室内は異様に狭かった。ベッドが横に設えられているが、それが部屋の横幅である。ふつうのビジネスホテルは、その脇にライティングデスクを置くスペースぐらいはある。ユニットバス、トイレはまあまあだが、「お茶セット」、寝間着がない。テレビ兼用のPCはあるが、画面が小さい。しかしここは、部屋にPCがあるのが最大のウリのようだ。通常のビジネスホテルとは性格を異にしている、と考えるべきだろう。
部屋が蒸し暑いから冷房を入れるが、早急に水分を補充しなければならない。私は近くのコンビニへ行き、1リットル(正確には946ml)の紙パックのスポーツドリンクを、2本買った。
部屋に戻り、それを空のペットボトルに詰め替える。コンビニでふつうに買えば300円余だが、これで196円で済んだ。
ここは階下のネットカフェを1時間無料で利用できる。無制限で利用できると理解していたので「1時間のみ」は誤算だったが、それでもドリンクを大量に摂取し、部屋に戻るとPC三昧となった。
といってもブログはほとんど書かず、ネットサーフィンである。しかしこれ、いまが旅行の最中だということを忘れてしまい、善し悪しである。
きょうは午前3時に就寝した。
翌14日(火)は、ネットカフェ店内で朝食。これも宿泊費に入っている。ウインナーを2本挟んだ調理パンにハンバーグ、それに玉子スープ。沖縄らしい朝食ではある。
チェックアウトして、石垣港に向かう。先にも書いたが、きょうは鳩間島にお邪魔する。まったく、やっていることは毎年同じだ。
八重山観光フェリーの「サザンクロス」に乗る。いまでこそ1日数便の鳩間行きがあるが、ほんの数年前までは、週3便出航する貨客船が、鳩間までの足だった。1回鳩間に上陸すれば、最低でも2泊は絶対。島に宿は3軒しかなく、食堂は1軒もなかった。商店の類もなく、たいそうな不便を強いられたが、しかしその不便が楽しかった。
サザンクロスは定刻の9時30分を3分遅れて出発。西表島上原港を経由し、10時40分、鳩間島に着いた。
きょうは島で宿泊する。もちろん「まるだい」である。宿に着いたが、庭には若い男性がひとり。連泊客であろう。宿のおばあはいない。しばらく佇んでいると、娘さんが戻ってきた。港にいたのであろう。
1年ぶりの再会を喜び、チェックインを済ませる。「写真のおじい」にも挨拶をした。
昼食の時間まで、私は島内を散策した。鳩間簡易郵便局に向かうが、その手前の道路と側溝が綺麗に舗装されている。そのほか、土木工事は現在も行われている。鳩間島がメジャーになって、島に多額の予算が下りているのだろうか。
鳩間簡易郵便局も、外装がリニューアルされていた。中に入るが、いつもの局員氏はおらず、ひとまわり若い局員さんが勤めていた。聞くと、前任氏は定年退職したとのこと。いまは石垣に戻り、釣り三昧だという。
さっそく貯金といきたいが、いまは機械のメンテナンス中で、現在は無理だという。本土では考えられないことだが、鳩間島では許される。
ひとまわりして戻ってきて、あらためて貯金。8月14日なので、814円の貯金である。
まだ昼食まで時間がある。私は鳩間小学校近くの浜辺で、海を眺めた。透明で、ソーダ水のような色だ。
宿に戻って、昼食。ここであらかた、きょうの宿泊者が分かる。私のテーブルには3人の男性、隣のテーブルには、3人の作業員とひとりの男子小学生が座った。今回の旅では、女性旅行者とは無縁になりそうだ。
こちらのテーブルの3人は、稲葉陽六段、船江恒平五段、タレントの黒部幸英という感じ。3人の作業員は郵便局近くで働いていた人たちで、電信柱の交換工事を行っているという。この暑い盛りに、お疲れさまである。
小学生は大阪からで、のちに両親が来るが、先乗りして鳩間を楽しんでいるという。この歳から鳩間を経験するとは…。うらやましいことである。
昼食はさわやかに、ソーメンとおにぎり。さっぱりしていて、美味かった。
