めったに映画館に脚を運ばないくせに、一本見ると予告編に誘われてまた行きたくなる。
そこで緊急事態宣言下でもがんばって営業を続けている映画館を応援すべく、平日昼間のシネスイッチ銀座へ。
朝一の一本目、10人ちょっとのお客さんと見たのは 「Gogo 94歳の小学生」
Gogoとはスワヒリ語でおばあちゃんのこと。ケニアのプリシラおばあちゃんは94歳にしてひ孫たちと寄宿舎に寝泊まりして小学校の勉強をしている。
先生は孫の年齢、気を使ってくれるけれどおばあちゃんは耳も遠くなっているし、目は白内障で良く見えなくて、小学校の卒業試験に合格するのは難しい。
元々助産婦として女性たちを見てきたプリシラさん、自分が子供の頃には女の子に勉強をさせようなんて言う親はいなかったし、今はいい時代になったと言う。
それなのに早くに妊娠してしまって学業を続けない(続けられない)女の子たちが多いことに心を痛め、自分が範を示そうと入学した、これはドキュメンタリーなのだ。
ケニアといえども広くて、Gogoのクラスがマサイマラに1週間(!)の遠足に行くと象やライオン、キリンを初めて見たとみんな大喜びする。
その景色が素晴らしく、学校の生徒たちはクリクリとした目が可愛くて、特にGogoのひ孫は美少女だ。
プリシラさんは94歳とはとても思えないほどかくしゃくとして、何よりもその意識の高さが素晴らしい。だからこそこのドキュメンタリー映画を作ったのだろうが、「ありのままを撮った」という監督の言葉とは裏腹、ひ孫や校長の言葉は明らかにセリフだし、学校の近所に住むGogoの友達のおばあちゃんも学校に入学するというのも本当とは思えない。
映画のハイライトにはプリシラの名前を冠した新しい寄宿舎が完成するところがあるのだが、明らかにスポンサーがいるその経緯は何も説明されず、そういうところこそドキュメンタリーなんじゃないか。
フランスのドキュメンタリー映画は以前「皇帝ペンギン」を見た時にも思ったが、映像は素晴らしいが演出が作為がありすぎてくさい。
ラスト近く、おばあちゃんが白内障の手術を受けて喜ぶあたりは本当に自然で、全編がそんな感じだったらずっといいドキュメンタリーになっただろうと惜しかった。
お昼は期待通りゆったりと空いている和光のティーサロンで
正統マカロニグラタンにアールグレイのアイスクリーム、うまし。
そして二本目は公開初日だった 「羊飼いと風船」
こちらは珍しいチベット映画。
チベット人監督に俳優たちもチベット族でセリフもチベット語。今の中国でもこういう映画が撮れるんだ、とうれしい驚き。
舞台は東チベットだろう、広々とした草原で羊を飼っている家族、その子供たちが親の隠していたコンドームを風船だと思って遊んでしまう所からストーリーは始まる。
その結果として望まない妊娠をしてしまって、と言うあたりは予想通りの展開。
しかしそこにチベット人ならではの死生観、家族観、さらに現代中国ならではの社会情勢が絡まり、シンプルなストーリーながらすべての要素がまるでジグソーパズルのようにはまる、見事な脚本。
羊の種付けのユーモラスなシーンもきっちり意味を持つし、チベット人俳優の皆さんは子役まで自然な演技でうまい。
そして何よりチベットの風景、うわ~、行きたいよ~。
失礼ながらチベット映画がこれほど質が高いとは思わなかった。
3月には岩波ホールでチベット映画特集があるらしいので、これはまた行かなきゃ。 ←人気ブログランキングへ一票、お願いします。