一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

第4期マイナビ女子オープン・一斉予選対局⑤・予選決勝(前編)

2010-07-23 00:16:05 | 観戦記
久津知子女流初段-山口恵梨子女流初段戦が最終盤にさしかかっていたころ、私は懸賞金スポンサーの受付で、最後の手続きをしていた。すなわち松尾香織女流初段-熊倉紫野女流初段戦である。まあ、どちらが勝っても構わない。
15時45分、対局場に入り、選手の入場を待つ。15時50分、選手が入場し、所定の席の前で一礼したあと、着席した。さあ、この一番である。1回戦を勝っても、ここで負けては意味がない。勝てばみんなで記念写真。負けたらその場でサヨウナラ。まさに天国と地獄を分ける一戦だ。
記録係が振り駒を行う。先手か後手か。これも勝敗に微妙に影響する。上位者の駒を振るが、振ってその駒を戻すとき、盤上にパラッとまく記録係がいた。ここは1枚1枚、静かに盤上に置きたいところである。
15時59分、いよいよ予選決勝の対局開始となった。私は松尾女流初段-熊倉女流初段の前に立つ。先手は松尾女流初段。☗7六歩☖3四歩☗6六歩…。相振り飛車がほぼ確定したところで、ほかを見て回る。
16時07分。スタッフが懸賞札を立てに来た。松尾-熊倉戦はと見ると…えっ!? ご…ごほん!? 5本も立ったの!? な、なんだ、これなら私が懸賞金を懸けなくてもよかったんじゃないか。熊倉女流初段は現在「囲碁・将棋ジャーナル」の司会をしており、その影響も大きいと思われるが、それにしてもこの数は想定外だった。ともあれ松尾女流初段、この将棋に勝てば、懸賞金だけで最高級のマッカランが買える。頑張ってもらいたい。
鈴木環那女流初段-藤田綾女流初段戦は、7本も立っている。1回戦の鈴木-室田伊緒女流初段戦は8本立ったから、もう7本でも驚かないが、やはり鈴木女流初段の人気によるものが大きい。
その鈴木女流初段、盤から体を少し離し、左肘を肘掛けにつき、体をややこちら側に向けて考えている。つまり私たちは、鈴木女流初段の全身を余すことなく鑑賞できるわけだ。
これがもし、ファンの視線を承知の上での対局姿勢だったとしたら、鈴木女流初段、大したプロ根性と言わねばならない。
里見香奈女流名人・倉敷藤花-長沢千和子女流四段戦は、里見女流二冠の振り飛車に、長沢女流四段が居飛車で対抗していた。長沢女流四段は対抗形が好みだったのか。
竹部さゆり女流三段-長谷川優貴アマ戦は、長谷川アマが落ち着いて指しているが、相手は実力者の竹部女流三段である。どこまで迫れるか。
早水千紗女流二段-本田小百合女流二段戦、清水市代女流王将-井道千尋女流初段戦は、対局場所が部屋の隅にあたるので、見えづらい。本田女流二段は、さすがのかわいらしさ。井道女流初段も、なかなか魅力的である。
16時17分。懸賞金を数えつつ(現在は26本)、一通り見回ったが、やはり鈴木女流初段のもとへ戻ってしまう。その思考ポーズは先ほどからまったく変わっていない。コーディネートはオレンジを基調とした涼しげなもので、かわいらしいヒザ小僧が見えている。しかし表情は真剣そのもの。どことなく、ウチのオフクロの若いころに雰囲気が似ている。それはともかく、まさに絵になる感じで、まるで画家の前でポーズを取っているかのようだ。これは環那ファンでなくても、見入ってしまう。もしファンだったら、その場を離れることができないだろう。
松尾女流初段、マイナビマグカップにペットボトルのお茶を注ぎ、ハンカチを腿の上に置いた。鈴木女流初段のスカートはそこまで短くないので、ハンカチで隠すには及ばない。これも計算だとしたら、大したものだ。
将棋ペンクラブの幹事氏が、「週刊将棋」を手にしている。最新号の早刷りがもう上がったらしい。私がマイナビから1部いただいても、バチは当たらないと思うのだが。
中井広恵女流六段-北尾まどか女流初段戦。LPSAの前代表理事と、元LPSAの対戦である。将棋は、北尾女流初段得意のレグスペ(角交換四間飛車穴熊)に、中井女流六段が銀冠を目指している。☗6七金、と軽やかに指した。まだ勝負はこれからである。
16時21分。村田智穂女流初段-山口恵梨子女流初段戦に懸賞金が2本追加され、計4本になった。しかしそのうちの1本の懸賞札の、デザインが違う。どうも今回新調した懸賞札が「品切れ」になってしまったようだ。今期の懸賞金は、前期より多くなることは確実だった。ちょっと、マイナビスタッフの読みが甘かったようだ。
村田女流初段が席を外す。関係者が山口女流初段をあらゆる角度から撮り放題にできる、絶好のチャンスだ。カメラマンになりたいと思う。
その山口女流初段は2局連続、中飛車穴熊。涼やかな山口女流初段に穴熊は似合わない。美濃囲いで軽快に指してほしいと思う。
