「もしお時間があるのなら記事にしていただいて、子どもの姿を客観的に捉えなおしたいです」と★くんのお母さんの要望を受けて、書いています。
3歳半の★くん。
これまで同年代のお友だちとグループレッスンに参加してきましたが、極端に恥ずかしがり屋のため、お母さんからは「お家では自然な会話が成り立っている」とお聞きしているのに、
教室で言葉を発することがほとんどありませんでした。
★くんのおっとりした温和な風貌からは、特別な感覚の過敏さは持っていないように見えるものの、人からの注目(それがお母さんであっても)や、人の声がすると緊張が高まるようで、
身体をくねくねさせてお母さんの服を舐めたり、電車のおもちゃを前後に動かすだけの幼い遊び方に固執したりします。
お母さんは、「シャイな性格なだけと放っておいてもいいものか、知力や社会性の遅れなどはないのか……」と気を揉んでいらっしゃいました。
そこで、個別のレッスン日を設けて、★くんひとりとじっくり関わってみることにしました。
個別レッスンの日、教室に着いた★くんは、電車のおもちゃを手にして遊び始めました。
「駅を作ってみる?」「トンネルを作ろうか?」などと誘うと、恥ずかしそうにもじもじして、お母さんの服を舐めたり噛んだりしながら黙っていました。
しばらくすると、口をパクパクさせて、聞き取れないほどの小声で、「つーくーる」と言うものの、作ることにも作ってもらうことにも興味はない様子。
再び、電車を前後させる遊びに戻る★くんにやきもきしたお母さんが、「★くん、今日は何をしにきたんだったかな?」などと声をかけると、その都度、★くんが極度に照れて、お母さんの服を舐めたり噛んだりしていました。
★くんは、もじもじして恥しがりだすと、「これがしたい」「あれがしたい」という意志表示もなくなるし、行動も非常に幼い印象になります。
また、「何度か会ううちに打ち解けてくる」といった変化はあまり起こらず、前に緊張したシチュエーションでは、相手がお母さんであっても、声をかけられると、何分間も声が出せなくなるようです。
ただ、文章上で表現するととても似ているものの、コミュニケーションのあり方に問題を持っている、自閉症スペクトラムの子同様の態度とは、少し異なるように感じられました。
理由は、★くんにはエコラリアや目の合いにくさがないことと、自閉症スペクトラムの幼い子たち特有の、自分の周辺の状況が読めていないような雰囲気がないこと、
家では自然な会話が成り立っていることや、幼稚園で口数は少ないけれど上手に適応している姿、非言語のやり取りの通じ方や模倣の的確さなどです。
もちろん、いくら同じ自閉症スペクトラムの子でも子どもによって特性はずいぶん異なるし、発達の問題がそれほど深刻でない形で重複している子もいるでしょうから、
あくまで、その時点でそう感じられた、ということです。
実際の診断は、専門の機関に任せなくてはならないのは当然なのですが、問題は、病院選びや診てもらう時期によって診断名がコロコロ変わってしまうことなのです。
素人判断はよくないとはいえ、子どもの状態をできるだけ正確に把握して、どこに相談するか、どの病院で検査してもらうかを決めていかないと、
正しい診断を受けられて、今後の対応の見通しがつくかどうかわからないのです。
もう少し家庭で様子を見るとすればいつまでどのように様子を見るのか、様子を見ることによって起こるリスクはどのようなものか、各地域によっての情報が少なすぎます。
こんなことを書いたのは★くんの今の状態が、小学生の頃、同じクラスにいた場面緘黙症(ばめんかんもくしょう)の女の子の姿と重なるからでもあります。
場面緘黙とは、特定の場面でまったく話ができなくなる現象です。
2~5歳の間に発症するけれど、単なる引っ込み思案といった性格的要因と区別しにくいため小学校に上がるまで診断や治療が行われることはほとんどないようです。
しかし、場面緘黙症は、成長とともに自然に治っていくものではなく、症状が強化されるケースも多いため、幼い時期の治療が重要とされているのです。
★くんが場面緘黙症の初期の状態にあるのかどうか正確なところはわからないけれど、正誤を確かめるために、近辺の病院をたずねたらはっきりするのかというと、よくわからないのです。
数年前に「緘黙症」という診断を受けて、病院で勧められた療育施設で体操指導(身体を動かしてコミュニケーションをうながす療育を実践しているところがあるそうです)を
受けていた子がいたのですが、
今思うと、その子は自閉症スペクトラムの子の症状がすべて出そろっている状態でした。
誤診というより、診断を受けた時期の問題なのかもしれません。
数年前までは、自閉症の診断基準を全て満たしている場合でも、ADHDとかLDとか、緘黙症の診断名がつくことが珍しくなかった気がします。
わたしが関わったことがある子たちの中にも、そうした診断名に首をかしげたくなる子が結構いましたから。
が、現在は、ちょっと発達の凹凸がある子は、自閉症スペクトラムとか広汎性発達障害の診断名がついているようでもあります。
病院の診断のあり方が変化したのでしょうか。
レッスンの途中で、一時間ほどお母さんに席をはずしていただいて、★くんと二人だけで過ごすことになりました。
★くんはミニカーや電車のおもちゃで遊び始めると、無言のままそれらを前後に動かす遊びをいつまでも続けています。
そこで、そうした乗り物類のおもちゃを片付けて、★くんを紙箱で電車を作る工作に誘いました。
器用ではさみを使うのが大好きな★くんは、「電車を作ろうか?」の問いに、口をパクパクさせながら、音にならない声で、「すーるー」と答えました。
ほかのお友だちやお母さんが一緒のときには、こんな風にわたしの問いに「すーるー」と答えることはあっても、自発的に自分のしたいことや思いを言葉にすることは、皆無に等しいです。
「すーるー」と言わないときには、★くんは照れた様子でひたすら身体をくねくねさせています。
でも、わたしと★くんのふたりだけで過ごしている間には、★くんの方から急に思いついた様子でこちらに話しかけてくることが何度もありました。
電車を作っているとき、★くんは車輪にするペットボトルのふたを貼りながら、
「ちがう。ここがない。もう一ついる」と言って車輪の数が足りない部分を指摘したり、「もう一回、電車作る」「連結するようにして」と要求したりしていました。
「これまでは話しかけてから何分もしてから、ひと言返事が返ってくるだけだったのに、こんなに自然に自発的な言葉が出てくるんだな」と驚きました。
それと同時に、ほかの人がいる場では一時間の間に、「○○ちょうだい」「いや!○○するの!」といった、思わず無意識に口から出てくるような言葉すら発しないことが、単なる人見知りや場所見知りの域を超えているようにも感じられました。
★くんと簡単なカードゲームをして遊ぶことにしました。
これまでは、こうしたゲームに誘っても、照れてもじもじするばかりで参加しようとしなかったのですが、わたしと二人だけのときは、ふたつ返事で「すーるー」と言ってカードを広げました。
電車のカードを表向きにしておいて、★くんとわたしで、順番にそこから好きなカードを取っていき、お気に入りの電車(3枚ずつ連結して完成)を作っていくというルールにしました。
といっても最初に、すべてのルールを説明して遊ぶのではなく、「順番、順番ね。好きなのはどれ?★くんの次は先生」という具合に、「かわりばんこにカードを選ぶ」ということから教えていって、
どこまで理解できそうか様子を見ながらルールを足しています。
★くんは、順番にカードを取るというルールに従えるけれど、同じ種類の電車のカードを集めることは見本を見せたり、一緒に探したりしても、ピンとこないようでした。
この「ピンとこない」という点で、『だるまちゃんとてんぐちゃん』という絵本を読んであげていたときも気になることがありました。
