テレビ番組じゃあるまいし、ホテルを求めて佐世保の街をさまよい歩くのはイヤだ。
早岐のビジネス旅館は3,980円。しかも残り1室とあっては予約したくなる。ただ、すでに480円区間の切符を買っていたから、いくらかは無駄になる。それがどうにも腹立たしいが、ここは冷静に判断した。
18時13分、早岐で途中下車した。川棚からの料金は280円。純粋に200円の損で、川棚駅ではオレカの件など、いつも余計な出費をしてしまう。
早岐駅前に見覚えがあったが、そういえば「潮音荘」の文字にも見覚えがあった。ここも以前泊まったことがあるはずだ。
右手にうどん屋が見えてきた。「伊予製麺」だ。ここも同じ日に入っており、きょうも同じ行動となった。
釜揚げうどんの特大が欲しいが、ここにある大桶をセルフで取るのだろうか。
「それはこちらでやりますから」
と店員さん。ああ、前回も同じ注意を受けたことを思い出した。結局私は、進歩がないのだ。
釜揚げうどんとアジフライを美味しく食べ、潮音荘に入る。やはり以前泊まった宿だった。
応対は若旦那風の人がしてくれた。何となく、家族経営の気がした。
畳の部屋に旅装を解き、ほっと一息。あんでるせんの後は、またあと1年かと、いつも何とも言えない気持ちになる。
この日東京では、「千原ジュニアのタクシー乗り継ぎ旅」「出没!アド街ック天国」を放送しているが、放送局は東京ローカルなので、長崎ではリアルタイムの放送がない。
朝食は500円だったので、フロントに行き、注文した。
しかし部屋に戻ってもやることがない。
内風呂はないので大風呂に行くと、半円形の大舟に、ジャグジーがいくつか噴射している。独占状態で湯につかると、天下を取ったようで気分がいい。外風呂は不便ともいえるが、ゆったりできるからかえってよい。
風呂から出たらサッパリして、そのまま寝てしまった。
翌19日(日)。この日はフリーで、夕方までに博多に着けばよい。
宿は満室ではなかったようで、スマホの「残り1室」は、予約をあおるキャッチコピーだったようだ。
朝食は食堂で摂る。この食堂ももちろん見覚えがあり、以前も私ひとりだった。
魚の切り身が薄かったが、それもまた良しで、美味しくいただいた。
早岐では7時47分の列車に間に合った。タイム13分で佐世保着。きょうの天気は曇天で、降雨の雰囲気すらある。よって九十九島観光はやめにし、松浦鉄道に乗ることにした。
これにはもうひとつ訳がある。全国に40ある第3セクターが共同で、昨年7月から「鉄印帳」を始めた。全国的にブームになっているご朱印にあやかった企画だ。
詳細は分からないが、松浦鉄道は比較的老舗の第3セクターである。どうもブームに乗っかるようで味が悪いが、一番手に訪れる路線として、最西端にある松浦鉄道はふさわしいと思った。
が、松浦鉄道佐世保駅に行くと、窓口営業は午前9時からである。これなら宿でゆっくりすればよかったと思うが、ノープランだから仕方がない。なお私の経験から言うと、ノープランは誤算が多くなる。「行き当たりバッタリ」というと面白い旅に聞こえるが、実際は綿密な計画を立てたほうが、楽しい旅になる。
ここから北西に行けば、させぼ四ヶ町のアーケード街がある。私は日本全国を旅したが、偏見を承知で書けば、このアーケード街を歩く女子高生は、日本一の美しさだと思う。
だが雨がパラパラ降ってきて、私は駅前をうろうろするばかり。まさか傘は使わないと思ったから、用意していない。まったく間が悪い。
何とかアーケード街に入ったが、その中途にあるはずの、佐世保中央駅が見つからない。
いったん佐世保駅に戻ったりして、ようやっと佐世保中央駅前に着いたのは8時59分だった。味のある商店街の先に、へばりつくように佇む駅で、私が好きな駅のひとつである。
窓口が空いていたので、鉄印帳を所望する。しかし駅員さんいわく、佐世保駅とたびら平戸口のみの販売、記帳になるという。