16時28分。高群佐知子女流三段-山田朱未女流二段戦。山田女流二段が力強い手つきで指す。加藤一二三九段のようだ。高群女流三段は右ひじをテーブルにつき、その手をコメカミに当てている。高群女流三段のお嬢さんは先のチャレンジカップに参加したが、惜しくも通過はならなかった。高群女流三段、ここは予選を通過して、母親の威厳を示したいところだろう。
16時31分。熊倉女流初段も穴熊に囲っている。しかし熊倉女流初段の穴熊は容認する。名前に「熊」が入っているから。
その左の対局の鈴木女流初段は、相変わらず、例のポーズで考慮中。むかし鈴木女流初段と上田初美女流二段が、将棋ペンクラブの関東交流会に顔を見せたことがあった。ふたりがいまも仲良しかどうかは知らぬが、上田女流二段は今期、シードである。ふたりの実績も開きつつあり、鈴木女流初段は早く上田女流二段に追い付きたいところであろう。
14時34分。中井-北尾戦。あまり局面が進んでいない。中井女流六段、厳しい顔だ。…あっ!! 私は15日の当ブログで、中井女流六段の子供のころのことを「イモ中学生」と書いた。昼にお会いしたときから厳しい顔だったが、まさか中井女流六段、あの文章をネに持っていたのだろうか。
ここにいてはあぶない。入口右手で指されている、夢の高校生対決を見に行く。そのひとり、小野ゆかりアマは十分高校生オーラを発しているのだが、今回は相手がわるい。AKB48で個人写真集でも出しそうな、パーフェクト室谷由紀女流2級が相手なのだ。
その室谷女流2級、今度は「京都福寿園 伊右衛門」のペットボトルを傍らに置いている。
16時39分。対局場(マイナビルーム)奥の、蛍光灯の一部が一斉に消えた。しかし対局者は盤面に集中している。きっと地震が起きても、みな微動だにしないのだろう。
蛍光灯が再点灯した。前より明るくなった気がする。中倉宏美女流二段-大庭美樹女流初段のLPSA対決はどうなっているだろう。LPSAの予選成績は毎年ひどいが、今期1回戦は4勝4敗であった。本局、LPSA同士の予選決勝は初めてではないか。
こちらは懸賞金が4本。うち2本は、「イレギュラー」のデザインである。
局面は、大庭女流初段が得意の右玉に構えているが、四段目に歩が一列並んでいる。「四段目の歩一列」といえば、第50期A級順位戦・大山康晴十五世名人-高橋道雄九段の一局を思い出す。この将棋、先手の大山十五世名人が☗8五桂ハネで1歩ドクしたあと、「四段目(六段目)の歩一列」を完成させた。
中倉-大庭戦は、中倉女流二段が☗4六歩と突けば、こちらも「四段目…」の完成となるが、そうはならないだろう。
室谷-小野戦に戻る。室谷女流2級は昨年10月仮デビューながら、本局は相手がアマのため、上座(入口から遠いほう)に座っている。そんな室谷女流2級の靴を見ると、ピカピカである。昨年、東京・将棋会館で行われた「LADIES HOLLY CUP」で、当時高校生だった山口女流初段の対局姿を拝見したが、そのとき彼女がはいていた学生靴を思い出した。将棋は小野アマの端攻めが決まり、大優勢である。
この位置から中倉-大庭戦を見る。両者とも黒のLPSAブレザーを着用しているので、ここからだと告別式の席に見える。
村田-山口戦。山口女流初段が前局同様、うつむいて考えている。彼女は背が高いから、座高もある。姿勢もいいから盤を上から見る形になり、うつむいてしまうのだ。
16時51分。今年3月にLPSAを退会した、藤田麻衣子さんの姿が見える。藤田さんが退会しなければ、いまこの対局席にすわっていたかもしれない。ご本人の胸中、いかばかりだろうか。
山口女流初段のペットボトルもお茶。「龍鳳」か「龍凰」か、よく見えない。その背中合わせに室谷女流2級がいる。もし山口女流初段が高校の夏服だったら、最高だったのにと思う。しかしもう彼女は「女子高生」ではない。なにか世代交代を見るようである。
16時54分。まず、北尾女流初段の秒読みが始まった。
(つづく)
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第4期マイナビ女子オープン・一斉予選対局④・1回戦午後(後編)

2010-07-22 00:38:51 | 観戦記
里見香奈女流名人・倉敷藤花-藤井敬子アマ戦は、里見女流二冠が最後は勝つのだろうが、意外といい勝負になっている。将棋は強いほうが勝つとは限らない。
14時20分。中倉彰子女流初段-小野ゆかりアマ戦。先ほどは、中倉女流初段が飛車を切り、☗6三銀と詰めろに迫ったが、いまは小野玉が「8二」から「5四」にワープしている。いったい何があったのか。
周りを見渡すと、観客が増えてきた。午後から入場した客もいるのだろう。
14時25分、中倉-小野戦を再び見に行くと、すでに終わっていた。小野アマの逆転勝ちであろう。中倉女流初段、28日の日レスカップ・林葉直子戦は大丈夫だろうか。
中井広恵女流六段-山口絵美菜アマ戦は、山口アマもよく指しているが、中井女流六段が押し切りそうだ。藤井アマは、まだ頑張っている。
