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陸山会事件の東京地方裁判所(登石郁朗裁判長)有罪判決について、有識者の見方

2011-10-01 22:40:37 | 築地を守る、築地市場現在地再整備

以下、ネットで、陸山会事件有罪判決について、有識者の皆様が述べられていた見解をこちらでも掲載致します。  賛否両論を入れたいとも考えていますが、有罪判決に否定的な見解のほうが多く私は見出します。


@nobuogohara 郷原信郎氏
 九州電力第三者委員会も、昨日の最終報告書公表で、一応終わり。ようやく、陸山会事件の判決要旨を読んだ。唖然としたとしか言いようがない。こんな刑事判決があり得るのか。検察の立証をベースにしてきた従来の刑事司法を、(悪い意味で)根底から覆し、裁判所が、勝手な判断ができるのといえる
 検察がストーリーを固定化して、それに沿う調査を不当な手段でとろうとするのも問題だが、それ以上に、その調書すら必要とせず、裁判所が、推測や憶測で勝手に事実を認定するようになったら、不十分とはいえ、検察という組織のハードルがかかるのと比較して、さらに事態は悪化する。
 今回の事件では、裁判所は、検察が用意した検察官調書という料理を食べないでが推測、憶測で料理を作り上げた。こういうことがまかり通るのであれば、検察官は、適当な証拠で取りあえず起訴すれば、有罪判決もあり得るなることもある、ということで、無責任な起訴がまかり通ることになってしまう。



@kenichiromogi 茂木健一郎氏
社説を書いた人、頭か性格か、どちらかが(両方とも?)悪すぎる。先の大戦で戦争続行を煽っていた時と変わらぬ。判決が、司法の原理原則に照らして適切なのか、そちらの方がよほど社説のテーマとしてはふさわしいでしょ。 @amneris84 朝日新聞社説、小沢氏を早く証人喚問しろと尻叩き。


@shuntorigoe 鳥越 俊太郎氏
陸山会関係の裁判について。判決の最大の問題は水谷建設からの五千万円2件をなんの証拠調べもせずに断定していること。カネは必ずどこから持ち出したかと、渡したカネはどこに行ったか、入りと出が証拠で確認しなければならない。これは捜査の常識。とんでもない作文判決だ!


@minorucchu ジャーナリスト 田中稔氏
陸山会の政治資金をめぐる小沢一郎氏の3秘書に対する判決は,やはりどう考えてもおかしい。裁判長の前歴など検察・法務官僚とのつながりの線が浮上。江川紹子的な論も含めて両論併記だが、編集作業に入る。「司法ムラ」の闇を暴け、と。

@someya_masakuni 染谷 正圀 氏  昨夜ある記者との会話で気づいたが、「4億円を用立てた小沢氏自身ですら原資については明快な説明ができていない」とする地裁判決の決めつけは、政資法も資産公開法も公開を求めていない現金を政治資金でも生計費でもない資金とし不時の出費に備えた保守政治家の説明の論理を解せない小市民の感覚。  起訴とは、国家訴追主義の下での起訴独占主義に基づき独任庁としての検察官が行う刑訴法上の行政処分であり、検察官が不起訴処分にした事案に係る国家行政組織の埒外の存在である検察審査会による起訴議決に基づく処分庁である筈もない指定弁護士による公訴の提起なるものが起訴であるはずもない。  「赤旗」は、公判前整理手続で小沢氏の公判の争点が、元秘書との共謀、起訴の適法性、虚偽記載の有無の3点で確定したと報じているが、指定弁護士による公訴の提起なるものが刑訴法上の起訴であることが確定しない限り、刑訴法上の手続である公判前整理手続などそもそもなしようがないではないか。

 

 

 

*ブログ:弁護士落合洋司(東京弁護士会)の「日々是好日」

陸山会事件が改めて提起した共謀の問題 http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20111002#1317550807

*****産経新聞(2011/10/03)***** http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/111003/crm11100302580002-n1.htm?utm_source=MSN%E7%94%A3%E7%B5%8C&utm_medium=MSN%E7%94%A3%E7%B5%8C&utm_term=MSN%E7%94%A3%E7%B5%8C 【正論】 評論家・屋山太郎 小沢氏よ、議員の資格はないぞ 2011.10.3 02:57  政治資金規正法違反で秘書3人が有罪判決を受けたというのに、親分の小沢一郎元民主党代表が議員辞職もしない厚顔には驚く。傘下の議員たちが集まって小沢氏を激励したというのにも呆(あき)れる。  10月には小沢氏自身の裁判も行われる。氏が検察審査会に強制起訴された際、傘下の議員らは「素人による審査には問題がある」と批判したが、政治家はいつも素人に分かる行動を取るのが常識だろう。「素人にはそう受け取られてしまうのか」と悟った時点で、議員の資格はないと知るべきだ。  ≪指導者は「李下に冠正さず」≫  小沢氏は記者会見で、4億円の土地は小沢一郎名義になっているが、政治団体『陸山会』のものだとし、「ここに確認書がある」と断言した。その後の秘書たちの裁判の経緯をみると、問題の土地は「融資で買った」から、「遺産で購入した」へと変遷している。小沢氏は、「確認書」についてだけでいいから、国民の誰にでも分かるように説明してもらいたい。  この土地購入が政治資金規正法違反事件に発展してきたとき、傘下の総務相(当時)、原口一博氏は、裁判で決着が付くまでは「推定無罪だ」と強弁した。推定無罪というのは、下々が疑いをかけられたときの話であり、政治指導者は「李下に冠を正さず」の精神が不可欠だ。「疑わしきは罰せず」ではなく、「疑いをかけられたら退く」のが指導者の道である。  私は岸信介氏以来の首相を見てきたが、田中角栄氏を除いては、皆、質素な家に住み、生活態度も立派だった。池田勇人氏は首相になると、料亭、ゴルフ通いを自らに禁じた。福田赳夫氏は終生、別荘を持たない主義だった。中曽根康弘氏は借家に住んでいた。彼らに共通していたのは、文武両道をたしなむという精神と贅沢(ぜいたく)を恥じる心を持っていたことである。  しかし、田中角栄氏は権力をカネづくりに利用し、途方もない御殿を建て、子分を増やすためカネをばらまいた。子分が増えれば、より大きな権力を●(つか)むことができたからだ。こうして角栄氏は数の力で首相の座を射止めた。その大金をどのようにして集めたか。土地転がしである。当時は新幹線、高速道路と“インサイダー取引”のやり放題だった。が、その錬金術師もロッキード事件で躓(つまず)く。  ≪角栄氏の権力手法と瓜二つ≫  起訴されて無所属になり、自民党周辺居住者となりながらも、同党内に140人の“田中軍団”を維持した。この派閥の力で鈴木善幸政権と、田中曽根内閣といわれた中曽根政権をつくった。角栄氏は鈴木、中曽根両氏に、総理の権限を使って指揮権を発動し、自分を助けてくれと期待していた。  田中角栄氏を持ち出したのはほかでもない。小沢一郎氏がしていることが瓜(うり)二つだからだ。違うのは、角栄氏が起訴されてすぐに離党したのに対し、小沢氏は恬(てん)として恥じず居座っている点だ。  政治家や社長が贅沢をしても、欧米では非難されることは比較的少ないが、日本では蔑(さげす)まれる。  その根源は、江戸時代上期の儒学者、山鹿素行が説いた武士道にある。山鹿は、戦国時代から各藩に伝わっていた家訓を集めて体系化した。山鹿が言ったのは武士は農、工、商が働いているのに、何もせずに彼らを支配しているのだから、質素に生き、品格を高め、教養を積めということである。  武士道というと、戦闘精神を鼓舞するというので戦後は禁句とされたが、武士道は戦国時代が終わってから体系化され、江戸時代には、武士たちが寺子屋を通じてその精神を庶民にも広めた。佐賀の「葉隠」は「武士道とは死ぬことと見つけたり」で有名だが、その真意は戦うことではない。「いつ死んでも悔いのないように立派に生きよ」ということである。  ≪2人に欠落する武士道精神≫  武士道精神の神髄は「潔さ」である。ちなみに、中国には「潔」という字があるが、衛生的に「清潔」という意味であって、日本人が尊ぶ「潔さ」とは全く違う。  「恥を知る」という精神も武士道の神髄の一つである。アメリカの政治学者ハンチントンが日本を一国一文明の国であると規定したのは、精神文化が中華圏とは明らかに異なると認識したからだ。  政治家にとって、この日本人の精神文化は必須である。それは政界だけでなく、企業社会にも定着している。欧米では、企業のトップの給与が社員平均の二、三百倍というケースはザラにあるが、日本の社長の場合は、10倍程度だろう。社長が工員服を着てヘルメットを被(かぶ)り、工場や現場に行くのも日本で多くみられる風景だ。  「武家の商法」という言葉もある。武家は権力を握っているのだから、ソロバンは教えないのが普通だった。だから、商売に手を出せば損をしたというのである。  田中角栄、小沢一郎の両氏は、この日本精神を全く持ち合わせていない。小沢氏の政治生命はもはや尽きた。トロイカ体制が終わることで、民主党は政権政党らしくなるだろう。中曽根首相は角栄氏に議員辞職を求めた。野田佳彦首相も小沢氏に議員辞職を求めよ。(ややま たろう) ●=掴の旧字体



*陸山会事件の東京地方裁判所(登石郁朗裁判長)有罪判決について、各紙の見方
http://blog.goo.ne.jp/kodomogenki/e/7744136b3d5912cfbc65a1e6565650ae

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B型肝炎、水痘、おたふくかぜ、ヒブ、肺炎球菌、子宮頸がん、ロタ、不活化ポリオワクチン、ぜひ実施を!

2011-10-01 18:57:26 | 築地を守る、築地市場現在地再整備
 毎日新聞小島正美記者が、ワクチン行政についてまとめた記事が掲載されていました。非常によくまとめられています。

 記事にもありますが、「ワクチン接種のあり方を審議している厚生科学審議会予防接種部会は今年7月上旬、B型肝炎、水痘、おたふくかぜ、ヒブ、子供と成人の肺炎球菌、子宮頸(けい)がんの七つの疾患で「ワクチン接種の促進が望ましい」との意見をまとめた。七つの疾患で当初は約5000億円、その後は年間約2000億円の費用がかかるとの試算も示した。」とのこと。

 B型肝炎、水痘、おたふくかぜ、ヒブ、子供と成人の肺炎球菌、子宮頸(けい)がん お済みでしょうか?

 記事にもありますが、近日中にロタウイルスワクチンも発売になります。当院でも実施します。

 そして、不活化ポリオワクチン接種。生ワクチン接種に伴う副作用としてポリオが発生しており、世界標準である不活化ワクチンの接種に早く切り替えられることが求められています。厚労省でも検討中ですが、まだ、いつになるのか、来年なのか再来年なのか不確かです。こちらも当院で接種可能です。



*******毎日新聞(2011・09・15)********
ワクチン“後進国”なぜ:/上 国が勧奨、8疾患のみ
http://mainichi.jp/select/science/news/20110915ddm013100020000c.html

 ◇おたふく風邪、副作用訴訟で任意接種に 周期的流行、今も
 「どうして、いつの間にこんなに差ができてしまったのか」。95~08年に米国の複数の医療機関で医師として働いた斎藤昭彦・新潟大教授が、帰国してまず感じたのは、先進国に比べ「日本のワクチン接種があまりにも遅れている」ことだった。

 米国では現在、B型肝炎、おたふく風邪、水痘(水ぼうそう)など13の疾患について国の責任でワクチン接種を実施し、基本的に無料だ。「米国では病院でかかる医療費が高いという事情もあり、ワクチンで防げる病気は予防接種で減らそうという意識が高い」と斎藤さん。90年代から次々にワクチン接種が増え、所定の接種を受けないと入学を拒否される場合もある。

 一方、日本のワクチン接種は、国が勧奨し公費で負担する「定期接種」と、希望者が自己負担で受ける「任意接種」に大別され、「定期接種」はジフテリア、麻疹(はしか)、日本脳炎など8疾患に過ぎない=表参照。

 8月13日に東京都内で開かれた日本小児科学会の国際シンポジウムでも、ワクチン接種がテーマの一つになった。基調講演した国立病院機構三重病院の庵原(いはら)俊昭院長は、おたふく風邪(流行性耳下腺炎、ムンプスとも)を例に挙げた。