部屋に戻って、同宿者と雑談。「黒部幸英」は、その静かな話し方から、丸山忠久九段に見えた。何だか、将棋を指したくなってきた。
午後からは海水浴である。中森灯台に挨拶したあと、島の中央道を突っ切る。左右の草木は伸び放題。緑の色が濃い。十分に光合成している感じである。空にはぽっかり白い雲。宮崎駿のアニメに出てきそうな風景だ。
行き止まりを左折する。港から11時の方角にある、立原の浜(たちばるのはま)に着いた。ここが私愛用のビーチである。
いつもどおりの穏やかな海である。先客はひとりかふたり。日帰り客もおらず、のんびり鳩間の海を楽しめそうである。
シュノーケルマスクを付けて、遠浅の海を、奥まで歩く。私は同行者を持ち合わせてはいないので、やむなくひとりで泳ぐことになるが、海はバディと泳ぐのが望ましい。こんな穏やかな海だけど、海は何が起こるか分からない。決して海を侮ってはいけない。
適当な深さになったところで、足を浮かせる。プカプカ浮遊して、いい気持ちだ。海はこれから満ちていくから、体は自然と浜に戻る。
沖を、奥の奥まで行ってみる。すぐ眼下に枝サンゴが密集しているが、それが過ぎると、突然、といった感じで視界が拡がる。サンゴ礁が絶壁状になり、いきなり数メートル下の海底が見渡せるのだ。これを亡きおじいは「水族館」と言った。
私は毎年この位置まで来るが、そこから先には飛び出せないでいた。ここで大波が来たら、体ごと持っていかれる。それが恐ろしかったからだ。
ときどき顔を上げて、周りを見る。シュノーケルがスーッと動くので、人が泳いでいるのが分かる。たとえひとりでも周囲に人がいるのは、何となく心強い。
思い切って、絶壁のサンゴ礁から、飛び出してみた。何という開放感! これが鳩間の海である。
私が浜に戻ろうとすると、もうひとりの男性も、海を上がった。浜には簡易テントが張られている。中には奥さんと思しき女性と、子供が2人。あの男性はここの主人だった。どうもこの人は、私の泳ぎに合わせて、泳いでいたようだ。即席の「バディ」だったということだ。
その後私はもう一度「水族館」まで行き、プライベートビーチを楽しんだ。
(つづく)
部屋が蒸し暑いから冷房を入れるが、早急に水分を補充しなければならない。私は近くのコンビニへ行き、1リットル(正確には946ml)の紙パックのスポーツドリンクを、2本買った。
部屋に戻り、それを空のペットボトルに詰め替える。コンビニでふつうに買えば300円余だが、これで196円で済んだ。
ここは階下のネットカフェを1時間無料で利用できる。無制限で利用できると理解していたので「1時間のみ」は誤算だったが、それでもドリンクを大量に摂取し、部屋に戻るとPC三昧となった。
といってもブログはほとんど書かず、ネットサーフィンである。しかしこれ、いまが旅行の最中だということを忘れてしまい、善し悪しである。
きょうは午前3時に就寝した。
翌14日(火)は、ネットカフェ店内で朝食。これも宿泊費に入っている。ウインナーを2本挟んだ調理パンにハンバーグ、それに玉子スープ。沖縄らしい朝食ではある。
チェックアウトして、石垣港に向かう。先にも書いたが、きょうは鳩間島にお邪魔する。まったく、やっていることは毎年同じだ。
八重山観光フェリーの「サザンクロス」に乗る。いまでこそ1日数便の鳩間行きがあるが、ほんの数年前までは、週3便出航する貨客船が、鳩間までの足だった。1回鳩間に上陸すれば、最低でも2泊は絶対。島に宿は3軒しかなく、食堂は1軒もなかった。商店の類もなく、たいそうな不便を強いられたが、しかしその不便が楽しかった。
サザンクロスは定刻の9時30分を3分遅れて出発。西表島上原港を経由し、10時40分、鳩間島に着いた。
きょうは島で宿泊する。もちろん「まるだい」である。宿に着いたが、庭には若い男性がひとり。連泊客であろう。宿のおばあはいない。しばらく佇んでいると、娘さんが戻ってきた。港にいたのであろう。
