SEのフシギな職場 ダメ上司とダメ部下の陥りがちな罠28ヶ条 | |
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・きたみりゅうじ
元SEのきたみりゅうじ氏がマンガとエッセイで描くSE業界のあまりにもブラックな裏側。もちろん、ちゃんとした会社もあるので、あくまでも著者がいた会社ということなのだろうが、色々なものを読む限りでは、こんな会社は結構あるようだ。
大昔、SEなる言葉を初めて知ったころは、そのなんだかかっこいい響きに少し憧れたものだが、本書を読むと、そこで道を踏み外さないでよかったとつくづく思う。
きたみ氏の会社に存在するのは、たくさんのアホな上司とデキナイ部下。上司も上司なら、部下も部下、集まりも集まったりという感じだ。これで会社として成り立っているのが不思議である。
精神論だけで、パワハラしか能がない上司と、社員に課せられる、無茶苦茶なノルマ。挨拶や報連相といった、会社人として基本的なこともできないような人も多い。これではできる人間ほど離れていくのは当然だろう。
思わずぶっ飛びそうになるようなエピソードも多いが、ひとつだけ紹介しておこう。
会社の方針説明会での社長が言ったことには、「3倍は生産性を上げないとこの会社に未来はない。どうやったらやれるかわからないが、自分が社員をそこまで追い詰める」そうな。
そのやり方を考えるのが社長の仕事だろう。精神論を押し付けてばかりではできるわけがない。著者のきたみ氏の会社もそうだったようだが、こういったときは、すべての部門に一律にノルマを課せるのが、バカな経営者や企画部門の常。
その年の退職者はかなりの数になって、中堅どころがごっそり抜けたそうだが、SE業界のように、自分の腕一本で将来を切り開ける技術者が多いところは、こうなるのも当然だろう。
本書に掲載されているのは、驚くほど呆れた例ばかりだが、それだからこそ反面教師として学ぶことも多いのではないかと思う。
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※本記事は、「風竜胆の書評」に掲載したものです。