[1]「平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により放出された放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法(以下「放射性物質汚染対処特措法」という)」に基づく基本方針骨子案
[2]放射性物質汚染対処特措法第11条第1項、第25条第1項、第32条第1項及び第36条第1項の環境省令で定める要件案
に、意見募集がされていました。
http://www.env.go.jp/press/press.php?serial=14327
以下、骨子案を見ておきます。
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放射性物質汚染対処特措法に基づく基本方針 【骨子案】
1.事故由来放射性物質による環境の汚染への対処の基本的な方向
2.事故由来放射性物質による環境の汚染の状況についての監視及び測定に関する基本的事項
(1)国による監視及び測定
(2)地方公共団体による監視及び測定
3.事故由来放射性物質により汚染された廃棄物の処理に関する基本的事項
(1)基本的な考え方
(2)対策地域内廃棄物の処理に関する事項
(3)指定廃棄物の処理に関する事項
(4)対策地域内廃棄物及び指定廃棄物以外の事故由来放射性物質により汚染された廃棄物の処理に関する事項
4.土壌等の除染等の措置に関する基本的事項
(1)基本的な考え方
(2)除染特別地域に関する事項
1除染特別地域の指定に関する事項 2除染特別地域に係る土壌等の除染等の措置の方針 3土壌等の除染等の措置の体制
(3)除染実施区域に関する事項
1汚染状況重点調査地域の指定に関する事項 2除染実施計画を定める区域の指定に関する事項 3除染実施区域に係る土壌等の除染等の措置の方針
(4)土壌等の除染等の措置の実施に当たって配慮すべき事項その他土壌等の除染 等の措置の推進に関し必要な事項
5.除去土壌の収集、運搬、保管及び処分に関する基本的事項
6.その他事故由来放射性物質による環境の汚染への対処に関する重要事項
(1)汚染廃棄物等の処理のために必要な施設の整備等
(2)調査研究、技術開発等の推進等
(3)住民理解の促進等
(4)その他配慮すべき事項
1.事故由来放射性物質による環境の汚染への対処の基本的な方向
○事故由来放射性物質による環境の汚染への対処(以下「環境汚染への対処」と いう。)は、事故由来放射性物質による環境の汚染が人の健康又は生活環境に及 ぼす影響を速やかに低減させるために行うものであること。
○環境汚染への対処に関しては、関係原子力事業者が一義的な責任を負っている こと。また、国は、これまで原子力政策を推進してきたことに伴う社会的な責任を負っていることから、環境汚染への対処に関して、国の責任において対策を講ずるとともに、地方公共団体は、当該地域の自然的社会的条件に応じて、 国の施策に協力するものであること。
○関係原子力事業者は、環境汚染への対処に関し、誠意をもって必要な措置を講 ずるとともに、国又は地方公共団体が実施する施策に協力しなければならない こと。また関係原子力事業者以外の原子力事業者も、国又は地方公共団体が実 施する施策に協力するよう努めなければならないこと。
○事故由来放射性物質による環境の汚染は広範にわたるものであるとともに、土 壌等の除染等の措置の対象に住民が所有する土地等が含まれることから、環境 汚染への対処には、地域住民の協力が不可欠であること。
○環境汚染への対処については、各省庁、関係地方公共団体、関係機関、事業者、 国民等が総力を結集し、一体となってできるだけ速やかに行うものとすること。 ただし、線量が特に高い地域については、長期的な取組が必要となることに留 意が必要であること。
○既に得られている国内外の科学的・技術的知見を踏まえ、迅速に環境汚染への 対処を行うこと。また、これらの知見の発展を踏まえて、より効果的かつ効率 的に環境汚染への対処が行われるよう手法の見直しを図ること。
○土壌等の除染等の措置を進めるに当たっては、とりわけ子どもの対応に十分配 慮することが必要であり、子どもの生活環境(学校、公園等)において優先的 に実施すること。
○できるだけ速やかに除染等の措置等(土壌等の除染等の措置並びに除去土壌の 収集、運搬、保管及び処分)及び事故由来放射性物質により汚染された廃棄物 の処理を実施する必要があることを踏まえ、基準等の設定を行うこと。
○中間貯蔵施設及び最終処分場の確保やその安全性の確保については、国が責任 を持って行うこと。
○国及び地方公共団体は、除染等の推進に当たって住民参加への協力を求めると ともに、正確かつ迅速な情報提供及び市民とのリスクコミュニケーションを実 施すること。
○上記の取組を進めるに当たり、国は、国際社会と連携・協力しつつ、国内外の 叡智を結集して対応すること。また、当該取組により得られた知見を国際社会 と共有すること。
○国は、環境汚染への対処の進捗状況の定期的な点検を行い、その結果を踏まえて この基本方針を適宜見直すものとすること。
○なお、この基本方針は、除染に関する緊急実施基本方針(平成 23 年 8 月 26 日 原子力災害対策本部)を引き継いで、法に基づき閣議決定されるものであること。
2.事故由来放射性物質による環境の汚染の状況についての監視及び測定に関する 基本的事項
(1)国による監視及び測定
○国は、対策の検討及び推進、一体的で分かりやすい情報提供等に資するため、 事故由来放射性物質による環境の汚染の状況について、きめ細やかな監視及び 測定を実施すること。
○国は、きめ細やかな監視及び測定を実施するため、責任をもって、地方公共団 体、原子力事業者等との調整を図り、適切な役割分担の下、統一的な監視及び 測定の体制を整備すること。
○国は、事故由来放射性物質により汚染された廃棄物の処理及び除染等の措置等 の効果を広域的に把握するため、定期的な監視及び測定を行うこと。
○国は、監視及び測定の結果得られた情報を、国民に対して速やかに公開するこ と。
(2)地方公共団体による監視及び測定
○地方公共団体は、国や原子力事業者等との連携のもと、地域に根差した監視及 び測定を実施するよう努めるものとし、国や原子力事業者等と連携して監視及 び測定で得られた情報を活用及び発信すること。
3.事故由来放射性物質により汚染された廃棄物の処理に関する基本的事項
(1)基本的な考え方
○土壌等の除染等の措置に伴い生ずる廃棄物や、生活地近傍の災害廃棄物など、 住民の生活の妨げとなる廃棄物の処理を優先すること。
○事故由来放射性物質による人の健康や生活環境への影響をできる限り早く低減 していくためには、現行の廃棄物処理法に基づく廃棄物の処理体制、施設等を 可能な範囲で積極的に活用し、事故由来放射性物質により汚染された廃棄物の 処理を進めていくことが重要であること。
