そのテレンス・リー似の彼が言うには、来間島の手前にある前浜ビーチで泳いでいたところ、カバンごと盗難にあったらしい。そのカバンが、元に置いてあった砂浜から数百メートル離れたところに放り出されていて、中身もバラまかれていた。その中にあったケータイやデジカメは無事だったという。しかし財布はダメ。現金2万円余を盗まれたらしい。
怪しいのは、ここにカバンがある、と彼に教えてくれた男性で、砂浜に落ちていながら、ケータイやデジカメに砂粒が付いていないのは不自然だからだと彼は言った。
それでなぜその男性が怪しいのか分からぬが、話を聞いていると、たしかにその男性が怪しそうではある。しかし男性に嫌疑を掛けるわけにはいかない。彼もいまいましく思いつつも、その場は追及せず収めたという。
吉野海岸のように、ちゃんとした休憩所があるところはいい。何もないところにカバンを置いて、ひとり泳いだのがいけなかった、と彼は悔やんだ。
そんな感じで、彼は身振り手振りを交えて話す。彼は日本語のイントネーションが少しおかしく、日本語が堪能な東洋人というふうだ。それはとにかく、彼は財布を盗まれたことが悔しくて悔しくて、誰かに話したくて仕方がないというふうだった。私だって、何もないような浜辺でひとり泳ぐことがあるから、他人事(ひとごと)ではない。
彼は相変わらず熱弁をふるっているが、双方の座席位置の関係から、私の方が首を大きく曲げて聞いているので、少々つらい体勢である。しかし彼を無碍にするわけにもいかない。
彼の沖縄旅行の話になる。彼も離島が好きで沖縄に何度も訪れているが、どうも私のほうが沖縄に詳しそうだ。
例えば先ほどでも、彼は吉野で、上りのバス停で待っていたが、これは誤り。平良行きのバスは、ひとつ先の保良まで行って引き返すから、下りのバス停で待つのが正しいのだ。彼も沖縄では路線バスを愛用しているらしいが、私に言わせればまだまだ甘い。
しかしそんなことを言っては彼のプライドが傷付くから、私は聞き役に徹する。
17時16分、私は一足先に下地鮮魚店前で降りた。バスからの景色を楽しめなかったのはアレだが、まあこれはこれで、貴重な時間だった。
私はきのうと同様、「ブルーメ」に向かう。しかしやはり、店のシャッターは下りている。この店はもうダメだ。
スーパー「かねひで」に寄る。さんぴん茶の補充である。那覇サンエーでは「湧川さんぴん茶」、宮古島サンエーでは「茶流彩彩」を買ったので、ここでは「ハイサイさんぴん茶」を買う。100円は涙が出そうな安さだった。このほかにスポーツドリンク(2リットル)も買おうと思ったが、さすがに重たくなるのでやめた。
宮古島ユースホステルに戻ってシャワーを浴び、夕食に出る。きょうはラーメンチェーン店の「とん太」に入った。ここは15年近く前にも入り、何かの抽選券をもらったので応募したら、シンガポール3泊4日の旅が当たってしまった。といっても有料(4万円)で、いまから考えれば旅行会社とのタイアップ企画に騙された気がするのだが、まあそれは別の話。
店の表に「オリオンビアフェスト」のポスターが貼ってあったので見ると、今回のイベントは台風の影響で延期になり、きのう11日に行われたものらしい。道理でいままで私が知らなかったわけだ。
宮古島アイドル・ヒガリノは出演していなかったが、Minamiというアイドルが出ていた。どこかで聞いた名だ。
「もりもりセット」は、とん太めん、餃子3個、ミニ麻婆豆腐丼で700円とおトク。味もよかった。ただ、麺はゆですぎ。あれでは麺のコシがなくなってしまっている。
店を出て、またネットカフェに寄り一休み。一応ブログも書くが、いまひとつ気分が乗らない。書いては消し、書いては消しの繰り返しで、ほとんど進まなかった。
宮古島ユースに戻る。今夜も談話室には人影なし。
あすは11時25分発のRAC(琉球エアーコミューター)で石垣島へ行く。ちょっと遅いが、これより早い石垣行きはない。私は自室に戻り、スマホで離島行きの高速船を調べた。八重山観光フェリーはネット予約だと5%引きと書いてある。では去年はいくらだったかと旅行日誌の「家計簿」を見てみると、その記載がない。…そうだ、去年は「かりゆし周遊券」なるものが発売されていて、私はそれを買ったのだ。
この周遊券はほとんどの離島へ行くことができ、たった5,000円で4日間有効というスグレモノ。まったく、私のために作られたような企画切符である。つまりこの周遊券があるから、各島への料金は記していなかったのだ。
今年は、鳩間島、黒島、竹富島に行く予定である。石垣島を起点にして3往復するわけで、かりゆし周遊券の存在は貴重だ。今年もこの切符は売られているだろうか。
