「三つ子の魂百まで」という言葉があります。
ことわざと言うほどでもない言葉だと思うのですが、時々にお目にかかったり、ご高説の振りに使われたりしています。と申し上げている私が、まさに、その振りに使おうとしているのですが。
この言葉を辞書で調べてみますと、「幼い時の性質は老年まで変わらない」とあります。辞書に文句を言っても仕方がありませんが、実際に使われる時の多くは、もっと具体的な事項について、それも、どちらかと言えば悪口や揶揄するような時に使われるような気がします。「昔取った杵柄」とか「雀百まで踊りを忘れず」などとよく似た意味で使われるのでしょうが、「三つ子の魂百まで」の方が、ややアクが強いように思うのは私だけなのでしょうか。
一方で、この言葉を幼児教育の大切さを示す言葉として考える向きもあるようです。
「三歳児神話」という言葉もあるそうで、こちらは、三歳までの期間は性格形成に重要な時期なので、極力母親が養育にあたるべきだ、といったもののようですが、こちらは、多くの研究者が否定的で、共働き世帯であっても、その対応次第だという意見の方が有力なようです。
江戸時代の幼児教育の考え方に、「三つ心、六つ躾(シツケ)、九つ言葉、十二 文(フミ)、十五 理(コトワリ)」というのがあるそうです。つまり、三つまでにその人の本性のようなものは形成されると言うことなのでしょうか。そして、その時代、十五歳は元服の年で、この後は一人前だと言うことなのでしょう。
これによる限りでは、「三つ子の魂」がどうであるかは、生涯にわたって重要な意味を持っていると考えられていたのかも知れません。
現代の研究においても、三歳児頃までの間が、人格形成に大きな意味を持っているという考え方は有力のようですが、人間の成長は継続しているもので、幼児期の育児の大切さはあるとしても、三歳で区切る意味はないようです。
ここからは、脳科学などの研究者の意見をカンニングしたようなものですから、そのつもりでお読みいただきたいと思います。
人間の脳細胞の形成は、胎児の間にほぼ完成に至るそうです。月満ちて生れてきた赤ん坊には、すでに成人と同程度の140億個の細胞があるそうです。
脳は神経細胞の塊のようなものですが、それぞれの細胞には情報を授受する機能、シナプスというものが形成されていくそうですが、誕生後ものすごい勢いで作られていき、3歳までに80%、6歳までに90%、12歳までにほぼ100%が形成されるそうです。その数は、一つの細胞に8000ものシナプスが形成されるそうですから、脳全体では112兆に及ぶそうです。
この数字を見ますと、まだ幼い子や、十代の子供に、数学の天才や、将棋や囲碁の天才が登場してくるのも、何の不思議もないのかもしれません。
さて、この脳細胞やシナプスは、使われると強化され、使われないと弱体化し消滅するそうです。また、損傷しても、修復されることはないそうです。( 最近の研究では、分裂する細胞が発見されているそうで、将来は、医学的に利用される期待もあるそうです。)
つまり、12歳を過ぎた人は、脳の基本的な機能はそれ以上強化されることはなく、劣化しているだけのようです。人間は、その後も知識や知能が成長しているように見えますが、それは、脳細胞の使い方が向上しているだけで、根本的なベースは衰える一方と言うことになります。また、人間の脳は、使われているのは10%程度に過ぎないとか、せいぜい20%か30%だという意見も耳にしますが、余り正しくないようで、もしかすると、私たちの多くが90数%を使い切っているのかも知れません。
いずれにしても、成人式を迎えた人でもすでに脳の老化は始まっているのですから、いわんや、そこそこ生きてきた者としましては、今も頑張って下さっている脳細胞を、あだや疎かにすることなく、大切にしたいものです。
と申しながらも、その大切な残り少ない脳細胞を、どう考えても無駄と思われることには夢中になれるのは、どういう働きゆえなのでしょうか。
( 2022.07.28 )
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます