CLASS3103 三十三組

しがない個人ホームページ管理人の日記です。

【読書】ミリオンセラーガール

2013-09-04 21:31:13 | 読書感想文とか読み物レビウー
ミリオンセラーガール  作:里見蘭

「本」についての小説でありました
出版というようでもあり、書店というようでもあり、
出版社の営業と流通、末端である書店
そんなところを網羅した
出版業界を舞台にしたお話であります
平たくいうと、小説版の編集王という印象であります
扱っている内容が違うので、言い得てない気もしますが、
例えると、私の力ではこうなってしまう

さておき、まったく関係ないアパレル業界から、
まったく華麗じゃない理由で転進した女が、
おぼこのままから、やがてスターダムというか、
本を売る女、それもとびきり売る営業女
ミリオンセラーガールになるという
サクセスストーリーであります

出てくるキャラクタはそれぞれ個性豊かで、
また、それぞれの個性が、様々な立場と状況、
各々の領分みたいなのを代弁していて、
出版業界というもの、編集に目があたりがちななかで、
営業とか、物流とかをクローズアップして、
書店さんの苦悩みたいなのも描いていて
業界をざらっと読めたと錯覚してしまうほど
よくよくに描かれていました、
ちょっとというか、まるで社会見学に来たようだと
精緻にきわまる描写があったりするんだけども
それはそれで、興味がわいて面白いのでありました

本が好きな人も、好きじゃない人も、
様々な人が、本にかかわっていて、
そして、好きでもなかった人が好きになってと、
本に関するユートピアというか
幻想や希望といった淡いものも描かれていながら、
大手に負けて店を畳まざるを得ない本屋だったり、
日の目を見ずに死んでいく本だったりと
現実というか、当然のそれも描かれていたりして、
いずれにせよ、本について考えさせられる
それを通して、一つの仕事に思いをはせるというか
まぁ、ともかく、いい小説だったと
読後感爽やかに楽しめたのでありましたとさ

重たくなく、読みやすく、
さらりとわかりやすい小説なので
人にも薦め易いなんて思ったりするのでありました

【アニメ】Serial experiments lain

2013-09-03 20:30:19 | ドラマ映画テレビ感想
もしかしたら、前にも書いてるかもしれない
そう思いつつも、現役の頃、本放送で見ていたんですが
ひょんなことから、最近全話見る機会がありまして
感想でもしたためておこうのメモであります

当時、大学生でしたので、
このサイケデリックといっていいのか、
パンクというか、アングラというか、
雰囲気だけで、これはいいものだ、などと
内容もわからずにベタ褒めしていたものでしたが
今回見直してみて、いや、よくできたアニメだなと
10年ぶり、いや、もっとか、
ともかく内容を理解したのでありました

lainという少女を中心とした、
ワイヤードという世界の神様のお話でありました
やっとわかった、ワイヤードがなんだったのか、
ナイツってどうだったのか、
lainが誰だったのか

この年齢になって、初めて理解できたわけでして、
理解、まぁ、合っているかどうかはともかく、
自分なりに消化できると楽しいものでありまして
非常に面白かった、そして、
あの世界観が10年以上前に構築されていたというのは
凄いSFだなとも思うところ
実にはやいうちから、プロトコルがどうしたとか、
NAVIというPCではないコミュニケーションツールがあり、
なんだろう、今見たからこそというのか
感激してしまうのでありました

物が違うだけで、人間がやることはさほどにかわらなくて、
さりとて、そこにも世界があるから、神がいるのね
なんて感想を抱いてしまうわけでありました
いや、本当に面白かった

物語としても起伏に富んでいるし、
何よりも、毎回ひきつけるツールというか、
プシュケーとか、ナイツとかの怪しさに加えて、
最初から見え隠れしていた、もう一人のlainが出てきて
しかもそれは一人じゃなくてとか
あれこれ考えていくと、やがてワイヤードの神に出会い
神が、作られたものだと喝破し、
本当の神様を信じるというか、lainが神そのものじゃないかと
まぁ、神とはなんだという心理的なところも
あれこれと補完してくれるという
見ていて面白すぎるアニメでありました
ツボなんだな、間違いない、ああいうのが少女であるというのが
ヲタク的であって、ナードというやつなんだ

そんなわけで、途中でさしはさまれる
嘘科学の面白さもあいまって、
科学者は探求するだけではなく、
結果を予測せず期待だけの実験を行うという
博士の台詞なんかが、もう、
あのシーン全てあわせて最高によかったと
興奮さめやらぬ感じなのでありました

大学の頃は最後にlainがアリスとすれ違うあたりに
何か思っていたような気がしますが、
あれは象徴的な1シーンでしかなくて、
ずっと前から、そしてずっと先にも
同じことを繰り返すのがlainで神なんだとか
中二病を再発したのでありました

いい塩梅で刺激される
ステキアニメであります

【読書】小説湾岸戦争 男たちの叙事詩

2013-09-02 21:25:47 | 読書感想文とか読み物レビウー
小説湾岸戦争 男たちの叙事詩  作:伊吹正彦

久しぶりに重たい小説を読みました
内容が重いというか、濃密というか、
経済物とはまた違う、史実なのかも私にはわかりませんが、
あの湾岸戦争のときに何が起きていたのか
それを記した小説でありました
正式には、戦争そのものではなく、
そこで働いていたオイルマンたちの生き様が描かれていました
感動であります

