(10月2日のつづき)
ヒトは、楽しみにしている日は早く来ればいい、と考えるものだろうか。
でもその楽しい日が過ぎれば、また空虚な日々が来るわけで、早い話、今回の長崎行きも私としては、来てほしいような来てほしくないような、複雑な気分だった。
しかし12月18日(土)はやってきた。今年も1泊2日の長崎旅行に出発である。
所持金は28,210円となった。お札は壱万円札が2枚、千円札が7枚である。しかしあんでるせんでは、二千円札と1円玉以外のお札と硬貨を用意したい。というわけで、あんでるせんに着くまでに、壱万円札を崩して五千円札を入手しなければならない。
しかし崩しすぎて千円札ばかりになったら、また壱万円札を崩さなければならない。だが2回目をやると、今度は壱万円札がなくなってしまう。それで出発直前に、もう1枚壱万円札を加え、38,210円とした。実はこれが結果的に微妙なドラマを生むのだが、それはもう少し先の話。
往路は昨年に続いて、スカイマークの羽田―神戸―長崎便を利用した。チケットの予約は早かったので、7,990円で済んだ。関係者に申し訳ないくらい安い。
早暁の上野東京ラインに乗り、品川で京急に乗り換えた。いままではモノレールを利用していたから、初の試みだ。ここから羽田空港までは300円という安さである。
空港でチェックインに臨むが、窓のない15Aか、外が見える29Bか30Bで迷った。が、30Bを選んだ。
席に向かうと、30Aにいたオッサンが盛大に脚を拡げ、偉そうにしている。肘掛けの肘も、こちら側に侵食している。私はおずおずと座るが、オッサンの態度は変わらない。前途多難を思わせた。
ちなみに30Cは真飛聖を思わせるインテリ風の女性が座ったが、前の席を見れば、29Aが若い女性、29Cが若い男性で29Bは空席。これなら29Bのほうがはるかに良かったが、まあ結果論だろう。
定刻に離陸。右の女性に関心をはらえば、まあ快適な空の旅である。
スカイマークでは飲み物の無料提供はないが、マスクとKit-Katのサービスがあった。
9時20分ごろ、神戸空港で一旦降機。チケット代が安いから、このくらいの手間はなんでもない。
空港から望む空は雲が山脈のように連なり、ちょっと異様である。「雲脈」とでもいうべきか。
9時30分ごろ、再搭乗。例のオッサンはやはりいた。どうもこのエリアは、全員長崎行きだったようである。
長崎空港は10時50分着だが、10分ほど遅れる、とのアナウンスがあった。そこで初めて気づいたのだが、例年は長崎空港発11時ちょうどの連絡バスに乗っていた。
だが今回の便だと、たとえ定刻に着いたとしても、11時発のバスには乗れない可能性が高い。今回はあんでるせん着が13時でいいから大勢に影響はないが、例年だったらけっこうマズイことになっていた。
飛行機は12分遅れで長崎空港に着いた。バス乗り場に行くと、川棚方面に行くバスは11時20分である――と待っていたのが錯覚で、その先のバス乗り場が川棚行きで、11時25分の出発だった。飛行機の到着時刻に合わせ、バスもダイヤ改正したのだろう。
しかし私も慌てたため、昨年に続き、またSuicaで乗ってしまった。
川棚バスセンターには、定刻の12時06分を数分遅れで着いた。降車は私を含む3人だったが、前のふたりはあんでるせんに行くのだろうか。
まだ時間があるので、この間に腹ごしらえである。駅前の歩道橋に上り、あんでるせんの全景を撮る。
川棚駅は、駅舎の一隅が軽食喫茶になっていた。でも雰囲気は変わっていない。
道路の反対側にある「まゆみ」という食事処に入った。ここ数年はあんでるせんでの食事が主だったから、「外食」は久し振りだ。
海鮮天丼(1,000円)を注文する。これは期待通り、美味かった。
会計の際、あえて壱万円札を出す。すると姐さんは、五千円札を含んだおつりをくれた。これで心置きなく、あんでるせんに臨める。