 おたふく風邪はウイルスで感染し、耳の下が腫れ、発熱や頭痛、食欲低下などが1週間程度続く。頻度は低いが、脳の髄膜炎や難聴などの合併症を伴う。死亡はまれだが、3~6歳を中心に年間5000人前後が重い症状で入院。思春期以降に感染すると、精巣の萎縮や精子の減少が起きたり、妊婦は流産の危険性もある

 日本では「任意接種」で、接種率は統計がないものの、「ワクチンの製造量から推定して30%程度とみられる」(庵原さん)という。

 庵原さんは「おたふく風邪のワクチン接種を1~2回行うと、発症者が約90~95%も減ることがイギリスやノルウェーなどの調査で分かっている。先進国27カ国でワクチンをしていない(任意にしている)のは日本だけ。おたふく風邪の怖さが認識されていないのではないか」と訴えた。

   *

 なぜ、重症化の恐れがある感染症でも、予防のためのワクチンが任意接種なのか。日本赤十字社医療センターの薗部友良・小児科顧問は「日本のワクチン接種が遅れたのは訴訟による影響が大きい」と見る。

 おたふく風邪は、MMR(麻疹、おたふく風邪、風疹)ワクチンの一つとして、日本でも89~93年に予防接種が義務付けられていた。しかし、接種した約1800人が発熱、嘔吐(おうと)などを伴う「無菌性髄膜炎」の被害に遭った。副作用は約1000人に1人の割合にのぼり、子供が急性脳症で死亡するケースも出た。遺族らが国やワクチンメーカーを相手取った損害賠償請求訴訟が相次ぎ、国がほぼ全面的に敗訴した。

 MMRワクチンは中止され、94年には予防接種法が改正。ワクチン接種は強制的な義務から、「予防接種を受けるよう努めなければならない」という努力義務に変わった。8疾患のワクチン接種は続いたが、接種を受けるかどうかは本人や保護者の判断に任された。

 以降、国の定期接種は高齢者向けのインフルエンザを除き、一つも増えていない。厚生科学審議会での予防接種制度の見直し論議も進むが、「財政が厳しく、定期接種を増やすと予算がかかるのがネック」(厚生労働省担当者)との事情もある。

 現在のおたふく風邪のワクチンは改良され、無菌性髄膜炎の副作用の発症率は約2000~2万人に1人の割合とされる。しかし強制でなくなったことで、かえって「接種は危ないのではないか」というマイナスイメージも残っている。

   *

 任意接種のワクチンでも、有用性を認めて積極的に接種を進めている医師もいる。

 三重県亀山市の「落合小児科医院」の落合仁院長は約20年間、おたふく風邪のワクチン接種に取り組んできた。接種した子供は約6000人にのぼる。05年には同市内で約300人がおたふく風邪になる集団感染があり、1人が難聴になった。しかし、接種した子供たちからはこれまで「難聴のような重い症状は出ていない」(落合さん)という。

 亀山市も08年度から、おたふく風邪のワクチン接種に、1人3000円の助成を始めた。同小児科医院での接種費用は8000円のため本人負担は5000円だ。同市の3歳時点での接種率は約7割と高く、落合さんは「接種率が90%になれば、流行をほぼ抑えられるのでは」と期待する。

 おたふく風邪の国内の患者数は数年ごとに流行の周期があり、02~07年では年間約43万~136万人(国立感染症研究所まとめ)。これに対し米疾病対策センター(CDC)によると、米国(人口約3億人)では昨年で約980人と極めて少ない。厚労省のまとめでは、おたふく風邪のワクチンを公費で一部助成するのは水戸市、名古屋市など61市区町村(昨年3月時点)にとどまっている。

 庵原さんは「どのワクチンでも副作用をゼロにはできない。しかし、おたふく風邪は1歳を過ぎて早めに接種すれば、間違いなく発症を相当に防ぐことができる」と国の定期接種化を求めている。【小島正美】

   *

 日本のワクチン政策は「途上国並み」といわれる。どんな病気がワクチンで防げるのか。現状を3回にわたりリポートする。

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 ◇定期接種
 予防接種法に基づき、国の責任のもとで市区町村が勧奨する接種として行う。健康被害が出た場合は健康被害救済制度の対象となり、症状に応じて給付金が払われる。一方、ワクチン自体は国で承認されているものの、定期接種には組み入れられていないワクチンもある。医師や医療機関が自発的に行う任意接種で、おたふく風邪や水痘、B型肝炎などがある。任意接種で副作用が出た場合は、国の承認ワクチンなら、一般の医薬品の副作用救済制度の対象となる。「定期接種」と「任意接種」の二つがあるのは世界でも珍しい。

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 ■ワクチン接種の日米比較

          日本 米国

ジフテリア      ○  ○

百日ぜき       ○  ○

破傷風        ○  ○

麻疹(はしか)    ○  ○

風疹         ○  ○

ポリオ        ○  ○

日本脳炎       ○  ×

BCG        ○  ×

おたふく風邪     ▽  ○

水痘(水ぼうそう)  ▽  ○

ヒブ         ▽  ○

肺炎球菌       ▽  ○

ロタウイルス     ▽  ○

B型肝炎       ▽  ○

子宮頸(けい)がん  ▽  ○

 ○…国が公費で実施

 ▽…希望者が本人負担で行う(自治体の助成や健康保険の適用がある場合もある)

 ×…接種を実施していない

毎日新聞 2011年9月15日 東京朝刊


******毎日新聞(2011/9/16)*******
ワクチン“後進国”なぜ:/中 感染で後遺症負う恐れ
http://mainichi.jp/select/science/news/20110916ddm013100175000c.html

 ◇ロタウイルス、年80万人受診 1割は入院
 ◇細菌性髄膜炎、高い致死率 手足にまひも
 「その日の朝まで元気だったのに、重症化するとは思ってもみなかった」と、大阪府内の女性(32)は医師に語った。生後1歳7カ月だった長男が突然、白い便の下痢と嘔吐(おうと)を始めた。「ロタウイルス」による胃腸炎だった。自宅で処方薬を服用していたが、けいれんが起き、名前を呼んでも反応がなくなった。治療で何とか回復したものの、脳症の後遺症で左半身がやや不自由に。5歳になった長男は、現在もリハビリを続けている。

 治療に当たった大阪市立住吉市民病院の外川正生・小児科部長は「ワクチン接種が広がれば、こういう悲しいケースは減るでしょう」と話した。

 下痢を起こす感染症の原因としては、病原性大腸菌O157やノロウイルスがよく知られているが、ロタウイルスは実は、乳幼児の急性胃腸炎の最大の原因。ほとんどの乳幼児が5歳までに感染する。嘔吐や発熱が生じ、コメのとぎ汁のような白い下痢便が続くのが特徴だ。

 川崎市で小児科医院を開業する片岡正医師も以前、1歳児の患者を診た。意識がもうろうとし、口呼吸ができないほどぐったりしており、大学病院に緊急搬送した。「たかが下痢とあなどってはいけない。ロタウイルスは重症化すると脳炎を起こし要注意だ」と警告する。

 大阪労災病院の川村尚久・小児科部長によると、乳幼児に生じる脳炎、脳症の原因で最多はインフルエンザウイルス、次に突発性発疹で、3番目がロタウイルスという。国立感染症研究所によると、毎年約80万人の乳幼児が受診し、うち約1割がけいれんなどで入院し、死亡例もある。現在まで、ロタウイルスを撃退する抗ウイルス薬はない

 米国では06年から、本格的にワクチン接種が始まった。導入前は乳幼児の入院患者が年間6万人以上いたが、導入後は約7500人と約9割減ったという。今夏に来日し、厚生労働省と情報交換した米国予防接種呼吸器疾患センターのメリンダ・ウォートン副所長は「死亡する子供が毎年数十人いたが、ワクチンの導入でほとんどなくなった」と語った。

 世界保健機関(WHO)は09年、ロタウイルスのワクチンを乳幼児の感染症防止で最重要ワクチンの一つと位置づけた。世界では既に100カ国以上がワクチン接種を導入している。一方、日本では外資系製薬会社が開発したワクチンが、今年7月に承認されたばかり。年内には使える見込みだが、公費の定期接種ではなく任意接種となる

 ワクチンの臨床試験に携わった川村さんは「日本でもワクチン接種が徹底されれば、重症化する乳幼児は9割以上減る」とみる。定期接種にした場合でもコストは100億円程度といい、「集団感染に伴う治療費や親が仕事を休む損失を考えれば、財政面でも、ワクチン接種は国全体にプラスだ」と強調した

