小説湾岸戦争 男たちの叙事詩 作:伊吹正彦
久しぶりに重たい小説を読みました
内容が重いというか、濃密というか、
経済物とはまた違う、史実なのかも私にはわかりませんが、
あの湾岸戦争のときに何が起きていたのか
それを記した小説でありました
正式には、戦争そのものではなく、
そこで働いていたオイルマンたちの生き様が描かれていました
感動であります
内容は1991年の湾岸戦争が始まる前から、
戦争突入し終結、その後といったところを描いております
イラク軍に占拠されたクウェート、カフジという町の
ある石油採掘施設における
日本企業の奮闘が描かれていました
カフジ油田というのは、日本初の海外自己開発油田なんだそうで
現在はすでにその権益を失った様子でありますが、
その権益を守るため、国益と政治と戦争に巻き込まれ
必死に戦った「日本アラブ石油開発」という
日系企業の苦闘、とりわけ前線の苦闘が描かれておりました
本のどこにもフィクションとかノンフィクションとか
書かれてないんですが、
会社の名前その他、仮名だと思われます
作者の経歴が主人公と似ているところを考えると
多分本人を見立てた、実録に近いそれなんだと思うのですが
日本の本社と、現場であるカフジにいる社員たち
その間に流れる、暗くて深い川の話なんかは、
まぁ、よくある経済小説のそれではあるものの
その切実さというか、怒りが一面からの描写というのもあってか、
とても強烈に書かれています
怒りというのがはっきりとれる文章というか
そういう内容でありました
個人的には、あまり好きではない切り口なんですが
その後、進んでいくにつれ、状況が切迫してくる
つまり、開戦に近づいてくるにつれて
描写が生々しく続くと、その怒りの根底というか
根幹が見えてくるようで怖い
特に戦争状態に入ってからの状況は
まさに死ぬ、戦争で殺される、
そういった状況にさらされたという生々しさが
ものすごく鮮烈に描かれておりまして
気が触れてしまうような人が出たさまも
なんというか、生々しいといいますか、
そういうものなのかと思うほどで
読んでいる当初は、それこそ、
本社の人間の言い分がわかるような現実感の無さだったのが、
肉薄する生死のそれこれが伝わってくるにつれ
それは経験した人にしかわからぬものなのだろうと
なんというか、伝わらぬ怒りや思いに
うなってしまうのでありました
無事、誰も死なずに帰ることができたものの
その間の筆舌に尽くせぬ労苦が、
様々な蝕みとして人の身体に巣食い
終末は、酷く寂しい形になってしまいましたが
その人たちへの鎮魂歌、いや、叙事詩であると
なるほど、読み終えて思うような
壮大なものでありました
ドキュメンタリーのようでもあり、
実録のようでもありと、小説としてどうかと思うところも
いくつか見当たるものの、そのあたりがかえって
手触りのように伝わってよかったと
湾岸戦争というものの一端を知るのに
よかったと読み終えて思ったのでありました
久しぶりに重たい小説を読みました
内容が重いというか、濃密というか、
経済物とはまた違う、史実なのかも私にはわかりませんが、
あの湾岸戦争のときに何が起きていたのか
それを記した小説でありました
正式には、戦争そのものではなく、
そこで働いていたオイルマンたちの生き様が描かれていました
感動であります
内容は1991年の湾岸戦争が始まる前から、
戦争突入し終結、その後といったところを描いております
イラク軍に占拠されたクウェート、カフジという町の
ある石油採掘施設における
日本企業の奮闘が描かれていました
カフジ油田というのは、日本初の海外自己開発油田なんだそうで
現在はすでにその権益を失った様子でありますが、
その権益を守るため、国益と政治と戦争に巻き込まれ
必死に戦った「日本アラブ石油開発」という
日系企業の苦闘、とりわけ前線の苦闘が描かれておりました
本のどこにもフィクションとかノンフィクションとか
書かれてないんですが、
会社の名前その他、仮名だと思われます
作者の経歴が主人公と似ているところを考えると
多分本人を見立てた、実録に近いそれなんだと思うのですが
日本の本社と、現場であるカフジにいる社員たち
その間に流れる、暗くて深い川の話なんかは、
まぁ、よくある経済小説のそれではあるものの
その切実さというか、怒りが一面からの描写というのもあってか、
とても強烈に書かれています
怒りというのがはっきりとれる文章というか
そういう内容でありました
個人的には、あまり好きではない切り口なんですが
その後、進んでいくにつれ、状況が切迫してくる
つまり、開戦に近づいてくるにつれて
描写が生々しく続くと、その怒りの根底というか
根幹が見えてくるようで怖い
特に戦争状態に入ってからの状況は
まさに死ぬ、戦争で殺される、
そういった状況にさらされたという生々しさが
ものすごく鮮烈に描かれておりまして
気が触れてしまうような人が出たさまも
なんというか、生々しいといいますか、
そういうものなのかと思うほどで
読んでいる当初は、それこそ、
本社の人間の言い分がわかるような現実感の無さだったのが、
肉薄する生死のそれこれが伝わってくるにつれ
それは経験した人にしかわからぬものなのだろうと
なんというか、伝わらぬ怒りや思いに
うなってしまうのでありました
無事、誰も死なずに帰ることができたものの
その間の筆舌に尽くせぬ労苦が、
様々な蝕みとして人の身体に巣食い
終末は、酷く寂しい形になってしまいましたが
その人たちへの鎮魂歌、いや、叙事詩であると
なるほど、読み終えて思うような
壮大なものでありました
ドキュメンタリーのようでもあり、
実録のようでもありと、小説としてどうかと思うところも
いくつか見当たるものの、そのあたりがかえって
手触りのように伝わってよかったと
湾岸戦争というものの一端を知るのに
よかったと読み終えて思ったのでありました