『小学校までにつけておきたい力と学童期への見通し』(かもがわ出版)の著者の丸山美和子先生は、
「言語の力を育てながら数量概念の形成を促し、その上で、生活の中で具体物を数的に操作する活動を保証しないと、理解が不十分なまま機械的・パターン的に計算ができるようになっても本当に生きた学力につながっていかない可能性がある」
といったことをおっしゃっています。
わたしも同じ意見です。
わたしが100-1や10+10+12のような暗算ができないために、算数につまずきがでていると思われる子とは、
「数量概念の形成があやふやなのに、計算方法だけパターンで暗記していった子」と、
「普段、大人の指示が多いので、大人のいうことに盲目的に従う癖がついている子。大人の意見が強すぎて、自分の考えに自信が持てない子」
の2タイプが多いと思われます。
虹色教室では、遊びや物作りを通して、この具体物を操作する体験がふんだんにできるように配慮しています。
そして、自分のしていることを言葉で表現し、人とやりとりする力が育つようにしています。
すると、計算訓練をしたりドリルをこなしたりしなくても数学的な思考力がしっかり育っていくことを実感しています。
教室では遊びの最中や遊びの後で、「算数タイム」というのを設けていて、算数の文章題や図形や計算の問題を出したり、数学パズルをしたり、
「アルゴ」や「ラミィキューブ」のようなゲームをしたりしますが、ほとんどの子は訓練しなくても、その子の月齢や学年をはるかに超えた問題を、自分の知恵絞って解くことができます。
自分の頭で考えて、初めて目にする問題も解くことができるようになるには、計算や文章題の解き方を教えたり訓練したりするのではなくて、
その前に確かな数量概念が形成されるよううながす必要があります。
数量概念の形成をどうしたらうながせるのか、最もよく知っているのは幼い子どもたちです。
質量保存の法則を理解するようになるまでの子は、どの子もしつこいほど水を移し替えたりビー玉を入れ替えたりしますし、
数の一対一対応を理解するまでの子は、一つひとつ物を手にしては「はい、どうぞ」と手渡したり、一つひとつつまんでは
窪みに入れていったりします。
四則計算を理解する前の子らは、好んでままごとをやりたがり、分配したり、他の子からもらったり、あげたり、自分の分が減るのを嫌がったり、物の売買を再現したりします。