
井沢元彦さんの逆説の日本史15巻が出た。文庫化してから読むようにしている本シリーズも、江戸時代中期。正宗、意次、定信の頃の話まで来た。
相変わらず、逆説ばかりだが、本巻は、その傾向がますます強い。
名君吉宗→悪、わいろまみれの意次→善、世直し定信→悪となる。
吉宗は、なぜ悪か。経済音痴。これは、かなり詳説されている。納税は米であるにも関わらず、経済は、貨幣経済。豊作になればなるほどデフレになり、農民は、困窮していくことになった。その政策に反対した殿様は、次々処分された。
意次は、その逆で、積極経済に転じた。
そして、定信は、その意次の政策を、また全否定した。
仙台の医者だった林子平が、国防の必要性を説いたが、林を処分したのも定信。それは、黒船来航により、100年も立たない内に、現実のものになった。
この時代の政治の底流にあるのは、朱子学。儒教=儒学をもっと極端にしたのが、朱子学となるが、これが、商業=悪との発想となり、経済音痴のリーダーを生む原因になったという。朱子学を奨励したのは、家康だが、それが思わぬ悪影響を生んだということらしい。
本巻は、経済に関する話題が多く、消費税が上がりそうになっている今、日本の将来は、どうなってしまうんだろうという感覚にとらわれた。
もう一つは、将軍職や、老中職を得るための暗闘が、相当なものだったということも発見だった。徳川の時代というと、安定した政権を創造するが、暗殺と思われる若すぎる死が相次ぎ、イレギュラーな権力の承継が相継いでいたということを初めて知った。
特に、徳川家がらみの暗闘はすさまじい。
徳川ご三家というと、殿様の中の殿様というイメージだったが、そんな生易しいものではなかったらしい。