一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

鈴木九段と藤森五段の新橋解説会(第77期名人戦第3局)・2

2019-05-25 00:06:15 | 将棋イベント

第5図以下の指し手。△5五角▲同角△同銀右▲同銀△同銀▲4五角△5四歩▲7五歩△8八歩(第6図)

△5五角が強手だった。私たちがヤケクソで指しそうな手だが、果たして藤森哲也五段が、「良い子はマネしちゃダメですね」と言った。
これを▲5五同角は、△同銀右▲同銀△同銀▲4五角で、「これが利いているのかどうか」と鈴木大介九段。以下△5四銀▲3四角△6六歩▲2三角成△同金▲同飛成△1二角でどうか。
本譜も▲4五角まで進んだが、豊島将之二冠は△5四歩と穏やかに突いた。
「ふわっふわの手ですね。佐藤名人が角を手放したので、△5四歩でした」
佐藤天彦名人▲7五歩。これを△同歩は「▲7四歩△同金▲5四角で後手投了です」と鈴木九段。
そこに玄妙な△8八歩が飛んできた。

第6図以下の指し手。▲8八同銀△4七銀▲同金△3八角▲4八金△2九角成▲7四歩△6六歩▲7三歩成△同玉(第7図)

「この手は82分の考慮です」
と藤森奈津子女流四段。鈴木九段は
「アマ七段までは▲8八同玉と取ってください」
と言った。
「でもアマ七段っていったら、相当強い人まで含まれますよね」
と、藤森五段。
「プロと名人は▲同銀と取ってもいいです」
要するに▲8八同銀は壁銀になるのがイヤなのだ。よって鈴木九段は▲同玉を推奨する。「▲8八同玉△8五桂▲8六銀△7五歩くらいが相場でしょう。だけど▲8八同銀とどちらがいいのか、これは一生かかっても分からないでしょう」
本譜は▲8八同銀と取った。これがホントの「名人に定跡なし」である。
豊島二冠は△4七銀。持駒に角銀があると生じる手筋だ。「自然ですかね。ほかには△6六歩もありました」
これを佐藤名人は▲同金と取った。「これがいい手です」と鈴木九段。まさに名人か初級者が指しそうな手で、私レベルだと▲4九金と引く。しかしそれは「△4六角▲4八銀△5六銀上(参考2図)」で、先手の投了まであるという。「よく分からないけど、後手にこんな気持ちのいい手を指させたら負けなんです」

また▲4七同金で▲4九飛も、「△4八銀成▲同飛△5九角▲3八飛△4七金▲1八飛△3七角成で後手優勢です」と鈴木九段。「この▲3七桂は、あまり利いてるようには見えませんけど、先手の命綱なんです」。
本譜▲4七同金となれば、△3八角▲4八金△2九角成はワンセット。佐藤名人は▲7四歩と取り込み、ここで現局面に追いついた。
ややあって指し手が入り、△6六歩▲7三歩成△同玉。ここで懸賞次の一手となった。

時間が迫っているとはいえ、ずいぶん手の広い局面で次の一手にしたものだ。恒例の予想だが、鈴木九段は「▲5二銀」。以下△5三金なら▲7七桂と跳ねる。しかし正解可能性は「20%」とのことだ。
藤森五段は「▲3四角」。とにかく角を働かせないと話にならん、というわけだ。しかしこれには△2八飛の攻め合いも難しく、藤森五段の自信も「10%」。何と、棋士2人がそろって自信がないのだ。
ほかにも▲7七桂や▲7四歩、▲7五歩など、いっぱい候補手がある。それで、第3の候補手は「その他」になった。つまり今回は指し手を書くのではなく、「将棋の日・次の一手名人戦」のように、3択の番号を記入することになった。
私は▲7四歩と思ったので、「3(▲7四歩)」と書いて提出した。
「私も25年、次の一手を出題しているけど、これは最も難しい局面です」
と鈴木九段。
今回の賞品は、名人戦扇子2本に、日本将棋連盟とKit-Katがコラボしたチョコレート。都合3人に当たる。
まだ豊島二冠は考えている。ここにきて鈴木九段が「▲7七銀」を候補に挙げた。
えっ、今さら!?
「うん、そうですね、これだ。長考すればするほど、▲7七銀に思えてきました。
私は私で考えているうち、▲7四歩は△同馬と取られることに気付いた。これは馬が手厚い。ただ、「その他」であることに変わりはない。
注目の指し手が入ってきた。

第7図以下の指し手。▲3四角△2八飛▲5九銀(第8図)

次の一手は▲3四角!! 藤森五段の当たりで、会場から拍手が起こった。
「▲3四角!! 藤森君強くなったよねー」
と、鈴木九段が複雑な表情で褒める。
藤森女流四段の報告によると、▲5二銀=10人、▲3四角=5人、その他=53人だった。藤森手に乗ったのは、わずか5人だった! これには藤森五段も苦笑いである。
早速藤森五段による抽選が行われ、3人の男性に当たった。と、鈴木九段が懐から扇子を取り出した。今日某所から持ってきちゃったもので、それなりに価値のある扇子らしい。
これを残り2人の中から抽選して進呈する。それは女性に当たり、最良の結果となった。残った1名はかわいそうだが、運を次に持ち越したと思えばいい。
「▲3四角……。敗着にならなければいいけどね」
と鈴木九段がまた憎まれ口を叩いた。「次は△2八飛でしょうね」
果たして豊島二冠は△2八飛と反撃する。「当たりましたね。▲4九銀△3九馬▲7七桂△4八馬▲同銀△同飛成▲6五桂打△6四玉(参考3図)。この△6四玉があったかい手です」

桂先の玉は寄せにくいので、ぬくぬくと過ごせるという意味だろう。
そこで▲4九銀では▲5九銀が検討された。4九で駒を取られる手を防ぐ。すなわち△4九馬▲同金△7八飛成のようなトン死筋を防いでいる。
果たして佐藤名人の指し手は▲5九銀!
「ほら2連続で当たりましたよ! なんだ次の一手を出す場所を間違えたな!」
鈴木九段、予想を外したことがよほど悔しかったらしい。
しかしここで次の一手も難しい。

鈴木九段「角成を防ぐ△6二玉は、▲7五桂△6四金▲6三歩△5三玉▲4五桂△4四玉▲3五銀(参考4図)まで先手勝ち。ゆえに後手は、何かの時に△8三玉とできれば勝ちなんです」

△6二玉では△3九馬の攻め合いもある。豊島二冠が長考に入ったので、鈴木九段は大内延介九段の思い出話を始めた。
(つづく)
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鈴木九段と藤森五段の新橋解説会(第77期名人戦第3局)・1

2019-05-24 00:08:28 | 将棋イベント
苦節1年9ヶ月、奇跡的に就職が決まり、8日(水)は晴れがましい気持ちで、名人戦第3局の新橋解説会に赴いた。
まずはニュー新橋ビルの小諸そばで腹ごしらえである。だが午後6時を過ぎていたため店内は満員だった。
だが立ち食い蕎麦は回転率が早い。私のオーダーが出て来たときは、しっかり席が空いていた。
二枚もりはゆでたてのはずだったが、水があったかいのか、いつものキレはなかった。
さて6時半になり、解説会の開始である。今は陽が長い時期なので、まだ空は明るい。客は少な目で、椅子席はほとんど埋まっていたが、立ち見は数えるほどしかいなかった。
解説陣が登場する。鈴木大介九段、藤森哲也五段、藤森奈津子女流四段とお馴染みの布陣である。
鈴木九段「名人戦は第2局を終わって佐藤名人の0勝2敗。名人危うしですけど、いつもスタートは悪いですからね。第1局勝ったことありましたっけ?」
なかったと思う。
藤森女流四段「第3局の対局場は岡山県倉敷市の芸文館です。倉敷藤花戦でもお馴染みです」
早速初手から並べられた。

