CLASS3103 三十三組

しがない個人ホームページ管理人の日記です。

【読書】劇場

2023-03-15 20:55:55 | 読書感想文とか読み物レビウー
劇場  作:又吉直樹

小規模劇団の劇作家を主人公にした
鬱屈とした創作活動と、そこにおける人間性や哲学、
情感の揺れを描いた小説でありました

結構難しい内容の字面で埋められているような印象で、
哲学的な、演劇とは何か、そこに関わる感動や感情はどこからくるか、
そういうことに関する演劇論とも違うそれこれが、
突然連綿と書き連ねられていて、そのくせ、そこに意味がないという作りなのだろうか
いいことや、考えてみるとそうかもと思うことが多いけども
理解と感動は一致しない体験を読み手として受け取るものだったよう

とはいえ、そういう鬱屈としたものを抱えている脚本家が、
劇団を喧嘩で失ったり、表現をちゃんとできなかったりする絶望感、
そういう毎日に、見掛けた綺麗な女の子をナンパするくだりが、
もはや精神破綻者ではないかと思ったりする出だしだったけど、
それがなぜだか受け入れられて、
また、このナンパというか、変質者が言葉で襲うみたいなそれが
成功といっていいのか、彼女を手に入れることとなって、
やがて、いかにもありそうなヒモ生活っぽいものに突入し、
でも、当然のようにその関係にじわじわしわが寄ってきて
収拾がつかなくなる様をじっと見守る
そういう物語で、結構息苦しい内容でありました

それでも読めてしまうのは、このちょっと頭おかしいのでは?という主人公が、
なんとなし面白いというか、不条理喜劇の主人公めいてるところもあって、
なんだかんだと読まされてしまうというところで、
このあたり、流石だなと演劇というよりも、
コントの台本を見ているような感じで、感心してしまうのでありました

結局恋愛小説だったんだろうかと、首をかしげるような感じだけども、
シーンはともかく、描いていたことは割と普通に、
男と女が出会って別れる話、別れ方は一緒に暮らして合わなかったから
と、まぁそういう身もふたもないそれだったんだが、
その間間、そして、結末で取り返せそうな雰囲気だけで、
何一つ改善も、いいこともないのに、よかった気がしてしまうラストに盛り上げていくのがうまくて、
これは、主人公の気持ちもまさにそうで、
そこが人生として、自分が受け入れられる落としどころという敗北だなと
偉そうなことを考えつつ読み終えたのでありました
面白かったけど、なかなか疲れた