13時近くに、あんでるせん前に着いた。実に23年連続、23回目のあんでるせんである。このコロナ禍において遠出をしてしまい心苦しくはあるが、今年もこの地に着くことができたのはよろこばしい。
店頭には、まだ準備中の札が置かれている。ホントに13時からなのだ。
やがて、奥さん??らしきいつもの女性が開店を知らせに来ると、1階の待ち合わせルームから続々と人が出てきた。
ここは以前、マスターのご両親?が経営するお菓子屋で、その後クリーニング屋になったが、ここ数年は空室になり、現在は待ち合わせルームとして使われている。
入店すると、中は以前と変わらなかった。マスターが検温してくれ、1,000円の請求書が渡された。本当にもう、飲食の提供はないのだ。
私たちはとりあえず椅子に座る。すぐにでもマジックに入れそうだが、奧さん?が「店内の写真を撮られる方は、いまのうちに撮ってください」と言う。私もありがたく1枚パチリ。でもこれをブログに上げるかどうかは、別問題だ。
続いて「集金」である。私たちは奥さん?に1,000円を払う。これで完全に、マスターの余興ならぬ、おカネを払ってのマジックショーを見ることになるわけだ。
私たちは所定の位置に振り分けられた。私は「13」で、まあどこに立ってもいいのだが、できればお札や硬貨をカウンターに出せる距離にいたい。
と、カウンター5番席と6番席の後ろに1つ設けられた椅子席があてがわれた。実は5番、6番の女性と、私の右の14番、15番の男性が夫婦だったので、彼らのどちらかが13席に座ればよかった。6番の女性は、不気味な男性が後ろに座ったから、怪訝な顔をしていた。
マスターが登場した。1年振りのマスターだが、全然変わっていない。対して私はこの1年でハゲが進行し、白髪も増えた。もう完全な別人といってよく、マスターに合わせる頭がない。
マスターはおばけの手で驚かせたあと、指環を所望する。と、例の2組の夫婦がすぐに差し出した。
今回に向けて、予習は万全というところか。当然おカネも用意しているに違いなく、私がおカネを出す機会はなくなったと思った。
(つづく)
ヒトは、楽しみにしている日は早く来ればいい、と考えるものだろうか。
でもその楽しい日が過ぎれば、また空虚な日々が来るわけで、早い話、今回の長崎行きも私としては、来てほしいような来てほしくないような、複雑な気分だった。
しかし12月18日(土)はやってきた。今年も1泊2日の長崎旅行に出発である。
所持金は28,210円となった。お札は壱万円札が2枚、千円札が7枚である。しかしあんでるせんでは、二千円札と1円玉以外のお札と硬貨を用意したい。というわけで、あんでるせんに着くまでに、壱万円札を崩して五千円札を入手しなければならない。
しかし崩しすぎて千円札ばかりになったら、また壱万円札を崩さなければならない。だが2回目をやると、今度は壱万円札がなくなってしまう。それで出発直前に、もう1枚壱万円札を加え、38,210円とした。実はこれが結果的に微妙なドラマを生むのだが、それはもう少し先の話。
往路は昨年に続いて、スカイマークの羽田―神戸―長崎便を利用した。チケットの予約は早かったので、7,990円で済んだ。関係者に申し訳ないくらい安い。
早暁の上野東京ラインに乗り、品川で京急に乗り換えた。いままではモノレールを利用していたから、初の試みだ。ここから羽田空港までは300円という安さである。
空港でチェックインに臨むが、窓のない15Aか、外が見える29Bか30Bで迷った。が、30Bを選んだ。
席に向かうと、30Aにいたオッサンが盛大に脚を拡げ、偉そうにしている。肘掛けの肘も、こちら側に侵食している。私はおずおずと座るが、オッサンの態度は変わらない。前途多難を思わせた。
ちなみに30Cは真飛聖を思わせるインテリ風の女性が座ったが、前の席を見れば、29Aが若い女性、29Cが若い男性で29Bは空席。これなら29Bのほうがはるかに良かったが、まあ結果論だろう。
定刻に離陸。右の女性に関心をはらえば、まあ快適な空の旅である。
スカイマークでは飲み物の無料提供はないが、マスクとKit-Katのサービスがあった。