▲名人 佐藤天彦
△王位・棋聖 豊島将之

▲2六歩△8四歩▲7六歩△3二金▲7八金△8五歩▲7七角△3四歩▲6八銀△7七角成▲同銀△2二銀▲3八銀△6二銀▲4六歩△4二玉▲4七銀△1四歩▲1六歩△7四歩▲3六歩△3三銀(第1図)

佐藤名人の▲2六歩からスタート。「最近は横歩取りも増えてきましたけど」と鈴木九段。
しかし△8五歩に▲7七角と上がり、これで角換わりがほぼ確定した。
「△6二銀では、昔は△7二銀も多かったんですけど、最近は棒銀も少ないんでね。それなら△6二銀のほうが作戦の幅が広い」
第1図で次の手は、もはや定跡か。

第1図以下の指し手。▲4八金△7三桂▲6八玉△6四歩▲3七桂△6三銀▲2九飛△8一飛▲9六歩△9四歩▲6六歩△6二金▲5六銀△5四銀▲7九玉△4四歩▲2五歩(第2図)

佐藤名人は▲4八金と、まっすぐ上がった。
「これがここ2年くらいの指し手でね。どう藤森君」
「2年は経ってますね。多いですね」
「昔は、固める将棋が主流だったんですよ。だけどコンピューターの影響もあって、渡辺明二冠らが穴熊からバランス型にスタイルを変えちゃった。それでみんなが倣ったんですね」
両者は桂を跳ね合う。
「ここで△6五桂は▲8八銀と引く。後手も攻め切れそうだけど、ここは一手待ちました」
ちなみに我が将皇はこの形で△6五桂が好きで、後に△8四角と据え、飛車も切って猛烈に攻めてくる。
豊島二冠は△6三銀と上がり、数手後に△4四歩と突いた。
「この歩を突くかどうかはひとつのポイントです」
私には高度すぎてよく分からないが、▲4五歩の争点を作ることが得か損かということか。
そして第2図の次の手は、私には一生かかっても指せない手だ。

第2図以下の指し手。△4一飛▲4五歩△5二玉▲4四歩△同飛▲4七歩△4一飛▲8八玉△7二金▲3八金△6二玉▲4六歩△6三金(第3図)

△4一飛。「これが豊島二冠の得意形なんですね」
と、鈴木九段が感嘆する。
「最新形なんですね」
と、藤森五段も続けた。
「これねえ……。ここに飛車を持ってくるなら、最初から飛車振りゃいいのに」
と鈴木九段。▲4五歩△5二玉▲4四歩の進行に、
「将棋ソフトがこう指すんですね」
と呆れた。そして△4四同飛に▲4七歩と謝る。
「▲4七歩ねえ……。これ、ソフトがなかったら、指した人に将棋やめたら?って言いますよ」
「それは破門、という手ですか」
藤森五段の意地悪い突っ込みに、鈴木九段も苦笑するしかない。
豊島二冠は△7二金と寄った。これが分からん、と鈴木九段。藤森五段は、
「私だったら△2二玉、△8二飛の形で、△6五歩と行きますよ」
と鼻息が荒い。さすがに攻めの藤森五段だ。
「確かに4年前くらいは、みんなもそう指してたよね」
先手も▲3八金と寄った。後手は△6二玉。
鈴木九段「先手が攻められるように、千日手模様で待機してるんですね」
▲4六歩は誘いの隙で、△4六同飛は▲4五桂△4四銀▲4七金の変化があるようだ。

第3図以下の指し手。▲9八香△8一飛▲4八金△4四銀▲2四歩△同歩▲同飛△2三歩▲2九飛△8六歩▲同銀(第4図)

佐藤名人は▲9八香と上がった。香は元に戻れないから、これは積極的な手待ちだ。
「でも▲9九玉の瞬間に△8六歩ならどうするんですかね」
と、鈴木九段は懐疑的だ。果たして△8一飛には▲9九玉と潜らず、▲4八金と戻った。豊島二冠は△4四銀と出動する。
「ほかに指す手がなかったんでしょう。この局面で、後手にはマイナスの手しかない」
先手はありがたく、飛車先の歩の交換をする。「苦労して、やっと飛車先の歩を交換しました」
▲2九飛に豊島二冠は△8六歩の突き捨てを入れ、次が中盤の勝負手だった。