内容は1991年の湾岸戦争が始まる前から、
戦争突入し終結、その後といったところを描いております
イラク軍に占拠されたクウェート、カフジという町の
ある石油採掘施設における
日本企業の奮闘が描かれていました
カフジ油田というのは、日本初の海外自己開発油田なんだそうで
現在はすでにその権益を失った様子でありますが、
その権益を守るため、国益と政治と戦争に巻き込まれ
必死に戦った「日本アラブ石油開発」という
日系企業の苦闘、とりわけ前線の苦闘が描かれておりました
本のどこにもフィクションとかノンフィクションとか
書かれてないんですが、
会社の名前その他、仮名だと思われます

作者の経歴が主人公と似ているところを考えると
多分本人を見立てた、実録に近いそれなんだと思うのですが
日本の本社と、現場であるカフジにいる社員たち
その間に流れる、暗くて深い川の話なんかは、
まぁ、よくある経済小説のそれではあるものの
その切実さというか、怒りが一面からの描写というのもあってか、
とても強烈に書かれています
怒りというのがはっきりとれる文章というか
そういう内容でありました
個人的には、あまり好きではない切り口なんですが
その後、進んでいくにつれ、状況が切迫してくる
つまり、開戦に近づいてくるにつれて
描写が生々しく続くと、その怒りの根底というか
根幹が見えてくるようで怖い

特に戦争状態に入ってからの状況は
まさに死ぬ、戦争で殺される、
そういった状況にさらされたという生々しさが
ものすごく鮮烈に描かれておりまして
気が触れてしまうような人が出たさまも
なんというか、生々しいといいますか、
そういうものなのかと思うほどで
読んでいる当初は、それこそ、
本社の人間の言い分がわかるような現実感の無さだったのが、
肉薄する生死のそれこれが伝わってくるにつれ
それは経験した人にしかわからぬものなのだろうと
なんというか、伝わらぬ怒りや思いに
うなってしまうのでありました

無事、誰も死なずに帰ることができたものの
その間の筆舌に尽くせぬ労苦が、
様々な蝕みとして人の身体に巣食い
終末は、酷く寂しい形になってしまいましたが
その人たちへの鎮魂歌、いや、叙事詩であると
なるほど、読み終えて思うような
壮大なものでありました

ドキュメンタリーのようでもあり、
実録のようでもありと、小説としてどうかと思うところも
いくつか見当たるものの、そのあたりがかえって
手触りのように伝わってよかったと
湾岸戦争というものの一端を知るのに
よかったと読み終えて思ったのでありました

八重の桜  襄のプロポーズ

2013-09-01 20:44:12 | NHK大河ドラマ感想
NHK大河ドラマ「八重の桜」
視聴完了です
今回は、きちんと物語を進める回というのか、
丁寧に一つ、畳まれたというイメージがわきました
かつての仲間たちとの小さい幸せの再会と、
哀しいお別れ、新しい出会い
幻聴に聞こえた、尚さまの声で
あなたはこれからを生きる人だというのが
かなりすばらしく描かれていたように思うのであります

まぁ、何がよかったというと
それを受けてというか、やっぱり兄つぁまでありまして
尚さんの死に様をもって「戦死」と称したのは
なんというか、うなるといいますか
すばらしいなと感激してしまいました
本当、これは供養とかそういうそれこれではなく
ただただ、よく練られた台詞というか
いい言葉だなーなどと、感動してしまった
こんな風に言われてみたいものだというか
なんか、いいですね(そればっかり)

その他は、まぁ、題名のとおり
襄のプロポーズ大作戦が行われて
女をともなってのピクニックからのという
これもまたよく出来ている
八重を過去から解き放つというか、向き合わせたという点で
旦那の役をもぎとっていったと感じるほど
なかなかよい作戦でありました
当地で、聞こえるかもしれない、残ってないかなと
うろうろするのはちょっとなんというか、
これはいかんだろうと、ハラハラというのか
心配してしまったのでありますが
そのあとのフォローがよかったですね
さすがアメリカ帰り、さらっと斉藤を口説き落としたりしたあたりも
なんというか、人物であります

時尾さんの結婚事例はでるだろうと思ってましたが
ちゃんと大殿まで呼ばれているところを再現していて
非常によろしい気分でありました
もうちょっとにぎやかしの人数がいないとおかしいかなと
思わなくもなかったけども、あれはあれで
楽しそうというのか、いいことだなと
しみじみであります
ただ、剛力さんの役どころはどこいったんだろうと
一抹の不安を覚えたのでありますが
今後、なんのフォローもなく出てこないんだろうか
それはそれで、斗南地獄の結果なんだろうかと
案じてしまうのであります

次週からは、また、世間という敵と戦うようで
そして、槇村とのあれこれもきっちり描かれるようで
楽しみに過ごしていきたいところであります