中村あゆみはオーバーを脱いで、さらに一曲。感心したのは、合間に出るトークのうまさだ。とくに奇抜なフレーズは使っていないのだが、絶妙の間合いで笑いを取る。もう何百回もライブをしているから、この手のトークはお手のものなのだろうが、それにしても見事だ。
ライブはまだまだ続く。続いては坂本冬美に提供した「アジアの海賊」を元気よく歌いあげる。これ、2008年に発売された「また君に恋してる」のカップリング曲で、同曲がヒットしたということは「アジアの海賊」も売れたことになり、中村あゆみもご満悦というわけだった。
最後に、新曲「愛のメロディー」(だったと思う)をしっとりと歌いあげた。
中村あゆみは、将棋でいえば居飛車も振り飛車も指しこなすオールラウンドプレーヤーという感じ。どのジャンルも器用に歌う彼女に、プロ歌手の真髄を見た思いだった。
予定を10分オーバーして、中村あゆみのライブは終了。残るは午後8時から7丁目で行われる、Natsuki&ブライトの、「サッポロ ゴスペル クワイア」だ。
数年前からさっぽろ雪まつりの「さよならステージ」がなくなり、各丁目の雪像製作責任者の紹介や、ミスさっぽろの引継式が観られなくなった。これが感動的だったのに、まことに遺憾だ。
現在はNatsuki&ブライトが、その代わりになっているわけだ。
ちょっと時間があるので、6丁目でラーメンでも食いたい。しかし人気店の前には、観光客が列を作っている。さすがに旭川と違い、この時間でもさっぽろ雪まつり会場は盛況だ。
すぐ食べられそうなところは、1杯700円である。言っちゃあ悪いが、出店で700円のラーメンは食べたくない。
私は大通会場を離れ、近くのコンビニで105円のおにぎりを買った。これで小腹を満たして、十分である。
8時、Natsuki&ブライトのステージが始まった。Natsukiは、さっぽろテレビ塔の近くで歌の教室をやっている。今年もそこの講師陣と生徒、総勢10数名を引き連れての登場だ。
まずは「ハレルヤ」を陽気に歌いあげる。私も手拍子を叩いて応援する。昨年もまったく同じ状況だったが、札幌も夜8時を過ぎると寒さが厳しくなり、体を動かさないとやってられないのだ。しかし今年は、最後まで手袋をしなかった。
続いて、映画「天使にラブソングを」の挿入歌をテンポよく歌い上げる。振りつけが全員ピッタリなのが素晴らしい。たとえば女流棋士会のファンクラブイベントでも、若手の何人かで、振りつけのあるポップスを歌ってみる手はあると思う。チームワークの良さがアピールでき、感動も呼ぶはずだ。
続いて「虹と雪のバラード」を、Natsukiと3人の講師陣で歌う。これがまた、おひねりを投げたいくらいの素晴らしい出来だった。講師陣のバックコーラスが絶品で、私は涙が出てくるのを抑えられなかった。やっぱりこの歌はいい。
「また来年のさっぽろ雪まつりでお会いしましょう!」
とNatsukiがまとめて、大通公園のステージはすべて見終わったはず…だった。
ところが4丁目を通ると、ハイティーンの女子がライブを行っていた。そういえば先ほど、制服の女子がこの付近でチラシを配っていたが、あれがそうだったのか。
しかしパンフレットには出ていなかったから、ゲリラライブ的な要素があったと思われる。
女子らは総勢16人いた。高校の制服や体操着、アイドル系の衣装などバラバラなのだが、それが妙な統一感を醸し出している。しかも制服などはコートなし、そのままなのだ。女子高生に冬の寒さは無縁らしい。女子高生万歳!! と叫びたくなるところである。
彼女らはAKB48の「永遠プレッシャー」を、本物顔負けに歌う。彼女らは撮影OKらしく、こーんな長いレンズを装着したカメラ小僧が、彼女らを激写し続けている。その傍らでは、彼女らの追っかけと思しき青年団が、「○○ちゃーーん!!」と雄叫びをあげ、一緒に踊っている。日本の文化を見る思いだ。
彼女らがノリノリで、体を一回転させる。…えっ?? いま、白いものが!? パンツ丸見えじゃねえの!? アンダースコート!? 本物!?