     *

 乳幼児を襲う「細菌性髄膜炎」も発症すると、約3割が死亡または後遺症を負う怖い病気だが、ワクチンは定期接種ではない

 患者や医師らでつくる「細菌性髄膜炎から子どもたちを守る会」(大阪市)の高畑紀一事務局長は04年、3歳だった長男が突然発熱と嘔吐に苦しみ、意識を一時失った。幸い、抗生物質の投与などで回復したが、医師からは「3分の1の確率で死に、3分の1の確率で後遺症が残るところだった」と言われた。高畑さんは当時、ワクチンのことを全く知らず、「海外ではヒブワクチンの接種で感染が激減している」と聞き、さらに驚いた。

 細菌性髄膜炎を起こす主な原因菌は、細菌のヒブ(インフルエンザ菌b型)と肺炎球菌。脳の髄膜につくと発熱、頭痛、嘔吐、けいれんなどの症状を引き起こし、初期は風邪と判別しにくい。年間約1000人がかかり、知的障害や手足のまひが残る場合もある

 守る会によると、米国や英国ではワクチン接種が導入され、細菌性髄膜炎の発症率は100分の1程度に激減し、もはや脅威とはいえない状態になっているという。同会は「ヒブワクチンの接種は世界約130カ国で行われ、デンマークでは発症がほぼゼロだ」とし、デモ行進もして定期接種化を広く訴えている。

 日本ではヒブワクチンが08年12月、小児用肺炎球菌ワクチンが昨年2月に、任意接種として始まった。多くの自治体が助成制度を設け、約9割の地域で自己負担はない

 ところが今年3月、ワクチン接種が一時中止された。二つのワクチンの同時接種後に、全国で7人の乳幼児が死亡していたことが明らかになり、厚労省は接種の見合わせを自治体に通知。その後、専門家の検討会議で「明確な因果関係は認められない」との結論が出て、4月1日から再開された。だが、「接種率は元に戻っていない」(同省)という。

 日本赤十字社医療センターの薗部友良・小児科顧問は「両ワクチンは10年以上前から、海外で数億回も接種されているが、死亡との因果関係は認められていない。重い副作用がゼロではないが、ワクチンをしない方が子供を危険にさらす確率は高い」と指摘する。

     *

 接種による副作用のリスクと、接種しない場合の感染・重症化のリスクは、最終的には本人や保護者の判断。一方で「任意接種」のままで助成がなければ、接種の機会を狭めかねない。薗部さんは「自己負担を伴う接種では、受けられない人が出てくる。命に格差があってはいけない」と訴えている。【小島正美】=次回は19日掲載

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 ◇母子手帳とワクチン接種
 乳幼児期に接種するワクチンのうち、国が行う「定期接種」は種類や接種スケジュールが母子健康手帳に記されているが、自己負担の「任意接種」は手帳に記載がなく、行政からの情報提供も少ない。片岡正医師は「任意、定期とも疾患予防の重要度に差はない」と話している

 母子手帳には定期接種を受けたかどうかの履歴が残るため、成人後も保管しておくと、感染症が流行した時や海外旅行などの際に役立つ。母子手帳と分離し、「予防接種手帳」などを配布している自治体もある。

毎日新聞 2011年9月16日 東京朝刊

******毎日新聞(2011・9・19)********
ワクチン“後進国”なぜ:/下 世界標準の対策急務
http://mainichi.jp/life/health/medical/news/20110919ddm013100003000c.html

 ◇家族間、性交渉での感染例も--B型肝炎
 ◇乳幼児中心に年10人前後死亡--水痘
 世界は天然痘をすでに根絶し、次いでポリオ(急性灰白髄炎、いわゆる小児まひ)やB型肝炎を制圧しようとしている。だが、「日本のB型肝炎対策は世界の水準から、あまりにもかけ離れ、途上国並みにも達していない」。済生会横浜市東部病院こどもセンターの藤澤知雄・肝消化器分野専門部長はきっぱりと言う。ワクチン接種で予防できるのに、あまり認知されていないという嘆きだ。

