診断はくだっていないグレーゾーンの子も含め、
発達障害や知的障害がある子と、障害のない子では、
つまずく原因もできるようになるための手立ても異なるケースが多いです。
ですから、子どもが「わからない」と言っているからと、
どの子にも同じ方法で教えたのではうまくいかないように思います。
発達障害などがない子たちに教える場合、いきなり解き方を教えるよりも、
まず学習に対する主体的な態度やメタ認知力をつけていくことが大事だと
考えています。
文章題が苦手な子にも、やる気がない子にも、学習の力の入れどころがずれている
子にも、他の子と計算時間などを比べて、「計算をもっと練習したらできるように
なるよ」といったアドバイスをするのは、あまり良い教え方とは思えません。
そうした子たちには、大人が、
「遠回りで本質からずれた方法でも、まず練習さえすれば、やってるうちに成績に
結びつくから、それで欲が出て、勉強をするようになるはず……」という
子どもだましな方法で指導をしても、心の底では、「そんなのおかしい」と感じて
反発するので、大人の思惑通りいかないものなのです。
また、本当に計算さえすれば成績が伸びる子だったとしても、その必要性を本人が
自覚しない限り、やらされている作業をただこなすだけでは、成績に結び付けていく
ことは難しいのです。
現実に大阪市では、○○式なる大量に計算訓練をさせる教室をいたるところで見かけるし、
小学生と話をすると、その教室に通っていない子の方がめずらしいほどなのですが、
大量に高速で計算させる学習をする子が増えたから、大阪市の子どもたちの学力が
向上しているという話は、聞いたことがないのです。
主体的な態度やメタ認知力をつけていくとは、つまり、子どもに、
どこがどのようにわからないのか具体的にくわしく説明させたり、自分にはどんな
学習が足りないと思うか、どんなことをすればできるようになりそうか、
分析させたりするのです。
自分のしている学習を、少し高い位置から客観的に眺めさせて、
自分でやることを決めさせるのです。
もちろん子どもにとって最初はどうすればいいかわからないでしょうから、
ヒントをたくさん与えます。
そうしながら、大人もいっしょに、わからない原因と、これから必要な学習を分析
していくと、大人の側もどんなことをどこまで支援すればよいのかわかってきます。
虹色教室ではこんなことがありました。
小学4年生の☆さんは、頭は良いのですが、さみしがりやで飽きっぽい性格です。
宿題を始めるやいなや、「わからない、できない」と言うと、お母さんが飛んできて、
手を変え品を変えして説明したり、「どうしたらいいんでしょう?」っと心配したり、
「なら、先生に聞いてみようか?ならこうしたら?」と提案してくれるのにすっかり
味をしめて、『自分で考えてみる』ということは、思いもよらない様子です。
教室でも、すぐさま「わからない、できない」と言うとよそ見を始める☆さんに、
私は、お友だちや年下の子たちに、解き方を教える役をさせたり、
友だちと協力しあって考える機会を与えたりしています。
☆さんには、読書家で、いつも図書室で借りた本を見せてくれるという一面があります。
それで、「本がたくさん読めるということは理解力がある証拠よ。めんどくさいという
心を乗り越えて、がんばってみて。自分で考えるの」と説得していました。
すると、私の前では、「できない、わからない」と騒ぐのはやめて、
課題にきちんと取り組めるようになってきました。
この☆さんのように子どもが「わからない」というとき、
その子の力量を見極める大人の眼力が大切だと感じています。
ていねいな説明が必要な子と、自力で少し考えさせる必要がある子がいるのです。
考えさせるというのは、問題の解き方だけではなく、「自分はなぜ解けないのか」という
理由もです。
「そうだ、学校で先生の話を聞いていなかったからわからないんだ」と
気づくかもしれません。
そんな場合は、先生の話など聞かなくても、いつでも「わからない」と言えばだれか
助けてくれるよと身体に覚えさせるよりも、
「今度から、ちゃんと授業を受けよう」と本人が自覚した方がいい場合があります。
最近では、子どもが「わからない」と言おうものなら、どう教えたらよいか、
誰に教えてもらうよう手配しようかと考えることに忙しくて、
「まず、自分で考えてみた?」とたずねるのを忘れている場合がよくあるのです。
子どもの側も、まだオムツをしている年齢から、
ご機嫌を取りながら手取り足取り教えてくれる習い事や、
何も考えなくてもスローステップで出題されるプリント問題に慣れすぎて、
たった1分かそこらでも、自分の頭を使ってみる体験をしたことがない子も
けっこういるのです。
考える前に、「自分で問題を読んでみた?」と問わなくてはならないケースもあります。
写真はアスペルガー症候群の女の子に勉強を教えていたとき使っていた
この子は、障害特性のせいで、『興味の範囲がとても狭い』です。
動物が大好きで、寝ても覚めても動物の話をしています。
私が「お家では、お姉ちゃんとどんなことをして遊ぶの?」とたずねても、
「この問題の解き方はわかる?」とたずねても、
「今日は、カーコちゃん(うちの鳥です)は何をしているの?」
「どうしてカーコちゃんは、飛んでいってしまうの?」と自分の好きな
何とか計算はできるようになっているものの
算数の概念の多くは、難しすぎて理解できない様子です。
いくら説明しても、首をかしげたままなので、
こうした興味の範囲が狭い子には、その子の興味のある事柄で
算数の概念を説明するようにすると、
急に理解が進む場合があります。
この女の子も、「子どもが100人いました……」という話だと、
そわそわしたり、「うーん」と首をかしげて「わからない」と言うだけだった
100羽のフラミンゴを同じ数ずつ10の小屋に分けたら、
何羽ずつになるのかな?」という話で説明すると、ずっとわからなかった
興味の範囲が狭い自閉症スペクトラムの子どもたちに教えるとき、
電車とか、昆虫とか、動物とか、その子が興味を持っている分野の内容で
説明すると、学習に集中できる場合がよくあります。
また、学習内容を、できるだけシンプルにして、
理解させる部分だけ抽出して教えることも大事です。
1枚の紙に、1つの内容だけ書く。
といったことが、理解に役立ちます。
同じ診断名だから、同じハンディーを抱えているとは限らないので、
まず、苦手な部分を見つけると同時に、
得意なことや長所も見つけておくと、得意や長所を通して難しい概念の理解が
苦手は、字が小さかったり、たくさん字が並んでいたりすると、
大きく分けて3つの視点が必要だと感じています。
ひとつには、
また『目で見えて、手で操作できる』教具を使って教えることも
文字を大きくしたり、漢字にふりがなを打ったりして
私が会ったことがある知的障害の子に関する印象は、
ルールが易しいトランプやボードゲームなどで遊べるように
私が知的ゆっくりさんに学習を教えるとき大切にしているのは、
『できることは何度もやりたがる』という性質を最大に
たいていの親御さんは、できることというのを、
学習課題の狭い範囲の中で捉えているので、
ひとつのことができるようになっても、いつまでもそこで足踏み
たとえば、知的ゆっくりさんが、折り紙を長方形に半分に折る
いろいろな見本を見せても、声をかけても、知らんふり。
いつまでたってもあまりに進歩がないので、イライラして
「たくさん折ったわね。いくつ折れたか数えよう!」と数の
長方形の両脇をセロテープで貼って財布にするという
作ったものを生かした工作に誘うこともできます。
折り紙を例にあげましたが、文字の練習でも計算でも、
学習していくとき、人が頭の中でする作業には、
★わかる……認知する・分類する・意味を理解する
★覚える……保持する・記憶する・想起する
★考える……類推する、推測する、一般化する、抽象化する
★決める……企画する、評価する、判断する、選択する
学習というと、上であげた『わかる』と『覚える』を
類推する、一般化するといった『考える』作業は、
そのパターンをわからせ、覚えさせて、テストしていくことで
「読み書き計算は学習の基礎だから、
『考える』体験と、『決める』を体験をする場や機会が
ひと昔前の子であれば、外で子どもだけで群れて遊ぶ時間が
大人が飛んできて何でも解決してくれるわけではないので、
推測したり類推したりする力を発達させないと危険でしたし、
家のお手伝いは、考え、決める力を使う絶好のチャンスでした。
それが、最近では、学習法がどんどん合理的になり、
テストの点としては、短期間に急速に進歩するように
★考える……類推する、推測する、一般化する、抽象化する
★決める……企画する、評価する、判断する、選択する
は、授業内容や教材の中に取り込もうとすると、
自然に伸ばしていけることでもあります。
私が子どもの頃は、学校の規則がそれほど細かくなかったので、
学校でたびたびトラブルが発生していました。
そのたびに、学級会や終わりの会で、子供同士、
当時は、『考える』と『決める』が活性化されるような場面が
授業中に交換日記を回している子がいるとか、
本当にうだうだと言い合いばかりしていましたが、
基礎が大事だからと、『わかる』と『覚える』を
★わかる……認知する、分類する、意味を理解する
★覚える……保持する。記憶する、想起する
の部分で、少しでも先に進ませようと、目に見える成果を
『考える』と『決める』を体験する場や機会を奪ってしまうことに
教えている側が、「はやく4の段を!5の段を!」をあせっても、
知的ゆっくりさんたちは、ゆっくりゆっくりしか覚えていかないでしょうし、
九九を覚えたからといって、九九を使った文章題の理解に移行するのは難しいでしょう。
私は、2の段と3の段が言えるようになったなら、
それをさまざまな場面で活用できるように工夫しています。
写真のように、「2個ずつ人形におやつ(積み木)を配ってね」と言って、
「2いちが2~」と言いながら、配ってもらうこともそうですし、
友だちとの遊びや、お手伝いの場面で、かけ算が役立つようにするのです。
それと同時に、少しずつ次の段をマスターするための練習を進めていきます。
また、10の合成が言えるようになったとすれば、
最初に10個の物を見せてから、いくつか隠して、
「いくつ隠れているでしょう」と推理する遊びをしたり、
その問題を他の人に出題する役をさせたりします。
学ぶときに子どもが、教える役や説明する役、人形劇を演じる役など、
さまざまな役割を体験できるように工夫すると、
学習がなかなか進まず停滞しているように見える時期にも、
企画する、評価する、判断する、選択する、
類推する、推測する、一般化する、抽象化するといった経験を深めていくことができます。
虹色教室を知人から聞いてよかったら参加させていただきたいのですが、公式サイトのようなものが見当たらず
連絡できなかったため、このような形で連絡させていただきました。
詳細をおしえていただけませんか?
神戸在住です。
あとオンライン教室は小学4年生ですがまだかのうでしょうか
よろしくお願いします
今はどのクラスも満員で生徒の募集をしていないのです。申し訳ありません。不定期で、ブロック講座、工作講座、算数講座などを開いて、このブログで募集しています。それにお申し込みいただくことはできますが、募集時期は決まっていません。
オンライン教材は幼児~小学校中学年の親向けの内容なので小学4年生のお子さんだと利用しにくいかもしれません。