文理両道

専門は電気工学。経営学、経済学、内部監査等にも詳しい。
90以上の資格試験に合格。
執筆依頼、献本等歓迎。

鹿児島県立博物館(鹿児島旅行10)

2015-12-25 15:35:55 | 旅行:四国・九州・沖縄



 写真は、天文館のアーケードを抜けてちょっと行ったところにある「鹿児島県立博物館」。内部はこんな感じだ。鹿児島県内に生息する生物、鹿児島県の地質に関するものなど、ここを見学するだけで鹿児島県に関することはかなり分かるという優れもの。






 私は博物館に行くのが好きなので、旅行先にあったら、つい立ち寄ってしまう。この鹿児島県立博物館は、うれしいことになんと入場無料。色々な博物館に行ったが無料というのは初めての経験だ。おまけに記念品ということで桜島の火山灰の入った袋をくれた。さすがは西郷さんの御膝元、なんとも太っ腹である。


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鹿児島ラーメン 豚とろ(鹿児島旅行9)
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書評:ゴードン・スミスの日本怪談集

2015-12-25 11:41:11 | 書評:その他
ゴードン・スミスの日本怪談集 (怪BOOKS)
クリエーター情報なし
角川書店


 日本の怪談を書いた外国出身の人と言えば、すぐ連想するのはラフカディオ・ハーンがだが、もう一人忘れてはならない人がいる。イギリスの博物学者で旅行者のリチャード・ゴードン・スミスだ。彼が日本にやって来たのは1898年(明治31)。すっかり日本が気に入って居ついてしまったスミスは、多くの日本の怪談・奇談を書き留めていた。

 「ゴードン・スミスの日本怪談集」(荒俣宏編訳:角川書店)は、大判5冊に及ぶ彼の原本の中からよりすぐりの16編を紹介したものだ。大富豪でもあったスミスは、ほとんどの物語に美しい挿絵を描かせている。本書にもその挿絵が掲載されているが、なんとも雰囲気のあるすばらしいものばかりだ。

 収められている話はどれも怪しく美しい。例えば「帰ってきた名刀、幸丸」という話は、命を助けられた雌鯉の精が助けてくれた男の嫁になるという話だ。男女の愛は種族の壁を超えるという異種婚姻譚である。

 和歌山に伝わる「安珍と清姫」の原本になったという「白羊塚」という話も載っている。ただしこちらは沖縄の話だ。猟師の息子である松寿は、首里の蓮華道の住持のもとで学問を学んでいた。あまり学問好きではなかった彼は、口実をこしらえて師匠から逃げ出し山に入る。山で白い山羊を見つけた彼は、その山羊を追いかけるうちにすっかり道に迷ってしまった。山の中を歩き回るうちに見つけた小屋で出会った娘の名が「清姫」。山は「道成山」だった。

 自分といっしょに暮して欲しいという清姫に、松寿は色よい返事をしない。遂に怒り心頭に達した清姫は、夜叉のようになって松寿を追いかける。「安珍と清姫」と違うのは、鐘の中に入って死ぬのは清姫の方だというところである。もちろん人間ではない。それにしても、和歌山に伝わる話のルーツが遠く離れた沖縄にあったというのは面白い。いったいどのようにして伝わったのだろうか。

 ところで本書中には、いくつか気になる箇所が見られる。まず「観音という慈悲の女神」(p94)と書かれているところだ。観音菩薩は女性ではないし神でもないというのが私の見解だ。スミスは、髭が描かれている観音像を見たことがなかったのだろう。もっとも、観音菩薩を女神として扱うこともあることはある。しかし、顔に髭を書くと言うことは、少なくとも正式な仏教では、女性としては扱われなかったということだろうと思う。なお、あれは髭ではなく口の動きだと言う説もあるが、客観的にはどう見ても髭にしか見えない。

 また祇園の神様として有名な牛頭天王について、次のように書かれている。
 「牛頭天皇は、ときに冥土の神と呼ばれる」
 「牛頭天皇は月の神とも呼ばれる」 (p98)
 牛頭天皇はスサノオノミコトと同一とされ、「疫病神」としての性格も持っているが、「冥土の神」と言うのはどういうことだろう。スサノオが「根之堅州國」に住んでいたからなのか。また「月の神」というのは初耳だ。そのような伝説もどこかに伝わっていたのだろうか。それともスサノオの兄である「月読命」と混同したのだろうか。

 しかしこれらの物語は、ハーンの「怪談」と比べても遜色がないくらい興味深いものだ。スミスがこのような物語を、私たちに残してくれた意義は大きいのではないかと思う。できれば本書に収録されなかった話も、機会があれば読んでみたいものである。

☆☆☆☆

※本記事は、書評専門の拙ブログ「風竜胆の書評」に掲載したものです。



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