年長のAくん、Bくん、年中のCくんの算数の時間にこんなことがありました。
サピックスのぴぐまりおん(1・2年生)の『のりものけん』という問題を
解いていた時のことです。
この問題は、園児にはいきなり解くのは難しいので、問題を解く前に、
12枚綴りの切りとることができるチケットを作り、
おもちゃを並べて作った遊園地の乗り物を選んで遊びました。
コロコロカー のりものけん 2まい
コーヒーカップ のりものけん3まい
メリーゴーランド のりものけん 4まい
グライダー のりものけん6まい
ジェットコースター のりものけん8まい
という決まりです。
「グライダーに乗りたい」と言って6枚の乗り物券を切りとって渡し、
残りの6枚で何に乗ろうかと考える……
という遊びをしてから、ワークの問題を読みます。
ワークの問題を読む時、一区切りごとに、「どういう意味かわかる?」とたずねて、
理解度を確認しています。
「みんなは ゆうえんちに きています。どういう意味かわかる人?」
「はい、みんながゆうえんちにきたってことでしょう?」とAくん。
「そうよ。みんなっていうのは、すすむくん、だいちくん、かおりちゃん、
がんちゃん、めぐちゃん、けいこちゃんね。」
「のりものけんを 12まいずつ かいました。どういう意味でしょう?」
「のりものけんの、この点々って切ってある券が12あるから、
それを買ったってことでしょう?」とBくん。
「次は難しいよ。ちょうどなくなるように みんなはのりものに のりました。
ちょうどなくなるってどういうことかな?ちょうどじゃない場合ってどんなことかな?」
この質問には、Bくんが必死になって答えてくれました。
「あの、ジェットコースターに乗って8枚出して、それからコロコロカーに乗って、
もういっかいコロコロカーに乗って全部なくなるのは、
『ちょうどなくなる』ってことで、もし、ジェットコースターの後で、
コーヒーカップに乗ったら、ちょうどじゃない」
「そうね。Bくん。よくわかったね。コーヒーカップに乗ったら、
券が1枚だけあまるから、1枚だけで乗れる乗り物はないものね」
「のりものに 1かい のるのに ひつような のりものけんの まいすうは
右のとおりです。意味がわかる人?右のとおりってどういうこと?」
「この右の絵のところの、コロコロカー2まいとかいうところでしょ」とAくん。
こんなふうに一区切りごとにわからない部分がないかていねいにたずねた後で、
『れい』をしっかり見るようにうながします。(『れい』を見て気づいたことを
言葉にしておくのもいいです)
「グライダーに 1かい、 コロコロカーに□かい のったよ。」と
すすむくんの言葉から、12枚のチケットの色を塗り分ける問題で、
3人とも考え込んでいました。
すると、Aくんが、「先生、ブロックを使ってもいい?」とたずねました。
許可すると、グライダーの6枚を除いた6枚分のブロックを持ってきて、
コロコロカーに何回乗れるのか考えて、きちんと解けました。
BくんもAくんからブロックを譲り受けて、解くことができました。
Aくんがブロックを使うことを思いついたように、考える方法のレパートリーを
いろいろ持っているといいですよね。
子どもたちが、考えるためにいいアイデアを思いついた時は
みんなでその良さを確認して、アイデアを共有できるようにしています。
小2のDくんがレゴでコマを飛ばすマシーンを作っている時、
こんなことがありました。
初めて、ギアや滑車を使ったレゴに挑戦したDくん。
解説書の絵を見ながら、意気揚々と作っていました。
中盤あたりに差し掛かった時、
「ずいぶんできたね。どう?面白い?」とたずねたところ、ため息をつきながら、
「途中でわかんなくなってきた。やっぱ、難しいな。」とつぶやきました。
どうするのかとしばらく様子を見ていると、「はぁ~」と深くため息をついてから、
何やら決意した様子で、「いいや!戻ろっ!」というと、
それまで作っていたパーツをバラバラにしだしました。
それから、説明書の3の図を指して、「先生、ここからやりなおすことにした」
と言いました。
「それなら、今度は、1手順終わるごとにあっているかチェックしようか?」
ときくと、「そうする」とのこと。
そうやって、1手順ずつチェックする間、わたしはチェックしている内容を
「穴の位置は、左から3番目、うん、あっているね」
「ギアとギアがきちんとかみあっているかがポイントよ。ちゃんとかみあって
いたらクルクル回るからわかるわ」などと、口に出して確認しました。
そうして前にため息をついていた中盤あたりに差し掛かった時、
Dくんは、「もう自分でできるよ。チェックしなくても大丈夫」と
自信ありげに言うと、最後まで自分の力で仕上げました。