○事故由来放射性物質により汚染された廃棄物の処理に当たっては、飛散流出防 止の措置、モニタリングの実施、特定廃棄物の量・運搬先等の記録等、周辺住民の健康の保護及び生活環境の保全への配慮に関し、必要な措置を取ること。
○事故由来放射性物質により汚染された廃棄物(とりわけ土壌等の除染等の措置 に伴い生ずる廃棄物)の量が膨大であること等にかんがみ、安全性を確保しつ つ、可能な限りにおいて、可燃物と不燃物の分別、焼却等の中間処理等により 減容化を図ること。減容化により事故由来放射性物質が濃縮され、指定廃棄物 に該当することとなったものについては、法に基づき、国がその処理を行うこ と。また、安全性を確保しつつ、廃棄物の再生利用(例えば、コンクリートく ずを被災地の復興のための資材として活用する等)を図ること。
○事故由来放射性物質により汚染された廃棄物を安全に処理することが必要であり、「東京電力株式会社福島第一原子力発電所事故の影響を受けた廃棄物の処理 処分等に関する安全確保の当面の考え方について」(平成23年6月3日原子力安 全委員会。以下「当面の考え方について」という。)において示された考え方を 踏まえ、処理等に伴い周辺住民が追加的に受ける線量が年間1ミリシーベルト を超えないようにすること。また、最終的な処分に当たっては、管理期間終了 以後についての科学的に確からしいシナリオ想定に基づく安全性評価において、 処分施設の周辺住民が追加的に受ける線量が年間10マイクロシーベルト以下 であること等について原子力安全委員会が示した判断の「めやす」を満足する こと。
○災害廃棄物については、事故由来放射性物質による汚染が著しいもの、解体工 事に時間を要するもの等、特に処理が困難であるものを除き、仮置場の確保を 前提として、平成24年3月末までを目途に仮置場への移動を行う。また、土壌 等の除染等の措置に伴って発生する廃棄物については、当該措置の進捗と整合 を図りながら処理を行うこと。
(2)対策地域内廃棄物の処理に関する事項
○汚染廃棄物対策地域については、空間線量が高く廃棄物が特別な管理が必要な 程度に汚染されその処理の実施に当たって高いレベルの技術が必要となる可能 性が高いこと及び作業員の安全の確保への十分な配慮が必要であること、国の 指示に基づき立入りが制限されていること等の事情を勘案し、その範囲を指定 すること。
○対策地域内廃棄物の処理は、環境省が行うこと。
(3)指定廃棄物の処理に関する事項
○指定廃棄物の指定基準については、放射性物質による汚染のレベルに応じて求 められる処理方法及び平常時に廃棄物処理を行っている市町村の処理技術、処 理施設等の能力などの実態を勘案し、設定すること。
○指定廃棄物の処理は、水道施設から生じた汚泥等の堆積物等については厚生労 働省、公共下水道・流域下水道に係る発生汚泥等については国土交通省、工業 用水道施設から生じた汚泥等の堆積物等については経済産業省、集落排水施設 から生じた汚泥等の堆積物等及び農林業系副産物については農林水産省と連携 して、環境省が行うこと。
○指定廃棄物の処理は、当該指定廃棄物が排出された都道府県内において行うこ と。
(4)対策地域内廃棄物及び指定廃棄物以外の事故由来放射性物質により汚染され た廃棄物の処理に関する事項
○対策地域内廃棄物及び指定廃棄物以外の事故由来放射性物質により汚染された
廃棄物の処理を行う際は、排ガス・排水等の放射性物質の監視測定を行い、そ
の結果を踏まえて事故由来放射性物質の拡散を防止するための措置を講ずること。
4.土壌等の除染等の措置に関する基本的事項
(1)基本的な考え方
○土壌等の除染等の措置の対象には、土壌、工作物、道路、河川、湖沼、海岸域、 港湾、農用地、森林等が含まれるが、人の健康の保護の観点から必要である地 域について優先的に特別地域内除染実施計画又は除染実施計画を策定し、線量 に応じたきめ細かい措置を実施すること。特に子どもの生活環境については優 先的に実施すること。また、農用地における土壌等の除染等の措置について は、農業生産を再開できる条件を回復させるという点を配慮すること。
○国際放射線防護委員会(ICRP)の 2007 年基本勧告、原子力安全委員会の「今 後の避難解除、復興に向けた放射線防護に関する基本的な考え方について」(平 成 23 年 7 月 19 日原子力安全委員会)等を踏まえて、目標値を設定すること。
○追加被ばく線量(※)が年間 20 ミリシーベルト以上である地域については、当 該地域を段階的かつ迅速に縮小することを目指すこと。また、土壌等の除染等 の措置の効果やモデル事業の結果等を踏まえて、今後具体的な目標を設定する こと。ただし、空間線量が特に高い地域については、長期的な取組が必要とな ることに留意が必要であること。
※自然被ばく線量及び医療被ばくを除いた被ばく線量
○追加被ばく線量が年間 20 ミリシーベルト未満である地域については、下記の目標を目指すこと。
・長期的な目標として追加被ばく線量が年間1ミリシーベルト以下となることを目指すこと。
・具体的な目標として、平成25年8月末までに、一般公衆の推定年間被ばく線量を平成23年8月末と比べて、放射性物質の物理的減衰等を含めて約50%減尐した状態を実現することを目指すこと。
・子どもが安心して生活できる環境を取り戻すことが重要であり、学校、公園など子どもの生活環境を優先的に除染することによって、平成25年8月末までに、 子どもの推定年間被ばく線量が平成23年8月末と比べて、放射性物質の物理的 減衰等を含めて約60%減尐した状態を実現することを目指すこと。
・これらの目標については、土壌等の除染等の措置の効果等を踏まえて適宜見直 しを行うこと。
(2)除染特別地域に関する事項 1除染特別地域の指定に関する事項
○空間線量が高く土壌等の除染等の措置の実施に当たって高いレベルの技術 及び作業員の安全の確保への十分な配慮が必要であること、国の指示に基づ き立入りが制限されている地域であること等を踏まえ指定すること。
2除染特別地域に係る土壌等の除染等の措置の方針
○除染特別地域のうち、追加被ばく線量が特に高い地域以外の地域については、 平成 26 年 3 月末までに、住宅、事業所、公共施設等の建物等、道路、農用 地、生活圏周辺の森林等の土壌等の除染等の措置を行い、そこから発生する 除去土壌等を、適切に管理された仮置場へ逐次搬入することを目指すこと。
○追加被ばく線量が特に高い地域においては、まずは国がモデル事業を実施す ることで、空間線量が特に高い地域における効率的・効果的な除染技術や作 業員の安全を確保するための方策を確立した上で、特別地域内除染実施計画 を策定し、段階的に除染等の措置等を進めること。
○特別地域内除染実施計画の策定に当たっては、地域ごとの実情を踏まえ、優 先順位や実現可能性を踏まえた計画とすることが重要であること。また、除 去土壌等の量に見合った仮置場の確保を前提としたものとすること。