13日(月)は午前7時45分に起きた。さっそく朝食。最近私は神経をやられているのか、一日中吐き気を催している。朝食もふだんは牛乳1杯のみなのだが、旅に出ると、ふつうに朝食が摂れるのだ。
家族は1組に減っていた。個人のホステラーはきのうに続いて青年ひとりのみ。若い女性の宿泊を期待していたのだが、宮古島では叶わなかった。
ペアレントさんに別れを告げて、宮古島ユースを出発する。まず宮古郵便局に寄り、旅行貯金。813円。壱万円札と13円を出したら、お釣りの中に二千円札が2枚あった。ここは沖縄。二千円札の流通に積極的なのだ。
さてタクシーの利用を厭わない人なら、繁華街に繰り出して時間を潰すのだろうが、どうもタクシー利用は抵抗感がある。私はそのまま宮古空港まで歩いて行く。
きょうも空は快晴。古本屋や空港近くのパン屋台寄っていたら、けっこう時間が潰れてしまった。ビッショリ汗をかいて、宮古空港着。
石垣行きのRAC831便はプロペラ機で、私の席は「2K」。これで3回連続、非常口の隣だ。そしてシートは、2人掛け×2の極セマだった。
スッチーが真近にいるが、近すぎて緊張してしまった。
石垣空港に着くと、「新石垣空港、平成25年3月7日開港!!」の横断幕が張られていた。ついに新石垣空港開港か!! 新空港を造るにあたっては賛否両論だったが、こうした計画は推進されるようになっている。
私が石垣空港に初めて降りたのは1995年だが、当時は空港近くの道路は、まだ土がむきだしだった。連絡バスもなかった。
いまは道路も立派に舗装され、連絡バスもバンバン出ている。空港ひとつ取っても、思い出は尽きない。
連絡バスの乗り場付近で、女性がカードを配っている。高速船を運航している安栄観光で、高速船窓口でこのカードを提出すれば、このバス代200円を負担してくれるという。
ありがたいが、私は八重山観光フェリーを利用する予定である。
12時29分、石垣バスターミナル着。昨年はここからのんびりと昼食を摂ったため、あとの高速船がなく、離島観光の予定が狂ってしまった。今年はまっすぐ、石垣港に向かう。八重山観光フェリーの窓口では、今年も「かりゆし周遊券」が売られていた。しかし、安栄観光のほうはどうなのだろう。八重山観光フェリーが格安の切符を出しているいま、安栄観光だって、対抗策を打ち出さねばならないだろう。
私はあす、9時30分の高速船で鳩間島に行くことになっている。この運航は八重山観光フェリーである。私はそのまま、「かりゆし周遊券」を購入した。
しかし、安栄観光のほうが気になる。私はそちらの窓口にも行ってみた。すると、驚くべき企画切符が売られていた。
(つづく)
怪しいのは、ここにカバンがある、と彼に教えてくれた男性で、砂浜に落ちていながら、ケータイやデジカメに砂粒が付いていないのは不自然だからだと彼は言った。
それでなぜその男性が怪しいのか分からぬが、話を聞いていると、たしかにその男性が怪しそうではある。しかし男性に嫌疑を掛けるわけにはいかない。彼もいまいましく思いつつも、その場は追及せず収めたという。
吉野海岸のように、ちゃんとした休憩所があるところはいい。何もないところにカバンを置いて、ひとり泳いだのがいけなかった、と彼は悔やんだ。
そんな感じで、彼は身振り手振りを交えて話す。彼は日本語のイントネーションが少しおかしく、日本語が堪能な東洋人というふうだ。それはとにかく、彼は財布を盗まれたことが悔しくて悔しくて、誰かに話したくて仕方がないというふうだった。私だって、何もないような浜辺でひとり泳ぐことがあるから、他人事(ひとごと)ではない。
彼は相変わらず熱弁をふるっているが、双方の座席位置の関係から、私の方が首を大きく曲げて聞いているので、少々つらい体勢である。しかし彼を無碍にするわけにもいかない。
彼の沖縄旅行の話になる。彼も離島が好きで沖縄に何度も訪れているが、どうも私のほうが沖縄に詳しそうだ。
例えば先ほどでも、彼は吉野で、上りのバス停で待っていたが、これは誤り。平良行きのバスは、ひとつ先の保良まで行って引き返すから、下りのバス停で待つのが正しいのだ。彼も沖縄では路線バスを愛用しているらしいが、私に言わせればまだまだ甘い。
しかしそんなことを言っては彼のプライドが傷付くから、私は聞き役に徹する。
17時16分、私は一足先に下地鮮魚店前で降りた。バスからの景色を楽しめなかったのはアレだが、まあこれはこれで、貴重な時間だった。
私はきのうと同様、「ブルーメ」に向かう。しかしやはり、店のシャッターは下りている。この店はもうダメだ。
スーパー「かねひで」に寄る。さんぴん茶の補充である。那覇サンエーでは「湧川さんぴん茶」、宮古島サンエーでは「茶流彩彩」を買ったので、ここでは「ハイサイさんぴん茶」を買う。100円は涙が出そうな安さだった。このほかにスポーツドリンク(2リットル)も買おうと思ったが、さすがに重たくなるのでやめた。