Dくんはうれしくてたまらない様子で、
「もっともっと作りたい」と言っていました。
このコマ飛ばしマシーンを他の子らにも見せる時、
わたしはみんなに
Dくんが自分で考えた行き詰まった時の解決法について話しました。
「Dくんはね、最初、自分でどんどん、どんどん作っていったの。
でも、途中でだんだんやり方がわからなくなって、どうしたらいいか
わからなくなったのよ。
そうして、行き詰ってしまった時、Dくんはどうしたと思う?」
他の子らは首をかしげて聞いていました。
「Dくんは、こんな風にしたの。
まず、せっかく作ったブロックをバラバラにしていって、最初の方の3番目の図に
戻ってやりなおすことにしたの。
それから、ひとつの図を完成させる度に、先生のチェックを受けて、
ちゃんとあっているかどうか正確に確かめるようにしていたの。
簡単でわかりきっていることも、そういう意味があったんだなって
理解しながら進んでいったら、先に進めば進ほど簡単になっていって、
途中からは自分ひとりで全部仕上げることができたのよ」
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ピッケのつくるえほんのワークショップで小2のAくんが
『くりんの木さがし』というすてきな絵本を作りました。
下の写真は、作品の一部です。
りすのくりんの家であった木が倒れてしまったため、
新しい家にする木を見つけにいくストーリーです。
この作品を作る過程で、Aくんは最後のシーンを作った後で、
先に作ったシーンに戻って手を加えました。
「倒れて枯れた木と周辺の環境」と
「新しく探し出した木と周辺の環境」の変化を際立出せるためです。
Aくんは、下の「新しい家にすることにした木」のシーンと
上の「倒れた木」のシーンについて、他の子らに説明しました。
「(下の)この絵の木は、いろんな実がなっていて、花も咲いていて、
木のまわりもいろいろな草や花があって、どんぐりも落ちている。
初めは、(上の)前の絵にも、どんぐりとか草とかもっと置いていたんだけど、
最後の絵と比べた時に、どんなふうにちがうかわかるように、
きのこのついている切り株と草だけにしたんだよ。
青い倒れている木は枯れているから青いんだ」
最後の作業を終えてから、
それまでしたことを振り返って、おかしな部分はないか、もっとよくなる方法はないか、
と考えてみるのはすばらしい知恵ですね。
工作をする時も、算数や他の学習をする時も、とても役立つ頭の使い方だと思います。
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年中のBちゃんの頭の使い方は、まるで見ているものに吸い込まれてしまうほど
真剣に物を眺めて、相手の言葉に全身全霊で耳を傾けることから始まります。
Bちゃんは、誕生日のプレゼントにシルバニアファミリーのお家を
買ってもらう予定だったそうです。
でも買い物に行った先で、上の写真のような
広げるとお城の中とお庭があらわれるポップアップ絵本を見つけて、
「どうしてもこれがほしい、シルバニアのお家よりもこっちがいい」と
言い張ったのだとか。
Bちゃんは工作が大好きなので、プレゼントにこの絵本をもらうやいなや、
「これと同じものが作りたい」と言いました。
といってもBちゃんの手に余る大掛かりなポップアップの仕掛けです。
そこで、「虹色教室で作る」という流れになりました
Bちゃんといっしょに長い間、うっとりとこのポップアップ絵本を眺めた後で、
「Bちゃん、どの部分が作りたいの?どこがすてきだと思う?」とたずねました。
Bちゃんは庭にある六角形の噴水と植物で作った迷路を指さしました。
Bちゃんの指さすそれは、とても魅力的なポップアップの仕掛けでした。
「六角形の秘密」とでも名付けたいような
六角形という形を生かした仕掛けなのです。
作り方は単純です。
紙を帯状に切って折って、六角形のわっかを作ります。
六角形はふたつの向かいあう辺が平行ですよね。
Bちゃんとは、「平行」のことを、手のひらと手のひらの間に少し隙間を開けて
向かいあわせて表現しています。
向かいあわせの平行な辺の上も下も山の形に辺がつながっていますから、
それがぺったんこになったり広がったりするのです。
この平行な辺と辺をセロテープでとめて、他はとめません。
すると、とめていない部分の辺が開いたり閉じたりして、
ぺったんこに折りたたまれたり、六角形に広がったりするのです。
できた部分はプレゼントとしてもらった絵本に比べると、ほんの一部です。
でも、Bちゃんは、心から満足した様子でした。
真剣に、ポップアップ絵本を覗きこみながら、
「次はこことここを作る」と夢を膨らませていました。