3土壌等の除染等の措置の体制
○除染特別地域内には、農用地、森林、道路、河川等様々な土地が含まれる。 除染特別地域内の土壌等の除染等の措置については、当該土地の利用及び管 理に関して知見・情報を有する行政機関と連携して、環境省が行うこと。
(3)除染実施区域に関する事項
1汚染状況重点調査地域の指定に関する事項
○その地域の追加被ばく線量が年間 1 ミリシーベルト以上となる地域につい て、指定すること。
2除染実施計画を定める区域の指定に関する事項
○その地域の追加被ばく線量が年間 1 ミリシーベルト以上となる区域につい て、指定すること。
3除染実施区域に係る土壌等の除染等の措置の方針
○除染実施計画の策定に当たっては、地域ごとの実情を踏まえ、優先順位や実現可能性を踏まえた計画とすることが重要であること。また、除去土壌等の量に見合った仮置場の確保を前提としたものとすること。
○追加被ばく線量が比較的高い地域については、必要に応じ、表土のはぎ取り、建物の洗浄、道路側溝等の清掃、枝打ち及び落葉除去等の除染等、子どもの 生活環境の除染等を行うことが適当であること。追加被ばく線量が比較的低 い地域についても、子どもの生活環境を中心とした対応を行うとともに、地 域の実情に十分に配慮した対応を行うことが適当であること。
○除染実施計画は、状況の変化に応じて、適時適切に見直すこと。そのために、 除染実施者は、土壌等の除染等の措置による空間線量の変化等に関するデー タを取るとともに、計画策定者は、これらのデータの蓄積を含めた進捗状況 の管理を確実に行うこと。
○法第 36 条第 3 項の協議会を設置する場合には、放射性物質、除染等の措置 等の専門家を入れ、必要な知見を取り入れること。国は、計画策定者が協議 会を設置する場合には、自ら管理する土地等に係る除染等の措置等を実施す る立場として参加するのみならず、必要な科学的・技術的知見を提供するこ と。また、国、地方公共団体等が管理する土地を占用する者及び当該土地に おいて工作物を設置する者がいる場合には、当該土地を占用する者及び当該 工作物を設置する者についても協議会への参加を促すこと。
(4)土壌等の除染等の措置の実施に当たって配慮すべき事項その他土壌等の除染 等の措置の推進に関し必要な事項
○土壌等の除染等の措置の実施に当たっては、飛散流出防止の措置、除去土壌の 量等の記録等、周辺住民の健康の保護及び生活環境の保全への配慮に関し必要 な措置をとること。また、洗浄等による排水による流出先への影響を極力避け るための工夫を行うこと。
○土壌等の除染等の措置が適切に実施されたことを確認するため、当該措置の前 後においてモニタリングを行い、効果の確認を行うこと。また、必要に応じて、 当該措置の後に定期的なモニタリングを行うこと。
○除去土壌等の発生量が膨大であること等にかんがみ、土壌等の除染等の措置を 実施する際、除去土壌等の発生抑制に配慮すること。
○国は、迅速な土壌等の除染等の措置の推進のため、費用対効果が高くかつ効果 の実証された除染方法を標準的な方法として示すこと。
5.除去土壌の収集、運搬、保管及び処分に関する基本的事項
○除去土壌の収集及び運搬は、迅速に行うよう努めること。
○除去土壌の収集等の実施に当たっては、飛散流出防止の措置、モニタリングの実施、除去土壌の量・運搬先等の記録等、周辺住民の健康の保護及び生活環境の保全への配慮に関し必要な措置をとること。
○除去土壌については、減容化技術の進展を踏まえつつ、保管や処分の際に可能な限り減容化を図ること。
○減容化の結果分離されたもの等汚染の程度が低い除去土壌について、安全性を確保しつつ、再生利用等を検討すること。
○「当面の考え方について」において示された考え方を踏まえ、処理等に伴い周辺住民が追加的に受ける線量が年間1ミリシーベルトを超えないようにするこ と。
6.その他事故由来放射性物質による環境の汚染への対処に関する重要事項
(1)汚染廃棄物等の処理のために必要な施設の整備等
○土壌等の除染等の措置を迅速に実施するため、当分の間、市町村又はコミュニティごとに当該措置に伴い生ずる土壌及び廃棄物の仮置場を確保する必要があること。これらの仮置場の確保については、
1除染特別地域に係るものについては、環境省が市町村の協力を得つつ行うこと、
2除染実施区域に係るものについては、国が財政的・技術的な責任を果たしつつ、市町村が行うこと。
○土壌等の除染等の措置を実施した土地において、除去土壌等をやむを得ず現場 保管する必要がある場合は、除染実施者は、当該土地の所有者等の意見を踏まえつつ、当該所有者等に保管させることができる。 ○対策地域内廃棄物の仮置場の確保については、市町村の協力を得つつ環境省が行うこと。また、指定廃棄物については、国、国の委託業者等に引き渡される までの間、当該指定廃棄物が排出された施設の管理者や当該指定廃棄物の占有 者等が保管し、国は必要に応じこれらの者が行う保管を支援すること。
○事故由来放射性物質により高濃度に汚染された廃棄物及び土壌が相当量発生し ている都道府県については中間貯蔵施設(※)を確保すること。
※相当量の土壌・廃棄物を一定の期間安定的に集中して貯蔵・管理する施設
○中間貯蔵施設及び最終処分場の確保やその安全性の確保については、国が責任 を持って行うこととすること。
○中間貯蔵後の扱いについては、今後の技術開発の状況を踏まえて検討すること。
○仮置場、中間貯蔵施設及び処分場の用地の確保については、公有地の積極的な活用を含め、国、地方公共団体等が連携・協力して行うこと。
○仮置場、中間貯蔵施設及び処分場の確保及び維持管理は、周辺住民の健康及び周辺の環境保全に十分配慮しつつ行うことが必要であること。 周辺の環境保全に当たっては、仮置場については、住民等に対して、環境保 全上の配慮事項をわかりやすく提供すること。中間貯蔵施設及び処分場の確保 に当たっては、当該施設による環境影響の評価等を行い、その結果に応じた適切な環境保全措置を講ずる等の措置をとること。
(2)調査研究、技術開発等の推進等
○国は、独立行政法人日本原子力研究開発機構をはじめとする様々な研究機関の 取組の支援及びこれらの研究機関との連携の確保を行うなど、土壌等の除染等 の措置に伴い生ずる廃棄物及び土壌の量の抑制のための技術や、事故由来放射 性物質により汚染された廃棄物及び土壌の減容化のための技術の開発・評価・ 公表を積極的に進めること。
○国は、環境汚染への対処に係る新規技術、材料等について、実用可能性や費用 対効果を評価・公表する仕組を構築し、産学官の研究開発の成果を活用するこ と。
(3)住民理解の促進等
○国は、地方自治体による住民説明会への専門家の派遣等により、適確な知識の 普及啓発を行うこと。
○国及び地方公共団体は、除染等の推進に当たって住民参加への協力を求めると ともに、正確かつ迅速な情報提供及び市民とのリスクコミュニケーションを実 施すること。
(4)その他配慮すべき事項
