本心 作:平野啓一郎
貧しい生活を強いられている中、たった一人の肉親である母親を亡くした
そんな男の物語でありました
母親の死から立ち直るという、一人の人間の物語でもあるんだが
その状況を通して、まったく別のといっていいのか、
著者が常に求めているのであろう、本当の姿というものは
どうやって定義されて、何をそうだと感じているのか
その戸惑いに向き合っていくところもあって、
相変わらず哲学書めいた思考を求められる、でも、
物語は前向きに終わる不思議な小説でありました
喪った母親をVFと呼ばれる、仮想空間上のキャラクタとして復活させることができる
今でも実際にありそうなサービスが舞台装置となっているわけだけども、
それとのつながりが、本当の人間関係の構築の手助けにもなり、
あるいは、そういうことではないのかもしれないとも思ったり、
タイトルの本心、というのは、とりあえずおいといて
人との付き合いが、人のありようが、人そのものが、
それぞれどう定義づけられているか、何を基準にそう思ってしまうかを
主人公が体験していくのが、なんとも、読者的にも
追体験できて面白いのでありました
ある種、小説を読むという行為もそれなのかもしれない
存在が肉体にあるのか、それとも、他人に認識されたものの
複合的なものなのかという問いかけは、
これまでに読んだ著者の小説で、何度も出てきていたけども
今回もそれを求めてきつつ、その答えではないが、
この場合はというテストケースのように、VFという架空のそれに感情が宿るのか
いや、宿るはずはない、そして、VFがいうセリフはAIで導き出されたもので、
かつ、自分がそのAIを調整した結果のそれであるというのが
不気味というか、グロテスクだと感じるものの
それでも、信じてしまいたくなる
人間の身勝手な不安と、認識がありあり伝わってきてすごく心にしみたのでありました
物語全体では優しいといえるほど、世の中は、厳しい中に生きていく人の
登場人物たちの思いというのにあふれているので、
読んでいてすごく落ち着けるというか、いやな気分にならないのが
とてもいいことだなと思いつつ読むんだが
前述のような難しいことに直面して、戸惑っていく主人公に
気づいたら、感情移入もすれば、自分もどうなんだと飲み込まれていくようでもあり
相変わらず怖い小説を読んでしまったという読後感を覚えるばかりなのだが
とても楽しかったのでよいとするのでありました
貧しい生活を強いられている中、たった一人の肉親である母親を亡くした
そんな男の物語でありました
母親の死から立ち直るという、一人の人間の物語でもあるんだが
その状況を通して、まったく別のといっていいのか、
著者が常に求めているのであろう、本当の姿というものは
どうやって定義されて、何をそうだと感じているのか
その戸惑いに向き合っていくところもあって、
相変わらず哲学書めいた思考を求められる、でも、
物語は前向きに終わる不思議な小説でありました
喪った母親をVFと呼ばれる、仮想空間上のキャラクタとして復活させることができる
今でも実際にありそうなサービスが舞台装置となっているわけだけども、
それとのつながりが、本当の人間関係の構築の手助けにもなり、
あるいは、そういうことではないのかもしれないとも思ったり、
タイトルの本心、というのは、とりあえずおいといて
人との付き合いが、人のありようが、人そのものが、
それぞれどう定義づけられているか、何を基準にそう思ってしまうかを
主人公が体験していくのが、なんとも、読者的にも
追体験できて面白いのでありました
ある種、小説を読むという行為もそれなのかもしれない
存在が肉体にあるのか、それとも、他人に認識されたものの
複合的なものなのかという問いかけは、
これまでに読んだ著者の小説で、何度も出てきていたけども
今回もそれを求めてきつつ、その答えではないが、
この場合はというテストケースのように、VFという架空のそれに感情が宿るのか
いや、宿るはずはない、そして、VFがいうセリフはAIで導き出されたもので、
かつ、自分がそのAIを調整した結果のそれであるというのが
不気味というか、グロテスクだと感じるものの
それでも、信じてしまいたくなる
人間の身勝手な不安と、認識がありあり伝わってきてすごく心にしみたのでありました
物語全体では優しいといえるほど、世の中は、厳しい中に生きていく人の
登場人物たちの思いというのにあふれているので、
読んでいてすごく落ち着けるというか、いやな気分にならないのが
とてもいいことだなと思いつつ読むんだが
前述のような難しいことに直面して、戸惑っていく主人公に
気づいたら、感情移入もすれば、自分もどうなんだと飲み込まれていくようでもあり
相変わらず怖い小説を読んでしまったという読後感を覚えるばかりなのだが
とても楽しかったのでよいとするのでありました