第4図以下の指し手。△2二角▲4五歩△5五銀左▲同銀△同角▲4四角△6五歩▲5六銀△6六角▲7七銀△4四角▲同歩△4二歩▲4六角△6四銀▲7九玉(第5図)

豊島二冠は△2二角と据えた。鈴木九段「これは思い切った手ですね。▲5八金なら、△6五歩▲同歩△5五銀左の狙いでしょう」
しかし佐藤名人の▲4五歩が勝負手のお返しだ。後手はただでさえ銀が出たいところに、それを呼び込んだからだ。鈴木九段も「すごい手」と驚きを隠さない。
豊島二冠は当然△5五銀左と出る。以下▲同銀に△同銀は、▲4三銀がある、と鈴木九段。「▲4三銀△同金▲2三飛成△3三角▲2五桂(参考1図)。これは後手イヤですね」

よって本譜は△5五同角と取り、先手も▲4四角と、この角を消しにいく。
△6五歩に▲5六銀。いわゆる腰の入った手で、鈴木九段も「評判のよかった手です」と褒める。しかし形勢判断は、鈴木九段、藤森五段とも、後手持ちだった。
数手後の△4二歩には鈴木九段が、「△4七歩もあったと思います」と説いた。そう指さず△4二歩と我慢したのは、後手がいいと思っているかららしい。
▲4六角は「期待の一着」だが、△6四銀も「厚い」。かつて大山康晴十五世名人と植山悦行七段の一戦で、お互い交換した銀を自陣に打ち合ったことがあったが、これがプロの指し手というものなのだろう。

名人は▲8八玉と引いた。もう▲9八香の顔など立てていられないということか。
「これは頭のいい人の勝ちですね」
と、鈴木九段が意味不明の言葉を吐いた。
だが次の手は、頭のいい人の指し手とは対極だった。

(つづく)
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第9期女流王座戦一次予選一斉対局の瞠目の手

2019-05-23 00:06:30 | 将棋雑記
11日(土)に、第9期女流王座戦一次予選の一斉予選が行われた。
これはマイナビ女子オープン一斉予選と並び華やかな対局だが、マイナビと違って一般の観戦サービスはない。
今回は新宿の「AP西新宿」で行われたが、観戦スペースは作れそうなだけに、惜しい。関係者は観戦サービスを検討してほしいところである(といってそれが実現しても、私が行くかどうかは不明だが)。
今期も無料中継があったので、私も時々戦況を見た。今年の外国人招待選手は、トゥルムンフ・ムンフゾルさんだった。モンゴル出身の17歳とのこと。
相手は渡辺弥生女流初段で、こちらは将棋界を代表する才女である。これは面白いカードになった。
といっても、ムフンゾルさんはやはり外国人。数年前のカロリーナ・ステチェンスカさんは別にして、さすがに女流棋士相手には勝負にならないと見ていた。
ところが――。
序盤から乱戦になって、ムフンゾルさんはここからボロ負けするんだろうなと思ったら、意外に善戦している。
私が感心したのは第1図の▲4九歩で、要するに、△同飛成に▲5九金打と先手を取る意味だ。これは本か誰かに教わらないと指せない手で、ムンフゾルさん、相当将棋を勉強していると思った。


さらに進んで第2図。この▲9八角もよさそうな手だ。なんだか羽生善治九段が指しそうな手で、これもプロの実戦譜を並べないと浮かばない手だと思う。
それでプロフィールを確認すると、ムフンゾルさん、何とチェスの強豪らしい。しかもネット将棋でも、アマ四段で指しているらしい。
道理で……。いや、これは大変な強豪がいたものである。
勝負は渡辺女流初段が勝ったが、ムフンゾルさん、実に堂々とした戦いだった。
ムンフゾルさんが本気で女流棋士を志望したら、叶えられそうなのがすごい。世界の将棋事情はこんなにも進歩しているのだと、ショックを受けた一局でもあった。

続いて注目したのは、村田智穂女流二段と谷口由紀女流二段の一戦である。先番谷口女流二段の中飛車に、村田女流二段は居飛車穴熊。中盤で捌きあって、第1図になった。

この局面、解説の井出隼平四段は「結着はまだ先かもしれませんね」と語っていた。それは、ここから10手以内に終わることを示唆していない。ところが実際は、ここから9手で終ってしまった。

第1図以下の指し手。▲5三成銀△5七歩▲2一馬△同玉▲4四桂△1一玉▲3二銀△8七角▲5四歩(投了図)
まで、谷口女流二段の勝ち。

谷口女流二段は▲5三成銀。狙いが分からない悠長な手で、終盤の忙しい時に何をやってるんだろうと思った。
村田女流二段は当然△5七歩。これが厳しく、井出四段は「▲5三成銀では▲2九金がよかったと思います」と解説している。
ところがそこで狙いの手が出た。
▲2一馬!

一閃、という感じの手で、みながあっと驚いた。
井出四段「……これはすごい寄せです。こんなに谷口さん強いのか」
これに△2一同金は▲4一竜が詰めろなので△同玉だが、そこでじっと▲4四桂がうまい。次に▲3二銀以下の詰めろだ。しかも後手は5筋に歩を打ってしまったので、適当な受けがないのだ。
村田女流二段は△1一玉と早逃げしたが、▲3二銀がまた詰めろ。
△8七角には▲5四歩と繋げて、受けなしである。村田女流二段も潔く投了した。

いやはや、久しぶりに鋭い寄せを見た。▲2一馬は今年度ピカ一の手で、全盛時の福崎文吾九段を思わせる。男性プロの見解を凌駕したのだから、大したものだ。
谷口女流二段は次の対局でも、休場明けの山田朱未女流二段に勝って、二次予選進出を決めた。
これは谷口女流二段、今期の台風の目になりそうである。
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肝心な時にカードがない!

2019-05-22 00:48:20 | プライベート
20日の初出社の模様を書いておこう。といっても社名や詳しい仕事内容は書けぬから、差し障りのない範囲である。
朝は早めに出社したのだが、社長と事務の女性社員以外はすでに出社しており、若干調子が狂った。こりゃ2日目以降は、定時の30分前には出社しないといけないのか。朝の時間は貴重だけに、この誤算は大きい。
昼前から先輩営業氏に同行である。重ねて詳細は省くが、ある大手メーカーに向かった。
その車中、私の趣味の将棋の話になった。私の将棋好きが、もう社内に知れ渡っているらしい。実は会社にも将棋好きがいるとのこと。それを聞いて、私は言ったものだ。
「その○○さんより、私の方が将棋が好きだと思います」
一公の面目躍如というところ。

大手メーカーの社内で待ち時間ができたので休憩所に行くと、自販機が置いてある。これが、電子マネーを使うと、現金より25円安くなる仕組みだった。すなわち、現金なら110円だが、電子マネーなら85円という寸法だ。
そこでSuicaをかざしたら、受け付けない。
これは社員専用の電子マネーがあるのかと思い、近くにいた女性に聞いてみると、それは「楽天Edy」だった。
Edyは東京では馴染みがないが、沖縄では比較的よく使われている。プレミアは付かなかったと思うが、「シャリーン」という消費時の音が好きで、私は沖縄で、ヨドバシカメラのカード内にあったEdyに入金したものだ。
その後東京では使う機会がなく、ヨドバシカメラのカードも替わってしまったのだが、まだEdyは生きていて、5,000円近く残っていたと記憶する。
もちろん財布には入れていたが、先日のゴールデン・ウィークの旅行の時、少しでも財布の中身を軽くしようと、旧ヨドバシのカードを抜いたのだが、ついそのままにしてしまった。
ふだんは全然使わないのに、いざ使おうとすると、該当のカードがない。私の人生を象徴しているようではないか。
でも仕方ないから現金で買ったのだが、その後もう一度、そこでドリンクを買う機会があった。
くそう……。次にここにお邪魔した時は、意地でもEdyで購入してやる。

その大手メーカーは担当氏らの応対が遅れに遅れ、予定の4時間遅れで、メーカーを出た。表はすでに暗く、小雨が降っていた。20日は夜から雨の予報だったので、私も折り畳み傘を用意していたのだが、会社を出る時、置いてきてしまった。
しかし先輩氏は折り畳み傘を準備していた。となれば私だけ濡れて行くわけにもいかず、コンビニでビニール傘を買った。
ところが傘をさしてものの2分も経たないうちに、雨は止んでしまった。私は傘の値段も見ずに購入したが、お釣りを数えたら、小銭は302円しかない。
ということは、あのビニール傘、698円もしたのか!?
オイオイ、原価はいくらなんだよ。ヒトの足元を見やがって。
コンビニで傘を買うのは、これで最後にしたい。

ちなみに、会社は直帰となった。初日から異例の展開で、プロデビュー戦が持将棋になった長谷川優貴女流二段みたいだった。

ちなみに21日は、朝から豪雨。まったくこの2日間は、雨に悩まされた。これこそ雨男の面目躍如といったところである。
それはともかく、業務内容その他もろもろが私の想定から若干狂い、今後の展開が若干不安である。新しい会社では必ずブチ当たる壁なのだろうか。
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平成最終日のイベント(後編)

2019-05-21 00:24:34 | 将棋イベント
「将棋って、初形で自分のところに20枚、駒が並んでるでしょ。あれがイヤなんだ」
?? ?? ??
一瞬私たちは、武宮正樹九段の言っている意味が分からなかった。
要するに囲碁は、石ひとつ置いていない広大な盤面に、おのが構想を一から表現できる。しかし将棋はすでに、40枚の駒が並べられている。これが自由な表現を阻害するというのだ。
まさに宇宙流らしい斬新な発想で、そんな理由は初めて聞いた。
といって将棋の開始時点で、それぞれ19枚の駒を持ち駒にはできまい。たぶん後手玉に、即詰みが生じているからだ。
「囲碁は、対局中に誰も助けてくれない。勝ち負けもハッキリしている。ウソのない世界で、そこが好きです」
「囲碁が強くなるには、どうすればいいですか?」
と、中倉彰子女流二段。
「自分の打ちたい手を打つ。思った手を打つ、ということですね」