○国及び地方公共団体は、環境汚染への対処の実施内容及びその効果について、 適時適切に地域住民等に対し周知を行うこと。
○事業者は、環境汚染への対処に従事する者の放射線防護等労働安全衛生に細心 の注意を払い、当該従事者が受ける放射線量の管理、当該従事者が知識を得る 機会の提供等を行うこと。また、国等が環境汚染への対処に関して事業者に委 託する場合には、事業者が当該管理等を確実に行うよう指導すること。
○地方公共団体は、住民等が土壌等の除染等の措置を行う場合にあっては、土壌 等の除染等の措置を行うに当たっての作業方法や留意事項を周知すること、専 門家の助言及び指導を得ること等により、土壌等の除染等の措置が安全かつ着 実に行われるようにすること。このため国は、専門家の派遣、必要な情報の提 供等必要な措置を行うこと。
○環境汚染への対処に当たっては、地元雇用の確保に配慮すること。
○廃棄物の再生利用の推進のため、安全性を確保しつつ、可能な限り廃棄物の再生品(セメントや再生砕石等)の活用を図ること。
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放射性物質汚染対処特措法第 11 条第1項、第 25 条第1項、第 32 条第1 項及び第 36 条第1項の環境省令で定める要件案
平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の 事故により放出された放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法(平 成 23 年法律第 110 号。以下「法」という。)第 11 条第1項、第 25 条第1項、第 32 条第1項及び第 36 条第1項の環境省令で定める要件については、「除染に関する緊急 実施基本方針」(平成 23 年 8 月 26 日原子力災害対策本部決定)等も踏まえつつ、以 下のとおり定めることとする。
なお、これらの要件に係る考え方については、現在、別途パブリックコメントを行 っている法第7条に基づく基本方針骨子案に記述している。
※ 本パブリックコメントの対象以外の政省令事項についても、後日、別途パブリックコ メントを行う予定であるが、本パブリックコメントは、法第 13 条第1項、第 28 条第1 項及び第 36 条第1項に定める計画(対策地域内廃棄物処理計画、特別地域内除染実施計 画及び除染実施計画)の策定にあたり予め必要となる各地域の指定に関する事項につい て先に行うものである。
I 廃棄物処理関係
1.汚染廃棄物対策地域の指定の要件 【法第 11 条第1項関係】
汚染廃棄物対策地域の指定の要件については、空間線量が高いこと及び国の指示 に基づき立入りが制限されている地域であることを踏まえ、
○ 警戒区域又は計画的避難区域である地域 とする。
II 除染関係
1.除染特別地域の指定の要件 【法第 25 条第1項関係】
除染特別地域の指定の要件については、空間線量が高いこと及び国の指示に基づ き立入りが制限されている地域であることを踏まえ、
○ 警戒区域又は計画的避難区域である地域 とする。
2.汚染状況重点調査地域の指定の要件 【法第 32 条第1項関係】
汚染状況重点調査地域の指定の要件については、
○ 当該地域における放射線量が一時間当たり 0.23 マイクロシーベルト(※1) 以上(※2)であること
とする。
(※1)「追加被ばく線量年間1ミリシーベルトの考え方」(平成 23 年 10 月 10 日災害廃棄物安全評価検討会・環境回復検討会 第一回合同検討会の参考資料2の別添2)参照 (※2)法第 32 条第 1 項では「地域内の事故由来放射性物質による環境の汚染状態が環境 省令で定める要件に適合しないと認められ、又はそのおそれが著しいと認められる場合には、その地域を汚染状況重点調査地域として指定する」こととされている。よっ て、環境省令では「放射線量が一時間当たり 0.23 マイクロシーベルト未満であるこ と」を定めることとする。
3.除染実施計画を定めることとなる区域の要件 【法第 36 条第1項関係】
除染実施計画を定めることとなる区域の要件については、 ○ その区域における放射線量が一時間当たり 0.23 マイクロシーベルト(※3)
以上(※4)であること とする。
(※3)「追加被ばく線量年間1ミリシーベルトの考え方」(平成 23 年 10 月 10 日災害廃棄 物安全評価検討会・環境回復検討会 第一回合同検討会の参考資料2の別添2)参照
(※4)法第 36 条第 1 項では「汚染状況重点調査地域内の区域であって、(中略)事故由来放射性物質による環境の汚染状態が環境省令で定める要件に適合しないと認めるものについて、除染実施計画を定める」こととされている。よって、環境省令では、 「放射線量が一時間当たり 0.23 マイクロシーベルト未満であること」を定めること とする。
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平成 23 年 10 月 10 日災害廃棄物安全評価検討会・環境回復検討会 第1回合同検討会 資料(別添2)
追加被ばく線量年間1ミリシーベルトの考え方
追加被ばく線量は、空間線量率の測定により確認することができ、追加被ばく線量年間1 ミリシーベルトは、一時間当たりの空間線量率(航空機モニタリング等の NaI シンチレー ション式サーベイメータによる)に換算すると、毎時 0.23 マイクロシーベルトにあたる。
その考え方は、以下のとおり。
追加被ばく線量の考え方
1 事故とは関係なく、自然界の放射線が元々存在し、大地からの放射線は毎時 0.04 マイ クロシーベルト、宇宙からの放射線は毎時 0.03 マイクロシーベルトである。
※大地からの放射線、宇宙からの放射線はそれぞれ年間 0.38 ミリシーベルト、年間 0.29 ミリシーベルト(文部科学省「学校において受ける線量の計算方法について」(平成 23 年 8 月 26 日)であり、これを一時間当たりに換算(24 時間 ×365 日で割る) した数値
2 追加被ばく線量年間1ミリシーベルトを、一時間当たりに換算すると、毎時 0.19 マイ クロシーベルトと考えられる。(1日のうち屋外に8時間、屋内(遮へい効果(0.4 倍) のある木造家屋)に 16 時間滞在するという生活パターンを仮定)
※毎時 0.19 マイクロシーベルト × (8時間 + 0.4 × 16 時間) × 365 日 = 年間1ミリシーベルト
3 航空機モニタリング等の NaI シンチレーション式サーベイメータによる空間線量率の 測定では、事故による追加被ばく線量に加え、自然界からの放射線のうち、大地からの放 射線分が測定されるため、
0.19 + 0.04 = 毎時 0.23 マイクロシーベルト が、追加被ばく線量年間1ミリシーベルトにあたる。
