文理両道

専門は電気工学。経営学、経済学、内部監査等にも詳しい。
90以上の資格試験に合格。
執筆依頼、献本等歓迎。

札場の石の表示碑(広島市を歩く148)

2016-11-07 18:44:44 | 旅行:広島県


 上の写真は、所用で戸坂の方に行った際に、戸坂公民館の近くで見つけた「札場の石の表示碑」。「なんじゃそれ!?」と思って、少し調べてみた。「札場」というのは、時代劇なんかで、よく御触れを出しているシーンがあるが、ああいった高札なんかを建てる場所のようだ。つまりここに札を立てていたのを記念して、表示のための碑を設置したということだろう。それにしても、知らないところに行ってみると、意外な発見があるものだ。


〇関連過去記事
京橋川の土手(広島市を歩く147)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

書評:11月そして12月

2016-11-07 09:31:40 | 書評:小説(その他)
11月そして12月 (中公文庫)
クリエーター情報なし
中央公論新社

・樋口有介

 この作品の主人公は晴川柿郎という22歳の青年だ。高校も大学も中退して、仕事もせずにカメラばかりいじっているニートな毎日。他の樋口作品の主人公と同様、若いくせに人生を悟りきったような言動である。

 彼の家庭はなかなか複雑だ。父親は勤めていた会社から、浄水器を作る子会社に移り、そこで企画開発部長をしているが、部下の若い女性と不倫中。

 姉は、雑誌の編集者だが、こちらも妻子ありのアパレルメーカー専務と絶賛不倫中。不倫相手が妻と別れると言っていたくせに、双子の子供ができたと言って、睡眠薬を飲んで自殺を図る。

 母親は、カルチャーセンター狂いで忙しい。やっかいごとは、いつも柿郎に持ち込まれる。

 そんな彼が、ゴミ虫を撮影しているときに、山口明夜という変わった女性と出会う。かなり蓮っ葉な感じで登場するのだが、実は高校時代はかなり期待されていた長距離陸上選手だ。これは、そんな二人の、淡い恋と別れの物語。

 二人の間にお邪魔虫として登場するのが、かって明夜の監督だった寺塚修司という男。山口の才能を殺させまいと、ほとんど脅迫のような感じで、柿郎に別れろと迫る。こういうスポーツバカは始末がわるい。脳みそまで筋肉でできているのだろう。自分の価値観が絶対だと思って人に押し付ける。

 柿郎は、一応寺塚の言うことに反論はしている。

「たとえ才能をひき出せたとしても、せいぜい一秒か二秒、ほかの人より速く、走れるだけでしょう」

「彼女は、あなたの道具ではありません」
(以上p187)

 しかし、結局は寺塚の主張に負けた形になってしまう。なぜ引き下がる柿郎。君の言っていることは正しいぞ。ニートだからか?ヘタレだからか? 一番の問題は、明夜が寺塚と同じ価値観を持っているというところだろう。つまらない価値観だと思うが、柿郎はそれを尊重したのだ。明夜を愛しているゆえに。これはちょっと切ないなあ。

 その他の登場人物についても、色々な出来事の後、それぞれの道を歩みだしたという感じだ。物語は、決してハッピーエンドというようなものではないが、かといって最悪だったとも思えない。タイトルのように、晩秋が冬に入って、もの悲しさが漂っているような雰囲気だ。総じていえば、少し遅い青春の甘酸っぱさを感じる作品と言ったところだろうか。しかし、果たして、冬が過ぎて春はくるのか?

☆☆☆☆

※本記事は、「風竜胆の書評」に掲載したものです。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする