2歳までに、『大人は自分の要求に正しい形で応えてくれる』という
信頼感を育てるなんて、すごく難しいんじゃないかな?
まだ ろくにしゃべれないような子どもたちの気持ちを
きちんと受け止めるなんて本当にできるの?
現代の親じゃなくたって、
赤ちゃんの気持ちをきちんと察するなんてできなかったんじゃない?
と思った方がいるかもしれないので、
もう少し補足しておきますね。
『大人は自分の要求に正しい形で応えてくれる』という信頼感を育てるために
「大人は子どものサインを読みまちがえちゃいけない」
「いつも真剣に子どもの相手をしなくちゃいけない」ということは
ありません。
ちょっと適当でゆるいくらいの育児で、
そうした信頼感は育っていくように感じています。
話が遠回りになりますが、
先日、これまでの宮崎アニメの歩みを紹介するテレビ番組をしていました。
『ハイジ』というアニメでは、
「不安を感じている」
「だんだん打ち解けてきている」
「いきいきとした喜びが湧いてきている」
といった心の変化を、
少女ハイジの一瞬の笑みや表情で表現していてすばらしかったです。
アニメの中でこうした表現をしようとすると、
才能のある大人が、ああでもないこうでもないと頭を絞って
そのシーンを作るわけですが、
現実の赤ちゃんや幼児は、誰に習ったわけでもないのに、
あらゆる瞬間に、
その場に応じた自分の気持ちや思いを、
身振りや表情やしゃべれる語彙で、
適切に発信しているのですからすごいですよね。
でも、この『ハイジ』にしても、制作者がどんなに緻密な計算のもとで、
一シーン、一シーンを作っていたところで、
見る側の人が、
「これを見たらどんな得になるのかしら? 英語がマスターできる? 賢くなる?」とか
「このストーリーならもう知っているわ。歩けなかった女の子が歩くようになる話よね」
といった先入観を抱いて、表面だけサラッと見たとしたら、
ハイジの微細な気持ちの変化は、見る人に伝わらないのではないでしょうか?
大人には伝わりにくいハイジの気持ちは、
夢中になってアニメを見ている子どもには、きちんと伝わっている場合がよくあります。
子どもは主人公といっしょになって、ドキドキしたり、喜んだり、
悲しくなったりしますから。
年の近いお兄ちゃんお姉ちゃんがいる二人目ちゃんは、
コミュニケーションを取るのが上手で、
環境から新しい知識を学び取ろうとアンテナをしっかり張っている子が多いです。
親からすると幼いお兄ちゃんお姉ちゃんの赤ちゃんへの接し方を見ると
ひやひやすることもあるでしょうが、
実際には、子どもが子どもに接する場合、自然でどちらも成長できるような
関わり方をしているものです。
子どもは、相手がしゃべることができない赤ちゃんだからといって、
大人のように『良い接し方』をしようと 情報をいっぱい頭に詰め込んで、
一方通行のコミュニケーションを取ったりしないのです。
赤ちゃんが発するものを素直に受け止めて、
わからなければ、「なあに?なあに?」と受け取ろうとする努力をします。
たとえ、自分の思いがうまく伝わっていなくても、
「何を言いたいのかな?」と聞き取ろうと努力してもらううち、
赤ちゃんは今度は大人の伝えることを全身全霊で聞いて、
よくわからないことも、わかろうとしようとする態度を身に付けていきます。
自分にしてもらったことを
そのまま模倣するのです。
現在、『大人は自分の要求に正しい形で応えてくれる』という
赤ちゃんの信頼感が育ちにくい理由として、
完璧でしつけが行き届いた育児がしたい
という大人の思いがあります。
「赤ちゃんの要求に応えてばかりじゃ、わがままな子になるのでは?」
という不安がブレーキになって、
赤ちゃんの発信するものをきちんと受け取れなくなっている場合があるのです。
でも、最初から「完璧でしつけが行き届いた育児がしたい」
と張り切ると、必ずといっていいほど失敗に終わります。
なぜなら、赤ちゃんが
大人の指示にきちんと従うことができるようになるには、
その前に、
自分が発信したことに、たっぷり十分すぎるほど
応えてもらう必要があるからです。
早期教育が弊害になるのは、こういうときです。
早期教育のマニュアルにそっていろんなことを赤ちゃんにしているとき、
大人が子どもにたくさん要求していて、
(ちゃんと教材を見てほしい、マニュアル通り成長してほしい、喜んで学習してほしい、習い事でよい子にしてほしいなど)
子どもからの発信を受け取るのは
すっかりお留守になっていることがあるのです。
大人の発信を赤ちゃんに受け取ってもらうのでなくて、
赤ちゃんの発信を大人が受け取るのが先だということを
忘れてはいけません。
虹色教室にいらっしゃる親御さんの場合、
早期教育のマニュアルで接したり、しつけを徹底したりするより、
赤ちゃんが可愛くてたまらなくて、
とにかく子どもの要求を何でも聞いてあげようと一生懸命な方が多いです。
けれども、子どもの要求に応えているつもりなのに、
大人が自分がしてあげたい甘やかしを押し付けているだけで、
赤ちゃんの望んでいることから
ずいぶんかけ離れている場合もよくあります。
ひとことで簡単に説明できそうにないので、
赤ちゃんがどんなことを望んでいて、
どんなことを望んでいないのかといった話は
また次の機会に、くわしく書いていきますね。
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一つ前の記事で私が質問した要求に応えることと言いなりになることの違いに関連していますね。続きを待ってます☆