この記事では、感覚過敏の問題を中心に扱っていますが、「発達障害なのかどうか気になるけれど、やっぱりちがうかなぁ~」と思う子の中には「ハイリーセンシティブチャイルド」(人一倍敏感な子)という視点から捉えると対応しやすくなる子たちもたくさんいます。
集団での活動になじめない原因が社会性の遅れからくるものでないと感じられる子。
むしろ社会性や想像力、メタ認知力という面で、同年代の子よりも高いように感じられる子に多いです。
虹色教室にはそうした子たちがたくさんいます。
幼児の一時期、園や保健所などで「発達障害ではないか」という指摘を受けることがあるものの、数年後には、周囲から、「何の問題もないだけでなく、他人と関わるのが上手で利発な子」という見方をされるようになっています。
『ひといちばい敏感な子』
エレイン・N・アーロン(著) 明橋大二(訳)という本が読みやすいです。
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ブログ以前の記事に次のようなコメントをいただきました。
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服の裾やかばんの一部を口に入れたりしているときがあります。
こういった行動をするからと言って、自閉症スペクトラムとは限らないとは思いますが、次女が、スカートやかばん、水筒の紐などをくわえている事がよくあるので、気になりました。
くるくる回ることはないですが、常にぴょこぴょこジャンプしている感じです。
自閉症スペクトラムについて、お時間のある時に、記事にして頂けると嬉しいです。
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自閉症スペクトラムについての記事を……とあるのですが、それは次の機会にさせていただいて今回は「感覚の情報処理がうまくいかない」という状態についての話を書かせていただきますね。
「発達障害なのかどうか気になるけれど、やっぱりちがうなぁ~」
「もじもじして子ども集団に入っていこうとしないけど、親子で会話するときは
しっかりしているし、心配な子なんだか、心配いらない子なんだか……」
「発達障害の子ととても似ているところがある。でも、全然ちがうと思うところもある」
「乱暴ですぐに手が出るし、とっても不器用。でも子どもなんてこんなもんじゃないの?」
そんな風にはっきりした心配なところがあるわけじゃないけど、何だか気になるところがちらほらある子っていますよね。
病院に診断に行くべきか迷うけど、行っても一笑に付されそうな気もする……という子。
親としてはあれこれ気になるんだけど、幼稚園の先生からは「心配ありませんよ」と言われて、親の私が神経質すぎるのかなと反省……という子。
虹色教室でも、夏の日帰りレッスンなどにはこうした子どもの成長に気がかりを抱えた親御さんにたくさん出会います。
そうした悩みを抱えた親御さんのお子さんにもっともよく見られるのが、「感覚の情報処理がうまくいかない」という状態のように思います。
親御さんの多くは、「自閉症スペクトラムかもしれない」「ADHDかもしれない」という不安に直面したくないという思いや「病院に行くほどでもない。他にもこんな子はたくさんいる」という思いから、子どもの気になる姿を気にしつつも、何のアクションも起こさずにそのままになっているようです。
私がそうした親御さんの子どもに接していて気にかけているのは、「自閉症スペクトラムやADHDと診断される子ほど困難は大きくないけれど、軽い感覚の情報処理に問題を抱えていて自己コントロールが苦手な子が幼児期にその問題に対する十分な対応をしなかったために、後々、大きな問題に発展してしまうケースです。
本来は発達障害に属さないレベルの軽い苦手を抱えた子が、幼児期に気になったさまざまなことを無視してしまったために、先々、不器用さが原因で学習でつまずいたり、人と関わることが難しくなったりすることがあるのです。
『でこぼこした発達の子どもたち』(キャロル・ストック・クラノウィッツ すばる舎)には、専門家に相談するときに使える「感覚統合発達チェックリスト」がついています。
とてもたくさんありますが、どのような内容か紹介するため、一部だけ引用します。
気になるところがたくさんあるという方は、ぜひ購入してチェックしてみてくださいね。
<チェックリストの例>
1. 触覚が非常に敏感な子によく見られる特徴
●砂、指絵の具、ペースト、のり、泥、粘土などを使った遊びをいやがる。
または、そのような遊びを考えるだけで泣きそうなる。
●痛みに過剰に反応し、小さなすり傷やトゲに対しても大騒ぎする。
●頑固、意地っ張り、融通がきかない、強情、言葉で強く主張したり、身体的に押しが強い、気難しい、といった態度を示す。
(実は苦手な触覚の刺激を避けようとしている)
2. 触覚が非常に鈍感な子によくみられる特徴
●顔、特に口と鼻のまわりが汚れていることを感じない。顔に食べ物のカスがついていたり、鼻水がついていることに気がつかない。
●物を落としたことに気がつかない。
3. 触覚の刺激を非常に求める子によくみられる特徴
●身体や服が汚れるような遊びや行動を長時間やりたがる。靴下や上履きをすぐに脱ぐ。
●2歳以上になっても物を口に入れて調べる。
●他人に近寄って触ったり、相手が触られるのを嫌がっても気にしない。
4. 前庭感覚が非常に敏感な子によくみられる特徴
●髪を洗ってもらうときなど、頭が逆さまになったり傾くのをいやがる。
乗り物酔いをする。
5. 前庭感覚の刺激を非常に求める子によくみられる特徴
●速く動いたり回転する公園遊具や遊園地の絶叫マシーンなどが好き。
6. 固有感覚が非常に敏感な子にみられる特徴
●強い刺激を筋肉に受ける体重負荷運動を避ける。(ジャンプ、片足とび、走る、這う、回転するなど)
7. 固有感覚が非常に鈍感な子にみられる特徴
●力加減がわからず、おもちゃをすぐに壊す。
8. 固有感覚の刺激を非常に求める子にみられる特徴
●覚醒水準を調整するために、頭を打ち付けたり、爪を噛んだり、指を吸ったり、関節をポキッと鳴らす、などの自己刺激的な行為が行う。
●全体的に攻撃的。
他にも非常にたくさんのさまざまな種類のチェックリストがあります。
「育てにくい」「しつけがうまくいかない」場合にはこうした原因があるかもしれません。
気になる点がたくさんあるときは、感覚統合の問題がないか専門家にかかることをお勧めします。
感覚の問題は必ずしも発達障害と直結しているわけではありません。
こうした問題にきちんと対処することで親子関係がとても良好になることがよくあります。
『でこぼこした発達の子どもたち』キャロル・ストック・クラノウィッツ/すばる舎より
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『でこぼこした発達の子どもたち』(キャロル・ストック・クラノウィッツ)という
著書の中に感覚情報処理がうまくいかないとどのような問題を伴うのかまとめてあります。
↓で紹介する特徴の多くは、ADHDや自閉症スペクトラム障害をもっている子にもよく見られる特徴ですが、そうした診断名がつくほどではないけれど、よく似た気がかりを持っている子はけっこういます。ハンディーがある子にもない子にも、感覚情報処理という面から特徴を捉えて、それに対する働きかけを増やすと、それまであったさまざまな問題が軽減することがよくあります。
子どもの発達で気になるところがいろいろあるときには専門家に診てもらうことは大事ですが、専門家に診てもらうほどには問題が多くない「気になる癖が多いな」レベルの子も、何も対処せずに終わってしまわず、家庭でできる範囲ででも感覚の発達を促す遊びや活動をすることをお勧めします。
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<感覚統合障害によく伴う覚醒水準、活動レベル、注意力、衝動性などの問題>
● 動き回る そわそわ イライラしがち 思いつきで遊んだり作業をしたりする
短期で興奮しやすい 椅子に座っていられない
●ボーッとしている 疲れやすい 自発性やねばり強さが弱い 興味が薄い
「あまりにも育てやすい」赤ちゃん
●好きなことをしていても注意を持続できない 整理が苦手 忘れっぽい
●分別なくエネルギッシュ 衝動的 順番を無視する おもちゃ箱をひっくり返す
また感覚の情報処理の問題は、次のような他人との関わり方の問題を伴うこともあるようです。
●初対面の人に会って遊んだり、新しい食べ物をいやがる
●ある状況から別の状況に移るのをいやがる 日課の変更をいやがる
●分離不安 作業中にだれかが自分に近づくのを嫌がる
●簡単にあきらめる 完璧主義で期待通りに進まないと腹をたてる
●人と仲良くやっていくのは苦手 自分でルールを決めたがる まわりを支配する
●はっきり話す 文字をかくなどが苦手 自分の気持ちや要求をうまく表現できない
●変化、ストレス、感情が傷つくことに対して融通がきかない
●他人に対する要求が多く、人が嫌がるような方法で自分に注意を向けたがる
『でこぼこした発達の子どもたち』キャロル・ストック・クラノウィッツより簡単に要約しています。
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働きかけ方についてはまた次の機会に記事にするつもりですが、『でこぼこした発達の子どもたち』はとても読みやすく、くわしい具体的なアプローチがたくさん載っている良書ですから、ぜひ書店で手にとって読んでみてくださいね。
次回に続きます。
長男がまさにこれでした。2ヶ月前の5歳2ヶ月のころ、突然、発達障害?自閉症スペクトラム?の症状が強くでてきて、小児精神科にいこうかと夫婦で悩むほどでした。
1歳の頃からスライム遊び、泥遊びのような感覚遊びが嫌いでしたが、その頃は原因に気づきませんでした。固有感覚が独特だったのでしょう。
2ヶ月前から、色々と調べ、口腔筋機能療法と外国語の発音練習に伴う舌唇の訓練と、歌と呼吸との調和を毎日訓練したところ、今はかなり改善しました。しかし、発達障害ではないかという長男に対するレッテルが僕の心の中に暗い影を落としてました。
「でこぼこ発達」という言葉に、心の影がとれた気がします。ありがとうございました。
http://kyoiku21.blog.fc2.com/blog-entry-261.html
幼稚園では色々ありましたが、幼稚園が息子にあっていて、また先生方が息子のことをよく理解してくださっているので楽しく通えるようになりました。
今の時点では、小学校は公立でやっていけないような気がしています。これからの2年で変わるかもしれませんが。
今後の参考にしたいので、虹色教室のHSCと思われるお子さんたちの、幼稚園から小学生にかけての変化を記事にしていただけたらうれしいです。よろしくお願いします。
うちの子もHSCじゃないかといわれていますが、年長になり、だいぶ落ち着きましたよ。
園に入るまではママと離れられず一日のうち泣いている時間の方が多い子でした。人見知りでお友達もできませんでした。幼稚園に入ったばかりの時は1年ほど大変でした。園でもよく泣く子と思われていましたが、年中くらいから園ではいろいろなお友達と上手に遊ぶし、段取りがよく、利発なところがありますといわれるようになりました。
いまでも園でがんばった分、家ではかんしゃくを起こしたり泣いたりなどありますが、小学校に行くことについては本人も楽しみにしており、親としても外ではがんばれるんだなということがわかり、特に心配ない状態にまでなりました。
不安になりやすいところはあるので、できるだけそこはつきあってあげるようにしていますが、親子だと甘えてきてきりがないので、時々は少し厳しくいったり、接し方はいまだに試行錯誤のところはあります。ただ、2、3年前に比べたら格段に悩みのレベルは低いです。ご参考まで。