一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

飛車は切るためにある

2021-12-24 00:31:23 | 男性棋士
22日は第7期叡王戦八段戦予選・広瀬章人八段VS中田功八段戦が行われ、中田八段が勝ち、本戦進出を決めた。
叡王戦は予選が異色で、上にも書いた通り、段位別になっている。かつての天王戦予選と同じだ。ともあれ順位戦でなく段位での戦いだから、順位戦A級とC級2組が戦うこともあり、それが逆に面白い対戦カードを生む。
広瀬八段はA級3位、片や中田八段はC級2組で降級点2。しかも今期は2勝5敗で、相当に首が寒い。ところがその戦いに、中田八段が勝ったわけだ。先日の船戸陽子女流三段―室谷由紀女流三段戦ではないが、だから勝負事は面白いのだ。
将棋は中田八段の先手で、中飛車になった。中田八段といえば「三間飛車」で、居飛車穴熊に対し▲3九玉・▲4六銀型からの端攻めが有名だ。ただ、それを指しこなせる棋士は中田八段しかいない。ゆえに、職人・中田八段のファンも多いのだ。
中田八段は中飛車でも軽く捌く。その指し手に広瀬八段も戸惑っているようにも見える。
第1図は△6二飛の角取りに▲6五歩と支え、△同銀となったところ。ここで中田八段の指がしなる。

第1図から▲5三飛成! 飛車を取れ、と差し出したのだ(第2図)。

かつて中田八段は専門誌のインタビューで、「飛車は切るためにある」と言った。たしか鈴木大介九段も、新橋解説会で同様のことを言った。振り飛車党からすると、将棋は飛車を切るのが醍醐味らしい。
もっとも第1図で飛車を引くと角がタダだから、飛車を突っ込むよりなかったのだが……。
第2図から数手進み、△6七飛の金取り。これには目もくれず、▲5二銀(第3図)がプロの手。これで一手勝ちと見ているのだ。

最後は▲3一角で広瀬八段投了。私は1977年7月25日に指された、第16期十段戦リーグ・▲土佐浩司四段VS△大山康晴棋聖戦の投了図を思い出した(参考図)。


中田八段は快勝で本戦進出。予選も本戦も、ベテランが勝ってこそ勝負事は盛り上がる。中田八段には一局でも多く勝ってもらいたい。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする