文理両道

専門は電気工学。経営学、経済学、内部監査等にも詳しい。
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書評:世界でいちばん石器時代に近い国パプアニューギニア

2015-01-02 10:16:26 | 書評:学術・教養(人文・社会他)
世界でいちばん石器時代に近い国パプアニューギニア
クリエーター情報なし
幻冬舎


 「パプアニューギニア」は、世界で2番目に大きな島であるニューギニア島の東半分と周辺の島々から構成される赤道直下の島国だ。約780万人の人々が、なんと800以上の言語を使っており、公用語は英語。この他に共通語としてピジン語が使われている。英連邦の一員で、国家元首はエリザベス女王。海は美しくダイビングのメッカだそうだ。

 日本から南へ、飛行機で6時間半。ハワイに行くのと同じくらいの飛行時間だそうだから、近いと言えば近い。しかし、その割には、私たちはこの国のことをあまり知らないのではないだろうか。私自身も、「パプアニューギニア」と聞いて連想するのは、以前テレビで放映されていた、「南国少年パプワくん」くらいのもので、南海の楽園といったイメージしか持っていなかった。本書、「世界でいちばん石器時代に近い国パプアニューギニア」(山口由美:幻冬舎新書)は、そんな近くて遠い国、パプアニューギニアの歴史、風俗などについて紹介したものである。

 この国は、我が国の歴史とも大きく関係している。太平洋戦争の頃、ニューギニア島は最大の激戦地の一つだった。動員された16万人の兵士のうち、なんと15万人が亡くなったのだ。この島には、いまなお多くの同胞たちの英霊たちが眠っているのである。戦時下の状況での不幸な事件もあったが、島の人たちは、戦いに敗れた日本兵たちに、暖かく接してくれたという。そのおかげで1万人もの人が、生きて再び母国の土を踏むことができたのだ。

 本書には、日本兵と島の人たちとの交流例として、「柴田学校」が紹介されている。「柴田学校」とは、元陸軍中尉柴田幸雄さんらが、1944年10月から終戦まで、現地の子供たちのために開設した学校である。パプアニューギニアの初代首相は、この学校の生徒だった。こういったエピソードや、近年のJICAの人々の活躍などにより、この国の親日感情は抜群で、著者のような一般の人がきても歓迎してくれるという。我が国も、隣国の一挙一動に汲々としているだけではなく、もっとこのような国々との関係を深めることを考えるべきであろう。

 ところで、タイトルにある「世界でいちばん石器時代に近い国」という意味だが、この国の内陸部では、近代文明とのファーストコンタクトが、1950~60年代であり、それまでは、石器時代とあまり変わらない暮らしをしていたということなのである。この名残として、いまだにシェルマネー(貝のお金)が通用しており、これを専門に扱う銀行もあるというのだから驚く。また、首狩りや食人の風習も最近まで残っていたという。怖いのは、黒魔術が、今なお顕在なことで、最近でも、黒魔術をかけた者として認定された若い女性が、暴徒にガソリンをかけられ焼き殺されたという痛ましい事件があったのだ。

 本書は、そのようなパプアニューギニアについて、光と影の両面から描き出しており、なかなか興味深く読める。私たちは、欧米や隣国ばかりでなく、もっと周りの国々について知らなくてはならないだろう。そのためには貴重な一冊だ。

☆☆☆☆

※本記事は、姉妹ブログと同時掲載です。


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