中井女流六段が、ひときわ高い駒音で着手する。と、山口アマが投了を告げた。14時30分00秒。やはり女流六段の壁は厚かった。
同じ山口姓の山口恵梨子女流初段は、久津知子女流初段を相手に、うつむきながら考えている。制服は着ていないものの、やはり可憐だ。
竹部さゆり女流三段-岩根忍女流二段戦。岩根女流二段が迷いつつ着手し、その手をうしろへ回した。
中倉宏美女流二段-関根紀代子女流五段戦。長い長い中盤戦がすぎ、ようやく局面がほぐれてきた。中倉女流二段、勇躍飛車を成る。これは中倉女流二段が優勢だ。
14時35分。村田智穂女流初段-里見咲紀アマ戦が感想戦に入っている。カメラは里見アマを追っているが、将棋は村田女流初段が勝ったようだ。勝っても負けても写真を撮られるということは、人気がある証だ。
岩根女流二段の表情が心なしか険しい。駒台の駒と駒の間にスペースを空け、そこに相手の駒を置き、自分の手を進めた。谷川浩司流の、流れるような所作である。やはり奨励会経験者は、ほかの女流棋士と一味違う。しかし形勢はよくないように思う。
中倉女流二段、2枚目の竜を作った。これは中倉女流二段の勝勢。チャレンジカップへの逆戻りを回避しそうだ。
14時40分。テレビカメラが山口女流初段をジーッと映している。さぞ撮り甲斐があろう。テレビカメラマン氏、振り返って、今度は岩根女流二段を映している。仕事とはいえ、うらやましい。
里見-藤井戦は、意外と時間がかかっている。もう少し早く勝負がつくと思っていた。
野月浩貴七段がいらっしゃる。渡部愛アマの「☗1七桂」について、私の見解を小声で話す。
いっしょにいた金曜サロン会員のW氏が、
「カオリン(松尾香織女流初段)がさ、なんでワタシに懸賞を懸けてくれないの、って怒ってたよ」
と小声で言う。私がやたらLPSAの女流棋士に懸けているのに、松尾女流初段には懸けていないので、それはおかしい、ということらしい。
「倉敷藤花戦でマッカランを買わずに済んだんだから、次は懸けて、って言ってたよ」
とW氏。
大きなお世話である。倉敷藤花戦は、「ベスト4」でマッカラン贈呈なのを、「ベスト16でもマッカラン12年」と、途中でハードルを下げたのだ。それでも勝てなかった彼女がわるいのだ。もっともそのときの対戦相手は、男性プロ七段にも勝つ甲斐智美女王・女流王位だったが、それは関係ない。マッカランは旦那様に買ってもらいなさい旦那様に!
14時44分。長沢千和子女流四段-山田久美女流三段戦が終わっている。これは長沢女流四段の勝ちであろう。私は穴熊を好まないが、長沢女流四段の振り飛車穴熊は豪快な捌きが身上で、好きである。もっとも本局は美濃囲いだった。
渡部アマがいらしたので、声をかける。つぶらな瞳が魅力的である。しかし午前の将棋で惜敗し、さすがに元気がない。
現在彼女は高校2年生。金曜サロンなどで4局ほど指したことがあり、ファンというより、好敵手という感じである。しかし間近で拝見すると、やっぱりかわいい。
「また来年がんばればいいよ」
と慰めておく。金曜サロンの会員がいない場で、こうして渡部アマの点数を稼いでおくことが肝心なのである。
貞升南女流1級-長谷川優貴アマ戦、関根-中倉戦が終わった。長谷川アマと、中倉女流二段の勝ち。長谷川アマの棋力は分からぬが、殊勲の銀星といえよう。中倉女流二段は来期のチャレンジカップ回避。これは嬉しい勝利だったろう。
熊倉紫野女流初段が目に入る。知人と観戦中だ。現在NHKBS2の「囲碁・将棋ジャーナル」で司会をしている彼女は、当然きょうは休みである。そのピンチヒッターは矢内理絵子女流四段が務めている。
ところで松尾女流初段の相手が、熊倉女流初段である。なんとなく気になってしまう。
大庭美樹女流初段-渡辺弥生女流2級との将棋は、大庭女流初段が先ほどまで優勢に見えたが、大庭女流初段の表情が厳しくなっている。
優劣不明に見えた久津-山口戦は、久津陣に火がついている。山口女流初段の手がしなってきた。
うむ、とうなずいて後ろを振り返ると、熊倉女流初段と目が合った。
「く、熊倉先生、次は先生に懸賞金1本懸けますから。絶対に勝ってください!!」
船戸陽子女流二段へ懸ける予定だった1万円が、こちらへ移った。そして自動的に、松尾女流初段にも懸賞金を懸けたことになった。
14時50分。竹部-岩根戦が終了したようだ。岩根女流二段のこぼれるような笑顔がよい。これは岩根女流二段の勝ちか。
北尾まどか女流初段-中村桃子女流1級戦が終わったようだ。先ほどは中村女流1級が☖8五桂と跳ねていたが、ちょっと攻めが細いように思った。その流れだと、たぶん北尾女流初段の勝ちだろう。
さらに大庭-渡辺戦、里見-藤井戦も相次いで終わった。大庭女流初段、里見女流二冠の勝ち。どちらも優勢の将棋から押し切った、というところだろう。
