1/8日経の経済教室、特集「危機を超えて」4番目の特集。柳川範之氏(東京大学准教授、63年生まれ。東京大学経済学博士。専門は契約理論・金融契約)。
柳川氏は、日本経済を、沈みゆくタイタニック号内で行われている宴会と例え、日本経済システムを大きく変化させなければ船が沈没すると警鐘を鳴らしている。
柳川氏は、日本の中長期的な活路を見出すには、米国の需要依存の限界が露呈した今、アジア諸国の旺盛な需要と成長力をうまく取り込み、発展する道筋をつけるべきという。アジア諸国に消費・投資需要を見出すのである。
その場合に、日本の製造業と金融が鍵を握る。
金融業が鍵となる理由は、金融業は、製造業の長期的な収益性を高めるために必要な資金と情報を適切に提供するからである。
柳川氏の論説で、政治の役割を二つ述べている。
一、将来に対する明確な方向性や指針を示すこと
政治は、人々の期待や予想を安定させ、上向きにさせる役割がある。
政治が将来の進路をきちんと指し示すことによって、人々は明確な長期予想を描き、将来に対して信頼感を得ることができる。
一、市場メカニズムげ適切に機能する制度整備
サブプライムローン問題に端を発した世界的な経済危機は、市場に単純に任せたゆえの失敗であった。
今後、政治的に発生するコストを小さくしつつ、望ましい規制や政策介入の水準を探るという、今まで以上に難しい政策運営が要求されている。
その際に必要なのは、規制の影響に関して冷静な分析やシミュレーションを積み重ねていくことである。より多くの人間が政策の検証を行うことで、はじめて歪(ゆが)んだ規制を実現させようとする政治的なプレッシャーに対抗し、経済的影響をより明確にした議論が期待できる。
ただし現状では、このような知による対抗に過度の期待をするのは、楽観的過ぎることも事実だろう。政策評価のレベルがそこまで進化しているとはいえないからだ。この点は、学者やマスコミなど分析や評価を流す側の責任も当然大きい。感情的な評価や情報ばかり流していたのでは国民は適切な判断が出来ない。政策決定プロセスの透明化をはかっていくと同時に、専門家による積極的な評価や情報分析がもっと必要である。
柳川氏は、政治が経済の表舞台に登場することで懸念される問題点を二つ挙げている。
一、政治的な交渉の結果、望ましい規制の水準が実現しない可能性が高い
「この点は、近年の政治経済学の研究成果をひくまでもなく、過去の経験から明らかだろう。」と柳川氏は言う。
一、政治的コスト
政治的交渉過程で、資源や労力が浪費され、無駄な時間が流れてしまうという点である。
社会保障のあり方をめぐっては、ずいぶんと議論や手間をかけているにもかかわらず、まだ決着をみていないことを柳川氏は例に挙げている。
****以下、小坂の考え*****
市場メカニズムに経済を任せることは、とても危険であると私は考えます。
実際、市場メカニズムの失敗により、サブプライムローン問題、昨年の原油価格の急騰など生じました。
大切なことは、市場メカニズムが適切に機能する環境整備であり、それを政治が行うべきことです。
政治的コストを、柳川氏は、お金のかかるもの、時間のかかるものと述べておられます。
果たしてそうでしょうか。
この度経験したサブプライムローン問題でこうむった経済的損失に比べれば、そんなに財政負担はないと思います。
時間のかかるものというのは、その通りであります。政策決定の根拠となる国民の意識(民意)が変わる(意識改革)のにまず時間を要します。この部分が律速段階で一番時間がかかるのではないでしょうか。その民意があれば、政治はその民意を反映して政策を立案、政策決定過程を明らかにすることで進むと思います。
政策が実行された後の、政策評価をきちんとすることで、政策自体の修正を加えたり、今後の立案に生かされます。よって、政策決定と同レベルで大事なことだと思います。
私が師事する国際政治学教授 石井貫太郎先生から、「政治は、経済を統括する、すべてを統括する」ということを学びました。
そのことを下に、考えを述べました。