森の中の一本の木

想いを過去に飛ばしながら、今を見つめて明日を探しています。とりあえず今日はスマイル
  

さよなら

2006-12-13 17:04:38 | ’08/12/7までの未整理日記
 年を重ねても  あなたは気ままな自由人だった
 娘が 親を養うのは当たり前だと言っていた
 まるで 子供のように 娘に甘えていた
 ふらりと出かけては 一人で温泉につかっていた
 ふらりと出かけては 買い物をしていた
 部屋には、袖を通していない服や、値札さえ外れていないバッグが
 山のようにあるという

 あなたは、その寂しさを娘のお金を使うことで埋めていたのかな
 娘は嘆いていたんだよ
 あぁ、私は何時まであなたを背負っていけばいいんだろうって


 病が訪れても あなたは気ままな自由人だった
 あれは嫌よ  これも嫌いよ
 我慢を知らない赤ん坊のように 自分の気持ちに正直だった
 その我侭が自分の命の長さを短くしてしまっているというのに
 最後まで そのことに気が付かなかった

 だけど あなたはその我侭を貫いて
 娘がずっと傍らにいることが出来る日を選んで旅たった。

 「あの人は」と言いながら、娘は頑張っていたよ
  ―あの人の愛を感じない
 娘はそう言っていた
 そうかな。
 子供のように娘に甘える「愛」と言うのもあったのかもしれない
 迷惑な「愛」だったけれど

 ―あの人に愛を感じない
 娘はそう言っていた
 そうかな。
 手を抜かない看病をして 眠るような死を見送った
 どうして そこに「愛」はなかったなどといえるのだろうか


 6月8日私はあなたと病院で会い、三人で食事をした
 その後も、一度だけあなたの家で少しだけ会ったかも知れない
 でも、私の中ではあの日が最後の思い出。
 少女のように私に微笑んだ。
 帰るとき ホールの玄関まで見送ってくれた。
 二ヶ月で15キロも痩せたその小さな体が切なくて、
 何度も振り返って、私は手を振った
 

 さよなら
 もう 会えないね
 小さな顔で微笑んだ あなたの笑顔を 覚えているよ

 さよなら



昨日、友達のお母様が亡くなった。昨日は凍えるような冬の雨が降っていたけれど、今日は美しい雲が広がっていたね。
 
 

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