2回戦第1局は、上川香織女流二段と堀彩乃女流2級の一戦。解説は中座真七段、聞き手は中倉宏美女流二段である。
対局開始。早速中座七段が「(義理の妹とは解説を)やりにくい」とジャブと飛ばす。
「いえいえそんなことはないでしょう、ホッホッホ」
「宏美さんはNHK杯の司会をやってましたね」
「はい、3年間。でももう10年くらい前ですね。そのころ中座さんとはもう出会っていた…」
「ちょ、出会ってたって、誤解されますよ…」
なんだか本当に中座七段はやりにくそうだ。
先ごろ女流王位戦挑戦を決めた、渡部愛女流二段の話になる。
「最近涙もろくなって…」と宏美女流二段。渡部女流二段からは「ママってよばれてる」らしく、宏美女流二段の喜びもひとしおのようだ。
フロア後方では、女流棋士による指導対局が始まった。1コマ目は、蛸島彰子女流六段と大庭美樹女流初段。どうも大庭女流初段は、1回戦で島井女流二段に負けたらしい。
まだ空きがあり、私も蛸島女流六段に指導を受けてみたいが、宏美女流二段のハジけた聞き手を楽しみたい、ところもある。果たして
「(雑談が)うるさくて(対局者に)集中できないって言われるんで、勝負所になったら静かにしますんで、もう勝負所かもしれないですけど」
と、宏美節が全開である。これは指導対局にいけない。
上川女流二段が▲9五歩と指し、ヘンな場所から戦いが始まった。
上川女流二段、▲5五歩と指して、チェスクロックを押そうとした。手近にそれがあると、つい癖で押しちゃいそうになるのだろう。
中座七段「ここで▲4六角(という手)はセンスがない」
中盤で手の広い局面になっているようだ。
以降、上川女流二段の攻め、堀女流2級の受けで、局面が進行していく。宏美女流二段よれば、「堀女流2級は受けを苦にしない」棋風らしいから、お互いの持ち味が出ていそうだ。
盤面は堀女流2級が反撃に転じたが、上川女流二段も自陣飛車で粘り、決め手を与えない。
「いやあ、すごく際どい終盤です」
と中座七段が感心する。
そこに△3九角!(図)が飛んできた。
▲3九同飛△同金▲同玉△4八金▲2八玉△3八金▲1七玉△2五桂▲2六玉△3五銀▲2五玉△2四飛、と中座七段が駒を動かし、「詰んじゃいました」。
よって▲1七玉では▲1八玉と寄る一手。しかし堀女流2級は慌てず△2八飛。▲1七玉に、「こう指そうということですか」と、中座七段は△2九飛成と指した。
実戦もそうなり、以下▲3五金に△2八竜まで、堀女流2級の勝ちとなった。堀女流2級、堂々の決勝戦進出である。
14時15分からは2回戦第2局、宏美女流二段VS島井咲緒里女流二段の一戦である。
LPSA棋戦において2人は好敵手で、昨年、一昨年もこの棋戦で交え、1勝1敗。ちなみに両年とも優勝したのは渡部女流二段。鬼のいぬ間に、今年は優勝のチャンスである。
本局は宏美女流二段の先手で対局開始。島井女流二段は四間に飛車を振る。△9二香と穴熊の明示をすると、客席の一部から拍手が起こった。
宏美女流二段は▲7八銀から左美濃。でもこれは囲いの途中で、銀冠穴熊に変化するのだろう。と思ったら果たしてそうだった。
私の席からは宏美女流二段の顔が見えるが、相変わらずの平安顔で美しい。やっぱり生で拝見するとファン度が上がるもので、宏美女流二段は現在、ファンランキングの○位だが、もっと順位を上げてもいいと思った。
解説は蛸島女流六段と堀女流2級。対局者に指導対局に解説にと、いろいろ忙しいのだ。
堀女流2級が蛸島女流六段に、最後の公式戦となった将棋を聞く。
蛸島女流六段「悪い将棋を盛り返して、勝てるって光が見えたら、悪い手を指してしまいました。途中で好手に気がついたんだけど、もう角を切っちゃったから、後戻りできなくて――」