彼女らは、そんな細かいことはどうでもいいのである。見たければ見るがいいさ、という姿勢なのだ。まことに素晴らしい。最後の最後に来て、何だかスゴイ光景を見てしまった。ありがとう、ありがとう。
名残惜しいが、私はその場を離れる。最後のお楽しみ、「すすきの氷の祭典」も観なければいけない。
すすきのに着き、氷像を鑑賞する。これもとくに新鮮味はなく、旭川の氷像に比べて立体感もないが、力作ぞろいなのに変わりはない。今年はとくに、氷のツヤがよく映えている。
半分ぐらい観たときだったか。ツルッ! 足元がすべり、尾てい骨をしたたかに打った。足元が氷状になっていたのだ。
係の人は滑り止めの砂を撒いているのだが、ちょっと効果がなかったようだ。一周して戻ってくると、同じ場所で、今度は女の人がすべっていた。
氷像の鑑賞はこれで終了。私は痛みを堪えて、近くの蕎麦屋に入る。時刻は9時半にならんとしているが、雪まつり期間につき営業を延長しているのだろう。感心である。
私はもちろんもりそばを頼み、ズルズルッ。札幌…というか、北海道の代表的食物はラーメンというイメージがあるが、ラーメンはともかく、北海道の日本蕎麦は外れたことがない。どこも美味い。この店ももちろん、美味かった。
腹もくちて、表へ出る。これで、今年の冬まつり旅行は終了である。ああ、今年も楽しかった。来年もまた、この時期に来られればうれしい。
しかしこれから先の私の人生は、茨の道だ。私は一抹の寂しさを覚え、地下街へ降りた。
(つづく)
ライブはまだまだ続く。続いては坂本冬美に提供した「アジアの海賊」を元気よく歌いあげる。これ、2008年に発売された「また君に恋してる」のカップリング曲で、同曲がヒットしたということは「アジアの海賊」も売れたことになり、中村あゆみもご満悦というわけだった。
最後に、新曲「愛のメロディー」(だったと思う)をしっとりと歌いあげた。
中村あゆみは、将棋でいえば居飛車も振り飛車も指しこなすオールラウンドプレーヤーという感じ。どのジャンルも器用に歌う彼女に、プロ歌手の真髄を見た思いだった。
予定を10分オーバーして、中村あゆみのライブは終了。残るは午後8時から7丁目で行われる、Natsuki&ブライトの、「サッポロ ゴスペル クワイア」だ。
数年前からさっぽろ雪まつりの「さよならステージ」がなくなり、各丁目の雪像製作責任者の紹介や、ミスさっぽろの引継式が観られなくなった。これが感動的だったのに、まことに遺憾だ。
現在はNatsuki&ブライトが、その代わりになっているわけだ。
ちょっと時間があるので、6丁目でラーメンでも食いたい。しかし人気店の前には、観光客が列を作っている。さすがに旭川と違い、この時間でもさっぽろ雪まつり会場は盛況だ。
すぐ食べられそうなところは、1杯700円である。言っちゃあ悪いが、出店で700円のラーメンは食べたくない。
私は大通会場を離れ、近くのコンビニで105円のおにぎりを買った。これで小腹を満たして、十分である。
8時、Natsuki&ブライトのステージが始まった。Natsukiは、さっぽろテレビ塔の近くで歌の教室をやっている。今年もそこの講師陣と生徒、総勢10数名を引き連れての登場だ。
まずは「ハレルヤ」を陽気に歌いあげる。私も手拍子を叩いて応援する。昨年もまったく同じ状況だったが、札幌も夜8時を過ぎると寒さが厳しくなり、体を動かさないとやってられないのだ。しかし今年は、最後まで手袋をしなかった。
続いて、映画「天使にラブソングを」の挿入歌をテンポよく歌い上げる。振りつけが全員ピッタリなのが素晴らしい。たとえば女流棋士会のファンクラブイベントでも、若手の何人かで、振りつけのあるポップスを歌ってみる手はあると思う。チームワークの良さがアピールでき、感動も呼ぶはずだ。
続いて「虹と雪のバラード」を、Natsukiと3人の講師陣で歌う。これがまた、おひねりを投げたいくらいの素晴らしい出来だった。講師陣のバックコーラスが絶品で、私は涙が出てくるのを抑えられなかった。やっぱりこの歌はいい。
「また来年のさっぽろ雪まつりでお会いしましょう!」
とNatsukiがまとめて、大通公園のステージはすべて見終わったはず…だった。
ところが4丁目を通ると、ハイティーンの女子がライブを行っていた。そういえば先ほど、制服の女子がこの付近でチラシを配っていたが、あれがそうだったのか。
しかしパンフレットには出ていなかったから、ゲリラライブ的な要素があったと思われる。
女子らは総勢16人いた。高校の制服や体操着、アイドル系の衣装などバラバラなのだが、それが妙な統一感を醸し出している。しかも制服などはコートなし、そのままなのだ。女子高生に冬の寒さは無縁らしい。女子高生万歳!! と叫びたくなるところである。
彼女らはAKB48の「永遠プレッシャー」を、本物顔負けに歌う。彼女らは撮影OKらしく、こーんな長いレンズを装着したカメラ小僧が、彼女らを激写し続けている。その傍らでは、彼女らの追っかけと思しき青年団が、「○○ちゃーーん!!」と雄叫びをあげ、一緒に踊っている。日本の文化を見る思いだ。
彼女らがノリノリで、体を一回転させる。…えっ?? いま、白いものが!? パンツ丸見えじゃねえの!? アンダースコート!? 本物!?
彼女らは、そんな細かいことはどうでもいいのである。見たければ見るがいいさ、という姿勢なのだ。まことに素晴らしい。最後の最後に来て、何だかスゴイ光景を見てしまった。ありがとう、ありがとう。
名残惜しいが、私はその場を離れる。最後のお楽しみ、「すすきの氷の祭典」も観なければいけない。
すすきのに着き、氷像を鑑賞する。これもとくに新鮮味はなく、旭川の氷像に比べて立体感もないが、力作ぞろいなのに変わりはない。今年はとくに、氷のツヤがよく映えている。
半分ぐらい観たときだったか。ツルッ! 足元がすべり、尾てい骨をしたたかに打った。足元が氷状になっていたのだ。
係の人は滑り止めの砂を撒いているのだが、ちょっと効果がなかったようだ。一周して戻ってくると、同じ場所で、今度は女の人がすべっていた。
氷像の鑑賞はこれで終了。私は痛みを堪えて、近くの蕎麦屋に入る。時刻は9時半にならんとしているが、雪まつり期間につき営業を延長しているのだろう。感心である。
私はもちろんもりそばを頼み、ズルズルッ。札幌…というか、北海道の代表的食物はラーメンというイメージがあるが、ラーメンはともかく、北海道の日本蕎麦は外れたことがない。どこも美味い。この店ももちろん、美味かった。
腹もくちて、表へ出る。これで、今年の冬まつり旅行は終了である。ああ、今年も楽しかった。来年もまた、この時期に来られればうれしい。
しかしこれから先の私の人生は、茨の道だ。私は一抹の寂しさを覚え、地下街へ降りた。
(つづく)