途中、意味不明な箇所はあったが、さすがに面白い、武宮九段のトークだった。
3階に降りてみる。今度は飯野健二八段、飯野愛女流初段が始動対局に加わっていた。いつもふたりは並んで指していて、以前、カメラで愛女流初段を撮ろうとしたが、健二八段の存在が気になって、シャッターを押せなかったものだ。今回も、眺めるだけに留める。
何となく愛女流初段に見られた気がしたが、私はとくに近づくこともなく、その場を離れた。
表の空気を吸いに出る。
例年は近くの蕎麦屋でもりそばを食すのがルーティーンだったが、今年はその時間がない。
建物に戻ろうとすると、島井咲緒里女流二段に声を掛けられた。ここで!! 私も頭がハゲてなけりゃウェルカムなのだが、こんな惨状では女流棋士とお話する資格がない。
でも仕方ないから、いっしょにエレベーターに乗る。2階から、中倉宏美女流二段も乗り込んだ。
「最近、LPSAのイベントに出てくれないですよね」
と島井女流二段。宏美女流二段は、私の存在などどうでもいい感じだが、島井女流二段は屈託なく話しかけてくれる。ありがたいことで、13日間だけだったが、私が「女流棋士ファンランキング」で1位に上げただけのことはある。
「はあ、もうLPSAのファンは卒業かな、と」
「ええー」
こういう心にもないことを言ってしまうのが、私の悪い癖である。
12階では、矢澤亜希子さんと森内俊之九段のバックギャモン対決が始まっていた。
バックギャモンと言えば、古くは森けい二九段がプレイヤーだったが、森内九段もやるらしい。
その後方では、井出洋介雀士が、ファンのお客と麻雀を打っている。ほかでもボードゲームをやっているのだが、いかんせんスペースが少ない。動線が塞がれていて、容易に動けないのだ。
15時30分から、「窪田ワールドと愉快な仲間たち」が始まった。宏美女流二段が司会で、まずは窪田義行七段単体の登場である。……が、その窪田七段が来ない。
何だかケータイを見ているとかで、登場が遅れているらしい。棋士が将棋以外の仕事に就いたら……は夢のある仮想で、島朗九段はソツなく仕事をこなすと思うが、窪田七段あたりは、棋士という職業があってよかったね、というやつである。
5分遅れて窪田七段が登場した。
「先生、先生はいつも七つ道具を持ち歩いているそうですが、それを見せていただけますか?」
と、宏美女流二段。
「いいえ無理です。これはヒトに紹介するものではない」
と言いつつ、傍らから「将棋世界」最新号を取り出した。「これは将棋世界最新号です。私は棋士だから、ほかの人より早く入手できる」
「そ、そうですか。あの、今月号のオススメはどこでしょうか」
「そりゃ全部ですよ」
分かり切ったことを聞くな、という感じだ。私たちはさっきからゲラゲラ笑っている。
「せ、先生は綺麗好きと聞いていますが」
「そうですね、盤は綺麗に拭きます」
「詰将棋カラオケもやられるそうですが」
「そうですね」
というところに、「あの、あの、あの」と、けたたましい声で上村亘四段が乱入した。お馴染み、加藤一二三九段の模写である。何だか訳が分からなくなってきた。このカオスを捌けるのは、もはや宏美女流二段だけだ。
「このイベントの感想はどうでしょう羽生先生」
宏美女流二段は上村四段に振る。
「あんのー、12階からの眺めが綺麗で、あんのー…」
もう訳が分からず、私は一瞬その場を離れる。指導対局を終えた八代七段がいたので、挨拶をする。
「先生このたびは七段昇段おめでとうございます。リボンが『八代六段』になってましたね」
「ああ大丈夫です」
そういう細かいことは気にしないようだ。
バックギャモンの対決はまだ続いている。これもルールを覚えれば楽しいと思うのだが、私の性格からしてのめりこむ可能性があり、諸刃の剣である。







トークショーは、窪田七段が頭に手ぬぐいみたいなものを巻いた。最初は上村四段がアシストしていたのだがうまくいかず、ええい、と自分で巻いた。カーキ色に白抜き文字で、「将棊頭山」とか書いてある。
「これは登山の時しか頭に巻かないんですが、今日は特別にいいでしょう」
上村四段が「窪田峰王!」と呼ぶ。私は詳しくないのだが、先日、中川大輔八段と窪田七段がとある名山の頂上で決戦し、窪田七段が勝ったらしい。
上村四段が誰かの真似をする。今度は中川八段らしい。何だかもう、カオス状態である。
上村四段が退場し、瀬川晶司六段が登場した。
「棋士はマトモな人もいる、ということを知ってもらわねばなりません」
という瀬川六段は、手に書物を持っています。ひとつは「泣き虫しょったんの奇跡」の文庫本だ。
「最近いろいろありましたけど、内容にはまったく関係ないんで……」
同名DVDの発売が無期延期になったからだが、ま、大した打撃ではないだろう。
もうひとつは「将棋指す獣」で、昨年から月刊コミックバンチで連載されている。瀬川六段はこの将棋監修を務めているのだ。
瀬川六段も商品のPRのイメージがあるが、まあいい。






(上村四段の写真はピンボケばかりで、掲載を断念しました)

トークショーも終わり、私は帰る一手である。いろいろあった平成だが、ここまで平和に生きてこられたのだから、佳しとしようか。
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