9時20分ごろ、神戸空港で一旦降機。チケット代が安いから、このくらいの手間はなんでもない。
空港から望む空は雲が山脈のように連なり、ちょっと異様である。「雲脈」とでもいうべきか。
9時30分ごろ、再搭乗。例のオッサンはやはりいた。どうもこのエリアは、全員長崎行きだったようである。
長崎空港は10時50分着だが、10分ほど遅れる、とのアナウンスがあった。そこで初めて気づいたのだが、例年は長崎空港発11時ちょうどの連絡バスに乗っていた。
だが今回の便だと、たとえ定刻に着いたとしても、11時発のバスには乗れない可能性が高い。今回はあんでるせん着が13時でいいから大勢に影響はないが、例年だったらけっこうマズイことになっていた。
飛行機は12分遅れで長崎空港に着いた。バス乗り場に行くと、川棚方面に行くバスは11時20分である――と待っていたのが錯覚で、その先のバス乗り場が川棚行きで、11時25分の出発だった。飛行機の到着時刻に合わせ、バスもダイヤ改正したのだろう。
しかし私も慌てたため、昨年に続き、またSuicaで乗ってしまった。
川棚バスセンターには、定刻の12時06分を数分遅れで着いた。降車は私を含む3人だったが、前のふたりはあんでるせんに行くのだろうか。
まだ時間があるので、この間に腹ごしらえである。駅前の歩道橋に上り、あんでるせんの全景を撮る。
川棚駅は、駅舎の一隅が軽食喫茶になっていた。でも雰囲気は変わっていない。
道路の反対側にある「まゆみ」という食事処に入った。ここ数年はあんでるせんでの食事が主だったから、「外食」は久し振りだ。
海鮮天丼(1,000円)を注文する。これは期待通り、美味かった。
会計の際、あえて壱万円札を出す。すると姐さんは、五千円札を含んだおつりをくれた。これで心置きなく、あんでるせんに臨める。
13時近くに、あんでるせん前に着いた。実に23年連続、23回目のあんでるせんである。このコロナ禍において遠出をしてしまい心苦しくはあるが、今年もこの地に着くことができたのはよろこばしい。
店頭には、まだ準備中の札が置かれている。ホントに13時からなのだ。
やがて、奥さん??らしきいつもの女性が開店を知らせに来ると、1階の待ち合わせルームから続々と人が出てきた。
ここは以前、マスターのご両親?が経営するお菓子屋で、その後クリーニング屋になったが、ここ数年は空室になり、現在は待ち合わせルームとして使われている。
入店すると、中は以前と変わらなかった。マスターが検温してくれ、1,000円の請求書が渡された。本当にもう、飲食の提供はないのだ。
私たちはとりあえず椅子に座る。すぐにでもマジックに入れそうだが、奧さん?が「店内の写真を撮られる方は、いまのうちに撮ってください」と言う。私もありがたく1枚パチリ。でもこれをブログに上げるかどうかは、別問題だ。
続いて「集金」である。私たちは奥さん?に1,000円を払う。これで完全に、マスターの余興ならぬ、おカネを払ってのマジックショーを見ることになるわけだ。
私たちは所定の位置に振り分けられた。私は「13」で、まあどこに立ってもいいのだが、できればお札や硬貨をカウンターに出せる距離にいたい。
と、カウンター5番席と6番席の後ろに1つ設けられた椅子席があてがわれた。実は5番、6番の女性と、私の右の14番、15番の男性が夫婦だったので、彼らのどちらかが13席に座ればよかった。6番の女性は、不気味な男性が後ろに座ったから、怪訝な顔をしていた。
マスターが登場した。1年振りのマスターだが、全然変わっていない。対して私はこの1年でハゲが進行し、白髪も増えた。もう完全な別人といってよく、マスターに合わせる頭がない。
マスターはおばけの手で驚かせたあと、指環を所望する。と、例の2組の夫婦がすぐに差し出した。
今回に向けて、予習は万全というところか。当然おカネも用意しているに違いなく、私がおカネを出す機会はなくなったと思った。
(つづく)