1年ぶりの再会を喜び、チェックインを済ませる。「写真のおじい」にも挨拶をした。
昼食の時間まで、私は島内を散策した。鳩間簡易郵便局に向かうが、その手前の道路と側溝が綺麗に舗装されている。そのほか、土木工事は現在も行われている。鳩間島がメジャーになって、島に多額の予算が下りているのだろうか。
鳩間簡易郵便局も、外装がリニューアルされていた。中に入るが、いつもの局員氏はおらず、ひとまわり若い局員さんが勤めていた。聞くと、前任氏は定年退職したとのこと。いまは石垣に戻り、釣り三昧だという。
さっそく貯金といきたいが、いまは機械のメンテナンス中で、現在は無理だという。本土では考えられないことだが、鳩間島では許される。
ひとまわりして戻ってきて、あらためて貯金。8月14日なので、814円の貯金である。
まだ昼食まで時間がある。私は鳩間小学校近くの浜辺で、海を眺めた。透明で、ソーダ水のような色だ。
宿に戻って、昼食。ここであらかた、きょうの宿泊者が分かる。私のテーブルには3人の男性、隣のテーブルには、3人の作業員とひとりの男子小学生が座った。今回の旅では、女性旅行者とは無縁になりそうだ。
こちらのテーブルの3人は、稲葉陽六段、船江恒平五段、タレントの黒部幸英という感じ。3人の作業員は郵便局近くで働いていた人たちで、電信柱の交換工事を行っているという。この暑い盛りに、お疲れさまである。
小学生は大阪からで、のちに両親が来るが、先乗りして鳩間を楽しんでいるという。この歳から鳩間を経験するとは…。うらやましいことである。
昼食はさわやかに、ソーメンとおにぎり。さっぱりしていて、美味かった。
部屋に戻って、同宿者と雑談。「黒部幸英」は、その静かな話し方から、丸山忠久九段に見えた。何だか、将棋を指したくなってきた。
午後からは海水浴である。中森灯台に挨拶したあと、島の中央道を突っ切る。左右の草木は伸び放題。緑の色が濃い。十分に光合成している感じである。空にはぽっかり白い雲。宮崎駿のアニメに出てきそうな風景だ。
行き止まりを左折する。港から11時の方角にある、立原の浜(たちばるのはま)に着いた。ここが私愛用のビーチである。
いつもどおりの穏やかな海である。先客はひとりかふたり。日帰り客もおらず、のんびり鳩間の海を楽しめそうである。
シュノーケルマスクを付けて、遠浅の海を、奥まで歩く。私は同行者を持ち合わせてはいないので、やむなくひとりで泳ぐことになるが、海はバディと泳ぐのが望ましい。こんな穏やかな海だけど、海は何が起こるか分からない。決して海を侮ってはいけない。
適当な深さになったところで、足を浮かせる。プカプカ浮遊して、いい気持ちだ。海はこれから満ちていくから、体は自然と浜に戻る。
沖を、奥の奥まで行ってみる。すぐ眼下に枝サンゴが密集しているが、それが過ぎると、突然、といった感じで視界が拡がる。サンゴ礁が絶壁状になり、いきなり数メートル下の海底が見渡せるのだ。これを亡きおじいは「水族館」と言った。
私は毎年この位置まで来るが、そこから先には飛び出せないでいた。ここで大波が来たら、体ごと持っていかれる。それが恐ろしかったからだ。
ときどき顔を上げて、周りを見る。シュノーケルがスーッと動くので、人が泳いでいるのが分かる。たとえひとりでも周囲に人がいるのは、何となく心強い。
思い切って、絶壁のサンゴ礁から、飛び出してみた。何という開放感! これが鳩間の海である。
私が浜に戻ろうとすると、もうひとりの男性も、海を上がった。浜には簡易テントが張られている。中には奥さんと思しき女性と、子供が2人。あの男性はここの主人だった。どうもこの人は、私の泳ぎに合わせて、泳いでいたようだ。即席の「バディ」だったということだ。
その後私はもう一度「水族館」まで行き、プライベートビーチを楽しんだ。
(つづく)