森の中の一本の木

想いを過去に飛ばしながら、今を見つめて明日を探しています。とりあえず今日はスマイル
  

約8年《番外編・残酷な夢》

2023-02-15 00:21:03 | ランダム自分史

それは昔からなのですが、体のどこかが不調だと悪夢を見る事が多い私です。

でもその夢は、それなりにストーリーがあったり、心に残る風景があったりで、意外と嫌いではありません。

例えばある日ー、

〈ああ、しかし、夢ってあんなにはっきり覚えていたというのに「君の名は。」でも言っていた通り、どうしても覚えていられない宿命があって、あっという間にモヤモヤの中に吸い込まれて行ってしまうのは、ある意味、自分の脳と心を守る為でもあるのかも知れませんね。長い夢のストーリーをすべて覚えていて、毎日見ていたら、とんでもないことが起こりそうです。だいたいはっきりと覚えているのはそのラストなのではないでしょうか。〉

ー、タクシーに乗って子供を迎えに行くんです。

「ここから先には行けません。」とタクシーの運転手が言うので、降りて、振り向くとそこには長い長い砂の下りの坂道が続いているんです。

夢の中に自分で作り上げた街があるなんて事はないですか ?

私は横浜の育った町がベースで、故郷の町と作りは一緒なのにまったく違う街の中が、たいがい私の夢の舞台です。

ちょっと変なのですが、その夢の中の街は、本当に綺麗な風景が多いんですよ。

その下りの坂道のその先には、さながら日本アルプスのような山々が見えて、なんて美しいのだろうと、しばし足が止まるほどです。

それなのに、そこから続く夢は、ちょっと怖いホラー・・・・。

それでもそんな綺麗な風景を見る事が出来たのなら、まあいいかと言う所です。

 

だけど昨日見た夢は、何でかスノウさんがやたら元気な夢でした。

ほんの少しは「あらら」と思いました。だけどあまり深くは考えなかったのです。

あまりにも普通に当たり前のようにいたから。そんな事もあるな。なんか気を付けようっと。何に気を付けるのかって。さあ、よく分からないけれど、何かに?

そんな感じ。

 

私たちはいつものように賑やかでワイワイとしていました。さながらみんなでディズニーランドに遊びに来たノリと言う感じだったと思います。

大きな声で話すスノウさん。

そこは何かのイベント会場で、そして私は何かに関わっていたみたいで、何らかの雑用に追われていました。

その時スノウさんが言いました。

「あそこ、楽しそう。あっちに行ってみない ?」とそのイベント会場の一角を指さしました。

「あっ、今私ちょっと行けない。」と私は言い、

名都さんと蝶子さんに、一緒に行ってあげてと頼んだのです。だけど私が戻ってくると、スノウさん一人だけが、そっちのブースの方に行っていました。

「どうして付いて行ってあげなかったの ?」と聞くと、二人は不思議そうな顔をしました。

「ひとりで平気と言うから、ここで待ってることにしたのよ。イケなかったの?」

「見張ってなきゃダメなのよ。」と私は言いました。

 

そう。見張ってなきゃダメなのよ。いったい何から ?

だけど私はそう思って、そのブースまで走っていきました。

なんとそのブースの奥は、海水浴場のようなプールになっていました。

真っ赤な唇の受付の女が、笑いながら聞いてもいないのに、「あそこにいる。」と言いました。

 

私は悲鳴をあげました。

なぜなら妹は、楽しそうに人口の波にはしゃぐ人々の向こう側に、ぷかぷかと息もしないで浮いていたからです。

「ダメよ~ !!!」と私は叫びながら、水の中にバシャバシャと入っていきました。そして沈んでいる妹の頭を水の上に一生懸命に持ち上げました。

「まだ大丈夫。間に合うから。息をするのよ。息をして。息をして。息を !!」

 

私はこの夢を、目覚めた後しばらく忘れていました。

午後になってふと思い出し、しみじみと、なんて残酷な夢なんだろうかと思いました。

あの子はキラキラと生きていなたぁと思い、またあの子は死んだんだなと思ったからです。

 

※      ※

スノウさんの心臓が止まった時、名都さんは願うように言いました。

「マッサージは !?  心臓マッサージしたら・・・。」

だけど私は、小さく首を振り、はっきりとゆっくりと名都さんに言いました。

「しないのよ。」と。

 

自宅で延命無しを希望するという事は、実はそういう事なんです。父の自宅での看取りを経験したので、いろいろと分かっていた事もありました。

心臓が止まったからと言って、救急車などを呼ぶなどしないわけで、ゆえにこの場合の心臓マッサージなど本当に意味がない事だと思います。

だけどこの時、その言葉が出て来るとは、実は私にとっては思いもよらない事だったのです。

その時、冷静な私は言うべき5文字を彼女に伝えたけれど、その裏側には、その無駄な意味のない行為を誰よりもしたかったもうひとりの自分が居たんじゃないかと思うんです。

その閉じられた目が再び開かなくても、息をするその呼吸は苦しそうでも、今ひとたびその息の音を聞きたいと、馬鹿みたいになりふり構わずにやりたかった・・・・。

そしてそれはその部屋にいたみんなも、きっと同じような気持ちだったんじゃないかと、今でもふとそう思う時があるのです。

 

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