※通常の NaI シンチレーション式サーベイメータでは宇宙からの放射線はほとんど測 定されない
※航空機モニタリングに使用する検出器では宇宙からの放射線も検出するが、その分は 差し引かれている
[2]放射性物質汚染対処特措法第11条第1項、第25条第1項、第32条第1項及び第36条第1項の環境省令で定める要件案
に、意見募集がされていました。
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以下、骨子案を見ておきます。
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放射性物質汚染対処特措法に基づく基本方針 【骨子案】
1.事故由来放射性物質による環境の汚染への対処の基本的な方向
2.事故由来放射性物質による環境の汚染の状況についての監視及び測定に関する基本的事項
(1)国による監視及び測定
(2)地方公共団体による監視及び測定
3.事故由来放射性物質により汚染された廃棄物の処理に関する基本的事項
(1)基本的な考え方
(2)対策地域内廃棄物の処理に関する事項
(3)指定廃棄物の処理に関する事項
(4)対策地域内廃棄物及び指定廃棄物以外の事故由来放射性物質により汚染された廃棄物の処理に関する事項
4.土壌等の除染等の措置に関する基本的事項
(1)基本的な考え方
(2)除染特別地域に関する事項
1除染特別地域の指定に関する事項 2除染特別地域に係る土壌等の除染等の措置の方針 3土壌等の除染等の措置の体制
(3)除染実施区域に関する事項
1汚染状況重点調査地域の指定に関する事項 2除染実施計画を定める区域の指定に関する事項 3除染実施区域に係る土壌等の除染等の措置の方針
(4)土壌等の除染等の措置の実施に当たって配慮すべき事項その他土壌等の除染 等の措置の推進に関し必要な事項
5.除去土壌の収集、運搬、保管及び処分に関する基本的事項
6.その他事故由来放射性物質による環境の汚染への対処に関する重要事項
(1)汚染廃棄物等の処理のために必要な施設の整備等
(2)調査研究、技術開発等の推進等
(3)住民理解の促進等
(4)その他配慮すべき事項
1.事故由来放射性物質による環境の汚染への対処の基本的な方向
○事故由来放射性物質による環境の汚染への対処(以下「環境汚染への対処」と いう。)は、事故由来放射性物質による環境の汚染が人の健康又は生活環境に及 ぼす影響を速やかに低減させるために行うものであること。
○環境汚染への対処に関しては、関係原子力事業者が一義的な責任を負っている こと。また、国は、これまで原子力政策を推進してきたことに伴う社会的な責任を負っていることから、環境汚染への対処に関して、国の責任において対策を講ずるとともに、地方公共団体は、当該地域の自然的社会的条件に応じて、 国の施策に協力するものであること。
○関係原子力事業者は、環境汚染への対処に関し、誠意をもって必要な措置を講 ずるとともに、国又は地方公共団体が実施する施策に協力しなければならない こと。また関係原子力事業者以外の原子力事業者も、国又は地方公共団体が実 施する施策に協力するよう努めなければならないこと。
○事故由来放射性物質による環境の汚染は広範にわたるものであるとともに、土 壌等の除染等の措置の対象に住民が所有する土地等が含まれることから、環境 汚染への対処には、地域住民の協力が不可欠であること。
○環境汚染への対処については、各省庁、関係地方公共団体、関係機関、事業者、 国民等が総力を結集し、一体となってできるだけ速やかに行うものとすること。 ただし、線量が特に高い地域については、長期的な取組が必要となることに留 意が必要であること。
○既に得られている国内外の科学的・技術的知見を踏まえ、迅速に環境汚染への 対処を行うこと。また、これらの知見の発展を踏まえて、より効果的かつ効率 的に環境汚染への対処が行われるよう手法の見直しを図ること。
○土壌等の除染等の措置を進めるに当たっては、とりわけ子どもの対応に十分配 慮することが必要であり、子どもの生活環境(学校、公園等)において優先的 に実施すること。
○できるだけ速やかに除染等の措置等(土壌等の除染等の措置並びに除去土壌の 収集、運搬、保管及び処分)及び事故由来放射性物質により汚染された廃棄物 の処理を実施する必要があることを踏まえ、基準等の設定を行うこと。
○中間貯蔵施設及び最終処分場の確保やその安全性の確保については、国が責任 を持って行うこと。
○国及び地方公共団体は、除染等の推進に当たって住民参加への協力を求めると ともに、正確かつ迅速な情報提供及び市民とのリスクコミュニケーションを実 施すること。
○上記の取組を進めるに当たり、国は、国際社会と連携・協力しつつ、国内外の 叡智を結集して対応すること。また、当該取組により得られた知見を国際社会 と共有すること。
○国は、環境汚染への対処の進捗状況の定期的な点検を行い、その結果を踏まえて この基本方針を適宜見直すものとすること。
○なお、この基本方針は、除染に関する緊急実施基本方針(平成 23 年 8 月 26 日 原子力災害対策本部)を引き継いで、法に基づき閣議決定されるものであること。
2.事故由来放射性物質による環境の汚染の状況についての監視及び測定に関する 基本的事項
(1)国による監視及び測定
○国は、対策の検討及び推進、一体的で分かりやすい情報提供等に資するため、 事故由来放射性物質による環境の汚染の状況について、きめ細やかな監視及び 測定を実施すること。
○国は、きめ細やかな監視及び測定を実施するため、責任をもって、地方公共団 体、原子力事業者等との調整を図り、適切な役割分担の下、統一的な監視及び 測定の体制を整備すること。
○国は、事故由来放射性物質により汚染された廃棄物の処理及び除染等の措置等 の効果を広域的に把握するため、定期的な監視及び測定を行うこと。
○国は、監視及び測定の結果得られた情報を、国民に対して速やかに公開するこ と。
(2)地方公共団体による監視及び測定
○地方公共団体は、国や原子力事業者等との連携のもと、地域に根差した監視及 び測定を実施するよう努めるものとし、国や原子力事業者等と連携して監視及 び測定で得られた情報を活用及び発信すること。
3.事故由来放射性物質により汚染された廃棄物の処理に関する基本的事項
(1)基本的な考え方
○土壌等の除染等の措置に伴い生ずる廃棄物や、生活地近傍の災害廃棄物など、 住民の生活の妨げとなる廃棄物の処理を優先すること。
○事故由来放射性物質による人の健康や生活環境への影響をできる限り早く低減 していくためには、現行の廃棄物処理法に基づく廃棄物の処理体制、施設等を 可能な範囲で積極的に活用し、事故由来放射性物質により汚染された廃棄物の 処理を進めていくことが重要であること。
○事故由来放射性物質により汚染された廃棄物の処理に当たっては、飛散流出防 止の措置、モニタリングの実施、特定廃棄物の量・運搬先等の記録等、周辺住民の健康の保護及び生活環境の保全への配慮に関し、必要な措置を取ること。
