所用ででかけたついでに上野まで。
例によって東京国立博物館の特別展へ。
「本阿弥光悦の大宇宙」
地味な内容のためか平日の午前はかなり空いていて、ゆっくり静かに見られたのは良かった。
しかし展示を見始めて自分の勘違いに気づいて愕然。
ポスターにも大きく取り上げられている通り、光悦と言えば国宝にもなっている大きく膨らんだ硯箱が有名なのでてっきり工芸の人だと思い込んでいたが、実は書の方が有名な人。
どうやら尾形光琳などとごっちゃになっていたようで、自分の不勉強に恥じ入るばかり。
本阿弥家は刀剣の鑑定では名家とのことで展示の初めは国宝の刀がずらり。
しかし刀にも書にもまるで興味も知識もないので、この辺りは猫に小判、豚に真珠。
が見ているうちに光悦という人はその出自から有力なスポンサーや職人に強力なコネがあり、自身の審美眼もあって優れたプロデューサー、コーディネーターだったのだと理解できた。
今回の展示で一番感動したのは俵屋宗達とのコラボの「鶴下絵三十六歌仙和歌巻」。
13mもの巻物の上で鶴たちがたたずんだり、羽を広げて飛び立ったり、なんて自由で洗練されているのだろうとうっとり。
これより早い時期にコラボしたらしい桜の屏風も
絵を宗達が描き、その上に光悦の書が短冊の形で散りばめられているのだが、木の表現など現代の物のようにモダンに見える。
町絵師だった宗達を見出して有名にしたのが光悦だそうで、それ以外にも謡本の贅沢な紙までその職人の名前がちゃんと残っている。
芸術ならぬ工芸にまで名前が残っている国って他にあるのだろうか。
最後は陶芸で、これなど茶の湯をたしなんだ光悦の個人的な趣味だったんじゃないかと思うが、それが国宝になってしまうすごさ。
しかし実は光悦の国宝より、陶芸の師匠だったであろう楽焼のプロ、長次郎の茶わんがいいなあ、なんて思ってしまった。
外に出ると一本だけ、紅梅がもう花を開いていた。
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