一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

桐山九段、敗れる

2021-12-17 01:42:09 | 男性棋士
この7日に、桐山清澄九段の対局があった。第35期竜王戦ランキング戦5組1回戦である。
桐山九段は2020年3月に順位戦C級2組から陥落した。すでに規定の年齢を越えていたためこれにてほぼ引退で、残る参加棋戦は竜王戦のみとなった。
そしてその竜王戦も、今期5組に残留のままだと、規定により参加が叶わなくなる。つまり正式な引退となるのだ。
そんな桐山九段を応援したくなるもうひとつの理由、それは、桐山九段が現在公式戦通算996勝だからだ。
将棋界では通算1000勝を「特別将棋栄誉賞」として表彰する。受賞者は大山康晴十五世名人から佐藤康光九段まで、9名しかいない。まさに特別栄誉にふさわしい、大偉業といえる。
だがここ数年桐山九段は絶不調で、楽勝と思われていた1000勝に赤信号が灯って久しい。
あと4勝はあまりにも遠いが、夢物語を書けば、ランキング戦で4勝すれば4組昇級となり、1000勝と同時に現役続行の権利を手に入れることができる。それにはまず、この1回戦に勝つことが重要だった。
相手は南芳一九段。言わずとしれた「花の55年組」のひとりで、その中でも最も早くA級に昇級し、二冠王もたびたびだった。
その南九段も寄る年波には勝てぬのか、順位戦はC級2組に落ち、いまも降級点を取らんとしている(ちなみに、いままで二冠王を達成した棋士は16名いるが、C級2組まで落ちたのは、南九段と加藤一二三九段だけである)。
むろん桐山九段にとっては南九段も難敵のひとりだが、古くから知った仲なので、戦いやすい意味もあったと思う。
将棋は桐山九段の先手で、南九段の三間飛車となった。南九段は居飛車党だったと思うのだが、気が付けば振り飛車党になっていた。でも、南九段の棋風には合っていないと思うのだが、外野が勝手な意見を言っても詮無い。
対して桐山九段の作戦は穴熊。これも首を傾げる作戦選択で、桐山九段の棋風には合っていないように思うのだが、どうか。
そういえば、桐山九段はいまから31年前、A級順位戦で、大山十五世名人の降級に絡む対局に臨んだことがある。歴史は巡り、いまは桐山九段が、剣が峰での戦いを強いられているのだ(2017年7月26日アップ「大山の名局・6」に詳しい)。
桐山九段はガチガチに囲う。45年前ならこれにて先手勝ちだが、南九段も真部流△6四銀形に組み、十分である。
桐山九段は▲7五歩から動いていったが銀桂交換の駒損になった。しかも、△8七歩成▲同金と急所を乱されては、不利である。
以下も南九段がのびのびと捌くのに対し、桐山九段の攻めが単調で、素人目にも後手勝勢が分かった。
最後は△8七に桂を打たれ、桐山九段の投了となった。桐山九段、残念だった。
これで桐山九段は昇級者決定戦に回る。4連勝で1000勝、6連勝で4組昇級となるが、もう無理だ。こうなっては、桐山九段の将棋を1局でも多く見られることを祈るしかない。
なお、同じ日に行われた藤倉勇樹五段戦も、桐山九段と似た状況である。すなわち、藤倉五段も今期4組に昇級しないと、規定により引退となる。
だが藤倉五段の場合は、まだ42歳と若いのがキツい。肉体的にも長時間の対局が十分可能なのに、強制引退となる。これも厳しいものがある。
そして藤倉五段も、1回戦で石田直裕五段に負けた。こちらも引退確定といってよい。
さらに、フリークラス9年目の川上猛七段は、先崎学九段に勝った。川上七段はこのままいけば、2023年3月末で引退となる。その時のために竜王戦だけはクラスを上げておきたく、今回の勝利で5組を確定させたのは大きかった。
川上七段は昇級まであと3勝である。同じ山を見ると、川上七段が勝ってもおかしくない相手ばかりだ。
このチャンスはモノにしてもらいたい。
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