○事故由来放射性物質により汚染された廃棄物(とりわけ土壌等の除染等の措置 に伴い生ずる廃棄物)の量が膨大であること等にかんがみ、安全性を確保しつ つ、可能な限りにおいて、可燃物と不燃物の分別、焼却等の中間処理等により 減容化を図ること。減容化により事故由来放射性物質が濃縮され、指定廃棄物 に該当することとなったものについては、法に基づき、国がその処理を行うこ と。また、安全性を確保しつつ、廃棄物の再生利用(例えば、コンクリートく ずを被災地の復興のための資材として活用する等)を図ること。
○事故由来放射性物質により汚染された廃棄物を安全に処理することが必要であり、「東京電力株式会社福島第一原子力発電所事故の影響を受けた廃棄物の処理 処分等に関する安全確保の当面の考え方について」(平成23年6月3日原子力安 全委員会。以下「当面の考え方について」という。)において示された考え方を 踏まえ、処理等に伴い周辺住民が追加的に受ける線量が年間1ミリシーベルト を超えないようにすること。また、最終的な処分に当たっては、管理期間終了 以後についての科学的に確からしいシナリオ想定に基づく安全性評価において、 処分施設の周辺住民が追加的に受ける線量が年間10マイクロシーベルト以下 であること等について原子力安全委員会が示した判断の「めやす」を満足する こと。
○災害廃棄物については、事故由来放射性物質による汚染が著しいもの、解体工 事に時間を要するもの等、特に処理が困難であるものを除き、仮置場の確保を 前提として、平成24年3月末までを目途に仮置場への移動を行う。また、土壌 等の除染等の措置に伴って発生する廃棄物については、当該措置の進捗と整合 を図りながら処理を行うこと。
(2)対策地域内廃棄物の処理に関する事項
○汚染廃棄物対策地域については、空間線量が高く廃棄物が特別な管理が必要な 程度に汚染されその処理の実施に当たって高いレベルの技術が必要となる可能 性が高いこと及び作業員の安全の確保への十分な配慮が必要であること、国の 指示に基づき立入りが制限されていること等の事情を勘案し、その範囲を指定 すること。
○対策地域内廃棄物の処理は、環境省が行うこと。
(3)指定廃棄物の処理に関する事項
○指定廃棄物の指定基準については、放射性物質による汚染のレベルに応じて求 められる処理方法及び平常時に廃棄物処理を行っている市町村の処理技術、処 理施設等の能力などの実態を勘案し、設定すること。
○指定廃棄物の処理は、水道施設から生じた汚泥等の堆積物等については厚生労 働省、公共下水道・流域下水道に係る発生汚泥等については国土交通省、工業 用水道施設から生じた汚泥等の堆積物等については経済産業省、集落排水施設 から生じた汚泥等の堆積物等及び農林業系副産物については農林水産省と連携 して、環境省が行うこと。
○指定廃棄物の処理は、当該指定廃棄物が排出された都道府県内において行うこ と。
(4)対策地域内廃棄物及び指定廃棄物以外の事故由来放射性物質により汚染され た廃棄物の処理に関する事項
○対策地域内廃棄物及び指定廃棄物以外の事故由来放射性物質により汚染された
廃棄物の処理を行う際は、排ガス・排水等の放射性物質の監視測定を行い、そ
の結果を踏まえて事故由来放射性物質の拡散を防止するための措置を講ずること。
4.土壌等の除染等の措置に関する基本的事項
(1)基本的な考え方
○土壌等の除染等の措置の対象には、土壌、工作物、道路、河川、湖沼、海岸域、 港湾、農用地、森林等が含まれるが、人の健康の保護の観点から必要である地 域について優先的に特別地域内除染実施計画又は除染実施計画を策定し、線量 に応じたきめ細かい措置を実施すること。特に子どもの生活環境については優 先的に実施すること。また、農用地における土壌等の除染等の措置について は、農業生産を再開できる条件を回復させるという点を配慮すること。
○国際放射線防護委員会(ICRP)の 2007 年基本勧告、原子力安全委員会の「今 後の避難解除、復興に向けた放射線防護に関する基本的な考え方について」(平 成 23 年 7 月 19 日原子力安全委員会)等を踏まえて、目標値を設定すること。
○追加被ばく線量(※)が年間 20 ミリシーベルト以上である地域については、当 該地域を段階的かつ迅速に縮小することを目指すこと。また、土壌等の除染等 の措置の効果やモデル事業の結果等を踏まえて、今後具体的な目標を設定する こと。ただし、空間線量が特に高い地域については、長期的な取組が必要とな ることに留意が必要であること。
※自然被ばく線量及び医療被ばくを除いた被ばく線量
○追加被ばく線量が年間 20 ミリシーベルト未満である地域については、下記の目標を目指すこと。
・長期的な目標として追加被ばく線量が年間1ミリシーベルト以下となることを目指すこと。
・具体的な目標として、平成25年8月末までに、一般公衆の推定年間被ばく線量を平成23年8月末と比べて、放射性物質の物理的減衰等を含めて約50%減尐した状態を実現することを目指すこと。
・子どもが安心して生活できる環境を取り戻すことが重要であり、学校、公園など子どもの生活環境を優先的に除染することによって、平成25年8月末までに、 子どもの推定年間被ばく線量が平成23年8月末と比べて、放射性物質の物理的 減衰等を含めて約60%減尐した状態を実現することを目指すこと。
・これらの目標については、土壌等の除染等の措置の効果等を踏まえて適宜見直 しを行うこと。
(2)除染特別地域に関する事項 1除染特別地域の指定に関する事項
○空間線量が高く土壌等の除染等の措置の実施に当たって高いレベルの技術 及び作業員の安全の確保への十分な配慮が必要であること、国の指示に基づ き立入りが制限されている地域であること等を踏まえ指定すること。
2除染特別地域に係る土壌等の除染等の措置の方針
○除染特別地域のうち、追加被ばく線量が特に高い地域以外の地域については、 平成 26 年 3 月末までに、住宅、事業所、公共施設等の建物等、道路、農用 地、生活圏周辺の森林等の土壌等の除染等の措置を行い、そこから発生する 除去土壌等を、適切に管理された仮置場へ逐次搬入することを目指すこと。
○追加被ばく線量が特に高い地域においては、まずは国がモデル事業を実施す ることで、空間線量が特に高い地域における効率的・効果的な除染技術や作 業員の安全を確保するための方策を確立した上で、特別地域内除染実施計画 を策定し、段階的に除染等の措置等を進めること。
○特別地域内除染実施計画の策定に当たっては、地域ごとの実情を踏まえ、優 先順位や実現可能性を踏まえた計画とすることが重要であること。また、除 去土壌等の量に見合った仮置場の確保を前提としたものとすること。
3土壌等の除染等の措置の体制
○除染特別地域内には、農用地、森林、道路、河川等様々な土地が含まれる。 除染特別地域内の土壌等の除染等の措置については、当該土地の利用及び管 理に関して知見・情報を有する行政機関と連携して、環境省が行うこと。