蛸島女流六段は、その前の将棋では千葉涼子女流四段をほふったし、実力的な衰えはなかったと思う。勝率に関係なく、まだまだ現役を続けてもらいたかったが、こればかりは当人の意志だから仕方ない。蛸島先生、長い現役生活、お疲れ様でした。
2人の「解説」はつづく。
「蛸島先生はNHK杯の記譜読み上げをされてましたよね」
「そう。(彩乃ちゃんが)生まれる前ね」客席がドッとウケる。「(ファンの方から)ウチの父がよく観てました、とか言われます」
後方では、15時からの指導対局の準備が進められている。中座真七段と上川香織女流二段が行うが、もう1人女流棋士が加わるはずだ。私は昨年中座七段に角落ちで教わり、本家に「中座飛車」をぶつけて緩めていただいた。今年はどうするかだが、このまま宏美and咲緒里の対局姿を見ていたい気もするのだ。
しばらくすると指導対局者も13人に達したということで、これはもう、私が申し込む余地はなくなった。対局の観戦に専念する。
堀女流2級のマイクの調子がわるいようだが、蛸島女流六段も対局者に配慮して小声なので、私たちは大盤の駒の動きを見るのみだ。
島井女流二段は、△6三金型から△7二飛。こうして7筋から攻めるのが島井システムである。
△7五歩▲同歩△同飛に、宏美女流二段は▲6六銀。素直に▲7六歩を打たないのがさすがにプロだが、数手後島井女流二段は△7六歩(図)。これは拠点を作って大きな手に見えた。
さらに銀交換後、島井女流二段△7七銀!「シマイ攻めですね」と蛸島女流六段が言った。
勝敗はともかく、こうなれば島井ペースである。とくに時間の短い将棋では、自分の土俵に引きずりこむことが肝要だ。
宏美女流二段も懸命に受けるが、シマイ攻めは筋に入ってしまった。私は優勝予想に宏美女流二段を推していたが、この予想は外れそうだ。
数手後、宏美女流二段が投了。島井女流二段の快勝だった。
(つづく)
対局開始。早速中座七段が「(義理の妹とは解説を)やりにくい」とジャブと飛ばす。
「いえいえそんなことはないでしょう、ホッホッホ」
「宏美さんはNHK杯の司会をやってましたね」
「はい、3年間。でももう10年くらい前ですね。そのころ中座さんとはもう出会っていた…」
「ちょ、出会ってたって、誤解されますよ…」
なんだか本当に中座七段はやりにくそうだ。
先ごろ女流王位戦挑戦を決めた、渡部愛女流二段の話になる。
「最近涙もろくなって…」と宏美女流二段。渡部女流二段からは「ママってよばれてる」らしく、宏美女流二段の喜びもひとしおのようだ。
フロア後方では、女流棋士による指導対局が始まった。1コマ目は、蛸島彰子女流六段と大庭美樹女流初段。どうも大庭女流初段は、1回戦で島井女流二段に負けたらしい。
まだ空きがあり、私も蛸島女流六段に指導を受けてみたいが、宏美女流二段のハジけた聞き手を楽しみたい、ところもある。果たして
「(雑談が)うるさくて(対局者に)集中できないって言われるんで、勝負所になったら静かにしますんで、もう勝負所かもしれないですけど」
と、宏美節が全開である。これは指導対局にいけない。
上川女流二段が▲9五歩と指し、ヘンな場所から戦いが始まった。
上川女流二段、▲5五歩と指して、チェスクロックを押そうとした。手近にそれがあると、つい癖で押しちゃいそうになるのだろう。
中座七段「ここで▲4六角(という手)はセンスがない」
中盤で手の広い局面になっているようだ。
以降、上川女流二段の攻め、堀女流2級の受けで、局面が進行していく。宏美女流二段よれば、「堀女流2級は受けを苦にしない」棋風らしいから、お互いの持ち味が出ていそうだ。
盤面は堀女流2級が反撃に転じたが、上川女流二段も自陣飛車で粘り、決め手を与えない。