鉄印帳の全容がよく分からないが、佐世保とたびら平戸口で、記帳の内容が変わるのだろうか。だとすると、ここまで歩いてきたのは失敗だったことになる。
とりあえず1日乗車券(2,000円)を買った。佐世保駅に戻る手はあるが、私はたびら平戸口に向かう。1日フリーとはいえ、博多に行くことを考えると、意外に時間はない。
車内は数人で、閑散としていた。松浦鉄道はJRから第3セクターに変換した際、駅数を32から57に増やし、列車本数も増やし、第3セクターの優等生となった。だが松浦鉄道も他の路線と同じく、過疎化とコロナ禍に苦しめられているようである。
沿線は高架もあるが木々の中を走り、風情は満点である。
9時50分、佐々で乗り換え。佐々駅舎はログハウス風だったが、現在改築中だった。その一隅に物品販売所があり、松浦鉄道では「西浦ありさ」を売りにしていた。
缶バッジがあったが、3つセットで600円は、ちょっと手が出ないところである。硬券の入場券を所望したが、「それはたびら平戸口で」と言われた。
19分の待ち合わせで、たびら平戸口方面に乗る。ここはちょっと混んでいたが、しばらくすると余裕で座れた。
タイム35分で、たびら平戸口に着いた。早速鉄印帳を買いたいが、駅員さんは改札業務に入っており、しかも市街方面へのバスが到着した。
ここでの滞在時間もはっきりしないが、最大3時間だろう。私はバスに乗ったが、どこまで行くべきか。平戸瀬戸市場を抜け、平戸大橋を抜けた。以前瀬戸市場を訪れたときは、中で購入したにぎりが新鮮で美味かった記憶がある。
平戸城に行く最寄りバス停でも降りそびれ、結局平戸新町まで行った。
この辺りも観光の宝庫なのだが、以前も訪れているので、新鮮味に欠ける。幸橋、というめでたい橋を愛でたあと、商店街に入ると、風情のある建物が目に入った。
観光用に遺しているものもあるのだろうが、日本人がほっとする風景である。
(つづく)
早岐のビジネス旅館は3,980円。しかも残り1室とあっては予約したくなる。ただ、すでに480円区間の切符を買っていたから、いくらかは無駄になる。それがどうにも腹立たしいが、ここは冷静に判断した。
18時13分、早岐で途中下車した。川棚からの料金は280円。純粋に200円の損で、川棚駅ではオレカの件など、いつも余計な出費をしてしまう。
早岐駅前に見覚えがあったが、そういえば「潮音荘」の文字にも見覚えがあった。ここも以前泊まったことがあるはずだ。
右手にうどん屋が見えてきた。「伊予製麺」だ。ここも同じ日に入っており、きょうも同じ行動となった。
釜揚げうどんの特大が欲しいが、ここにある大桶をセルフで取るのだろうか。
「それはこちらでやりますから」
と店員さん。ああ、前回も同じ注意を受けたことを思い出した。結局私は、進歩がないのだ。
釜揚げうどんとアジフライを美味しく食べ、潮音荘に入る。やはり以前泊まった宿だった。
応対は若旦那風の人がしてくれた。何となく、家族経営の気がした。
畳の部屋に旅装を解き、ほっと一息。あんでるせんの後は、またあと1年かと、いつも何とも言えない気持ちになる。
この日東京では、「千原ジュニアのタクシー乗り継ぎ旅」「出没!アド街ック天国」を放送しているが、放送局は東京ローカルなので、長崎ではリアルタイムの放送がない。
朝食は500円だったので、フロントに行き、注文した。
しかし部屋に戻ってもやることがない。
内風呂はないので大風呂に行くと、半円形の大舟に、ジャグジーがいくつか噴射している。独占状態で湯につかると、天下を取ったようで気分がいい。外風呂は不便ともいえるが、ゆったりできるからかえってよい。
風呂から出たらサッパリして、そのまま寝てしまった。
翌19日(日)。この日はフリーで、夕方までに博多に着けばよい。