うん…? 竹部-岩根戦は、竹部女流三段の勝ちだった。じゃあ岩根女流二段の笑顔は何だったのだろう。厳しい局面から解放され、癒し系の素顔が出たか。とにかく第2期の挑戦者が、今年は予選1回戦で姿を消した。
これで残るは、久津-山口戦、1局のみとなった。久津女流初段が決め手を与えず、粘っている。
15時06分。里見-藤井戦は、まだ感想戦をやっている。それは午前の松尾女流初段-小川詩織アマ戦のように、プロがアマに心ゆくまで将棋を教えているようであった。
15時16分。久津-山口戦はまだ続いている。秒読みの1分は長い。社団戦なら、1手20秒に短縮されているところだ。最初は閑散としていたこのカード、いまは場内にいるすべての観客が、この将棋を観戦している。この黒山では、山口女流初段を鑑賞できない。
入口近くのテーブルで、予選決勝の勝者予想を記入する。鉄板のカードもあれば、どちらか迷うカードもある。今期でいえば、早水千紗女流二段-本田小百合女流二段、中倉宏美女流二段-大庭美樹女流初段、室谷由紀・新女流2級-小野ゆかりアマあたりがむずかしい。本田女流二段、中倉女流二段、室谷女流2級を応援したいが、勝敗は逆になりそうな気がする。
こうした予想がむずかしいのは、非情に徹することができないからだと思う。やっぱり私情が入ってしまう。大庭美樹女流初段の実姉、大庭美夏女流1級がいらした。まことに書きにくいが、勝者欄に「中倉」と書く。けっきょく、どれも私情を優先した。
久津-山口戦はまだ続いているが、これだけ長い将棋を指しては、次の将棋に影響が出る。決勝の相手は村田智穂女流初段だが、どちらが出ても村田女流初段の前に屈すると思った。
勝者予想投票を終え、対局場に戻る。15時25分、最後の予選1回戦が終わった。山口女流初段の勝ち。
予選決勝は30分遅れの、16時からとなった。
(つづく)
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第4期マイナビ女子オープン・一斉予選対局③・1回戦午後(前編)

2010-07-21 00:31:25 | 観戦記
1回戦午後の、懸賞金スポンサーの手続きを行う。5月、ここマイナビルームLで行われた予選組み合わせ抽選会で、宇治正子女流三段に整理券を引いてもらった私は、中村桃子女流1級の色紙を引き当てた。その御礼として、中村女流1級に1口懸ける。北尾まどか女流初段-中村戦。
さらに前述のとおり、今回は「日レスインビテーションカップに招待された女流棋士」に懸けるので、渡辺弥生女流2級にも1口。すなわち、大庭美樹女流初段-渡辺戦。「招待された女流棋士」には中村女流1級も入るから、中村女流1級には2口懸けなければいけないが、彼女には昨年も懸けているから、1口で構わない。
さらにこれも以前書いたが、5月に行われた「チャレンジカップ」、これに関して私は、女流棋士はひとりも通過しないと断言した。しかし結果は案に相違して、3名が通過。その方々には非礼とお詫びの意味もこめて、全員に懸ける。
まず、前述の渡辺女流2級の相手が大庭女流初段なので、ここは両者で1万円を争奪していただく。
そして地獄から這い上がってきた形の中倉宏美女流二段に1口。関根紀代子女流五段-中倉戦。関根女流五段は女流棋士会の代表的存在だ。
前日、LPSA金曜サロンで頑張ってくれた鹿野圭生女流初段にも1口。相手は室谷由紀女流3級。デビュー時から注目していた美少女棋士で、8月に発表予定の「第3期・女流棋士ファンランキング」にランクイン予定である。このカードも、どちらが勝っても構わない。
午後の部は以上の4口。船戸陽子女流二段が1回戦で勝ったら予選決勝に懸けるつもりだったが、叶わなかったので、今期の懸賞金はこれで打ち止めである。
1階まで降り、コンビニで500mlパックのジュースを買う。ペットボトルより数十円安い。これは大きい。ちなみにここ竹橋(駅)へは地下鉄を利用したが、金券ショップで190円の切符を150円で買い、往復2枚で80円を浮かした。こういう細かい積み重ねが大事である。
9階に戻り、今度こそ選手より前に対局場に入る。12時50分、選手が入場、所定の位置に着いた。
いきなり目を惹いたのが、室谷女流3級とその制服である。半袖のピンクのブラウスにエンジのリボン。チェック柄のミニスカートに、紺のハイソックスの組み合わせが素晴らしい。最近復活気味の、ルーズソックスでないのもよい。長い髪は左側へ垂らされ、同じくリボンでまとめられている。
パーフェクトである。コスプレと見紛うような、パーフェクトないでたちである。まるで学園ドラマに出てきそうだ。本当にこの姿で、彼女は毎日授業を受けているのだろうか。彼女の高校が共学か女子校かは知らないが、もし共学なら、そこの男子は毎日学校へ行くのが楽しくてしょうがないだろう。
室谷女流3級、ペットボトルの「からだ生活」を、傍らのカップに注いだ。
私がひとりで鼻息を荒くしている中、12時59分、対局開始。
