・横山雅彦
日本語はもともとロジックの運用に向いていないとして、それをロジカルに運用するために本書が紹介しているのが「三角ロジック」というものだ。
この「三角ロジック」は、元々ディベートで使われていたもののようである。特徴は、「クレーム」、「データ」、「ワラント」の3つから成り立っているということ。ここでクレームとは、何らかの「主張」や「意見」のことである。「データ」と「ワラント」は、「クレーム」に対して論証を与えるもので、それぞれ、「事実」と「根拠」のことだ。
これを聞くと、何か目新しい物のように聞こえるかもしれないが、実はこの考え方自体は大昔からあるものだ。著者は、1980年代にはまだ「三角ロジック」という呼称は無かったと書いている。確かに昔はそんな呼び方はなかったろう。しかし三という数字から何かを連想しはしないか。
そう大昔からある「三段論法」である。私の見る限り、「三角ロジック」というのは「三段論法」の見せ方を変えたものに過ぎない。このことは、「ワラント」=「一般論、ルール」、「データ」=「観察事項」、「クレーム」=「結論」と、よく使われる「三段論法」の用語に置き換えてみればわかるだろう。
そういった、「三段論法」の観点から見れば、本書の中に「三角ロジック」の例として挙げられているものには、首をかしげてしまうようなものもある。
「三段論法」というのは次のようなものだ。
①A→B:一般論、ルール
②C→A:観察事項
③C→B:結論
すなわちC→A→Bという推移律が成り立つので、そのロジックは極めて強力なものだ。①が、科学法則のように普遍性のあるものなら、②が正しい限り、③の結論は異論の余地がない。
しかし、一般に①は、何らかの価値観を伴ったものであることが多いし、②についても正しい観察事項であるとは言えないこともある。だからそこに反論の余地が生まれて来る。
著者は、ディベートにおいては、クレームに対してケチをつけてはならず、「データ」や「ワラント」を攻めなければならないとしている。これは上に述べたこととよく整合しているのではないだろうか。
要は、見せ方はどういう方法でもいいから、普段から論理的な考え方を心がけることが大切だろうと思う。「三角ロジック」で書くのもいいが、それが果たして上に述べた「三段論法」でうまく書き表せるかということも、ロジックのチェックになると思う。
☆☆
※本記事は、
「風竜胆の書評」に掲載したものです。