宿は満室ではなかったようで、スマホの「残り1室」は、予約をあおるキャッチコピーだったようだ。
朝食は食堂で摂る。この食堂ももちろん見覚えがあり、以前も私ひとりだった。
魚の切り身が薄かったが、それもまた良しで、美味しくいただいた。
早岐では7時47分の列車に間に合った。タイム13分で佐世保着。きょうの天気は曇天で、降雨の雰囲気すらある。よって九十九島観光はやめにし、松浦鉄道に乗ることにした。
これにはもうひとつ訳がある。全国に40ある第3セクターが共同で、昨年7月から「鉄印帳」を始めた。全国的にブームになっているご朱印にあやかった企画だ。
詳細は分からないが、松浦鉄道は比較的老舗の第3セクターである。どうもブームに乗っかるようで味が悪いが、一番手に訪れる路線として、最西端にある松浦鉄道はふさわしいと思った。
が、松浦鉄道佐世保駅に行くと、窓口営業は午前9時からである。これなら宿でゆっくりすればよかったと思うが、ノープランだから仕方がない。なお私の経験から言うと、ノープランは誤算が多くなる。「行き当たりバッタリ」というと面白い旅に聞こえるが、実際は綿密な計画を立てたほうが、楽しい旅になる。
ここから北西に行けば、させぼ四ヶ町のアーケード街がある。私は日本全国を旅したが、偏見を承知で書けば、このアーケード街を歩く女子高生は、日本一の美しさだと思う。
だが雨がパラパラ降ってきて、私は駅前をうろうろするばかり。まさか傘は使わないと思ったから、用意していない。まったく間が悪い。
何とかアーケード街に入ったが、その中途にあるはずの、佐世保中央駅が見つからない。
いったん佐世保駅に戻ったりして、ようやっと佐世保中央駅前に着いたのは8時59分だった。味のある商店街の先に、へばりつくように佇む駅で、私が好きな駅のひとつである。
窓口が空いていたので、鉄印帳を所望する。しかし駅員さんいわく、佐世保駅とたびら平戸口のみの販売、記帳になるという。
鉄印帳の全容がよく分からないが、佐世保とたびら平戸口で、記帳の内容が変わるのだろうか。だとすると、ここまで歩いてきたのは失敗だったことになる。
とりあえず1日乗車券(2,000円)を買った。佐世保駅に戻る手はあるが、私はたびら平戸口に向かう。1日フリーとはいえ、博多に行くことを考えると、意外に時間はない。
車内は数人で、閑散としていた。松浦鉄道はJRから第3セクターに変換した際、駅数を32から57に増やし、列車本数も増やし、第3セクターの優等生となった。だが松浦鉄道も他の路線と同じく、過疎化とコロナ禍に苦しめられているようである。
沿線は高架もあるが木々の中を走り、風情は満点である。
9時50分、佐々で乗り換え。佐々駅舎はログハウス風だったが、現在改築中だった。その一隅に物品販売所があり、松浦鉄道では「西浦ありさ」を売りにしていた。
缶バッジがあったが、3つセットで600円は、ちょっと手が出ないところである。硬券の入場券を所望したが、「それはたびら平戸口で」と言われた。
19分の待ち合わせで、たびら平戸口方面に乗る。ここはちょっと混んでいたが、しばらくすると余裕で座れた。
タイム35分で、たびら平戸口に着いた。早速鉄印帳を買いたいが、駅員さんは改札業務に入っており、しかも市街方面へのバスが到着した。
ここでの滞在時間もはっきりしないが、最大3時間だろう。私はバスに乗ったが、どこまで行くべきか。平戸瀬戸市場を抜け、平戸大橋を抜けた。以前瀬戸市場を訪れたときは、中で購入したにぎりが新鮮で美味かった記憶がある。
平戸城に行く最寄りバス停でも降りそびれ、結局平戸新町まで行った。
この辺りも観光の宝庫なのだが、以前も訪れているので、新鮮味に欠ける。幸橋、というめでたい橋を愛でたあと、商店街に入ると、風情のある建物が目に入った。
観光用に遺しているものもあるのだろうが、日本人がほっとする風景である。
(つづく)