 日本小児科学会などによると、世界ではタイ、ベトナムなど170カ国以上が、世界保健機関(WHO)の推奨に基づき、子供たちにB型肝炎のワクチンを接種している。台湾では84年から全出生児に接種させ、子供への感染や肝がんの発症が激減した

 日本では、B型肝炎ウイルスの持続感染者(キャリアー)は推計110万~140万人とされる。集団予防接種での注射器使い回しによる被害患者も含まれている。大半は発症しないが、10~15%の人は慢性肝炎となり、肝硬変や肝がんになる患者もいる

 死亡者は年間5000人前後と多いが、ワクチンは「任意接種」だ。藤澤さんは「ワクチンで救える数や有効性から言えば、B型肝炎ワクチンの優先順位は高い」と語る。

 ウイルスは血液のほか唾液、尿、汗、涙からも見つかる。口移しで食べものを与えたり、歯ブラシを共有したり、傷口が触れあったりするうちに家族間で感染する恐れもある。

 母子感染を防ぐため86年からは、妊婦の検査でウイルスが見つかった場合は、子供にワクチンを接種する事業が始まった。予防に成功しない例も約5~10%あるとみられるが、それでも母から子への感染は10分の1程度に減った。

 一方、父子感染が今も少なくない。大阪府立急性期・総合医療センターの田尻仁・小児科主任部長らは昨年、検査でB型肝炎と分かった187人の感染源を調べた。85年以前に生まれた102人のうち6人(約6%)、86年以降に生まれた85人では13人(約15%)が父子感染だった。田尻さんは「父子感染はこの30年間減っておらず、対策が放置されてきた」と指摘し、「妊婦検診に合わせ、夫も検査を実施すべきだ」と訴える。

 「肝臓病」(岩波新書)を著した順天堂大医学部の渡辺純夫教授によると、B型肝炎ウイルスは遺伝子の型からA~Hの八つのタイプがある。日本や中国、韓国はB、Cタイプが大半を占め、欧米やアフリカではAタイプが多い。最近は日本でも、思春期以降に「Aタイプ」のB型肝炎に感染するケースが目立っており、性交渉による感染が増えているとみられる。

 B型肝炎ウイルスは、エイズウイルス(HIV)よりも感染力が強い。渡辺さんは「事前にワクチン接種をしておけば、Aタイプを含め、ほとんどのB型急性肝炎は防げる」と強調する

     *

 ウイルスで起きる水痘(水ぼうそう)も、ワクチンは任意接種のままだ。かゆみの強い水ぶくれが体中にできる。毎年、1~4歳の乳幼児を中心に約70万~90万人が感染。うち4000人前後が重症化して入院し、10人前後が死亡するとされる。

 米国では予防接種の導入で入院患者は約10分の1に減り、死亡者も約3分の1に減ったが、日本の接種率は3割前後と低い。峯真人・峯小児科院長(さいたま市)は「重症の新生児だと約2~3割が死亡する。たかが水痘と軽く見てはいけない。水痘ワクチンの安全性は高く、国の定期接種化が必要」と訴える。

 ワクチン接種の推進を訴える医師は増えている。「おおた小児科」(千葉市)の太田文夫院長らはワクチンの重要性を知ってもらうため、全国の医師とともに自費で啓発広告を掲げ、接種を呼びかけている。09年からは広島市で、風疹や麻疹(はしか)の撲滅を目指すキャンペーンを行い、マツダスタジアムや電車内に看板や広告を掲示している。

 日本小児科学会など13学会は昨年11月、「全国民が無料で予防接種が受けられるよう国策として実施すべきだ」と予防接種法の改正を厚生労働相に要望した。「予防接種で予防できるすべての疾患」について、無料化を求めた。定期接種と任意接種の区分が、他の先進国との「ワクチンギャップ」を招いているとも批判した。

 ワクチン接種のあり方を審議している厚生科学審議会予防接種部会は今年7月上旬、B型肝炎、水痘、おたふくかぜ、ヒブ、子供と成人の肺炎球菌、子宮頸(けい)がんの七つの疾患で「ワクチン接種の促進が望ましい」との意見をまとめた。七つの疾患で当初は約5000億円、その後は年間約2000億円の費用がかかるとの試算も示した

