あまりにお粗末な結果だ。地震の被災がきっかけとなったが、府庁を埋立地でしかも交通機関の分断の可能性が見込まれるエリアに移転自体が問題だった。さらに、府庁が天満から南港のWTCまで移転した場合に府民の利便性を考えないところに、「サプライ・サイド」の発想がある。これは電力供給で足りなくなったら「節電しなさい」というのと同じだ。さらに、都市運営として、天満の空洞化と市域の拡散があり、人口減少時代でコンパクト・シティが望まれている時代に全く逆行している。安くて大きい施設があるから移転というのでは、ビル運営は考えても都市経営は思いつかないという視点の小ささを露呈している。<o:p></o:p>
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まずはWTCへの府庁の前面移転という問題政策が取りやめになり評価したい。<o:p></o:p>
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本計画の破綻は橋下知事の「主導」した政策であり、謝罪と責任負担が必要ではないか。大阪府の損失につては以下のものがある。<o:p></o:p>
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1.投資済み損失<o:p></o:p>
① 取得費用と売却費用の差額<o:p></o:p>
・大阪市は1万坪移転という、また大阪府の移転もないなら、空室の運営・管理経費が無駄になる<o:p></o:p>
・今回の地震で耐震のため32~130億円かかる補強費用が必要といわれている。また、補強した場合も今の風評や評価からは価値の増分は見込みにくい。取得金額85億円から、追加投資を引くと減価となり極端な場合は価値が0以下(引き取料がかかる)物件ともなる。売却差損は大きいと見込まれる<o:p></o:p>
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② 機会費用(引越、内装、原状回復 等)<o:p></o:p>
・府は2,000人がWTCに移転した。移転費用、原状回復費用(公表されている)、内装費用はすべてが明らかでないが、3坪/人、10万円/坪とすると6億円が移転に費やされた。また府庁に戻る場合も同額が見込まれる。通信回線などの府庁が2分割されるための設備費用・投資も不明だ。<o:p></o:p>
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2.経常的損失<o:p></o:p>
① 建物空室<o:p></o:p>
・空室の運営管理経費は共益費(3千円と仮定)のみが損失としても1万坪とすると、年間3.6億円の損失となる<o:p></o:p>
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② 職員・利用者のリスク<o:p></o:p>
・WTCに入居する職員の安全や通勤、利用する市民のリスクが見込まれる。事故に対応して相応の保険料を支払うか積み立てる必要がある。<o:p></o:p>
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今後の方策を提言するなら、もともと府庁はWTCの2.2万坪に納まる面積が必要であった<o:p></o:p>
① 府庁の本館改修(3年)を速やかに行う<o:p></o:p>
② 3年の間、改修の一時移転および、リスク対応によるWTCからの移転(2,000人分)のため天満周辺の賃貸ビルを利用し、一体化した府庁運営とする<o:p></o:p>
③ WTCを保有か売却か判断のうえ、早急に府の損失を最小限に抑える<o:p></o:p>
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橋下知事はご自身が弁護士かつ事務所経営者でその法務・経営の感覚がおありになるはずだ。本件について自らの自発的判断を期待したい<o:p></o:p>
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