鹿野女流初段☗7六歩に、室谷女流3級☖3四歩。鹿野女流初段☗6六歩と角道を止めると、室谷女流3級☖3五歩と伸ばす。これは相振り飛車が濃厚だ…と、この将棋ばかり見るわけにはいかないので、移動する。
関根-中倉戦は、中倉女流二段に化粧ッ気が全然ない。表情もいつになく厳しく、私がいままで拝見した中で、最もイケテナイ顔であった。スカートは意外と短い。勝負スカートか。黒のLPSAブレザーはともかく、この勝負に賭ける意気込みが窺える。中倉女流二段の顔が、なぜか魅力的に見えてきた。
関根女流五段が、記録係に何か話しかけている。振駒の始終を見ていた金曜サロン会員氏によると、関根女流五段の振り歩先で、歩が2枚、と金が1枚、残りの2枚が重なったらしい。そこで記録係が「関根先生の歩が2枚です」と言ったものだから、関根女流五段はどちらが先手か確かめたらしい。
駒が重なった場合、その駒は数えないらしく、今回は関根女流五段の先手。関根女流五段にはゼンカがあるし、中倉女流二段だって先に指してしまうかもしれず、会員氏はハラハラしたという。「○○女流○段の先手です」とハッキリ宣言しない記録係がよくなかった。
久津知子女流初段-山口恵梨子女流初段戦。昨年は山口女流初段の制服姿にムラムラし、予定外の懸賞金を懸けてしまった。山口女流初段は、今年高校を卒業してしまったが、その魅力は変わらない。しかし今年は残念ながら、懸ける予算がない。ギャラリーがほとんどいないのが、不可解だった。
その左の長沢千和子女流四段-山田久美女流三段も、オジサン世代にはたまらない好カードである。
13時17分。辺りを見回すが、あまり観客がおらず、閑散としている。今年は昨年以上の観客が集まるとフンでいたが、いいところ昨年どまりの気がしてきた。
中井広恵女流六段-山口絵美菜アマ戦。山口アマの大会戦績はよく知らないが、これは指導対局の趣がある。しかし山口アマの振り飛車に、中井女流六段の採った囲いは居飛車穴熊。相手が誰でも全力を尽くす、というところだが、最近中井女流六段は穴熊の採用が多い。なにか心境の変化があったのだろうか。
入場時に配られた、組み合わせ表を見てみる。★印が打たれている女流棋士がある。最初はLPSA女流棋士のことかと思ったが、そうでもない。「今回1回戦負けだと、次回チャレンジマッチからの出場とあります」との説明がある。今期予選出場組では、7名が該当する。午前の対局では、逆リーチの高群佐知子女流三段、松尾香織女流初段が、そろってチャレンジマッチ行きを回避した。午後の5名はどうだろうか。
13時28分。竹部さゆり女流三段-岩根忍女流二段戦を見る。岩根女流二段は頬から顎のあたりがスッキリして、また一段と美しくなった。ダイエットをした、という感じではなく、ふだんの生活の中で自然に痩せた、という感じだ。20代の若奥様。理想的な歳の取り方である。
ここまでの消費時間は、竹部女流三段が25分、岩根女流二段が5分。岩根女流二段、序盤は飛ばしていく考えか。いまは人差し指から薬指まで、3本の指を口元にあてて考えている。まるで絵画のモデルのようだ。私が出版社に勤めていたら、間違いなく岩根女流二段を、女性誌の表紙に推す。「VERY」あたりでどうだろう。
そんな思いにふけりながら、両隣の山田-長沢戦、久津-山口戦を見ると、3局とも懸賞金がない。ちょっと信じられない。
ほかの懸賞札を数えてまわると、合計24本あった。鹿野-室谷戦の7本が最高。北尾-中村戦の5本、関根-中倉戦の4本と続く。大庭-渡辺戦も、3本立っている。その全部に私が絡んでいるのだが、まあそれはとにかく、今年の懸賞金は一「局」集中傾向にあるようだ。
13時35分。貞升南女流1級-長谷川優貴アマ戦は、長谷川アマの振り飛車に貞升女流1級が急戦を仕掛けていた。対振り飛車といえば穴熊が定番の女流棋界において、貞升女流1級の棋風は貴重である。以前ある男性棋士が、貞升女流1級の将棋をほめていたが、それは彼女が玉の薄い将棋、勝つまでに汗をかく将棋を指しているからだろう。本局は「9九」に角を成りこんで、貞升女流1級が有利に見える。
いっぽうの長谷川アマは、足をきちんと揃えて、対峙している。しっかりした対局態度だ。
13時38分。鹿野-室谷戦は、室谷女流3級が席を外している。局面を見ると、室谷女流3級の端攻めが決まり、一方的に竜とと金を作っている。これは早くも大勢が決している。鹿野女流初段の拙戦には、私たちにも多少の責任がある。室谷女流3級が勝つのは構わないが、鹿野女流初段にはもう少し踏ん張ってもらいたい。
☗中井-☖山口戦は、おかしなことになっている。山口アマがのびのび指し、☗2八飛、☖2五飛☖2六歩の形。後手の飛車先突破が約束されている。これでは指導対局どころか、山口アマが優勢に見える。この位置で中井女流六段が負けたら、周りから何を言われるかわからない。
