![]() | ブルー・オーシャン戦略――競争のない世界を創造する (Harvard business school press) |
クリエーター情報なし | |
ダイヤモンド社 |
以前事業戦略において、「ブルー・オーシャン」の言葉が流行った時期があった。その語源となったのが、この「ブルー・オーシャン戦略――競争のない世界を創造する」(W・チャン・キム/レネ・モボルニョ著、有賀裕子訳:ランダムハウス講談社)。本書が話題になっていたのは、ほんの少し前だと思っていたのだが、発行年をみたら2005年である。俗に10年を一昔というから、もう一昔前の本ということになるが、今読んでも古い感じはしない。(この間、なぜかこの本が、田舎のコンビニに並んでいるのを見た)
タイトルの「ブルー・オーシャン」とは、競争のない事業分野の例えであり、血みどろの競争が行われている、「レッド・オーシャン」に対比されるものだ。本書は、「ブルー・オーシャン」を切り開いていくことがいかに大切であり、そのためにはどうしたら良いかを解説したものである。競争相手がいなければ、一人勝ちになるのは当然で、こんな美味しい話はないだろう。しかし、これまの戦略論では、もっぱら「レッド・オーシャン」での競争を対象にしていたという。
本書では、ブルー・オーシャン戦略の6原則、分析のためのツール、フレームワークとしての「戦略キャンバス」、「アクション・マトリクス」といったものを紹介して、多くの企業についてのケース・スタディを行っている。さらに、「戦略の6原則」について、ひとつひとつ、丁寧に解説しており、どのような視点・心構えでブルー・オーシャン戦略を策定すれば良いかを教えてくれる。そこには、なかなか気がつきにくいが、言われてみればなるほどとおもえるようなヒントが、具体的な事例とともに数多く紹介されているので、現在の事業から一歩踏み出したいと考えている経営者にとっては、ヘタなコンサルタントを雇うよりは得られるものが多いだろう。さらには、ブルー・オーシャン戦略を実行する際のハードルの乗り越えかた、従業員を巻き込んで、戦略を実行していく上での、公正なプロセスということの重要性ということなども教えてくれる。
大切なことは、本書の内容をヒントにして、自分の業界でのブルー・オーシャンはなにかを徹底的に考えることだろう。既に紹介されていることと同じ事をやっても、そこは所詮はレッド・オーシャンでしかないのだから。総花的な戦略を目指してはいけない。とんがった企業になることこそ、ブルー・オーシャン戦略の極意なのだ。
しかし、ブルー・オーシャンもやがては、競合が進出して、レッド・オーシャンになってしまう。ブルー・オーシャン戦略は、知財、ネットワーク外部性、ブランドロイヤリティなどで、本来参入障壁か゛高いが、いつかは模倣されてしまう。著者は、戦略キャンバス上に描いた価値曲線が、他社と似たり寄ったりになったら、次なるブルー・オーシャンのを目指す時期だという。戦略が成功したからと言っても、いつまでもそれに酔いしれていてはいけないのだ。企業経営では、この点も心に留めておくべきことだろう。
一般にビジネス書というものは、内容がスカスカのものが多いので、あまり読み返したいと思うものは少ないのだが、本書は、折に触れ読み返したいと思える本の一冊である。
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