「ねえ、パパ。見てごらん。うちの子供たちは本当にみんな可愛くていい子よねぇ。」
二段ベッドの上に寝ていた私の枕辺に、夜中に父、母がやって来て囁いています。カサリと何かが音を立てても、目を覚ましてしまう私は、寝た振りをしています。なぜ、両親がやって来たのかわかっているからです。
「この子は起きていると、お口が達者で憎まれ口ばかり言っていて、本当に憎たらしいのに、寝ている顔を見ていると本当に天使のようだわ。」
「ママ、この子はあの女優に似ていないかい。」
「内藤洋子でしょ。私もいつも思っていたわ。このおでこのところが似ているのよね。」
白い小さな手が私のおでこを撫ぜていきます。
「いい子だね。」
大きい暖かい手が髪を撫ぜていきます。
「可愛いね。」
立ち去った後も、私は目を開けません。手をほんの少し動かしてみると何かが手に触れるのが分かりましたから。うっかり目を開けて、朝目覚めた時の楽しみを失いたくはありません。昔のことですよ。プレゼントは分かっていたのです。
今でもスーパーの片隅で売っていますか?ブーツの形をしたお菓子の詰め合わせです。たいしたものは何も入っていなくて、だけどあんなものでも嬉しかったのですね。その頃のおやつは果物にお汁粉、甘酒にふかし芋に蒸しパン、今思うと贅沢ですよね。でも、お菓子というものはいつもあるものではなかったのですよ。何しろ四人姉妹ですから。
でも、その後私にも子供が生まれると、あの時目を開けないようにして受け取ったプレゼントは、ブーツのお菓子ではなくて、両親の会話だったのだと私は思うようになりました。
今もですが、自分が寝るときに子供達の部屋を確認しに行っています。大体ですが、上の子供はまだ起きていて、下の子供は電気もストーブも付けっぱなしで布団もかけずに寝ています。
まだ、二人とも私より早く寝てしまっていた頃、布団なんかを掛けなおし、そして私は頭を撫ぜながら、こう囁いて部屋を後にしていました。
「可愛いね。いい子だね」
二段ベッドの上に寝ていた私の枕辺に、夜中に父、母がやって来て囁いています。カサリと何かが音を立てても、目を覚ましてしまう私は、寝た振りをしています。なぜ、両親がやって来たのかわかっているからです。
「この子は起きていると、お口が達者で憎まれ口ばかり言っていて、本当に憎たらしいのに、寝ている顔を見ていると本当に天使のようだわ。」
「ママ、この子はあの女優に似ていないかい。」
「内藤洋子でしょ。私もいつも思っていたわ。このおでこのところが似ているのよね。」
白い小さな手が私のおでこを撫ぜていきます。
「いい子だね。」
大きい暖かい手が髪を撫ぜていきます。
「可愛いね。」
立ち去った後も、私は目を開けません。手をほんの少し動かしてみると何かが手に触れるのが分かりましたから。うっかり目を開けて、朝目覚めた時の楽しみを失いたくはありません。昔のことですよ。プレゼントは分かっていたのです。
今でもスーパーの片隅で売っていますか?ブーツの形をしたお菓子の詰め合わせです。たいしたものは何も入っていなくて、だけどあんなものでも嬉しかったのですね。その頃のおやつは果物にお汁粉、甘酒にふかし芋に蒸しパン、今思うと贅沢ですよね。でも、お菓子というものはいつもあるものではなかったのですよ。何しろ四人姉妹ですから。
でも、その後私にも子供が生まれると、あの時目を開けないようにして受け取ったプレゼントは、ブーツのお菓子ではなくて、両親の会話だったのだと私は思うようになりました。
今もですが、自分が寝るときに子供達の部屋を確認しに行っています。大体ですが、上の子供はまだ起きていて、下の子供は電気もストーブも付けっぱなしで布団もかけずに寝ています。
まだ、二人とも私より早く寝てしまっていた頃、布団なんかを掛けなおし、そして私は頭を撫ぜながら、こう囁いて部屋を後にしていました。
「可愛いね。いい子だね」