だるまちゃんが、てんぐちゃんに、「それなあに?」とたずねて、てんぐちゃんが「これはてんぐのうちわだよ」といい、
だるまちゃんが、「ふーん、いいものだね」というシーンでは、
「だるまちゃんは、それなあにって聞いてるね。それって、どれかな?ふーん、いいものだねっていってるのは、どれのこと?」とたずねると、★くんはてんぐのうちわを指さすことができました。
でも、だるまちゃんがやつでのはっぱをうちわにしている絵を見た後で、前のページに戻って、だるまちゃんは「どれを見つけて、うちわにしたのかな?」
とたずねて、
だるまちゃんの手のやつでのはっぱと、庭の木についているやつでのはっぱを見るよううながしてもそれらが同じであることや、だるまちゃんのしたことの意味がわからないようでした。
その後のシーンでも、お椀を帽子にしただるまちゃんが、前のページの食卓のお椀を頭にかぶっているということや、ままごとのまな板を下駄にして履いているということがピンとこないようでした。
今後、想像力や相手の伝えようとしていることを理解する力などの育ちを、ていねいに見守っていく必要があるのかもしれません。
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<その後の★ちゃんの様子>
想像力や相手に伝えようとする力が伸びてきました。
ほかの子らと一緒にいるときは、「~したい」「~ほしい」といった要求語を発することもほとんどなかった3歳6ヶ月の★ちゃん。
しばらくの間、個別のレッスンに切り替えて様子を見ることにしていました。
『14ひきのあさごはん』の絵本を読み聞かせている最中、★ちゃんがねずみたちが野イチゴを摘んできて食卓に並べる様子を見ながら、「ぼくもイチゴ取りたいなぁ」と言いました。
「★ちゃん、イチゴ狩りに行ったことあるの?」とたずねると、「★ちゃんねぇ、ある」とのこと。
「じゃぁ、イチゴ狩りごっこして遊ぼうか?」
そう言って、水風船を膨らませる道具を出して、いっしょにイチゴ作りをしました。
イチゴに見立てた風船がなかなかはずせない時、★ちゃんは自分ではさみを取ってきてゴムの部分を切っていました。
摘んだ風船のイチゴやバナナを入れるカゴを、紙袋を半分に切って作ってあげると、★ちゃんが、「★ちゃん、先生にイチゴのかごを作ってあげる」と言いました。
折り紙をどんどん切って、テープで貼って、かごの形にはならなかったけど大満足の様子。
★くんが自分から、「★ちゃん、先生にイチゴのかごを作ってあげる」と言ったのは、絵本を読む前に、写真のカードゲームをした際、わたしと★くんで、かわるがわるに問題を出す役をしたのが、とても面白かったようなのです。
従来のゲームの遊び方ではなく「赤い馬」「緑の犬」など課題を言って取る形で、ゲームをしました。
★くんと交互に絵を描いて、絵本作りをしました。
物作りをする時、★くんはとてもたくさんおしゃべりします。
懐かしい記事をありがとうございます。
とても嬉しいです。
おかげさまで、元気にしております。
★は先生のことを「おもちゃの先生」と呼んでいて、
ちゃんと覚えていて、懐かしんでいます。
上の子の付属ではなく接していただけたことがとても嬉しかったようです。
本当にありがとうございました。
物怖じという言葉とは無縁の上の子を見ていた反動なのか、本当におとなしかった★ですが、控えめながらも幼稚園でちゃんと自分の意見が言えるようになってきたようです。
上の子は間違いを指摘すると悔しそうで、認めたくない表情をすることが多く、これは母親である自分そっくりだったので、★に、「あ、そやな!」と軽やかに反応されると拍子抜けしてしまい、そう答えればいいのか!と目から鱗が落ちるような思いをすることもしばしばです。ひねくれたところがない子だなあと思います。
ただ、何かをするときに、前もって恐れたり、不安に思うことが強いようです。
狭い範囲でしかチャレンジ精神、向上心を発揮しにくいようで、サッカーを習っていますが、いつもゴールキーパーをしています。