13時52分、村田智穂女流初段-里見咲紀アマ戦。ナナメうしろから見た咲紀アマの手つきが、お姉さんの香奈女流名人・倉敷藤花とそっくりだ。そう思えば、シルエットも香奈女流二冠にそっくりである。予選抽選会のとき、香奈女流二冠は、もし妹さんと対局がついたら?と問われ、「叩きます」と言った。いまの本音は、とりあえず本戦に進出しなさい、というところだろう。
その里見女流二冠の相手は、藤井敬子アマ。女流棋界の若きタイトルホルダーに、どこまで迫れるか。
13時56分。関根-中倉戦は、大して局面が進んでいない。中倉女流二段が慎重に指している。わるくならない指し手を選んでいる、と言うべきか。
長沢-山田戦は、山田女流三段が自陣に駒を打っている。これは苦しい形勢か。
14時00分。鹿野-室谷戦が終了。室谷女流3級の完勝だった。開始から1時間、あまりにも早い。鹿野女流初段にはわるいが、もう少し室谷女流3級を観賞したかったところである。
中倉彰子女流初段-小野ゆかりアマ戦は、高校生相手に、中倉女流初段が着実に有利を拡げている。出産のブランクはまったく感じない。
久津-山口戦は、あいかわらずギャラリーが少ない。うつむき加減で考えている山口女流初段の姿がまばゆい。チャンスとばかり、しっかり拝見する。
北尾-中村戦。北尾女流初段は、また痩せたようだ。社長業として忙しい日々を送り、睡眠時間もないのではないか。とにかく体調には気をつけてもらいたい。
14時12分。気がつくと、秒読みの声があちこちで聞こえている。
(つづく)
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第4期マイナビ女子オープン・一斉予選対局②・1回戦午前(後編)

2010-07-20 00:39:48 | 観戦記
11時17分、鈴木環那女流初段-室田伊緒女流初段戦が終わった。鈴木女流初段の勝ち。室田女流初段の素敵四間飛車を、居飛車穴熊に囲ってから撃破した。懸賞金8万円(手取りはやや少なくなる)のボーナスは大きい。
本田小百合女流二段-島井咲緒里女流初段戦は、先ほどまで島井女流初段が劣勢に見えたが、いまは敵陣に食らいついている。前期の1回戦も、苦戦の将棋を穴熊流の食いつきで逆転している。本田女流二段と島井女流初段、どちらも応援しているが、やはりマイナビ女子オープンでは島井女流初段に勝ってほしい。
11時21分。松尾香織女流初段-小川詩織アマ戦は感想戦に入っている。これは松尾女流初段の勝ちであろう。小川アマとのやりとりは、指導対局で先生が生徒に教えているかのようだった。
その3分後、中村真梨花女流二段-山口真子アマ戦が終わり、中村女流二段の勝ち。これもプロ側の貫禄勝ちであろう。
11時30分。本田-島井戦の感想戦が始まっている。あれから本田女流二段がと金と二枚飛車で攻めていたから、これも本田女流二段の勝ちであろう。昨年は本戦入りの島井女流初段、初戦で姿を消す。女優を思わせる記念撮影は、今年はならなかった。
井道千尋女流初段-浅野法子アマも感想戦に入っている。これも井道女流初段の勝ちであろう。しかし堅固な井道陣の穴熊を崩していたから、浅野アマの実力も相当である。やはりチャレンジカップを勝ち抜いただけのことはあった。
短い感想戦を終え、本田女流二段と島井女流初段が席を立った。私はこのおふたりと写真に収まる権利があるのだが、それは放棄している。いざ目の前にすると、後悔がなくもないが、負けて悄然としている島井女流初段に、無理に笑顔を作ってもらって、3ショットで収まっても意味がない。記念撮影回避は冷静な判断だったと思う。
11時45分。清水市代女流王将-船戸陽子女流二段戦は、船戸女流二段もと金を作って迫っているが、いかんせん戦力不足。清水女流王将の勝勢だ。
11時46分、ひっそりと指されていた石高澄恵女流二段-熊倉紫野女流初段戦も終了。熊倉女流初段の勝ち。
11時55分。気になる藤田綾女流初段-渡部愛アマ戦は、渡部アマが端に綾をつけて、戦線を拡大している。しかし藤田女流初段の玉が広く、苦戦は否めない。
駒台を見ると、渡部アマの駒は整然と並べられている。勝敗はともかく、こうした所作は中井広恵女流六段や石橋幸緒女流四段の教えの賜物だろう。
ところで渡部アマは夏用の制服を着用していたが、ブラウスは長袖である。それを肘のあたりまでまくり上げている。ちょっと冷房が弱いのだ。もっとも、対局場の熱気もすごい。
11時58分。安食総子女流初段-新藤仁奈アマ戦は、安食女流初段の勝ち。このふたりは先の女流王将戦でも対戦し、安食女流初段が勝ち名乗りを上げたが、返り討ちにした。
反対側にとって返すと、高群佐知子女流三段-室谷早紀アマ戦は終了しており、駒も片付けられていた。時間の関係で感想戦は省略したのだろうか。これは高群女流三段の勝ちであろう。
誰かに腕をポン、と叩かれる。振り返ると将棋ペンクラブの幹事氏である。指を差すので、その先を見ると、山口恵梨子女流初段が観戦している。もう高校生でないとはいえ、可憐である。近寄りたいが、近寄りがたい。私は幹事氏に手を振り、無言の御礼だけを返しておいた。