(3)除染実施区域に関する事項
1汚染状況重点調査地域の指定に関する事項
○その地域の追加被ばく線量が年間 1 ミリシーベルト以上となる地域につい て、指定すること。
2除染実施計画を定める区域の指定に関する事項
○その地域の追加被ばく線量が年間 1 ミリシーベルト以上となる区域につい て、指定すること。
3除染実施区域に係る土壌等の除染等の措置の方針
○除染実施計画の策定に当たっては、地域ごとの実情を踏まえ、優先順位や実現可能性を踏まえた計画とすることが重要であること。また、除去土壌等の量に見合った仮置場の確保を前提としたものとすること。
○追加被ばく線量が比較的高い地域については、必要に応じ、表土のはぎ取り、建物の洗浄、道路側溝等の清掃、枝打ち及び落葉除去等の除染等、子どもの 生活環境の除染等を行うことが適当であること。追加被ばく線量が比較的低 い地域についても、子どもの生活環境を中心とした対応を行うとともに、地 域の実情に十分に配慮した対応を行うことが適当であること。
○除染実施計画は、状況の変化に応じて、適時適切に見直すこと。そのために、 除染実施者は、土壌等の除染等の措置による空間線量の変化等に関するデー タを取るとともに、計画策定者は、これらのデータの蓄積を含めた進捗状況 の管理を確実に行うこと。
○法第 36 条第 3 項の協議会を設置する場合には、放射性物質、除染等の措置 等の専門家を入れ、必要な知見を取り入れること。国は、計画策定者が協議 会を設置する場合には、自ら管理する土地等に係る除染等の措置等を実施す る立場として参加するのみならず、必要な科学的・技術的知見を提供するこ と。また、国、地方公共団体等が管理する土地を占用する者及び当該土地に おいて工作物を設置する者がいる場合には、当該土地を占用する者及び当該 工作物を設置する者についても協議会への参加を促すこと。
(4)土壌等の除染等の措置の実施に当たって配慮すべき事項その他土壌等の除染 等の措置の推進に関し必要な事項
○土壌等の除染等の措置の実施に当たっては、飛散流出防止の措置、除去土壌の 量等の記録等、周辺住民の健康の保護及び生活環境の保全への配慮に関し必要 な措置をとること。また、洗浄等による排水による流出先への影響を極力避け るための工夫を行うこと。
○土壌等の除染等の措置が適切に実施されたことを確認するため、当該措置の前 後においてモニタリングを行い、効果の確認を行うこと。また、必要に応じて、 当該措置の後に定期的なモニタリングを行うこと。
○除去土壌等の発生量が膨大であること等にかんがみ、土壌等の除染等の措置を 実施する際、除去土壌等の発生抑制に配慮すること。
○国は、迅速な土壌等の除染等の措置の推進のため、費用対効果が高くかつ効果 の実証された除染方法を標準的な方法として示すこと。
5.除去土壌の収集、運搬、保管及び処分に関する基本的事項
○除去土壌の収集及び運搬は、迅速に行うよう努めること。
○除去土壌の収集等の実施に当たっては、飛散流出防止の措置、モニタリングの実施、除去土壌の量・運搬先等の記録等、周辺住民の健康の保護及び生活環境の保全への配慮に関し必要な措置をとること。
○除去土壌については、減容化技術の進展を踏まえつつ、保管や処分の際に可能な限り減容化を図ること。
○減容化の結果分離されたもの等汚染の程度が低い除去土壌について、安全性を確保しつつ、再生利用等を検討すること。
○「当面の考え方について」において示された考え方を踏まえ、処理等に伴い周辺住民が追加的に受ける線量が年間1ミリシーベルトを超えないようにするこ と。
6.その他事故由来放射性物質による環境の汚染への対処に関する重要事項
(1)汚染廃棄物等の処理のために必要な施設の整備等
○土壌等の除染等の措置を迅速に実施するため、当分の間、市町村又はコミュニティごとに当該措置に伴い生ずる土壌及び廃棄物の仮置場を確保する必要があること。これらの仮置場の確保については、
1除染特別地域に係るものについては、環境省が市町村の協力を得つつ行うこと、
2除染実施区域に係るものについては、国が財政的・技術的な責任を果たしつつ、市町村が行うこと。
○土壌等の除染等の措置を実施した土地において、除去土壌等をやむを得ず現場 保管する必要がある場合は、除染実施者は、当該土地の所有者等の意見を踏まえつつ、当該所有者等に保管させることができる。 ○対策地域内廃棄物の仮置場の確保については、市町村の協力を得つつ環境省が行うこと。また、指定廃棄物については、国、国の委託業者等に引き渡される までの間、当該指定廃棄物が排出された施設の管理者や当該指定廃棄物の占有 者等が保管し、国は必要に応じこれらの者が行う保管を支援すること。
○事故由来放射性物質により高濃度に汚染された廃棄物及び土壌が相当量発生し ている都道府県については中間貯蔵施設(※)を確保すること。
※相当量の土壌・廃棄物を一定の期間安定的に集中して貯蔵・管理する施設
○中間貯蔵施設及び最終処分場の確保やその安全性の確保については、国が責任 を持って行うこととすること。
○中間貯蔵後の扱いについては、今後の技術開発の状況を踏まえて検討すること。
○仮置場、中間貯蔵施設及び処分場の用地の確保については、公有地の積極的な活用を含め、国、地方公共団体等が連携・協力して行うこと。
○仮置場、中間貯蔵施設及び処分場の確保及び維持管理は、周辺住民の健康及び周辺の環境保全に十分配慮しつつ行うことが必要であること。 周辺の環境保全に当たっては、仮置場については、住民等に対して、環境保 全上の配慮事項をわかりやすく提供すること。中間貯蔵施設及び処分場の確保 に当たっては、当該施設による環境影響の評価等を行い、その結果に応じた適切な環境保全措置を講ずる等の措置をとること。
(2)調査研究、技術開発等の推進等
○国は、独立行政法人日本原子力研究開発機構をはじめとする様々な研究機関の 取組の支援及びこれらの研究機関との連携の確保を行うなど、土壌等の除染等 の措置に伴い生ずる廃棄物及び土壌の量の抑制のための技術や、事故由来放射 性物質により汚染された廃棄物及び土壌の減容化のための技術の開発・評価・ 公表を積極的に進めること。
○国は、環境汚染への対処に係る新規技術、材料等について、実用可能性や費用 対効果を評価・公表する仕組を構築し、産学官の研究開発の成果を活用するこ と。
(3)住民理解の促進等
○国は、地方自治体による住民説明会への専門家の派遣等により、適確な知識の 普及啓発を行うこと。
○国及び地方公共団体は、除染等の推進に当たって住民参加への協力を求めると ともに、正確かつ迅速な情報提供及び市民とのリスクコミュニケーションを実 施すること。
(4)その他配慮すべき事項
○国及び地方公共団体は、環境汚染への対処の実施内容及びその効果について、 適時適切に地域住民等に対し周知を行うこと。