「いやあ、すごく際どい終盤です」
と中座七段が感心する。
そこに△3九角!(図)が飛んできた。
▲3九同飛△同金▲同玉△4八金▲2八玉△3八金▲1七玉△2五桂▲2六玉△3五銀▲2五玉△2四飛、と中座七段が駒を動かし、「詰んじゃいました」。
よって▲1七玉では▲1八玉と寄る一手。しかし堀女流2級は慌てず△2八飛。▲1七玉に、「こう指そうということですか」と、中座七段は△2九飛成と指した。
実戦もそうなり、以下▲3五金に△2八竜まで、堀女流2級の勝ちとなった。堀女流2級、堂々の決勝戦進出である。
14時15分からは2回戦第2局、宏美女流二段VS島井咲緒里女流二段の一戦である。
LPSA棋戦において2人は好敵手で、昨年、一昨年もこの棋戦で交え、1勝1敗。ちなみに両年とも優勝したのは渡部女流二段。鬼のいぬ間に、今年は優勝のチャンスである。
本局は宏美女流二段の先手で対局開始。島井女流二段は四間に飛車を振る。△9二香と穴熊の明示をすると、客席の一部から拍手が起こった。
宏美女流二段は▲7八銀から左美濃。でもこれは囲いの途中で、銀冠穴熊に変化するのだろう。と思ったら果たしてそうだった。
私の席からは宏美女流二段の顔が見えるが、相変わらずの平安顔で美しい。やっぱり生で拝見するとファン度が上がるもので、宏美女流二段は現在、ファンランキングの○位だが、もっと順位を上げてもいいと思った。
解説は蛸島女流六段と堀女流2級。対局者に指導対局に解説にと、いろいろ忙しいのだ。
堀女流2級が蛸島女流六段に、最後の公式戦となった将棋を聞く。
蛸島女流六段「悪い将棋を盛り返して、勝てるって光が見えたら、悪い手を指してしまいました。途中で好手に気がついたんだけど、もう角を切っちゃったから、後戻りできなくて――」
蛸島女流六段は、その前の将棋では千葉涼子女流四段をほふったし、実力的な衰えはなかったと思う。勝率に関係なく、まだまだ現役を続けてもらいたかったが、こればかりは当人の意志だから仕方ない。蛸島先生、長い現役生活、お疲れ様でした。
2人の「解説」はつづく。
「蛸島先生はNHK杯の記譜読み上げをされてましたよね」
「そう。(彩乃ちゃんが)生まれる前ね」客席がドッとウケる。「(ファンの方から)ウチの父がよく観てました、とか言われます」
後方では、15時からの指導対局の準備が進められている。中座真七段と上川香織女流二段が行うが、もう1人女流棋士が加わるはずだ。私は昨年中座七段に角落ちで教わり、本家に「中座飛車」をぶつけて緩めていただいた。今年はどうするかだが、このまま宏美and咲緒里の対局姿を見ていたい気もするのだ。
しばらくすると指導対局者も13人に達したということで、これはもう、私が申し込む余地はなくなった。対局の観戦に専念する。
堀女流2級のマイクの調子がわるいようだが、蛸島女流六段も対局者に配慮して小声なので、私たちは大盤の駒の動きを見るのみだ。
島井女流二段は、△6三金型から△7二飛。こうして7筋から攻めるのが島井システムである。
△7五歩▲同歩△同飛に、宏美女流二段は▲6六銀。素直に▲7六歩を打たないのがさすがにプロだが、数手後島井女流二段は△7六歩(図)。これは拠点を作って大きな手に見えた。
さらに銀交換後、島井女流二段△7七銀!「シマイ攻めですね」と蛸島女流六段が言った。
勝敗はともかく、こうなれば島井ペースである。とくに時間の短い将棋では、自分の土俵に引きずりこむことが肝要だ。
宏美女流二段も懸命に受けるが、シマイ攻めは筋に入ってしまった。私は優勝予想に宏美女流二段を推していたが、この予想は外れそうだ。
数手後、宏美女流二段が投了。島井女流二段の快勝だった。
(つづく)