立春を迎えた新しき春の日に手を伸ばしたのは、澤田ふじ子さんの『花暦 花にかかわる十二の短編』だった。
冒頭の「寒椿」のヒロインは、大垣藩の家中では微禄に属する武家の娘で24歳のふき。
17歳のときに母を亡くし、天守閣修理工事中に怪我を負った父の世話をしながら幼い弟を母親代わりに育てていた。
ふきは賃縫いに精を出し、呉服商からは上物をまかせられるほどの信頼を得るまでになった。
母からの秘伝の草木染めで染めあげた、深い青磁色の布を男物の胴裏に用いることがあった。そしてその染め色に心ひかれる女性がいた。
ふきは、圓通寺の道端で落ち椿を拾い集めた。
律宗の寺院では仏前供花に椿の花を用いていて、長寿、結縁をあらわす吉祥の花として喜ばれている。
「これ彦十郎、椿の木をゆすり、もっと花を落としなされ…」
ふきの人生にも花どきが訪れるだろうと余韻もあたたかい。しっとりとしたふじ子ワールドから好きな1編を読み返したのだった。
ふきは、婚期を逃すも自分の今後に深い覚悟をつけた。
それは、私に残された短いような長い時間を何を支えに、どう生きようとしているのかを問いかけても来る。
寒椿力を入れて赤を咲く
花粉の運び役が少ない寒中、鳥を甘いみつで誘う。そのためにも、遠くからでも目立つ赤い花を咲かせる。ー自らを知る者の強さ。
と子規の句に添え、コラムが綴られていたことがあった。
♪ “愛が一つ芽生えそうな・・・”、 椿の花 ぽとりぽとり。
雪でも呼ぶのかな、風が窓ガラスをたたく音がする。
陽気に温かさを増すころが待ち遠しいと身を縮めている。
ー椿の写真は過去のもの
冒頭の「寒椿」のヒロインは、大垣藩の家中では微禄に属する武家の娘で24歳のふき。
17歳のときに母を亡くし、天守閣修理工事中に怪我を負った父の世話をしながら幼い弟を母親代わりに育てていた。
ふきは賃縫いに精を出し、呉服商からは上物をまかせられるほどの信頼を得るまでになった。
母からの秘伝の草木染めで染めあげた、深い青磁色の布を男物の胴裏に用いることがあった。そしてその染め色に心ひかれる女性がいた。
ふきは、圓通寺の道端で落ち椿を拾い集めた。
律宗の寺院では仏前供花に椿の花を用いていて、長寿、結縁をあらわす吉祥の花として喜ばれている。
「これ彦十郎、椿の木をゆすり、もっと花を落としなされ…」
ふきの人生にも花どきが訪れるだろうと余韻もあたたかい。しっとりとしたふじ子ワールドから好きな1編を読み返したのだった。
ふきは、婚期を逃すも自分の今後に深い覚悟をつけた。
それは、私に残された短いような長い時間を何を支えに、どう生きようとしているのかを問いかけても来る。
寒椿力を入れて赤を咲く
花粉の運び役が少ない寒中、鳥を甘いみつで誘う。そのためにも、遠くからでも目立つ赤い花を咲かせる。ー自らを知る者の強さ。
と子規の句に添え、コラムが綴られていたことがあった。
♪ “愛が一つ芽生えそうな・・・”、 椿の花 ぽとりぽとり。
雪でも呼ぶのかな、風が窓ガラスをたたく音がする。
陽気に温かさを増すころが待ち遠しいと身を縮めている。
ー椿の写真は過去のもの