 一方、ワクチン接種の有効性に疑問をもつグループもある。シンポジウムなどを通じワクチンの在り方を問う活動を続ける「ワクチントーク全国」(東京都)事務局の青野典子さん(保育園園長)は「ワクチンすべてに反対ではないが、結核予防のBCG接種は6カ月以内に接種すると副作用が多いという報告がある。国は副作用情報も含め、もっと情報を一般に知らせることが必要」とし、改善すべき点は多いと話す。

 ワクチンと感染症に詳しい斎藤昭彦・新潟大医学部教授は「乳児へのワクチン接種は、太ももに打つのが世界標準なのに、日本はいまだに痛みや腫れが出やすい腕の皮下に打っている。世界の標準から遅れないことが大切」とし、「国や政治がもっと積極的に国民的コンセンサスを得ながら、ワクチン接種を積極的に進めてほしい」と話した。【小島正美】

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 ◇集団生活と感染
 保育園や学校、医療・介護施設など集団生活の場でも、B型肝炎の予防対策が問われている。厚生労働省は「口移しで食べものを与えない」「カミソリや歯ブラシを共有しない」といった注意事項を守るなど「ごく常識的な生活をしている限り、感染しない」としている。ただし過去に保育園での感染例もあり、藤澤知雄医師は「けんかなどで生じた子供の傷口から感染する場合もありうるので、優先して接種すべきだ」と主張する。キャリアーの人が差別されないような配慮も大切となる






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夜間三年間の法科大学院卒業後、即、司法試験に合格された方々のお話。

2011-10-01 18:05:54 | 教育
 夜間に法科大学院に通い、三年間のカリキュラムを終え卒業後、司法試験に合格した三人のかたのお話を聞く機会を得ました。

 そのかたがたのキャリアは、それぞれ法学部を出て中央省庁(管理職)勤めのかた、脳外科医そして法学部を出て外資系企業勤務。

 話をうかがって、結局、“楽しく”やれるかどうかではないかと強い印象を受けました。


 以下、話された内容。

1)法科大学院に通うきっかけ

中央省庁:多様化する社会にの中で、専門性をもちキャリアアップしたいという思い

脳外科医:時間があり、その時間を使って何かをやりたいという思い

外資系企業:企業で法務を扱う場、弁護士の資格が求められた


2)家庭との両立、家族の理解は
中央省庁:もともと忙しい、日曜日に家族サービス

脳外科医:「法は家庭に入らず」、家族サービスを休日はする

外資系企業:独身。恋人とは土日の半日デート

3)勉強の時間作りは
中央省庁:出社7時半で始業までの二時間。講義後の一時間、寝る前の二時間。土日のどちらか。

脳外科医:出勤の電車の中の往復二時間。仕事の合間。
     課題はもらった日に行った。

外資系企業:朝の一~二時間、夜の5-6時間。 
      土日どちらか12時間。

4)職場の理解は
中央省庁:仕事優先。職場には離さず。

脳外科医:24時間365日、オンコールの状態。

外資系企業:上司から進められた話であり、理解はあった。


5)夜間法科大学院の感想
中央省庁:実務と論理のバランスがとれた授業がなされていた。指導体制があった。楽しかった。

脳外科医:楽しかった。予習と課題を必ずして臨んだ。熱意のある指導体制であった。

外資系企業:熱意のある指導体制であった。三人で勉強会をし一緒に学ぶ仲間がいた。


6)これから学ぶひとへのメッセージ
中央省庁:働きながらでも合格できる

脳外科医:法律をしらないところからの挑戦。奇跡は結果ではなく、過程に起こる。

外資系企業:あきらめないでするということが大切。


7)モチベーションを高く保つには
中央省庁:時間を有効に使った

脳外科医:楽しかった。
     行くといった以上、止めると恥であった。

外資系企業:仲間がいた。


8)休みの使い方
中央省庁:夏や正月、自習室で勉強や、ゼミ仲間で勉強

脳外科医:休みはこどもとあそぶ、
     休みの時、予習と復習

外資系企業:仕事と勉強の心の切り替えが出来た


9)司法試験に合格し、これから何をする考えか
中央省庁:中央省庁で勤める

脳外科医:脳外科医をする

外資系企業:倒産関連の弁護士を目指す
コメント (1)
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