宮古島ユースホステルに戻ってシャワーを浴び、夕食に出る。きょうはラーメンチェーン店の「とん太」に入った。ここは15年近く前にも入り、何かの抽選券をもらったので応募したら、シンガポール3泊4日の旅が当たってしまった。といっても有料(4万円)で、いまから考えれば旅行会社とのタイアップ企画に騙された気がするのだが、まあそれは別の話。
店の表に「オリオンビアフェスト」のポスターが貼ってあったので見ると、今回のイベントは台風の影響で延期になり、きのう11日に行われたものらしい。道理でいままで私が知らなかったわけだ。
宮古島アイドル・ヒガリノは出演していなかったが、Minamiというアイドルが出ていた。どこかで聞いた名だ。
「もりもりセット」は、とん太めん、餃子3個、ミニ麻婆豆腐丼で700円とおトク。味もよかった。ただ、麺はゆですぎ。あれでは麺のコシがなくなってしまっている。
店を出て、またネットカフェに寄り一休み。一応ブログも書くが、いまひとつ気分が乗らない。書いては消し、書いては消しの繰り返しで、ほとんど進まなかった。
宮古島ユースに戻る。今夜も談話室には人影なし。
あすは11時25分発のRAC(琉球エアーコミューター)で石垣島へ行く。ちょっと遅いが、これより早い石垣行きはない。私は自室に戻り、スマホで離島行きの高速船を調べた。八重山観光フェリーはネット予約だと5%引きと書いてある。では去年はいくらだったかと旅行日誌の「家計簿」を見てみると、その記載がない。…そうだ、去年は「かりゆし周遊券」なるものが発売されていて、私はそれを買ったのだ。
この周遊券はほとんどの離島へ行くことができ、たった5,000円で4日間有効というスグレモノ。まったく、私のために作られたような企画切符である。つまりこの周遊券があるから、各島への料金は記していなかったのだ。
今年は、鳩間島、黒島、竹富島に行く予定である。石垣島を起点にして3往復するわけで、かりゆし周遊券の存在は貴重だ。今年もこの切符は売られているだろうか。
13日(月)は午前7時45分に起きた。さっそく朝食。最近私は神経をやられているのか、一日中吐き気を催している。朝食もふだんは牛乳1杯のみなのだが、旅に出ると、ふつうに朝食が摂れるのだ。
家族は1組に減っていた。個人のホステラーはきのうに続いて青年ひとりのみ。若い女性の宿泊を期待していたのだが、宮古島では叶わなかった。
ペアレントさんに別れを告げて、宮古島ユースを出発する。まず宮古郵便局に寄り、旅行貯金。813円。壱万円札と13円を出したら、お釣りの中に二千円札が2枚あった。ここは沖縄。二千円札の流通に積極的なのだ。
さてタクシーの利用を厭わない人なら、繁華街に繰り出して時間を潰すのだろうが、どうもタクシー利用は抵抗感がある。私はそのまま宮古空港まで歩いて行く。
きょうも空は快晴。古本屋や空港近くのパン屋台寄っていたら、けっこう時間が潰れてしまった。ビッショリ汗をかいて、宮古空港着。
石垣行きのRAC831便はプロペラ機で、私の席は「2K」。これで3回連続、非常口の隣だ。そしてシートは、2人掛け×2の極セマだった。
スッチーが真近にいるが、近すぎて緊張してしまった。
石垣空港に着くと、「新石垣空港、平成25年3月7日開港!!」の横断幕が張られていた。ついに新石垣空港開港か!! 新空港を造るにあたっては賛否両論だったが、こうした計画は推進されるようになっている。
私が石垣空港に初めて降りたのは1995年だが、当時は空港近くの道路は、まだ土がむきだしだった。連絡バスもなかった。
いまは道路も立派に舗装され、連絡バスもバンバン出ている。空港ひとつ取っても、思い出は尽きない。
連絡バスの乗り場付近で、女性がカードを配っている。高速船を運航している安栄観光で、高速船窓口でこのカードを提出すれば、このバス代200円を負担してくれるという。
ありがたいが、私は八重山観光フェリーを利用する予定である。
12時29分、石垣バスターミナル着。昨年はここからのんびりと昼食を摂ったため、あとの高速船がなく、離島観光の予定が狂ってしまった。今年はまっすぐ、石垣港に向かう。八重山観光フェリーの窓口では、今年も「かりゆし周遊券」が売られていた。しかし、安栄観光のほうはどうなのだろう。八重山観光フェリーが格安の切符を出しているいま、安栄観光だって、対抗策を打ち出さねばならないだろう。
私はあす、9時30分の高速船で鳩間島に行くことになっている。この運航は八重山観光フェリーである。私はそのまま、「かりゆし周遊券」を購入した。
しかし、安栄観光のほうが気になる。私はそちらの窓口にも行ってみた。すると、驚くべき企画切符が売られていた。
(つづく)