CLASS3103 三十三組

しがない個人ホームページ管理人の日記です。

【読書】アフリカ人学長、京都修行中

2022-06-22 21:10:18 | 読書感想文とか読み物レビウー
アフリカ人学長、京都修行中  著:ウスビ・サコ

30年近く京都に住んで、すっかり京都人ぽくなっていると思われる
マリ出身の外国人のお話
自身のこれまでを語りつつ、京都という町にたまたま根を下ろして
そのまま馴染んできているという様子をほほえましい文章でつづってあって、
読みやすいし面白かった
ちょっと同じ話が何回も出てきてしまうのは御愛嬌だが
専門である、空間に関する考察が興味深く、するする読めた

留学で中国で建築の勉強をしていたのに、
友達の死がきっかけで日本に足を踏み入れたら、
気づくと住み着いていたみたいな流れなんだが、
自国では一家族が20人兄弟とかざららしく、
わいわいがやがやする共同生活というのが当たり前で、
その常識のまま東京で迷惑をかけて(ここははっきり言われていないというのが日本の文化っぽくてよい)、
どうやら追い出されるような形で京都に送り出されて、
気づいたら京大で勉強してて、そのまま
学校の先生になってしまうという
エリートなんだか、どうなんだか、
ともかく頭がいい人なのは間違いないんだろうなと思わされる

ユーモアあふれるというか、嫌味のない文章で、
京都の人独特の間合いというのを語っているのが本筋で、
鴨川の等間隔に関する話だとか、
地縁と、両側町の成り立ちだとかが興味深くてよかった
京都独特のものでもないはずなんだが、
それが強く残っているというのが興味深いところで
かつての職業町の名残が、そのまま地縁になって今に続いているというのに
なるほどと納得したのである
アフリカ人の先生に京都のこと教えてもらうというのも不思議な話だ

婉曲に人に何かを伝えるという手法の面白さを書きつつ、
そうしている日本人、京都人も、その真相がわかっていないのが驚きだというのが
いかにも「よそさん」の視点ぽくてよかったんだが、
あれよあれよと地元の名士のような立場になっていって、
曲水の宴に出ているのが凄い
さらに、そこをシニカルに分析しているのがまた面白かった
実際にそんな狙いがあるのかわからんが、
京都が先鋭的を演出している、そういうところを含めて、
何かを演じるように作るというのが京都はたけていると
まぁそういうお話であったんだが
結構面白かったと、ずいぶん楽しんで読んだのであった