12時10分。早水千紗女流二段-北村桂香アマ戦は、早水女流二段の優勢に見えたが、意外と時間がかかっている。
清水-船戸戦はいよいよ終局が近付いている。☖3九竜と銀を取られ、船戸女流二段、無念の投了。12時11分48秒だった。これで私のマイナビも終わった。
そのすぐあと、渡部アマも投了。12時12分38秒。本戦に進出し、そこでも大活躍すれば女流棋士への道も開けた可能性もあるが、負けては仕方ない。これに腐らず、また来年チャレンジカップからこの舞台に上がればいいのだ。
相前後して、早水-北村戦も終局。早水女流二段の勝ちであろう。
これで午前の部の、全12局が終了した。終わってみると、プロアマ戦は、プロの8戦全勝だった。男性棋界より棋力の差が接近している女流棋界だけに、この数字は意外。しかも、内容もプロが圧倒していた気がする。午後出場のアマ陣に期待したいところである。
1回戦の午後の部は、1時から開始である。昨年は昼食に出て、チェーン店のラーメンをさびしくすすった記憶があるが、今年はどこへも行けそうにない。
金曜サロンのW氏とY氏がお茶を誘ってくれるが、断った。私は人づきあいがわるいのだ。ひとりがいい。それに今度こそ、女流棋士の入場を対局場から見届けたい。
とりあえず対局場を出ると、中倉彰子女流初段に挨拶された。3児の母だというのに、瑞々しく、若々しい。そして何より、私を覚えていてくださったことに感激する。「懸賞金を…」と言おうとしたら、中倉女流初段には懸賞金を懸けていなかった。懸けたいところだが、予算が限られている。今回は見送りである。
中村桃子女流1級とすれ違った。ショッキングピンクの洋服を羽織っている。ちょっと刺激的な色だが、よく似合っている。LPSAでは、船戸陽子女流二段が辛うじて似合うか、というコーディネートである。しかし女流棋士会には、この色の服を着こなせる女流棋士がゴロゴロいる。本当に人材豊富だと思う。女流棋士会の前途は洋々である。
船戸女流二段が、LPSAの控室から出てきた。目を赤くはらしている。清水戦での完敗がこたえたのだろう。しかし、負けたらそのくらい悔しがるのが本当である。もしヘラヘラ笑っていたら、私は即、船戸女流二段のファンをやめるところだった。やめないけど。
1回戦敗退は残念だったが、まあよい。また来年、頑張ればいいのだ。
中井女流六段が来場する。私と目が合い、目礼された。しかしその表情は厳しい。すでに戦闘モードに入っているかのようだった。
(つづく)
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第4期マイナビ女子オープン・一斉予選対局①・1回戦午前(前編)

2010-07-19 01:47:15 | 観戦記
17日(土)の朝は二度寝してしまったため、朝起きたのが遅かった。大急ぎで支度をして、9時10分に家を出た。迷ったが、一眼レフカメラは携行しなかった。
9時45分、東京・竹橋のパレスサイドビルに着く。対局は10時開始だから、その前にマイナビルームに入らなければならない。9階のマイナビルームフロントに入ると、石橋幸緒LPSA代表理事に遭遇した。
「懸賞金を懸けるならお先に(手続きを)どうぞ」
「いえいえ対局開始を見届けたいので」
「いえいえ受付をお先に」
「いえいえ」
「いえいえ」
「はあ、では」
という問答になり、押し切られた形で、懸賞金スポンサーの受付を先に済ませることになった。ところで懸賞金の対戦カードは書かないつもりだったが、マイナビサイトへのアップを承諾したので、ここにも書いてしまおう。
まずは午前の1回戦。
以前も書いたが、女流棋士会とLPSAの、30代アイドル顔対決・本田小百合女流二段-島井咲緒里女流初段戦は外せない。ここに1口。続いてこれも以前書いたが、5月の将棋ペンクラブ関東交流会でお世話になった、脱力系・安食総子女流初段にも懸ける。すなわち、安食-新藤仁奈アマ戦。
日レスインビテーションカップに招待された女流棋士3名には、このブログで「もし3人が出場を快諾したら、マイナビ女子オープンの際、3人に懸賞金を懸ける」と書いた。結果は3名とも「NO」だったが、私は「出場の意思はあった」とみなす。よって、鈴木環那女流初段に懸ける。鈴木-室田伊緒女流初段戦。
チャレンジカップを勝ち上がった渡部愛アマは、ご褒美で1口。対局相手は、かつて女流棋士スーパーサロンで指導対局をいただいたこともある、藤田綾女流初段。これは好都合である。
ここまでで都合4口。壱万円札はピン札の通し番号を用意したので、数え間違えることはない。ただ、ここで時間を食ったので、選手の入場を対局場で迎えることはできなかった。
数分後、入場制限が解除され、入室する。見ると、LPSA勢は今年もそろいのブレザー着用である。残念だ。
