は△7五歩。▲同歩なら△5四角で、△2七と△8七への成りを見る。
Kaz氏がこの手を見て、さすが大沢さんは筋がいい、と感心していたが、それほどの手でもないだろう。
将棋は一進一退の攻防の末、先手の美濃囲いは▲3八銀1枚のみ。私は△5八に成銀がいて、持ち駒は飛、金。これは私のほうが面白くなったかと希望を抱いたところで、His氏の放った▲4九歩が妙手だった。
この歩1枚で、私の方は掛かり手がまったくなくなってしまった。以下、私の負け。
10時を過ぎてHon氏も帰ったが、まだ私たちは熱い。隣ではKun-Kaz戦という、これまた重量級の一戦が行われていた。Kun氏の石田流三間飛車にKaz氏の居飛車穴熊は、両者「本気」の戦いだ。
私はHis氏に再戦を申し込み、▲7六歩△3四歩▲2六歩。
ここでHis氏が
「私はゴキゲン中飛車を指すんだけれども、最近は対策も進んできて…。そこで私も考えたのよ。それで最近指してるのがこれなの」
と△8八角成~△6五角とした。His氏が愛用している、筋違い角である。序盤早々1歩を掠め取られるのが不愉快だが、こちらに避ける手はあまりない。
この対策にはいつも頭を悩ませるのだが、本局は私がうまく指し、有利。その局面が下である。
先手・His:1一香、1三歩、2一桂、2四歩、3三銀、3五金、4二飛、4六歩、5四歩、6一金、6四歩、7二銀、7三歩、8一桂、8二玉、8三歩、9一香、9三歩 持駒:角、歩3
後手・一公:1七歩、1九香、2八飛、3七桂、4八歩、5三角、5六銀、5七歩、6六歩、6八玉、7七銀、7八金、8七歩、8九桂、9七歩、9九香 持駒:金、歩
▲5三角と打った局面。以下△3六金▲3四歩△3七金▲3三歩成となったが、△5二飛と角取りに当てられ、忙しくなった。以下もむずかしい戦いだったが、最後は競い負けた。
感想戦では、▲3三歩成のところで▲4二角成(!)が検討された。これに△同銀は▲2四飛だから後手は△2八金だろうが、そこで▲3三歩成なら、後の展開がだいぶ違うのでは…となった。
▲4二角成はHis氏の指摘だが、私は銀を取るために▲3四歩と打ったのだから、それを活かすためにも▲3三歩成を指したいところ。
そこをグッとこらえて▲4二角成はいかにも気が利かない。しかし言われてみればナルホドという手で、His氏の柔軟な思考に感嘆した。
Kun-Kaz戦は、中盤までKaz氏が指し易い将棋に見えたが、実際はむずかしかったようである。最後はKun氏が綺麗に決めて勝利。これはKun氏、会心の一局だったろう。
私たちが感想戦を終えると、Kaz氏が
「大沢さんの敵を討ちます」
と、His氏との対局を求める。Kaz氏もHis氏も、将棋バカである。なお、Kun氏はすでに退席している。
将棋はHis氏の筋違い角。Kaz氏は対筋違い角に絶対の自信を持っている。私も参考にしたいところである。
Kaz氏、▲7五歩と角取りに突きだす。しかし次の△5六角の切り込みを見落としていた。▲4七金と▲6七銀が利いているところだけにうっかりしやすいが、▲同金は△同歩で、次の△5七歩成が受けにくい。実戦もそうなり、角2枚のみの先手は思わしい手がない。ここでKaz氏の投了となった。
きょうのHis氏は好調で、指導対局は藤田女流初段○、船戸女流二段●○。それに一般対局が○で、ジョナ研は一公○○、Kaz○。都合6勝1敗だった。
帰りは3人。駒込駅からは、His氏と同じ電車だった。His氏はあす大野教室に出向くが、今夜はネットカフェに泊まって時間をつぶすという。それが私の最寄駅なので驚いた。
「大沢さんはこの駅からどこへ乗り換えるの?」
「降りるもなにも、ここが私の最寄駅ですよ」
「ああそうなの?」
「はい。そもそも駒込サロンが自宅から近かったから、行く気になったんですから」
ふたりで最寄駅を降りる。His氏がしみじみという。
「大沢さん、きょうはネ、私が楽しみにしていたのは女流棋士スーパーサロンでも芝浦サロンでもなくて、ジョナ研だったのよ」
「……」
私は感激して、詰まってしまった。これではジョナ研、やめられそうにないな。