○事業者は、環境汚染への対処に従事する者の放射線防護等労働安全衛生に細心 の注意を払い、当該従事者が受ける放射線量の管理、当該従事者が知識を得る 機会の提供等を行うこと。また、国等が環境汚染への対処に関して事業者に委 託する場合には、事業者が当該管理等を確実に行うよう指導すること。
○地方公共団体は、住民等が土壌等の除染等の措置を行う場合にあっては、土壌 等の除染等の措置を行うに当たっての作業方法や留意事項を周知すること、専 門家の助言及び指導を得ること等により、土壌等の除染等の措置が安全かつ着 実に行われるようにすること。このため国は、専門家の派遣、必要な情報の提 供等必要な措置を行うこと。
○環境汚染への対処に当たっては、地元雇用の確保に配慮すること。
○廃棄物の再生利用の推進のため、安全性を確保しつつ、可能な限り廃棄物の再生品(セメントや再生砕石等)の活用を図ること。
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放射性物質汚染対処特措法第 11 条第1項、第 25 条第1項、第 32 条第1 項及び第 36 条第1項の環境省令で定める要件案
平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の 事故により放出された放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法(平 成 23 年法律第 110 号。以下「法」という。)第 11 条第1項、第 25 条第1項、第 32 条第1項及び第 36 条第1項の環境省令で定める要件については、「除染に関する緊急 実施基本方針」(平成 23 年 8 月 26 日原子力災害対策本部決定)等も踏まえつつ、以 下のとおり定めることとする。
なお、これらの要件に係る考え方については、現在、別途パブリックコメントを行 っている法第7条に基づく基本方針骨子案に記述している。
※ 本パブリックコメントの対象以外の政省令事項についても、後日、別途パブリックコ メントを行う予定であるが、本パブリックコメントは、法第 13 条第1項、第 28 条第1 項及び第 36 条第1項に定める計画(対策地域内廃棄物処理計画、特別地域内除染実施計 画及び除染実施計画)の策定にあたり予め必要となる各地域の指定に関する事項につい て先に行うものである。
I 廃棄物処理関係
1.汚染廃棄物対策地域の指定の要件 【法第 11 条第1項関係】
汚染廃棄物対策地域の指定の要件については、空間線量が高いこと及び国の指示 に基づき立入りが制限されている地域であることを踏まえ、
○ 警戒区域又は計画的避難区域である地域 とする。
II 除染関係
1.除染特別地域の指定の要件 【法第 25 条第1項関係】
除染特別地域の指定の要件については、空間線量が高いこと及び国の指示に基づ き立入りが制限されている地域であることを踏まえ、
○ 警戒区域又は計画的避難区域である地域 とする。
2.汚染状況重点調査地域の指定の要件 【法第 32 条第1項関係】
汚染状況重点調査地域の指定の要件については、
○ 当該地域における放射線量が一時間当たり 0.23 マイクロシーベルト(※1) 以上(※2)であること
とする。
(※1)「追加被ばく線量年間1ミリシーベルトの考え方」(平成 23 年 10 月 10 日災害廃棄物安全評価検討会・環境回復検討会 第一回合同検討会の参考資料2の別添2)参照 (※2)法第 32 条第 1 項では「地域内の事故由来放射性物質による環境の汚染状態が環境 省令で定める要件に適合しないと認められ、又はそのおそれが著しいと認められる場合には、その地域を汚染状況重点調査地域として指定する」こととされている。よっ て、環境省令では「放射線量が一時間当たり 0.23 マイクロシーベルト未満であるこ と」を定めることとする。
3.除染実施計画を定めることとなる区域の要件 【法第 36 条第1項関係】
除染実施計画を定めることとなる区域の要件については、 ○ その区域における放射線量が一時間当たり 0.23 マイクロシーベルト(※3)
以上(※4)であること とする。
(※3)「追加被ばく線量年間1ミリシーベルトの考え方」(平成 23 年 10 月 10 日災害廃棄 物安全評価検討会・環境回復検討会 第一回合同検討会の参考資料2の別添2)参照
(※4)法第 36 条第 1 項では「汚染状況重点調査地域内の区域であって、(中略)事故由来放射性物質による環境の汚染状態が環境省令で定める要件に適合しないと認めるものについて、除染実施計画を定める」こととされている。よって、環境省令では、 「放射線量が一時間当たり 0.23 マイクロシーベルト未満であること」を定めること とする。
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平成 23 年 10 月 10 日災害廃棄物安全評価検討会・環境回復検討会 第1回合同検討会 資料(別添2)
追加被ばく線量年間1ミリシーベルトの考え方
追加被ばく線量は、空間線量率の測定により確認することができ、追加被ばく線量年間1 ミリシーベルトは、一時間当たりの空間線量率(航空機モニタリング等の NaI シンチレー ション式サーベイメータによる)に換算すると、毎時 0.23 マイクロシーベルトにあたる。
その考え方は、以下のとおり。
追加被ばく線量の考え方
1 事故とは関係なく、自然界の放射線が元々存在し、大地からの放射線は毎時 0.04 マイ クロシーベルト、宇宙からの放射線は毎時 0.03 マイクロシーベルトである。
※大地からの放射線、宇宙からの放射線はそれぞれ年間 0.38 ミリシーベルト、年間 0.29 ミリシーベルト(文部科学省「学校において受ける線量の計算方法について」(平成 23 年 8 月 26 日)であり、これを一時間当たりに換算(24 時間 ×365 日で割る) した数値
2 追加被ばく線量年間1ミリシーベルトを、一時間当たりに換算すると、毎時 0.19 マイ クロシーベルトと考えられる。(1日のうち屋外に8時間、屋内(遮へい効果(0.4 倍) のある木造家屋)に 16 時間滞在するという生活パターンを仮定)
※毎時 0.19 マイクロシーベルト × (8時間 + 0.4 × 16 時間) × 365 日 = 年間1ミリシーベルト
3 航空機モニタリング等の NaI シンチレーション式サーベイメータによる空間線量率の 測定では、事故による追加被ばく線量に加え、自然界からの放射線のうち、大地からの放 射線分が測定されるため、
0.19 + 0.04 = 毎時 0.23 マイクロシーベルト が、追加被ばく線量年間1ミリシーベルトにあたる。
※通常の NaI シンチレーション式サーベイメータでは宇宙からの放射線はほとんど測 定されない
※航空機モニタリングに使用する検出器では宇宙からの放射線も検出するが、その分は 差し引かれている