まずは船戸陽子女流二段がナナメから見える位置に立つ。相手は清水市代女流王将。強敵である。予算の関係で船戸女流二段に懸賞金は懸けなかったが、私が最も応援しているのは言うまでもない。
まずは毎日コミュニケーションズ担当氏の挨拶。続いて日本将棋連盟常務理事・青野照市九段の挨拶、LPSA代表理事・石橋幸緒女流四段の挨拶と続いた。
10時01分、対局開始。
将棋は、居飛車党の船戸女流二段が中飛車に構えた。ここ何回かのLPSA金曜サロン・指導対局で、船戸女流二段は中飛車一辺倒だった。十年一剣を磨く、と言ったらオーバーだが、それはこの日のためだったか。
数手が進んだので、私はタイトル戦で立会を務める棋士のように、とりあえずその場を離れる。島井-本田戦は、島井女流初段が早くもブレザーを脱いでいる。その下はブルー系の涼しげな服だ。昨年と同じ「島井システム」である。
記録机を見ると、チェスクロックは記録係の担当だった。しまった、と思う。先日私は、チェスクロックは女流棋士自身が押すものと決めつけて、ブログを書き進めてしまった。どうも、LPSA・1dayトーナメントを見過ぎたようだ。観客はこの時点で150人くらいだったか。思ったより少ない。
室谷由紀女流3級のお姉さんである、室谷早紀アマが入口左の下座(つまり手前側)で指している。なかなかチャーミングだが、午前中はこれ以上懸賞金を懸ける予算はない。相手の高群佐知子女流三段は、以前私を振った女性に似ていて、いまでも隠れファンである。
10時06分、スタッフ氏が懸賞金スポンサーの札を、記録机の前に立て始める。清水-船戸戦には2本が立った。
藤田-渡部戦は、藤田女流初段の立石流四間飛車。渡部アマが対振り飛車の経験不足と踏み、そこを衝いているようだ。女子大生と女子高生の戦いだから、もっとギャラリーがいてもいいはずだが、すいている。しかし懸賞金は3本立った。
金曜サロン会員氏に声を掛けられる。鈴木-室田戦は、8本も懸賞金が懸かったという。そのうちの1本は私なので驚くのもナンだが、それでもこの数字はすごい。1局あたりの新記録だ。今年の対局料は公表されていないが、もし昨年と同じなら、それだけで1回戦の対局料を上回ってしまう。やはり持つべきものはファンである。
10時18分。実力者中村真梨花女流二段-山口真子アマ戦は、山口アマが長い脚を伸ばして考えている。なかなか美人だ。あのチャレンジカップを勝ち抜いたのだから実力はあるに違いないが、どうもピンとこない。
マッカラン松尾香織女流初段-小川詩織アマは、珍しい相矢倉。振り飛車党の松尾女流初段は裏芸で矢倉を指す。これがなかなか巧妙で、私はまったく歯が立たない。むかし米長邦雄永世棋聖が、「矢倉は将棋の純文学」と言ったが、けだし名言だと思う。
かまいたち井道千尋女流初段-浅野法子アマは、ベテラン浅野アマが予選を勝ち抜き、話題となった。しかしその手つきはたどたどしい。
24名の選手が対局しているから、ひとつところに落ち着くのはもったいない。反対側の部屋、マイナビルームLでは解説会も開かれるが、公開対局なので、そちらへお邪魔するつもりはない。女流棋士の表情を鑑賞していたほうがよい。
それにしても穴熊の将棋が多い。本田-島井戦の相穴熊をはじめとして、2局に1局は穴熊の将棋になっているのではないか。振り飛車側の囲いはともかく、居飛車側にはさまざまな囲いがある。居飛車穴熊に固執するのは、将棋の楽しみを自ら狭めていると思う。
10時44分。渡部アマは口に手を当てるいつものポーズで考えている。しかしきょうは、その間にハンカチを挟んでいる。ハッシと☗1七桂と跳ねた。一目、スジが悪い。本来、桂は3七に跳ねるもの。渡部アマ、こんな手を指しているようでは、この将棋は勝てないと思った。
11時00分ごろ、一番手の秒読みが始まった。井道-浅野戦で、読まれる側は意外にも井道女流初段。しかし局面は、井道女流初段が優勢のようである。
清水-船戸戦は、ガチガチの穴熊に囲った船戸女流二段が何とか暴れようとするが、清水女流王将は自然に厚みを築き、優勢。船戸女流二段の☗2五飛に、清水女流王将が2四の角をスッ、と☖3三角と引いたのが好手だった。☗2四飛から暴れる手を消されて、船戸女流二段に指す手がない。
いたたまれなくなって、その場を離れる。懸賞金の本数を、端から数えて回る。26本もあった。皆さんなけなしのおカネをはたいてるんだろうなー、と思う。むろん私もそうだ。
11時11分。安食-新藤戦は、安食女流初段が手堅い指し回しで優勢。
11時15分。山田朱未女流二段-相川春香アマ戦は、まず山田女流二段が勝ち名乗り。髪をたくし上げ、天を見た。
ほかの将棋は中盤から終盤の難しい局面だ。対局場の静寂を打ち消すように、秒読みの声があちこちで響いている。
(つづく)
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