年中のAくんのレッスンの様子です。
Aくんは完璧主義で敏感な面のある男の子です。
年中さんなので、まだ手指を思うように扱うことができないのですが、「こういうふうにしたい」という思いは人一倍強い子です。
ポップアップ絵本や恐竜の図鑑を見ながら、どんなものが作りたいのか相談に乗っていたところ、
「こういううんじゃないんだよ。そんなんじゃないんだよ。こういう風にバクッとして、体の中は見えなくて、外側で……」と細かい部分まで自分の「こうしたい」があるようでした。
相談の末、「そう!そういうのが作りたい!」と、行き着いたのは、教室のベビーレッスンで作ることが多いティッシュ箱2つと輪ゴムを使った「パックン恐竜」の作り方。
ティッシュ箱を2つ用意して、一つの辺を養生テープでひっつけて、輪ゴムをつけたらできあがり……という単純な作り。
作ったぱっくん恐竜の迫力のかぶりつきに大満足のAくん。
「歯が作りたいよ。ぎざぎざがいっぱいないといけない」と銀色の紙に手慣れた様子でギザギザの歯を描いて、「目がぎらぎらして、赤く光ってないといけない」というので、
自転車用の振動ライトを取り付けて、頭をなでると目が光るしかけにしました。
細かいところが気になるAくんは、顔や口の中に色画用紙を貼って、隙間を埋めていました。
「さぁ、完成!」というところで、「体が作りたいよ。こういうふうになって、こんなふうに大きくて、首があって、尻尾もあって、脚は2本あって大きくてこんなふうになってて、手は前のところに小さいのがついているんだよ」とのこと。
「Aくん、身体を作るとお家に持って帰れなくなるかもしれないよ。
お母さんは、そんな大きいものを持って帰ってもいいっていうかな?」と説得するものの、「どうしても、どうしても、身体を作りたいよ。この顔をつけたいから。うろこもつけたい」とそれは熱心に言い続けるので、
熱意に負けて、空き箱入れにしていた箱などをいくつか調達してきました。
頭が重くて2本足では倒れてしまうので、脚の中に水を入れたペットボトルを入れることにしました。
どうしても恐竜のうろこがつけたいAくん。ドラゴン図鑑を見て、「ドラゴンの皮」として貼られていた「ドラゴンの皮膚(もちろん、にせものです)」に強烈なインパクトを受けたようです。
それにしても、単純なぱっくん恐竜も身体ができると立派になるものですね。
算数のレッスンで、最レベ1年生の最高レベルの問題を小物を使って考えました。
こうした課題は、わからない場合も、答えを教えず、問題の条件だけを繰り返し伝えて考えさせています。
この問題、いくつかの条件をきちんと覚えていて、その通りに従わなくてはならないのと、自分の持っている先入観を壊して、課題の解決法をじっくり考えていかなければならないのでとても難しいのです。
でもAくんは、うまくいかない場面にぶつかるたびに、じっくり考えて、すべての条件を満たす方法を考え出していました。
敏感さを持っている子ならではの思慮深い一面を見た気がしました。
ちなみにAくんとビッグサイズのティラノサウルスは、Aくんのお母さんの許可を得て、一時的に脚だけ取り外して、お家に連れて帰られることになりました。