他のメンバーに言われて、ゴールキーパーになることも多いですが、攻める、動くといのが性に合わないのもあって自分からもゴールキーパーになり、かといって、守備に燃えるわけでなく、ただいるという感じです。
習いごとのサッカーではそれでもしょうがないかなと思うのですが、幼稚園でサッカーをしたときも、本人曰く「習っていない子ばっかり」なのにやっぱりゴールキーパーになってしまっています。ゴールキーパーがわるいというわけではなく、★の解釈ではなんにもしなくてもよい?待避所みたいになっているのがなんだかなあ・・・と。
ひとつずつ、こつこつと頑張って、自信を持たせてあげることがそして、きょうだいとは離れて、親と1対1で何かを一緒にするというのがこの子には必要なんだなあといつも感じます。
自分と妹の関係を見ても、下の子、特に、感情の強い上の子のいる中間子というのは難しいなあと思います。
上の子は、ちょっとでも腹の立つことがあると、すぐに「★が悪い、★が悪い」と親が見ていても言いがかりとしか思えないようなことで★に手を出します。★はほとんど仕返しをしません。
逃げたら?というのですが、「逃げても追いかけてくるから」と仙人のようで、手を出されることから物理的に★を守ってやる日々がずっと続いていました。
上の子には「★をひいきしている」と言われ、そうじゃないでしょ、ちょっと頭にきたら、すぐ叩くようでは将来困るのは自分だし、もし★がけがをしたらけがをさせたひとになるんだよ、と言って分かっている時もあることはあるけれど、やっぱり次に腹が立ったら、叩いてしまうの繰り返しです。
それが数ヶ月くらい前からかわってきました。
末っ子がおり、上の子たちは二人ともよくかわいがるのですが、ちょっとちょっかいをかけたときに、泣くばかりではなく、仕返しもできるようになってきたのをみて、★はちょこちょこと下の子を叩いたりするようになってきました。
はじめはかわいいから反応が面白くてやる、みたいな感じだったのですが、だんだん、上の子に★がやられた時に、上の子に仕返しをする代わりに末っ子を叩くようになってきました。
ですが、この場合、末っ子を守ってやるのでは、★の理不尽な気持ちが膨らむだけだなあと思い、★を抱っこしてやることで、末っ子から引き離そうとしているのですが、今度は抱っこ大好きな末っ子が、★がうらやましくて近づいてきてまた叩かれて、★と末っ子が泣く、という修羅場になっています。
上の子に末っ子を抱っこして叩かれないようなところに連れて行ってというのですが、末っ子は私に抱っこしてほしくてそれどころではない感じです。
そして、上の子は、★が小さい子を叩いているのをみると、自分のことは棚に上げて、末っ子の仇をとるようにまた★を叩くという悪循環です。
(上の子も、かわいい末っ子がやられているのをみると、一瞬は反省もし、小さい子を叩くのはみっともないというのも分かるのですが、★のことをそんなに小さいとは感じていないこともあり、またすぐに次の「★が悪い」がやってきてしまいます。)
なんとかこの悪循環を断ち切らないとと思い、
★も、末っ子のような小さい子を叩くのは、まして何にも悪いことをしてないのに叩くのはダメ、★も上の子にやられて悔しいのは分かるから、仕返しをしたいんだったら、上の子にするか、ママにしなさいと言いますと、それから上の子にやられるたびに私を叩いてきます。手加減しなくてもよい相手とおもっているので、かなりやってきます。
それを見て末っ子まで面白がって私を叩いてくるので、そちらにはダメと言って怒るのですが、また二人ともぎゃあぎゃあ泣くという事態に陥ります。
上の子は、割となににでも意欲的で物怖じしない(しなさすぎる)のですが、とにかく我が強く、もうちょっと思いとどまってくれたら、修羅場を回避できるのになあと思ってしまいます。
だらだらと、とても長くなってしまいすみません。
すぐに変われるものではないとは思うのですが、なにかヒントをいただけたら嬉しいです。