久しぶりに劇場へ映画を見に行った。
見たかったのは 「灼熱の魂」 Incendies
開巻早々、会話がフランス語で面食らうが、これはある中東の国からカナダへやってきた母親と双子の姉弟の話。
母親が急死をして、その遺言に従ってすでに成人している姉弟が母国へ父親と、存在すら知らなかった兄を探しに行く。
母親の、中東の母国での悲惨な過去を旅する話、と言うのは知っていたので、パレスチナがらみ、イスラムとイスラエルの話かと思っていた。
しかし実際はそれよりもさらに悲惨な内戦の話。
映画の中で中東の国は特定されていないが、原作者はレバノン出身だというし、ちらちらと映る国旗はレバノンやシリア、イラクに共通する赤、白、黒の三色旗。
パレスチナからの難民が押し寄せ、それに触発されて国内のイスラム教徒とキリスト教徒の間で摩擦が起こり、報復に次ぐ報復で内戦状態へ、と言えばやはりレバノンを思い起こさずにはいられない。
おそらく昨日までは何事もなく共存していた2つのグループが次の日からは宗教やら支持政党やらのイデオロギーで殺しあう、なんと悲惨なことだろうか。
この物語の主人公がキリスト教徒というのもポイントで、彼らも「敵」と同じように非寛容でしかない。
それが示されるオープニングのシーン、最も暴力的な砂漠のシーンを欧米人の観客はどのように見ただろうか。
母親の物語は壮絶で悲劇的なのだが、母親のシーン、それをたどる子供たちのシーンは交錯しながらもとてもわかりやすい。
ヨルダンでロケしたらしい中東の風景も説得力があって、舞台劇が原作とは思えないほど映画的。
徐々に明らかになる家族の秘密に引き込まれるので2時間10分の上映時間に長さは感じない。
最後に明かされる謎解きも「悲劇」なのだが、そこに「寛容」を求めるテーマは重い、けれど救いがないわけではない。
久しぶりにどっしりと考えさせられる映画。
風景のせいもあって、見ている間中シリアのことを考えていた。
イスラムと様々なキリスト教会派の共存する国、独裁者に抑えつけられていたが、それがひっくり返った時、今まで通り平穏に共存できるのか。
旅をして大好きになった国だからこそ、今とても気にかかる。
それにしてもこの映画、レディースデイだったせいか、平日の昼なのに劇場は満席。
「地味な映画だから空いていると思ったのに」と考えている通りのことを他のお客さんもぼやいていて笑っちゃう。
こういう映画にお客が入るとは、この国も捨てたもんじゃないかも。
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開巻早々、会話がフランス語で面食らうが、これはある中東の国からカナダへやってきた母親と双子の姉弟の話。
母親が急死をして、その遺言に従ってすでに成人している姉弟が母国へ父親と、存在すら知らなかった兄を探しに行く。
母親の、中東の母国での悲惨な過去を旅する話、と言うのは知っていたので、パレスチナがらみ、イスラムとイスラエルの話かと思っていた。
しかし実際はそれよりもさらに悲惨な内戦の話。
映画の中で中東の国は特定されていないが、原作者はレバノン出身だというし、ちらちらと映る国旗はレバノンやシリア、イラクに共通する赤、白、黒の三色旗。
パレスチナからの難民が押し寄せ、それに触発されて国内のイスラム教徒とキリスト教徒の間で摩擦が起こり、報復に次ぐ報復で内戦状態へ、と言えばやはりレバノンを思い起こさずにはいられない。
おそらく昨日までは何事もなく共存していた2つのグループが次の日からは宗教やら支持政党やらのイデオロギーで殺しあう、なんと悲惨なことだろうか。
この物語の主人公がキリスト教徒というのもポイントで、彼らも「敵」と同じように非寛容でしかない。
それが示されるオープニングのシーン、最も暴力的な砂漠のシーンを欧米人の観客はどのように見ただろうか。
母親の物語は壮絶で悲劇的なのだが、母親のシーン、それをたどる子供たちのシーンは交錯しながらもとてもわかりやすい。
ヨルダンでロケしたらしい中東の風景も説得力があって、舞台劇が原作とは思えないほど映画的。
徐々に明らかになる家族の秘密に引き込まれるので2時間10分の上映時間に長さは感じない。
最後に明かされる謎解きも「悲劇」なのだが、そこに「寛容」を求めるテーマは重い、けれど救いがないわけではない。
久しぶりにどっしりと考えさせられる映画。
風景のせいもあって、見ている間中シリアのことを考えていた。
イスラムと様々なキリスト教会派の共存する国、独裁者に抑えつけられていたが、それがひっくり返った時、今まで通り平穏に共存できるのか。
旅をして大好きになった国だからこそ、今とても気にかかる。
それにしてもこの映画、レディースデイだったせいか、平日の昼なのに劇場は満席。
「地味な映画だから空いていると思ったのに」と考えている通りのことを他のお客さんもぼやいていて笑っちゃう。
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