12月4日 続き
由布院駅で切符を買い、バスターミナルからまたJR豊後森駅行きの代行バスに乗る。
ただし今度は森駅直行の急行ではなく各駅停車なので高速には乗らず、くねくねとした一般道を行く。
50分かかってやって来たのは激渋で無人の引治(ひきじ)駅。
まわりには田んぼ以外に何もなく
広ーい駅前には民家があってご近所さんがおしゃべりしているが店の一軒もない。
こんな所に何で降りたんだ、と不思議そうな顔で見られつつ旅館からの迎えを探すが来ていない。
またか、とすぐに電話をすると案の定忘れられていたらしい。立山に続いて今年2度目(笑)。
10分ほどで旅館のボンらしい若い男の子が車でやってきて無言で宿へ。
駐車場から急坂を下りて行くと
川沿いに建物が見える。
「壁湯温泉 福元屋」さんはおなじみ日本秘湯を守る会の宿。
玄関を入ると正面に藁で作った龍がお出迎え、「どうぞ」と上がって廊下に入ってすぐのふすまを開けるのでロビーかと思ったら
布団が敷かれた、これが今夜のお部屋。二間をつなげたらしい横長の部屋は15畳以上あって広く、窓の外を川が流れている。
2時過ぎとまだ早いのだけれどチェックインをさせていただき、柚子の砂糖漬けをつまみながらお風呂の準備ができるのを待つ。
やがて仲居さんが知らせに来てくれて、部屋のすぐ隣にある貸切の内湯へ。
石造りで3,4人でいっぱいになりそうな小さなお風呂だが、薄暗い小屋の中が「隠り国の湯」という名前にぴったり。
無色透明の単純泉は湯口で44℃、浴槽内は38℃ほどのぬる湯、ゆったりと寝てしまいそうだ。
しかしここで体を温めたらこちらの自慢、洞窟温泉に行かねば。
浴衣を羽織って玄関を出ようとすると宿の御主人が「地元のじいさんが一人入ってるけど気にしないでゆっくり入ってね」と声をかけてくる。
このご主人、我々が到着した時にはスマホのチェックに没頭していて顔も上げず、しかしこの後は食事の時などもとても愛想がいい。営業時間になるとスイッチが入るのだろうか。
さて、問題の洞窟風呂は川べりにあるのだが、鉄道線路も流した7月の豪雨で岸壁が流されてしまったとのこと。
そこでこんな足場が組まれてワイルドなアプローチになっている。
途中に見える、これは女性専用洞窟風呂だが、こちらは階段が崩れてしまって入れない。
その先にあるのが混浴の洞窟風呂。
正面にこれまたワイルドな脱衣場があるが、仲居さんの助言により浴衣の下にムームースタイルの宿の湯あみ着を着てきたので問題なし。
先客のご老人に挨拶をしてお湯に入らせていただくと
お湯は青く透き通って底の凸凹した岩床が良く見える。
ここの源泉温度は36.6℃、よく見ると岩床から泡が上がって温泉が自噴しているのがわかり、特に壁際の穴のようなところに入り込むとお湯の鮮度の良さが感じられてなんとも気持ちがいい。
しかしさすがに冬場はぬるいということでこの冬は近所の宝泉寺温泉からパイプで熱いお湯を引いてみているとのこと。先客のおじいちゃんが気を使って「こっちが暖かいよ」と教えてくださる、そこでやっと37℃ぐらい。
オーバーハングした頭上の岩には小さなお地蔵さまと南無阿弥陀仏の文字。
脇を流れる川も青く澄んで、やっぱりここまで来て良かった!
温泉の後は部屋でダラダラして、夕食は6時から食堂で。
我々の他にご夫婦が二組、一人旅の男性が3人もいらっしゃる。
食事は馬刺しがとてもおいしくて、他にこんにゃくや豊後牛。
白和えや野菜の煮物などが家庭的でほっとする味。
この他にヤマメの塩焼きや天ぷらがアツアツで来て、数えると11品も。
お腹はいっぱいだけれどこれも宿自慢の自家製香り米が名前の通りいい香りで、デザートのヨーグルトまでいただいたらもう動けない。
すぐ隣の部屋に戻って布団に転がったが、広い部屋はエアコン2台をフル稼働しても寒くてたまらない。
そこで体を温めるべく、またお風呂へ。
洞窟風呂にも明かりが煌々と灯って入れるけれど、こちらはぬるいし、男性陣が楽しんでいらっしゃったので
帳場で鍵をもらって別棟の「切り出しの湯」へ。こちらも3,4人は入れる大きさで貸し切り、内湯同様加温されているのでやっと温まった。
そのおかげだろうか、この夜はいつにないほど深く眠れた。
翌朝は朝ぶろの後にまた品数豊富なおいしい朝ごはんをいただき
入り口脇の囲炉裏端でコーヒーをいただきながら置かれたアルバムを見ると、この宿はごく普通の古い宿だったのをご主人たちがほぼ自力で民芸調に作り替えたらしい。
川べりのお風呂も早く修復したいのだが、岸壁は国の管轄なので勝手に手が出せない、と女将さんは悔しそう。
家庭的で「亀の井別荘」とは全く方向性の違う宿。
これもまたいい。
ゆっくり10時にチェックアウトさせていただいた。
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